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『刑事フォイル』解説コラム <ソ連秘密警察との戦い>

第二次世界大戦が終わった後、すぐさま東西冷戦時代が始まったが、この戦いで、東側の中心になったのはソ連、これに対して西側の中心的存在はイギリスだった。もちろん西側の背後にはアメリカという強大な国家が存在したが、少なくともこの冷戦初期、ヨーロッパの前線で戦っていたのはイギリスである。ただし、戦いとは言っても武力衝突ではなく、スパイ、秘密警察を利用しての神経戦であり、ソ連の内務人民委員部(NKVD)傘下の組織は、西側にとっては見逃すことのできない活動をしていた、

もちろん、このソ連の秘密組織との戦いで最前線にいたのはイギリス情報部であり、フォイルが所属することになったMI5もその一翼として様々な活動をしていた。スターリン体制のソ連を逃れ、イギリスに亡命したソ連の高官を保護することは、ソ連、および東側の重要な情報を得るための手段として不可欠なものであり、イギリスはそうした亡命者を安全に保護するために「セーフ・ハウス」(安全な家)をいくつも用意する。ソ連の秘密警察によって拉致されることを恐れて、こうした場所は秘密にされるとともに、厳重な保護がなされていた。しかしもし、このセーフ・ハウスに保護されていたソ連からの亡命者が殺害されてしまったとすれば、イギリスにとっては大失態であると同時に、国家の行く末を揺るがしかねない出来事である。それだけに本作に描かれた事件は、到底うやむやにすることが出来ないものだった。

ここで、どうしても指摘しておかなければならないのは、イギリスという国家の情報活動が一枚岩ではなかった点である。戦後、政府ないしは外務省が中心となる情報活動が一方にあって、もう一方には情報部の活動があり、戦時中にはこれらに加えて軍による情報活動があったから、時としてこれらの組織が張り合って、その結果、秘密情報が洩れてしまうことがあった。一方、ソ連はこうした情報活動が上部によって一元化されており、情報の秘匿が厳しく守られていたのである。言い換えれば、イギリスは自由主義に基づいた情報活動を行い、ソ連は独裁的な姿勢に終始したと言えるかもしれない。
こんなことを考えると、フォイルが属したMI5の活動にも組織同士の軋轢(あつれき)が伺われるのも興味深い。

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帝京大学外国語学部 教授 小林章夫

投稿者:スタッフ | 投稿時間:12:05 | カテゴリ:海外ドラマ

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