「足尾から来た女」ドラマのみどころ

100年前の日本で
"国によって故郷を奪われた人々"がいた―

激動の時代の中、たくましく生き抜いた一人の女の物語

「足尾から来た女」

明治末。栃木県谷中村は足尾銅山の鉱毒で田畑を汚染された。田中正造の闘いもむなしく、村は16戸にまで激減。国は住人に村を捨てるように命じ、残った家の強制執行に踏み切った。

この谷中村の娘が田中正造の仲介で社会運動家・福田英子宅に家政婦として派遣された史実をもとに、一人の女性が見知らぬ東京の地で石川三四郎や幸徳秋水ら社会主義者たち、さらに石川啄木や与謝野晶子など多彩な人物と交わる中で成長する姿を描く。

故郷を失う苦しみを味わいつつ人間としての尊厳を守り、たくましく生き抜くヒロインを、NHKドラマでは連続テレビ小説「カーネーション」以来の単独主演となる尾野真千子が演じる。

ストーリー

谷中村に住む貧しい農家の娘・新田サチ(尾野真千子)は、兄の信吉(岡田義徳)の仲介で「東京に出て雑誌『世界婦人』を主宰する福田英子(鈴木保奈美)の家政婦をしてくれないか」と正造先生(柄本明)に頼まれる。時は明治39年、政府は足尾銅山の操業を守るため、渡良瀬川下流の谷中村を池にし、鉱毒をそこに沈殿させようとしていた。東京に向かうサチには、国の監視役・日下部錠太郎(松重豊)が同行し、正造と福田家に集まる知識人をスパイさせようと言葉巧みに命じる。

住み込み先の福田家には、美貌の女主人・福田英子と年下の恋人・石川三四郎(北村有起哉)を中心に、幸徳秋水、大杉栄など時代を代表する社会主義者たちが出入りしていた。明治40年2月。足尾銅山の賃上げ闘争を支援する社会主義者達の言論活動は警察の弾圧に繋がり、石川三四郎も投獄されてしまう。三四郎の逮捕に罪の意識を感じたサチは福田家を飛び出すが、戻り着いた故郷で目にしたのは国の強制執行で打ち壊される自分の家だった。しかも強制執行の中心にいたのは、兄の信吉だった・・。

「足尾から来た女」

作者のことば ...池端俊策

明治三十九年春、東京に住む福田英子が栃木の谷中村に住む田中正造に村在住の女性を家事手伝人として受け入れたいと申し込んだ。当時谷中村は足尾銅山の鉱毒被害で田畑は壊滅し、若い女性達は風評被害で嫁にも行けず村外へ働きに行くしかなかった。資料によれば数人の女性が英子の元に送り込まれている。

彼女達は多分下駄ばきに素足で東京へ向かったのだ。恐らく読み書きもできない人達が多かった筈だ。国の急激な近代化政策から落ちこぼれた女性達である。しかも雇い主は女性解放運動の先駆者福田英子。その家には明治期を走り抜けた高名な知識人や芸術家が出入りした筈である。その人達や東京の有り様を彼女達はどのように見たであろうか。それを描こうと思った。故郷を失った者の戸惑いと怒りは歴史を越えて共通のも のだと思うからである。

演出のことば ...田中正(NHKドラマ番組部)

札幌での撮影の折り、エキストラの方のなかに、集団移住で北海道サロマに渡った谷中村の子孫の方がいらっしゃったと聞き、切ない気持になりました。谷中村民三千人は、およそ100年前、廃村で全国に散り散りとなり、その大半は移住した不毛の土地で挫折し、都市へ流失したと聞いています。しかし、村民たちは、それぞれの場所で生き抜いたのです。このドラマは、100年前の谷中村と東京が舞台です。でも、遠い過去の話では終わらないでしょう。いま、故郷を失いかけている人が沢山いる事を、誰もが知っているからです。参加したキャスト、スタッフも、その事を忘れず、魂を込めて作りあげました。谷中村の女性に扮した主演の尾野真千子が、凄腕の俳優陣とがっぷり四つの熱演をしています。彼女の魂の言葉が、皆さんのこころを震わせることをお約束します。

制作のことば ...高橋練(NHKドラマ番組部)

足尾銅山鉱毒事件を題材にした「足尾から来た女」。ドラマでは、かつて谷中村のあった渡良瀬遊水地でもロケを行いました。今は緑豊かな公園として整備され、村の痕跡は標識がわずかに立つのみです。ロケ当日。快晴の日差しの下、一面にすすきが生い茂る湿原を前にして、我々はしばし言葉を失いました。その土地はどこまでも美しく広がり、自然の凄さと人間の営みの儚さを感じずにはいられず、しかもそれは私達日本人がかつて選んだ道でした。

ドラマでは尾野真千子さん演じる主人公サチが、田中正造、福田英子、石川啄木ら明治時代のエネルギー溢れる人物達と交わり、生き生きと成長していきます。魅力的なドラマの根源にある「忘れてはいけない事実がある」というメッセージを、大地に根差したサチの目線を通して皆様に感じていただければと思います。

土曜ドラマ『足尾から来た女』

【放送】2014年1月18日(土)・25日(土) 午後9時~10時13分[総合・各73分]

【出演】尾野真千子
鈴木保奈美、北村有起哉、渡辺大、岡田義徳、尾上寛之、玄覺悠子、金井勇太
/ 松重豊 原沙知絵 / 國村隼 / 藤村志保 柄本明 ほかの皆さん

【脚本】池端俊策(オリジナル作品)

【音楽】千住明

【演出】田中正(NHKドラマ番組部)

【制作統括】高橋練(NHKドラマ番組部)