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BS2 毎週土曜日 24:30〜25:10(日曜0:30〜)
BShi 毎週日曜午後11時00分〜11時40分 再放送 金曜午後4時00分〜4時40分
2006年 09月 09日放送 (第267回)
テーマ:「インスタレーション」
キュレーター:八谷和彦  ゲスト:篠原ともえ
イントロ 作品レビュー ベストセレクション デジスタアップデート
セレクション作品
「彩・二式」
安本匡佑
「Ambient Pendulum」
勝又大輔
「worm hole」
村田 恒
「浮く冬」
小松宏誠
Selection#1
彩・二式  Sai-Nishiki
安本匡佑  Masasuke YASUMOTO
 
■ 飛び出すRGB!

体験者がスクリーンの前に立つと、その姿が粗い画像に変換され映し出されます。この作品は、体験者の色をリアルタイムで解析し、RGBの数値を3色のバーに変換するというもの。明るい色ほど、長いバーとして表示されます。さらに、音にも反応。音が小さければ小さい波紋、大きければ大きな波紋を描いて、より大きく飛び出します。RGBとは、レッド、グリーン、ブルーの頭文字を取ったもので、実は私たちの身の回りの色は、この3色の組み合わせで表現できるのです。パソコンで色を表示する場合、このRGBは256段階の明るさで表示され、それぞれの色の明るさを変えることで、およそ1600万色もの色を表すことが出来ます。

作者の安本匡佑(ヤスモト・マサスケ)さんは、芸術大学でメディアアートを学ぶ25歳。作品作りのテーマは、ズバリRGBを使ったビジュアル表現です。これまでにもRGBをテーマにした作品を数々手掛けてきました。その原点ともいえる作品が、画像の色を読み取り、RGBの値を数字のグラフィックで表示するというもの。値の大きい色ほど手前に大きく表示されます。こうしたRGBへの画像変換は、全て安本さんが自ら考案したプログラムによるもの。RGBへの並々ならぬこだわりを感じます。そのこだわりは小学生時代の体験から生まれたものでした。

安本「子供の頃にテレビの画面に近寄ってみると、赤・緑・青の小ちゃい点みたいなものがいっぱい並んでいることに気づいて。今回作品を作るにあたって、RGBの細かいシンプルな集合体が集まることによって高精細な物が出来ているんだという発見を感じてもらえるといいなって」

普段、何気なく接しているテクノロジー。その原理を知った時の驚きこそ、安本さんの発想の原点だったんです。飛び出すRGB。これからの展開も楽しみですね。

::: comments :::::::

● 八谷和彦
__プロジェクタを使った作品は最近多いけど、だいたいが皆すでにあるプログラムを使ってるんです。この作品はオリジナルのプログラムを作者が組んでいる。だからこういうRGBの分解とかのスピードも速いし、音が出て飛び出す感じもすごく気持ちいいところに調整されている。そこが評価したポイントですね。

例えば床にでこぼこをつけるとか、そこでもうちょっと体験者の行動を誘導するようなものがあると面白くなるかもしれないと思いますね。

● 篠原ともえ
__いやもうこれ感動で、仕掛けがいっぱいあって、いつまでも遊べるデジタルおもちゃって感じでした。子どもの頃の記憶がずっと残っていて、それを作品にしちゃったってすごいですよね。お見事。

● 中谷日出
__声の大きさって、どちらかというと感情的なものを表すから、感情がワーッと飛び散るみたいな感じで、その人の今の状況をうまく再現出来ている。

やってることがすごくシンプルなんですよね。とかく、こういうメディアアートってやりたいことを全部やってコテコテになってしまいがちなんだけど、それを我慢して、ここに抑えているところがポイントなのかな。普通はRGBを合わせれば1600万色とか、あらゆる色が出せるという方向に行くんだけど、この人RGBに戻った。そこが面白いんですよ。(篠原:RGB博士です)

● ジョージ・ウイリアムズ
__遊園地に変わってる鏡を置いている部屋ってありますよね。そこに普段とは違う自分がいる。それにちょっと似た感じかな。それは僕ではない。でも僕だ。まさか自分がこういう形で変化するとは想像もしたこともないから、僕としては新しい感覚なんですよね。
 




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Selection#2
Ambient Pendulum  アンビエント・ペンデュラム
勝又大輔  Daisuke KATSUMATA
 
■ 音と映像を振りまく魔法の振り子

大きな箱に階段がついています。登ってみると目の前には球体が…。これは、ヘッドフォンをつけてこの振り子を動かすことによって、幻想的な映像と音を変化させることができる作品。振り子の先端には赤外線を発するLEDが取りつけられていて、その動きを台の下に設置された特殊なカメラで認識。パソコンで位置データを計測します。そして振り子の動きに合わせて自動生成したCG像を、プロジェクタで投影。さらに、音が聞こえる位置も、振り子の軌道に合わせてリアルタイムで変化させているのです。

作者は勝又大輔(カツマタ・ダイスケ)さん。京都の大学でメディアアートを学ぶ25歳です。VJとしても活動しているだけあって、作品制作の発想はクラブのイメージから生まれているんだとか。以前作られた作品は、DJがターンテーブルを回すように手元の丸い球体を回すことで、映像を操るというもの。そして今回チャレンジしたのは、映像のみならず音そのものを動かすということでした。

勝又「音が鳴る方向、それをコントロールしたら、全然ちがう空間のイメージを感じられるんじゃないかなと思って」

ところでこちらの作品、どうして振り子にあわせて音が回って聞こえるんでしょうか。ミスター中谷に聞いてみましょう!

★ナビゲーターズ・アイ★
ミスター中谷「勝又さんは音の動きをバーチャルに再現するために、角度や距離による音の変化を測定したんです。まずはスピーカーから一定の間隔をはかってテープを貼り、スピーカーから測定の基準となる音を出します。その波形が基準となります。一見ヘッドフォンのようなものが実はマイクで、実際に耳元で聞こえる音を録音します。スピーカーの正面に向き合って音を聞いてみると、左右の耳で同じような波形が計測されるし、スピーカーに対して横を向くと、頭部や耳たぶの影響から波形が変化します。その微妙な音の変化を聞いて、私たちは音の方向を認識しているんですね。勝又さんは、床に貼った印に合わせて距離と角度を変えながら、それぞれのポイントで計測。地道な作業です。その測定データを元にプログラムを制作。振り子の下に取り付けられた赤外線LEDの動きに合わせて、音の動きをバーチャルに生み出しました」

なるほど。動く音には、そんな仕掛けが隠されていたんですね。サンキュー、ミスター中谷!

::: comments :::::::

● 八谷和彦
__美術作品だと目で見る作品が多いけど、これはどちらかというと音がメインの作品ですね。振り子になってるから、自然と周期的な音になってるんで、音楽として成立するような形で作られているというふうに思いました。(篠原:自分も振られちゃいますもん。ふわーっと)

上に大きな鏡が一枚あると振り子の動きが対称に見えると思うんですよね。だから待ってる人も楽しめる作品になるんじゃないかなあと思いました。(篠原:そしたら皆で楽しめますね。独り占めじゃなくて)

● 篠原ともえ
__上って見てる時は自然にその世界に入れるんだけど、ヘッドフォンをとって階段を下りる瞬間に現実に戻されるんですよね。その分、現実に戻った時に、夢を見てたんだっていう感覚を後から知る感覚があった。

地道な作業がないと、やっぱこういう素晴らしいのは出来ないんだなと思って感動しました。そりゃ誘導されちゃいますよね。もう努力の賜物ですよ。

● 中谷日出
__高いところに乗る意味がすごくよく分かるよ。日常から離脱した感じがするね。わずか数十センチなんだけど、これだけ世界が変わるんだよね。(ジョージ:自分の空間を与えてくれてるんですよね)

一番の気持ちよさはシンクロだと思う。絵と玉がシンクロして、その玉と音がシンクロすることの気持ちよさを、体験することによって感じる。あ、気持ちいいなって、正直思いますよね。

● ジョージ・ウイリアムズ
__振り子って非現実なファンタジーの世界があるけど、自分の手でその振り子を触るということで、その世界に入れる。振り子が現実からファンタジーの世界へのはしごになっているような感じがしました。
 



音源からの距離を変えて
音の変化を測定する
一見ヘッドフォンだが
実はマイク
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Selection#3
worm hole  ワーム・ホール
村田 恒  Hisashi MURATA
 
■ 不条理&ナンセンスなコンセント

コンセントにプラグを射し込むと、関係のないところでチャイムが鳴るという何ともナンセンスなこの作品。作者の村田恒(ムラタ・ヒサシ)さんは、東京の美術大学で助手を務める30歳です。実は以前にもデジスタに入賞したことがある村田さん。体験者がコンセントのついた壁の前に本体を設置し、プラグをコンセントに差し込み、リモコンのスイッチを押すと、まっすぐに動き出す本体。そして引っ張られたコンセントが抜けて本体も停止。そんな何ともナンセンスな作品でスタジオを困惑(沈黙?)させたものでした。今日はそんな村田さんが、皆さんの疑問に答えるために、作品をイラストで解説してくれました!

今やなくてはならない存在であるコンセント。でも日本語で「コンセント」は、正しくは「配線用差込接続器」なのだそう。それに倣ってこの作品も正しくは「薄型両面配線用差込接続器」なのです。

村田「プラグを差し込んだことと、遠くでチャイムが鳴ること、この2つの行動と現象が、頭の中で結びつく。そんな時に予測していなかった行動によって頭の中にぽっかりと開いてしまう。その穴を埋めようとした瞬間に、テクノロジーの普段気づくことのなかった不思議さというか、そういったマジックのようなものに気づくことが出来ると。これがこの作品のコンセプトなんです。」

以前の作品も、どれもコンセントを使ったナンセンスなものでした。さて次回作のアイデアは、なんと巨大リモコン。脚立を使ってよじ上り、ボタンを押すのですが、単4電池で動くところがミソなのだそう。

村田「今のインタラクティブ・アートとかテクノロジーを使ったアートなんかを見ると、逆のことがやりたくなるというか、そういうところもあって。テクノロジーを使ってテクノロジーについて考えさせたい、考えたいっていうところが一番あると思いますね」

次回作も期待してます!

::: comments :::::::

● 八谷和彦
__まあ一言で言うと、コンセントを差すとチャイムが鳴るという作品。それ以上説明のしようがないですよね(笑)。僕らは全てのものに意味を求めるじゃないですか。これはこういう理由でここにあるとか、こういう機能があるとか。でも全くナンセンスなものも魅力的だったりする。村田さんはそういうものを追求している姿勢が見えて、特に巨大リモコンのアイデアなんかは僕好きなんですよね。村田さんを応援したくてお呼びしました。

僕の持論なんですけど、作品っていうのはその人の心が形になったものなんですよね。この作品はまさに村田さんの心が形になったようなものだと思いますね。

● 篠原ともえ
__人は便利なものとして買わないじゃないですか。だから楽しむもの、自己満足に近いですよね(笑)。でもありそうでないものだから、この世に一つだね。

さすが。天然っぽく見えて、頭脳派ですね。(八谷:計算高いんです)すっかり騙されました(笑)。

● 中谷日出
__前の作品もしっかりデザインされていたコンセプチャルな作品なので、村田さんの作品は現代美術のジャンルなんですよね。もう一回やろうとは思わないけど、必ず人にやらせたくなる。そういうリピーターのつながりが出てくるような、なんともいえない、いい作品なんですよね。

リテラシーって言葉があるけど、村田さんの作品を体験することによって、ものを疑う心を知る。(八谷:常識を疑うと)それが大事なんですよね。

● ジョージ・ウイリアムズ
__作品も不思議ですけど、ほんと村田さんも不思議な人ですねえ。やっぱり人柄は作品を通して出て来るものなんだって、あらためて実感が湧きました。
 




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Selection#4
浮く冬  uku-fuyu
小松宏誠  Kosei KOMATSU
 
■ 神秘の羽

小松宏誠(コマツ・コウセイ)さんは、今年の春、芸術大学の大学院を卒業した25歳。これまで一貫して、羽を素材にした作品を作り続けて来ました。羽にこだわりがあるようですね。

小松「空間で表現したいってずっと思っているんですけど、浮くことによって縦方向への広がり、空間となって広がるというんでしょうかね、そういった所にもすごい魅力がありますね」

25個のアクリルの筒に1枚ずつ浮き上がる羽の美しさ…。思わず見入ってしまいますよね。それにしてもこの羽、見事に制御されていますが、どんな秘密が隠されているんでしょうか。ミスター中谷に聞いてみましょう。

★ナビゲーターズ・アイ★
ミスター中谷「実はこの羽、選びに選び抜かれた貴重な羽なんです。小松さんは様々な鳥の羽の落ち方を比べ、ガチョウのムネの羽を選びました。それでも一つ一つ大きさや形が異なるので、落ち方も様々。ところが実験を繰り返すうちに、偶然にある羽と出会いました。それが今回使用された垂直に落ちる羽。バランスが決めてというこの羽は、何と羽の山の中からたった2,3本しか見つからないんだそうなんです。まさに選ばれし羽だったんですね。そしてもう一つの秘密が送風装置に取り付けられたフィルターです。網目状になっているのがポイント。何もつけない状態で羽を置いてみると、風が回っているのではじかれてしまいますが、網目状の素材を乗せてみると、回っていた風が網目によって真っ直ぐに整えられ、羽が垂直に浮かび上がるんです」

まるで手品のよう…。小松さんの情熱がこの羽を選び出したんですね。そんな苦労と創意工夫によって神秘的な美の世界が生まれていたんです。サンキュー、ミスター中谷!

::: comments :::::::

● 八谷和彦
__動き方が重力のない世界の生き物っぽい。(篠原:深海魚のクリオネみたいな)波みたいな。ちょっと踊ってるみたいに見えますよね。みんなで。僕らは普段ずっと重力に縛られてるから、鳥を見ていいなあと思ったりとかしますしね。

もうとにかく美しい。その美しさを僕らが感じるために、実はすごく丁寧に作られている。時間をかけたんだろうな。

昔作った作品が次の作品の役に立つのは、案外多いんですよ。やっぱり経験が増えていくから。たぶん彼も過去に作った羽の作品とかがヒントになってこれに結びついてるんだと思います。でもあんな大量な中から1個か2個だけなのはすごいな(笑)。多分偶然見つかったんだと思うけど、その時はたぶん相当嬉しかったと思いますよ。アルキメデスみたいな気持ちになったんじゃないかな。

下からの風と羽の重さが釣り合うところをちょうど見つけてそこで止めてるんだと思うけど、でもピタッて止めてますよね。これたぶんすごい技術がいると思いますよ(笑)。一個ずつすごく細かい調整をしてるんだと思います。

● 篠原ともえ
__浮くものってすごく魅力的ですね。すっごいきれいですよね。なんか優しい気持ちになりますね。

● 中谷日出
__「美しいものを作りたい!」という造形物って、わりと日本のお家芸のような気が僕はする。コンセプトにこだわってしまうんじゃなくて、「美しいものを作りたい!」っていう純粋な造形感覚というかな。その辺がちょっとハッとするね。基本に戻される感じがするんですよね。(八谷:でも日本人にしか分からないものではないですね。人間が根本的に感じる気持ちよさとか、ふわっとした気持ちになれる、そういう作品だと思います)

● ジョージ・ウイリアムズ
__羽を上に飛ばしてるだけで、こんな神秘的な気持ちになるんですね。

網で風の調節がきくなんて、どこで研究したり勉強するのって、疑問ももっと増えちゃう。(中谷:それを発見するのがアーティストなの)
 



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