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BS2 毎週土曜日 24:30〜25:10(日曜0:30〜)
BShi 毎週日曜午後11時00分〜11時40分 再放送 金曜午後4時00分〜4時40分
2006年 10月 28日放送 (第271回)
テーマ:「インスタレーション」
キュレーター:鈴木康広  ゲスト:KIKI
イントロ 作品レビュー ベストセレクション デジスタアップデート
セレクション作品
「inter-glow」
鳴海拓志+檜山 敦
「眺めのざわめき」
小西俊也
「OLE Coordinate System」
藤木 淳
「記録の形」
莇 貴彦
Selection#1
inter-glow  インター・グロー
鳴海拓志+檜山 敦  Takuji NARUMI+Atsushi HIYAMA
 
■ 家族の会話をライトアップ

ミニチュアの白いテーブルと椅子が4脚。天井から吊された4つのスポットライトからの光がそれぞれの椅子に降り注いで、なんとも小綺麗なリビングです。この作品は、そのスポットライトでテーブル中央にある花瓶に光を当てると、家族の声が聞こえてくるもの。また光を二つ同時に当ててみると、会話が生まれます。

でもなぜ4つのライトを識別してそれぞれの人間が話せるのでしょう。不思議な現象ですよね。気になるこの作品の仕組みについて、Mr.中谷、よろしくお願いします!

★ナビゲーターズ・アイ★
Mr.中谷「ライト一つ一つが違う人の声を出すこの作品。秘密はこのLEDライトにあります。実はそれぞれの光が異なる速さで点滅しているんです。お父さんのライトは1秒間に250回も点滅しているんですよ。ものすごい速さですね。この光を感知するのが花瓶の中に隠されたフォトトランジスタと呼ばれる光センサー。このセンサーが4つの光を識別し、パソコン上にある音声データが再生される仕組みです。

作者の鳴海拓志(ナルミ・タクジ)さんと檜山敦(ヒヤマ・アツシ)さんのおふたりが、大学で研究しているのが可視光通信です。可視光通信とは、光の点滅によって情報をやりとりするという通信技術で、将来的には室内の照明に情報を乗せてインターネットに接続できたり、道に迷った時に街灯の下に携帯電話を持っていくと周辺の地図が表示されるなど、私達の生活に寄り添った活用が考えられているんですよ」

なるほど。この作品には通信の未来を予感させる技術が使われていたんですね。サンキュー、Mr.中谷。そしてこの可視光通信の研究がこの作品制作に結びついたきっかけを、スタジオにお越しいただいた鳴海さんと檜山さんに伺ってみました。

鳴海「可視光通信というのは、光の点滅する周波数を変えていろいろな情報をやりとりするんですね。周波数っていうのは波長なんですが、光の波長がそれぞれ違うというのと、一人一人声の波長が違うという2つが連想で結びついて…。しかも人と人との関係性って、波長が合うとか合わないとかいう話もありますね。そういうところから、こういう作品を作ってみたいなと思いつきました」

コミュニケーションのキーワードがいっぱいですね。これからも光を使ったコミュニケーションを追求してください!

::: comments :::::::

鈴木康広
__照明に、人の会話、気配をひそませるということで、照明自体が人に見立てられるんじゃないかなと。そこがすごく詩的な作品だなと思いました。皆で照明を当てることによって、空間そのものが会話を始めるといった、そういう見方も出来るんじゃないかなと思いました。

作者の語り口とか身近な人の語り口で家族を表現してるみたいな、そこは演劇を見ているような気分になったりして、すごくいいなと思いました。

KIKI
__家族の会話っていうのを聞いたのが久しぶりなような気がして、ちょっと温かい気持ちになりました。

会話はぎこちないなあって思ったんですけど、でも、最初一人ずつ当てていた時に、もうちょっと情報を少なくして、この人たちは何なんだろうって疑問を持たせて、それで会話に持っていくとか、もうちょっと発展していくと面白いかなって思ったりしました。(中谷:なるほど。変わった時に情報が増えるってことですね)

中谷日出
__「スポットを当てる」という言い方をするけど、まさにスポットを当てることによって、そこで何かが生まれるっていう、人間をテーマにした、わりといい感じのインタラクションが出来るような気がしますね。

ジョージ・ウイリアムズ
__テーブルというものは、僕の家では家庭の中心だったんです。テーブルの周りに皆座って、テレビは禁止で、会話しましょうよ、コミュニケーションとりましょうよ、っていう意味だったんですよ。だからちょっとメッセージ性を感じますね。
 



それぞれの光には
固有の波長が含まれている
花瓶に仕込んだセンサーで
光の波長を読み取る
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Selection#2
眺めのざわめき  patipati of view
小西俊也  Shunya KONISHI
 
■ 光と影で広がるイマジネーション

びっしりとLEDが取り付けられたスクリーン。映るのは、プロジェクターで投影したほとんど真っ白な映像。その中に青や黒など暗い場所もあります。その暗い部分にセンサーが反応してLEDが光るんです。LEDには、それぞれ光センサーと、スイッチがついてます。光センサーに暗い部分が当たると、スイッチが音を立ててLEDを点灯します。486個ものLEDとスイッチが、幻想的な音と映像の世界を作り出します。もちろん、人の影も暗いので影にもLEDは反応。体験者が動くだけで音と光が変化します。

作者は音楽活動に励む美大生、小西俊也(コニシ・シュンヤ)さん。都内の美術大学で映像表現を学ぶ25歳です。今回の作品のモチーフに選んだのは夜景。夜の世界を眺めるのが好きだという小西さん。暗闇に浮かび上がる人工的な光に魅了されました。

小西「そもそも光って、人間がいるからそこが光っているというか、電気がそこにあって、そこに人の営みとか何かしらの人間の動きがあって、それがいっぱい集まっていて、ある意味銀河みたいなものになっているっていうところがすごいなあと思ってて。夜の景色というか、光の景色が作品に反映されているんじゃないかと思ってます」

夜景のように暗闇と光のコントラストが印象的な今回の作品。実は作品に投影する映像を撮影したのも夜なんです。電車に乗って車窓にカメラを向けます。ここでカメラの設定を変更。いきなり画面が真っ白に! 小西さんは普通に風景を撮影せず、明暗を反転して撮影していたんです。この映像の暗い部分に反応して、LEDが光っているんですね。

また、作品の中でもう一つ出てきた映像。これも夜の風景なのですが、実は花火だったんです。闇と光から広がる小西さんのイマジネーションを映し出す窓。それが『眺めのざわめき』です。

::: comments :::::::

鈴木康広
__雲の動きとか、水面のきらめきとか、気がつけば見とれているような景色を見ているような気がしますね。

線路の継ぎ目を通過した時にガタンゴトンって鳴る電車の音のリズムと、車窓の窓が移動するリズムが一致しているのが不思議。普段は音だけで感じていたことが、実は目でも感じていたということに気づかせるという、意外な側面が見えた。

水と火はかけ離れたものですが、光となって僕たちの目に届く時には、全部同じになってる。そうやって反転させることで、影と光というコンセプトでありながら、現象的にしっかり落とし込まれているところがいい。

KIKI
__ちょっと幻想的ですね。人間界にいない生物みたいなのがパーッと駆け抜けているみたいな。泡がはじける音みたいにも聞こえますね。謎がいっぱいあるけど、実際自分がこの光の中に入った時の感覚に驚きました。入る人によっても見え方が違ってくる。

影が暗いところなのに、影が明るい。逆転の発想ですね。夜の街の光が反転して暗くなって、それが投影されて光る。逆がまた逆になって元通りになってるんですよね。影が光るって、素敵な表現ですね。

中谷日出
__僕はLEDを使ってインタラクションをする作品はけっこう見たことがあるけど、LEDに映像を映して影を作って表現するというのは新しいですよね。

音と光がバランスよく合ってるね。音がすごく気持ちいい。やっぱり音楽をやってる人だから、自然な映像というか、見えるものによって音が作られるという感覚があるんでしょうね。

このユニットがいっぱいあって、そこに車窓が連なってガーッて動いたら、すごく格好いいと思う。(鈴木:言われた、笑)

ジョージ・ウイリアムズ
__映像がすごくふわふわしてて、夢の中で見るようなものに感じましたね。立ちくらみになる時、わりとこういうものを見るんですよ。

ふわふわとしていた水なのか雨なのか分からなかった、あれが花火。なんかロマン感じますね。
 




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Selection#3
OLE Coordinate System  オーエルイー・コーディネイト・システム
藤木 淳  Jun FUJIKI
 
■ あり得ないけどあり得ちゃう、騙し絵ソフト

穴があるのに、穴がない。落ちるけど、落ちない…。本当に騙されているような気分になってしまう摩訶不思議なこの作品を作ったのは、藤木 淳(フジキ・ジュン)さん、28歳。福岡の大学でパソコンによるインタラクティブデザインを研究しています。今年既に、バーチャルな三次元空間で積み木やお絵かきもできるソフトウェア『インコンパチブル・ブロック』でベストセレクションに選ばれています。

この作品は積み木のようにブロックを組み合わせて図を作るソフト。描いた図形を360度回転できるため、様々な角度から見ることが出来ます。例えばL字型の図形を描き、一か所穴を開けます。そこに歩く人を置いてみると、素直に穴から落ちてしまいます。しかしこのL字型の図形を立体的に回転させ、穴の下にもう一辺のブロックがあるように見えるような角度に置くと…、穴から落ちた人はちゃんとそのもう一辺に着地できるのです。つまり、平面ではただのL字が、立体的に回転することで起こる人間の錯覚を利用した作品なのです。

実世界ではあり得ないけれど、人間の頭の中ではあり得る世界。そういうものを追求して、この騙し絵の世界に行き着いた藤木さん。13歳の頃からゲーム作りなどをしていたという、プログラミング歴の長い藤木さんでも、この作品には苦労しました。

藤木「これは騙し絵なので、言ってしまえば嘘なんですよね。でもそれはでたらめの嘘ではなくて、人間の知覚的印象を逆手にとる法則に基づいた嘘。それをプログラムで表現するのが難しかったです」

‘俺(=OLE)’の視点で見えるものが作り出す不思議な世界。藤木さん、これからもオレワールドを追求して下さいね!
>>『Incompatible BLOCK』

::: comments :::::::

鈴木康広
__すごい空間感覚。ルールが決まっているようで、現実では出来ないような状況が生まれるので、やればやるほど意外なことが起こって、どんどんハマッてしまいました。

インスタレーションというのは空間的な表現が前提になってますが、もっと頭の中にも空間があるのではないかとか、意識や認識の空間、隙間みたいなところに入り込んでいくようなことを想像していくという…すごくいい作品だなと思います。

KIKI
__納得したいんだけど、納得できないみたいな。自分で作って、繋がってないのが分かってるのに、回すことによって繋がってしまったり…。納得したいけど、どうしても理解できない。なんかもやもやしたところが残ってしまうのが面白いなって思う。

中谷日出
__要するにやる人の目線が全ての世界を作るわけ。(鈴木:見えなければ無いという、藤木さんの哲学の世界)作品のテーマもあるOLEって‘俺’でしょ? いわゆる究極の藤木さん目線で世界を作り上げるっていうことだと思うのね。そこがやっぱりアートですよね。

騙し絵と言えば、かの有名なオランダの画家エッシャーですよね。このエッシャーを現代に蘇らせて、さらにインタラクション出来て、もっと複雑に、空間的にも出来るから、いろんな世界を作れるという広がりがすごくある。(鈴木:全然違うのは、エッシャーの絵は静止してたけど、これは動いてるというところ。エッシャーが見たらびっくりするんじゃないかな)

ジョージ・ウイリアムズ
__日常生活では何が可能で何が不可能か分かるけど、この作品では…、分かんない(笑)。自分の頭の中の壁が全部倒れていくような感じがするんですよ。解放される。ここでは何でも出来るんだよって、ちょっと感じましたね。

この番組で、もしかしたらちょっと頑張れば、僕この作品作れるかもなっていうのはたまにありますけど、これは間違いなく100%保証付きで僕には無理! 作れません!
 




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Selection#4
記録の形  Shape of record
莇 貴彦  Takahiko AZAMI
 
■ 心に宿った町の記憶

黒いパネルが無数に並べられた細長い立体物。張り巡らされた針金の上で動いているのは、フラフラとして今にも落っこちそうな不思議な機械。パネルに沿ってゆっくりと進んでいます。機械が通ると、パネルには風景写真が浮かび上がります。まるで散歩でもしているかのように機械は回り続けます。写真近くのレールにはリードがつけられていて、機械がそこを通ろうとすると、機械についている磁石センサーが反応。写真後ろの電球がついて写真が見える仕組みです。

莇 貴彦(アザミ・タカヒコ)さんは、都内の美術大学で助手として働く25歳。莇さんは以前、巨大なクモのような形をしたインスタレーション『巣くう』がデジスタで紹介された実力の持ち主です。

今回の作品の舞台になったのは、島根県大田市大森町。戦国時代には日本有数であった石見(イワミ)銀山の中心地として大きく栄え、約1キロにわたって続く町並みには今でも武家屋敷や町屋が数多く残されている歴史ある町です。この大森町は、莇さんと縁の深い町。大伯父さんが以前この町で歯医者を営んでいました。そして三宅さんの孫であり、莇さんのはとこに当たる緒方しらべさんが主催するこの町でのアートイベントに誘われたのが作品制作のきっかけでした。

「この歳になって‘はとこ’と初めて会って、一緒に展示しようと話をしてくれて、凄くいい経験になりましたね。自分の血に入っている歴史というのが、とても大事だなと思えるようになってきました」

莇さんが行ったのは、自分と繋がりのあるこの町の姿を記録すること。カメラが大好きだという莇さんは、古い町並みをゆっくりと歩きながら撮影していきました。撮影した写真の場所を作品に反映させるために持ち歩いた町の地図に、自らの足取りを書き留めていきました。

「町の静けさだったり、瓦だったり、土壁の茶色とかがすごく好きで、僕なりの表現でこの町の今を残していけたらなと思って作品を作りました」

風景を切り取りることで莇さんの心に宿った町の記憶。それが『記録の形』。
>>『巣くう』

::: comments :::::::

鈴木康広
__この機械の構造が映写機を連想させるようなところがいいなあと。
このぎこちない動きを表現したかった作者の気持ちが、この町を歩いていた時のご本人の感情なんじゃないかな。そういう作者の気持ちみたいなものに、僕たちが自分の気持ちを投影するというところが、すごくいいなと思いました。

行き先が分からなくなるような分かれ道みたいな、見ていて「どっちに行ってしまうのかな」っていう要素が入ってくると、もっとこっちはドキドキするはず。

KIKI
__一瞬一瞬しか光が当たらなくて、もうちょっと見たいなと思うと消えてしまう。(鈴木:見逃してしまうことが多い。そこが何度もずーっと見ていられるツボなんじゃないかな)

実はこの村で生活してる人もいるんだなって、あらためて実感しました。

中谷日出
__作品を作る動機づけが羨ましいよね。全然見ず知らずの村だったんだけど、大伯父さんやはとこがいることによって、そこで自分のアートを結びつけることが出来ると。(鈴木:すごい羨ましいですよね)いいよね。血がつながってる感じでこの作品につながってるというところが、温かい感じ。だからこれも血液、血管。血がつながってる感じ。(キキ:ちょっと体内みたいな感じに見えますね)

ジョージ・ウイリアムズ
__この機械のスピードが作家の莇さんが歩いたスピードなんですよね。(中谷:このスローな感覚がいいですよねえ)(キキ:しかもゆらゆら揺れながら)
 




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