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『刑事フォイル』解説コラム <消えない悪夢>

戦場で激戦を戦い、生死のはざまでもみくちゃにされながら、何とか生き延びることのできた人物にとって、その悪夢のような光景はなかなか消えることがなく、平和な世界で生活することになっても、心を苛(さいな)む。戦争がもたらした後遺症ほど、人間を苦しめるものはないのではないか。

1944年にフランスで起きた残虐な出来事。降伏したアメリカ軍兵士をすべて射殺する命令を下したドイツ軍将校によるものである。人道を無視した残虐非道な行いと言うべきだろうが、この一件が国と国との取引によって見逃されたとすれば、わたしたちはどう考えるだろうか。一人一人の兵士の生死よりも、国家の思惑が大事にされる世界。この残虐な世界から生き延びることが出来た一人の兵士。彼の苦悩と行動を追って物語は進む。戦争から帰還したこの人物の行動に、われわれは共感を覚えると同時に、その一方でこれが果たして正義なのかと疑問を感じることもある。
いやそれ以上に、戦争、国家とは何かという疑問を強く持つ。国家の名前の下に宣戦布告がなされ、いやおうもなく戦場に駆り立てられていった兵士たち。そしてそれを見送った家族たち。そうした人々の心を考えるとき、今のわれわれも何とも言えない不条理を感じるのではないか。まして、何とか無事に帰還したのちも悪夢にうなされ続け、その上で犯人を捜し求めるとは。もちろんドイツ・ナチスが犯した戦争犯罪は許すことが出来ないだろう。

第二次世界大戦後、戦時中にナチスが行った所業の数々が明らかにされ、その結果、ナチスの中でこの行為に携わったのち、逃げ延びた人間たちを追いかけることが行われてきた。その結果、遠く南米まで逃れていた人物が長い年月の果てに捕えられたこともある。
本作を見終えて、心に残った虚しさはなかなか消えることがない。ましてドラマのタイトルが「ひまわり」である。あの明るく咲き誇るひまわりの花が生き残った一人の兵士の苦悩を思い出させるとすれば、何ともやりきれない思いにさせられるのだ。

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帝京大学外国語学部 教授 小林章夫

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投稿者:スタッフ | 投稿時間:12:05 | カテゴリ:海外ドラマ

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