
【「監査法人」ドラマのあらすじ】
2002年。バブル後遺症に悩む日本経済は、未だ先行きが見えないでいた。公認会計士・若杉健司が勤めるジャパン監査法人には二つの大きな意見対立があった。不況に苦しむ企業を救うためには、多少の粉飾も見逃そうという「ぬるま湯監査」派。不良企業は切り捨て、いかなる不正も認めないという「厳格監査」派。健司は、信頼できる先輩・小野寺直人のもとで、「厳格監査」こそ正義と信じるが、切り捨てられていく企業や社員の痛みを感じるたびに、仕事に疑問を感じていく。そんな時、健司は大手食品会社の粉飾を発見する。やがてそれは、財界、金融界を巻き込んだスキャンダルに発展し、健司たちも巨大なうねりに飲み込まれていく…。
【作者のことば…矢島正雄】
会計という仕事が、これほど注目されている時代はないのではないか。書店でも会計士の書いた本がやたらと並んでいる。売れているという。買うのは若いサラリーマンが多いらしい。どんな会社や組織でも経理という部署は必ずあるわけだから、昔から会計の仕事にたずさわっている人の数はかなりいるに違いない。ただ、今まであまり注目されなかっただけ、平和だったのである。会計という仕事の特質に、記録に残すということがある。そう、会計には歴史が残っているのである。会計という仕事が注目された時代は、過去にもあったのである。時代が大きく動くとき、会計は大いに世間から注目されているのだ。近代でいえば昭和初期、会計は注目どころか時代の主役ともいえるポジションに立っていた。経済が政治・軍事をも超越していた時代がある。しかも今と酷似する状況、驚くことにグローバル化が叫ばれていた。一般庶民でさえ為替レートが日常会話になっていた、本当の話である。その激動の中で大蔵大臣、日銀総裁が暗殺され会計が主役の時代は終わっていく。驚くほど、今と似ている。本当は、もう少し、その辺を隠し味になるような作品にしたかったのだが・・・。
【演出のことば…渡辺一貴】
「公認会計士をドラマにするんですか?それは嬉しいです!でも…会計士って地味ですよ」取材に伺った先で、公認会計士の方々は皆さん必ずこう口にしました。そう、確かに監査の現場は会議室。向き合うのは書類の山。数字の羅列。根気と忍耐の作業ですが、見ていて面白いものではありません…。しかし、ここ数年、監査法人の世界は文字通りの「激動の変化」を経験しました。金融ビッグバンの流れの中、過去の不祥事が暴かれ、崩壊し、淘汰され、再生していく過程は、そのまま日本経済の縮図のようです。そして、その巨大な波に翻弄されながらも奮闘する公認会計士たちの姿もまたドラマチックです。理想と現実、矜持と諦念、仕事と家族、お金とやりがい、そして過去と未来。監査法人という巨大組織で働く彼らが抱えているのは、現代社会で生きる私たちすべてが抱えている、共通の悩みです。理想や使命を背負い、悩み、もがきながらも前進を続ける実際の会計士の皆さんに敬意を払いながら、「人間味溢れ、温もりのある」経済ドラマを目指しました。
【制作のことば…磯 智明チーフプロデューサー】
三大国家試験と称される医師・弁護士・会計士。医者モノ、弁護士モノのドラマが多々ある中、皆さんにはあまりなじみのない会計士モノにチャレンジしました。会計士と企業の関係は、医者と患者に似ていると言われます。具合が悪い企業から容態を聞き、様々な角度から検査をして問題点を探り出し治療をします。高度成長の頃はまだ、会計士は町医者のように企業と深くつきあっていました。ところが日本経済が成熟し、グローバル化が進むと関係は一変します。企業と会計士の癒着が問題になる一方、投資家の意向が強くなり、企業の意思に関わらず、会計士は容態が悪化すれば治療を施すことを迫られます。患者が病状について嘘をつくケースが出てきたり、瀕死の重傷患者に強制的に手術をし、死に至るケースも出てくるようになりました。こういう変革期の会計士たちの生き様を描くドラマです。八田進二先生、山田真哉先生、越山薫先生始め、多くの方々に取材して作り上げたオリジナル作品です。聞き慣れない専門用語も出てきますが、熱い人間ドラマに仕上がっています。冷めないうちに是非ご覧ください。
【主題歌「深海魚」について…山崎まさよしさんから】
ドラマの内容が自分とは縁遠いものだと感じていましたが、クールなイメージよりも、「人間の温かみや人情」によった作品にしたいと思い、3拍子を感じるようなリズムにしました。この曲がドラマに歩み寄ることができれば嬉しいです。
【「監査法人」とは…】
公認会計士のグループで、企業が作成した財務諸表の真偽を監査し、決算書を承認するか否かを判断する。監査法人が「不適正」と言えば、その企業は上場廃止に追い込まれ、倒産することもある。全ての上場企業は監査法人による監査を受けなければならず、現在は4つの大手監査法人が、日本の大企業の監査のほとんどを請け負っている。
【「監査法人」が注目される時代背景】
21世紀初頭。バブル後遺症に悩む日本経済は立て直しが急務であり、その役割の一端を監査法人が担うことになった。多少の粉飾は見逃すというこれまでの「ぬるま湯監査」では不良債権処理が進まず、海外投資家からは「日本企業は不透明だ」という批判もあり、「厳格監査」への転換を迫られた。その結果、大企業の倒産や金融機関の破綻が相次ぎ、粉飾を見逃した会計士が逮捕されるケースも起きている。
【脚本】矢島正雄 小林雄次
【音楽】村松崇継
【主題歌】山崎まさよし