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『刑事フォイル』解説コラム <女性の社会進出がもたらしたもの>

19世紀ヴィクトリア女王時代では、中産階級、労働者階級に属する女性たち、特に主婦層は家庭を守ることが基本的な生き方だった。これが変化し始めたのは第一次世界大戦以後である。この戦争では男性たちが戦場に駆り出され、その後を埋める働きをしたのが女性だった。たとえばバスの運転手に女性の姿が見られるようになったし、多くの分野で働く女性の数が増えた。さらにこのあたりから女性参政権運動が活発になって、女性の1票がそれなりの役割も果たすようになったのである。

このような変化は第二次世界大戦期にも受け継がれていった。この点を考える際に重要なのは、いわゆる徴兵制の変化である。元来イギリスは志願兵制度を貫いており、第一次世界大戦開始後もこれが守られていたが、1916年に兵力を増やすために徴兵制が施行された。だが戦争が終わるとともに志願兵制に戻っていたのだが、第二次世界大戦勃発とともに徴兵制を採用した経緯がある。
こうして第二次世界大戦中は、徴兵制のもとで多くの兵士が戦争に参加したのだが、その間いわゆる「銃後の守り」を担う存在として女性の活躍は不可欠なものとなっていたのである。そして終戦以後、ヨーロッパ各地から、いや世界中から帰還兵がイギリスに戻って来る。こうして苦難を乗り越えて帰還した男性たちが目にしたのは見慣れぬ光景だった。生まれ育った土地が爆撃で悲惨な姿に変化して、彼らの心を打ち砕いたこともあったに違いない。

そうした中で、かつて自らが働いていた職場に女性の姿が目立ち、そのために自分の居場所が失われてしまった悲しみがある。だが、一方では逆に、戦場に行った男性たちの代わりにしかるべき職場で働きながら、終戦後に戻ってきた男性たちの存在ゆえに職場を奪われてしまったり、あるいはこれまでよりも安い給料で働くことを余儀なくされた女性たち。
世界大戦という未曽有の出来事は、このようにして人々の暮らしを大きく変えてしまったのである。

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帝京大学外国語学部 教授 小林章夫

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投稿者:スタッフ | 投稿時間:12:05 | カテゴリ:海外ドラマ

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