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デジタル・スタジアム
BS2 毎週土曜日 24:30〜25:10(日曜0:30〜)
BShi 毎週日曜午後11時00分〜11時40分 再放送 金曜午後4時00分〜4時40分
2007年 03月 01日放送 (第281回)
テーマ:「アート・アニメーション」
キュレーター:MAYA MAXX  ゲスト:ふかわりょう
イントロ 作品レビュー ベストセレクション デジスタアップデート
セレクション作品
「ちょっと動きのある風刺画」
望月由紀
「ポンポコダンス」
村井美々
「永遠をしらない」
坂本亜也子
「東京リベンジ」
日高亜矢
Selection#1
ちょっと動きのある風刺画  A picture with a motion
望月由紀  Yuki MOCHIZUKI
 
■ モチーフは社会的なニュース

望月由紀(モチヅキ・ユキ)さんは、去年の秋にCGの専門学校を卒業し現在就職活動中。今回は作品に取り上げたニュースをまとめたレポートを持ってきてくれました。

望月「この作品は4つの街に構成していまして、現代エリア、スラムエリア、ベイエリア、姥捨てエリアを一つの街にしました。」

ずっと気になっていたことを一つの形にしたい、その思いからつくられた今回の作品。アニメーションだと伝える内容がより抽象的になるのに対して、このレポートは文字情報が内容をより具体的に浮き彫りにしています。カカオをもぎ取る仕事をしていながらチョコレートを食べたことがない子どもたち。その様子をテレビで知りつつ、100円以下のチョコレートを食べながら作品に取り組んでいた望月さんは、泣きながらスラムエリアを描いたそうです。そんな世の中への不満が込められているのでしょうか。

望月「不満というより、もうちょっとなにかなったらいいのにって。テレビで見っぱなしで悲しいままじゃないですか。テレビで伝えて、その先、なんかなったらいいのにな、と思って…」

望月さん、これからも社会派アニメーション期待してますよ!

::: comments :::::::

MAYA MAXX
__テーマが重いから、あの線のちょっとあやふやな感じとか抜けた感じで救われているところもある。線が上手じゃないことを生かしていますよね。計算してやっているというより、この人の生きているリズムとかセンス、持って生まれた感覚だけでやっていると思う。

今世界中で起こっている負の現実を表現してみようと思ったところに感心した。これはそもそもの成り立ちからして、ちょっと引かれるじゃない。それでもこれをやってみようと思った独特の感性とか視点。イヤなテーマなのにあまりイヤな感じがしないでしょ。それはこの人の、ちょっと物事を引いて、入り込まずに眺めているというスタンスが上手く行っているんだと思う。それが今の世の中のリアルなんじゃないかな。

ふかわりょう
__切り絵が無機質に動いているので、それがリアルな部分をスリリングに伝えていて、余計にこっちに迫ってくるような感じはありますね。でも風刺と言っても非常に直接的に表現されていたので、いい意味で回りくどくした方が個人的には好きですね。人の苦しんでいる表情じゃなくて、例えばその足下とか影を描写する方が。

逆にハッピーな音楽をかけていて欲しいんだよね。テーマパークの中に一歩踏み入れたら、こういう現代の難問がハッピーな音楽と共にお客さんのところに寄ってくると。テーマが重たいだけに、よりグッとくるかなあと。(MAYA MAXX:「イッツ・ア・スモール・ワールド」がいいよ(笑)。これを見ながら「世界は友達」って言われたいよね。そういうのはやっぱりテクニックだと思うし、より深いよ)

中谷日出
__現代社会の問題を描いて表現していて、ややもするとダークになりがちだけど、うまくバランスをとって、訴えかけたいことと表現がぴったり合っている。我々が映像情報でしか見ていない表面的なものがちょっと動いているだけだけど、社会にはこんなにいっぱい問題があって、それをぶち込んだらこんな感じになるよ、とあえて情報てんこもりにやっている果敢な姿勢を感じます。

設定が舞台美術のような装置になっているところも、客観的に我々が見られる演じられている世界だというのをほのかに伝えている気がするんです。

ジョージ・ウイリアムズ
__手描きの良さ。その線の中にある作者の魂を感じて好きだった。白と黒の世界なんだということが分からないくらい、いろんなグレーを使っていたし、普通は薄っぺらい感じがする切り絵がダイナミックに感じた。一歩引いた俯瞰した見せ方だからこそ、僕は説教されていない気持ちになったんですよ。
 




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Selection#2
ポンポコダンス  PONPOKODANCE
村井美々  Mimi MURAI
 
■ 脱力系2コマアニメーション

キュートなキャラクターが次々と登場するシンプルなアニメーション。ユーモラスな間合いが楽しい作品です。作者は村井美々(ムライ・ミミ)さん。現在27歳のデザイナーです。芸術大学在学中は版画を専攻していました。浮世絵をモチーフに、動物を擬人化した作品を多く制作。その傍らアニメーション作りにも励み、2003年のデジスタでも作品がノミネート。遊び心いっぱいの作品性が評価されています。

今回の作品は学生時代から続けている、子供たちにアニメーション作りの楽しさを伝えるワークショップがきっかけでした。村井さんは、子供でも楽しめるよう簡単な2コマアニメを採り上げています。「2コマアニメ」とは2つの絵を交互に繰り返すことで絵が動いて見えるもの。いわば動画の最小単位です。

村井「2コマだからこそ絵が動く楽しさや面白さが伝わると思ったので今回は2コマだけでアニメーションを作ろうと思いました」

そんな思いから生まれたこの作品。キャラクターはどれも2つの絵の組み合わせで動いています。2コマのシンプルな動きで表現された遊び心。それがこの作品の大きな魅力だったんですね。

>>『きのこまつり』


::: comments :::::::

MAYA MAXX
__ヘタウマという一つの絵の描き方で、要素をほとんど抜いちゃう、抜きの作品。よくあるスタイルだけど、ここまで抜いちゃうと普通は間尺の取り方と絵の味がなかなか出ないの。この人の場合は独特の持って生まれているものがいいんだと思う。ちょっと飽きてきたかなあと思うと、すぐにパシッとタヌキとかネコとか、それの入れ方が絶妙に上手いんですよ。

今ここにないものを無理してつくってやろう、じゃなくて、今ここにあるものだけでいいやー、みたいな、すごくリアルな感じがしたんです。皆が深読みするという、得するタイプだと思う。これはやっぱり天然のリアルさ。あまりにも内容も絵もシンプルで、何も起こっていないから深読みするんですよね。(中谷:行間読み取るところが多い)読み取らなきゃと思うんだよね(笑)。読み手が深ければ深いほど、深読みするので、今度そこを逆手にとってやってみるのもいいですよね。

ふかわりょう
__すごく好きな世界ですね。この力の抜けた感じ、ちょっと世の中を馬鹿にした感じが非常に好きです。

味というのは、伝えたいテーマによって、それが味として利いてくるかどうかが変わってくると思う。これは平和すぎて、もう3秒後に恐怖がやってくるな、間もなくやばいことが訪れるなという直前を予感させる。だから僕はタヌキがポンポコやっているウンパのリズムで、地球がウンパで爆発してほしいんです。タヌキが拳銃をウンパと撃ってほしい。作者がラブ&ピースをメッセージとして考えていないかもしれないけど、残酷なもの、全く逆のものをこの無機質な四拍子の中に入れるとグッと来るし、味としてすごく効果があるんじゃないかと思いました。ほんと好みなんですけど(笑)。

中谷日出
__すごく頭を使っている人だなと思う。ドットの引き方とかも含めて、見るからにデザイン力がある人だけど、白い空間でバランスをとったり、わざと利き手じゃない方で描くくらいの抜き方をしていて、かなり戦略的につくっているわけです。

絵というのは鑑賞者が自由に読み解いていくものだと思うので、みんなが深く読みとれば、いい作品だなあと思う。動物が擬人化されているだけで、相当深読みしちゃいますもんね。(MAYA MAXX:今回はちょっと鑑賞者のレベルが高すぎた、笑)

ジョージ・ウイリアムズ
__のんびりと、テーマがあまりなさそうな感じは、僕は普通飽きちゃうんですが、この作品は飽きなかった。理由は、例えると晴れた日曜日に昼寝をした後の気持ちよさ。のんびりマイペースで一日を過ごしたような感じがしたんです。
 




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Selection#3
永遠をしらない  existence of eternal
坂本亜也子  Ayako SAKAMOTO
 
■ 手描きの絵とコマ撮りの質感がミックス

いつも仲良しの犬と遊ぶ主人公の少年。あるとき不思議なお面を見つけます。そのお面は何でも好きなものに変身できる力を持っていました…。

作者の坂本亜也子(サカモト・アヤコ)さんは、この春に芸術大学を卒業します。これまでは、立体アニメーションにこだわり、クレイや布など、素材の質感を活かした映像づくりを心がけてきましたが、今回は初めて手描きの絵だけを使ったコマ撮りのアニメーションに挑戦しました。

坂本「自分の絵を描きたかったというのが一番にあって、スキャンしてセル画にすることもできたんですけど、物を動かしているという、アニメーションする実感が湧かなくて」

今回、坂本さんが時間をかけたのはコマ撮りに使うパーツ作りです。絵の素材となるのはプラスティックの薄い板。ここにアクリル絵の具で絵を描き、はさみで切り抜きます。こうして作った絵のパーツは全部でなんと1700個! 動きのあるキャラクターほど細かく分かれていて、犬1匹には15個のパーツを使用。絵のパーツを多く分けることで、キャラクターの動きがより細やかに表現できるのです。

坂本「犬だったら頭や目や足を分けることによって、コマ撮りの温かみのあるアニメーションになると思いました」

坂本さんのコマ撮りへのこだわりがこの作品の大きな魅力になっているんですね。

::: comments :::::::

MAYA MAXX
__妙な熱気を感じるわけ。下手で未熟だけど、この子にはこの子の世界があって、それを表現したいと思っている。今何がウケるとか、これを出したらMAYAMAXXが選ぶだろうなんて全然関係なくて、ただ描いて動かしているのがすごく楽しい、好きだ、という気持ちがすごく伝わってきた。ものをつくる最初の喜びみたいな意味でのリアルさ。

この作品は1回見ても分からない。内容が深すぎて分からない以前に、ストーリーの脈絡があまりにもプツプツ。長い作品をつくり上げる意思と根気があるのに、「そういえばみんなも見ていたんだ」(笑)という‘うかつさ’があるんです。だからまず客観的な意見をもう少し取り入れること。でも自分が生まれ持っている偏質、こだわりや癖をなくさない。そこだと思う。

ふかわりょう
__シュールで不思議な世界だなあと。僕自身100%理解できていないと思います。作風や絵の感じは非常にオリジナリティがあって温もりがあるから、まず誰もが分かりやすい、入り込める、シンプルなストーリーをあのタッチで表現したら、絵の良さもストレートに伝わってくる気がしました。いろんな人の意見を聞いて最大公約数を知るというか、ここまで表現すればここまで感じ取ってくれるんだというのを、いろいろな人に見せて知ったらいいんじゃないかなあ。

中谷日出
__確かに時々出てくる文字にしても深いものを感じますが、表現がちょっと荒いんで分かりづらい。まだ本人も自分の持っている味を理解していないので、味があるのにやりすぎちゃって、分からなくなっちゃうと。自分の気持ちの中でイケイケで、人をちょっと置いてきちゃっている感じ。その辺のギャップが面白いっちゃ面白い。

アニメーションをつくる人はオリジナルな自分だけの表現を探し求めていくんだけど、彼女はセル画にこだわりすぎている感じが若干ある。彼女の持っている味は、もうそこはかとなく出ているので、そんなにやらなくてもいい。その辺がうまくバランスがとれてくると、もっといい雰囲気が伝わると思う。

ジョージ・ウイリアムズ
__作品を視聴者の近いところまで持っていって「はいどうぞ」って優しく置いておく作者もいれば、見るのは自由なんだけど「私の世界に入り込んでよ」っていう見せ方もある。(中谷:でもこの人はそんな強引な人じゃないんだよ。意識していないの。だから画面から優しさはすごく伝わってくるんだけど、それが人に伝わらないだけ(笑)。この作品をつくれば、2回目は分かってくると思うけど)
 




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Selection#4
東京リベンジ  Revenge against Tokyo
日高亜矢  Aya HIDAKA
 
■ ど根性! 自伝アニメーション

続いては、映像や音声のファイルを配信するポッドキャスティングというシステムで公開されている作品。携帯端末などにダウンロードして、誰でも自由に楽しむことができます。

ギター片手でスタジオに登場した作者の日高亜矢(ヒダカ・アヤ)さんは、現在40歳で2児の母。18歳の時、イラストレーターを目指して上京。しかしその夢は破れ、後に結婚して宮崎へ。現在はデザイナーとして働く傍ら作品制作に打ち込んでいます。今回の作品はそんな日高さんの半生記を描いた自作自演の歌のアニメーション。リベンジの第一歩に、スタジオで熱唱しました。

日高「何に負けたかというと自分自身というか…。苦しい思いをしたとしても、それ以前に自分自身が“あぁダメだ”と思ってしまったのも強いですね。今またオリジナルをつくろうという段階で、当時のびびりがよみがえってしまって。“今度は負けねえ!”みたいなところです」

あれから20年…。今やネットワークの時代です。今後は「笑い」というキーワードを入れたオリジナルのアニメーションやコンテンツで、東京だけではなく世界に発信していきたいと意気込む日高さん。そんな自称・シンガーソングアニメーターのリベンジ、心から応援しますよ、がんばれ40歳!

>> ホップステップアヤウェブ (NHKサイトを離れます)


::: comments :::::::

MAYA MAXX
__この作品のリアルさは人生経験のリアルさですよ。年月かけて体験して、自分の中にリアルな本物なことを描いているわけ。これは若い人にはないよね。いいにしろ悪いにしろ、本当のことを描く時の人間の力強さ。正面切ってるねえ、っていう感じは好きでしたね。

もう結構落ち着いた年代じゃん。そこからもう一度やってみようというのは共感するものもあるし、自分自身のことをリアルに語るストックがある。18歳にはないですよ。そのストックを最大限に活かして本当の話を面白く伝えるとか、そういう可能性を感じます。

ふかわりょう
__すっごい分かるんですけど、まだ満たされていないんですよね、この作品に(一同笑)。お笑いで本当に死にそうになりながらがんばっている後輩がたくさんいるので、このリベンジに対する熱さが、僕には100%で伝わってこなかった。歌のノーテンキな感じがそうさせているのかもしれないけど。もうちょい踏み込んでほしかったな。この人ならではの具体的なリアル、悲惨さを出していったら良かったのかな。うまく最大公約数にまとめすぎていたのが、涙につながらなかったのかも。でもアニメーションと音楽を同時につくれるのは最大の武器だと思うので、自分の力を信じて突き進んでほしいと思います。

『ふざけんな東京』でいけると思うんですよ。いいかげんにしろと。こんな才能ある私をなんで受け入れないんだと。地方出身者の東京に対する愚痴をさんざんこぼして、でもそんな東京が好きなんだ、みたいな感じで持っていくとうまくいきそうな…。

中谷日出
__僕は18歳の頃に同じ経験をしたの。画家を目指したライバルだった友達が、東京に出て破れて帰ってきて(笑)。だからちょっと切ない気持ちがね…。特に僕らは同じ美術系のジャンルなので、余計にしみてきちゃうんですね。東京に来たらみんな絵が上手いっていうのはねえ…(笑)。思いましたもん。

この話はどうしても皆ストーリーに話がいってしまうけど、アニメーションの表現もメリハリが利いていて非常にいいと思う。だからもっと表現のバリエーションを広げていく形でやっていくとかなりよくなっていくんじゃないかな。今こそデザイナーを志したそのリベンジを(笑)

ジョージ・ウイリアムズ
__ふるさとに戻らなくても、自分はこぶしでがんばっているんだけど、相手にはされない。周りには才能ある人たち。どうやって、どの道を歩めばいいのか分からないという…。分かるところはありますね。
 




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