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デジタル・スタジアム
BS2 毎週土曜日 24:30〜25:10(日曜0:30〜)
BShi 毎週日曜午後11時00分〜11時40分 再放送 金曜午後4時00分〜4時40分
2006年 02月 11日放送 (第246回)
テーマ:「インスタレーション」
キュレーター:八谷和彦  ゲスト:大沢あかね
イントロ 作品レビュー ベストセレクション ナビゲーターズ・アイ
セレクション作品
「restriction sight」
大西康明
「INVISIBLE〜影を追う者〜」
Team Shadow
「幸せはそこにある」
浅野耕平
「Imagery box」
山田修明
Selection#1
restriction sight  リストリクション・サイト
大西康明  Yasuaki ONISHI
 
デジスタ史上最大!? 暗闇に浮かぶ無数の光の点が見せるもの。
真っ暗な部屋に足を踏み入れると、そこに見えるのはゆらめく無数の光の粒。まるで空気の動きが見えるかのごとく、とても大きな不定形の物体が、光の粒を放射しながらゆらいでいます。

この作品、灯りをつけると実はふくらんだ巨大なビニール袋だったことが判明しました。作者大西康明(オオニシ・ヤスアキ)さんは、大阪の美術高校の先生。作品の原点になったのが、一見、CGの階段のようにも見えながら、実は普通のカメラで撮影した写真。秘密兵器はレーザー・ポインターでした。大西さん宅の階段にカメラをセットし、電気を消してカメラのシャッターを開きっぱなしにしたまま、レーザー・ポインターを振ること約20分。こうしてできたのがこの写真です。暗闇の中でものの形だけを浮かび上がらせること。それが大西さんがこれまで一貫してこだわってきたテーマなのです。

『restriction sight』で、レーザー・ポインターの代わりに闇にうごめくビニール袋の形を浮かび上がらせていたのは、市販のコピー用紙に黄色く蛍光塗料を塗って丸く切り抜いたもの6,000個! これをひたすら巨大なビニール袋に貼付けていったのです。部屋の電気を消してブラックライトを当てれば、反応する蛍光塗料の光の点々だけが浮かび上がります。

大西「普段見えてるものが見えなくなる、というか視覚が制限されることで、より鑑賞者の想像力を刺激するようなものを作りたかったんですかね」

光を使って目に見える情報を制限することで、想像力を育むアーティスト、それが大西康明
さんなんです。

::: point of view :::::::

【インパクト】八谷和彦
__未開の島にいる巨大海牛ですね。真っ暗闇の中で見た時に「わ、すごい。でかい」って思ったんですけど、それだけの強いインパクトを、実は非常に安い材料、ビニールとかコピー用紙とかで作っているっていうのもまたすごいなあと。デジスタの作品だと、みんなすぐコンピュータとか使うことになるけど、大西さんは自分の手元にある素材だけで、あれだけのインパクトのあるものを作れているということが、とっても素晴らしいと思いました。

奥の方にあるファンで大きくなったり小さくなったりしてる。空気の動きはコンピュータで制御してるわけじゃないから、ちょっとしたことで変わった動き方したりするんですね。そこがいいなあと。予測のつかない部分がこの作品にはある、という。

【インパクト】大沢あかね
__あの真っ暗闇で、あの巨大な物体。「これは何だ!」っていう、いろんな想像をかき立てられる。まず最初に見たインパクトがすごかったんですよ。圧倒されそうな。

(灯りのついた状態で)こうやって見るとただのビニールだって感じがするんですけど、暗闇で見ると、ほんと不思議な空間に迷い込んだって感じで、深海魚に見えます。柔らかい動きが海の中みたいに見えるんですよ。

【ビジュアル】中谷日出
__彼は基本的な、最小限のビジュアルを暗闇の中に提示してるだけなんだけど、そこから生まれて来るいろんな雰囲気、形の変化にみんなが反応して、いろんな状況を思い浮かべて、妄想をかき立てられるわけです。不思議な感じがあったり、怖さ、優しさ、温かさ、冷たさ…。まさにビジュアルを自由に細工することによって人にイメージを与えるということ。すばらしい。

芸術において大きいことってすごく大事なこと。でもそこには必然性がなきゃいけないんだけど、これはビニールの質感とこの感じからいうと、このぐらい大きくないと幻想的な雰囲気出ないと思う。その「らしさ」を引き出した見せ方をしてるので、すごくいいね。
 




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Selection#2
INVISIBLE〜影を追う者〜  インビジブル
Team Shadow  チーム・シャドー
 
いたずらゴブリンを掃除機で吸っちゃおうゲーム。
作者は、奈良先端科学技術大学院大学でバーチャル・リアリティーの研究をしている研究室のメンバー、総勢11名によるTeam Shadow(チーム・シャドー)。デザイン班、デバイス班、ソフトウェア班に分かれて制作に取り組みました。

薄暗い空間を走り回るゴブリン(小鬼)の影。それをサーチライトで照らして見つけ出し、掃除機で吸い取っていく、この二人三脚ゲーム。掃除機は本体をリュックサックのように背負う形のもので、一匹吸い取るにつれて、ホース部分が振動して、本体もどんどん重くなっていく。あたかも本当にゴブリンを吸い取っているかのごとく、リアルな感触。その仕組みは、実はけっこう単純でした。床に置いてあるタンクに入っている水を、ゴブリンを吸い取る度に一定量吸い上げているのです。そしてちゃぽちゃぽした水の感触を感じさせないために、水を吸い上げている時はリュックに振動を加えることで、参加者はその振動の方に気をとられて水だと気づかないわけです。なるほど、だまされますね。

片やシンプルに見えるサーチライトの工夫はけっこうな代物。その仕組みは「ナビゲーターズ・アイ」へ。

::: point of view :::::::

__CGを現実と合成する技術を「ミックスド・リアリティー」と言って、研究され始めてるんですが、まだリアリティーが欠けてたりするんですよね。そこを彼らは実は非常にうまくまとめている。CGで見るとアラが見えちゃったりするけど、影を出すことによって、人間の想像力の中で小鬼が可愛いものや恐ろしいものに見えるように、実際にそこに鬼がいる感じをうまく出している。そこに彼らのアイデアとセンスを感じました。

けっこう高度な技術をいっぱい使いつつも、バーチャル・リアリティー技術を、子供でも楽しめるようなかたちできちんと作っているのが非常にポイント高い。実際自分がやると、どんどん重くなっていくのが楽しいんですよ。「とった!」っていう感じがして。そういうところがすごくいいですね。

【ツボ】 大沢あかね
__子供から大人まで楽しめる楽しいゲーム。大人の子供心をくすぐったり、子供心をちゃんと引き出してくれるところがツボに入りました。体験してハマりまくりました。家に欲しい。チーム・シャドーの11名も、私の中ではかなりのツボです(笑)。

私はずっと‘ゴースト・バスターズ’の一員になりたいと思っていたので、今日なったと言っても過言じゃないですね(笑)。本当に吸い取った感じがリアルに身体に伝わってくるんで、ほんとに面白い。振動が手元からきて背中にドドンって入って。

【将来性】中谷日出
__バーチャル・リアリティーを展開した体感ゲームですが、ゲームの楽しめるポイントを全部押さえているから、みんな夢中になるんだよね。音もリアルだし、カウントダウンされるから焦るじゃない。ものは見えなくて、影を探す。その影をすくうっていうポイントで、非常に僕はアートを感じますね。

これからは研究者もアート的な視点やセンスのある表現が出来る。安いコストでも、知恵と工夫であそこまで持っていけるというのは研究者にとってすごく大事なこと。あれだけのことを出来る彼らは、相当研究者として将来性あると思うし、アーティストにもなれるんじゃないかという(笑)、いろんな道が開かれてる感じがするので、ぜひ、その力を存分に生かして欲しいなと思います。
 




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Selection#3
幸せはそこにある  There you find a happiness
浅野耕平  Kohei ASANO
 
猫好きにはたまらない猫インタラクション。
モニタに映っている猫。手を振ってみると、その猫がいろんな反応を示します。秘密は画面の上についている小さなカメラ。これが手の動きを検出する役割を果たしているのです。ちょっと近づいてきたり、逃げていっちゃったり、猫だからサービス精神はないけれど、猫なりの微妙なコミュニケーションを味わうことができます。

作者、浅野耕平(アサノ・コウヘイ)さんは大学でメディアアートを教える助手。作品を作るにあたって、道ばたの野良猫をモチーフにしようと思い立ちました。まずやったのは、自宅の周りを自転車で走り回ること。地図を片手に、野良猫が出没しそうなポイントをチェックして回ります。猫が現れると、そっと自転車を降りた浅野さんは早速カメラをセット。大きなカメラは猫を刺激してしまうため、撮影に使うのは動画機能のついた小さなデジカメ。なんだか不審な眼差しの猫の見つめる先には、ねこじゃらしを手にした浅野さんが「ニャ、ニャ、ニャ、ニャー」…。やっぱり逃げちゃいました。こうして一ヶ月。ひたすらとりためた猫の素材をパソコンに取り込み、その中からいい感じの猫のリアクションを厳選しました。

浅野「猫を通して、作品を体験してくれる人が、通じたり通じなかったりする中で時々通じ合ったっていう喜びを感じてもらえることで、日常の中の些細な幸せに目を向けるきっかけになってくれたらいいなと思って制作しました」

猫と人間の微妙なコミュニケーションを通して幸せの意味を問い直す。それが作品「幸せはそこにある」なんです。

::: point of view :::::::

【いやし】八谷和彦
__人を笑わせるのが大変なように、人を癒すのも難しいんですよ。その素材をまず作るのが大事だし大変。浅野さんもたくさんの時間と、その中から厳選されたカットで、僕らが猫ちゃんに普段感じているような気持ちを引っ張り出すような装置を作ってるけど、そこまでしておきながら、全然そういうふうに見えないよう、そこに気を行かせないようなやり方をとって、うまく癒してくれる作品だと思いましたね。

インタラクティブな作品って、ボタンを押したらこうなるっていうのが、多くなりがちだけど、普段僕らが生活してて、そういうデジタルな関係ってあんまりない。例えば柳原さんに挨拶しても、今日は機嫌が悪い感じで返ってきたりとか(笑)。それが世の中の面白い点だと思うんです。この作品はそれに極めて近いことをやってるなあと。必ずしも猫がいい反応を返してくれるわけじゃないけど、そこの中にある「あ、ちょっと通じたかも」っていうかすかな気持ちが楽しいなあ。

【オリジナリティ】大沢あかね
__人って、幸せを感じるものって様々だと思うんですよ。ただこの作者の浅野さんは、猫というので幸せはそこにあるって言ってる。浅野さんのオリジナリティーがこの作品ですごい表れてるなと思いました。あとプラス「いやし」。裏ではああいう苦労があったとは、全然感じさせない温かみのある作品ですね。ほんとに道ばたで日常やってることが、画面を通して出来るのが面白い。

私ほんとは猫アレルギーなんですよ(笑)。触ると痒くなるんだけど、これだったら、触ってる気持ちになれて、アレルギーも出ない。これはいい(笑)。

【ツボ】中谷日出
__僕はこの作品、あらゆるもの全部ツボ。猫はもちろん、古い粗大ゴミのテレビも僕のツボなんです。それから、温かい日はいいけど、おうちがない猫ちゃんは、冬、この寒空の中で夜は辛いわけさ。そういうことを想像するだけでツボがキュッとなるのね。それと、インタラクティブな作品なんだけど、ただ手をかざせば猫ちゃんとインタラクション出来るっていう、すごく簡単なインターフェースじゃないですか。その辺も全てひっくるめて、もうツボ。いいですねえ。ここに幸せがあるって感じしますよ。(柳原:後半はただの猫好きみたいになってましたけど、笑)
 




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Selection#4
Imagery box  イマジェリー・ボックス
山田修明  Sukeaki YAMADA
 
優しい映像と音が360°あなたを包みこみ、記憶を呼び覚まします。
マルチ映像とは映像の迫力と臨場感を追求して、複数の大型スクリーンに様々な映像を投影するシステムのこと。とても学生のレベルで手を出せるようなものではないこの複雑なシステムに挑んだのが、作者の山田修明(ヤマダ・スケアキ)さん。

山田さんは、一台のプロジェクターで複数のスクリーンに映像を映し出すことが出来ないかと考え、プロジェクターで投影した映像を多面体の鏡で反射させれば、複数のスクリーンに映像を投影できると思いつきました。しかし実際に映像を小さく分割して投影すると、どうしても一面辺りの映像が粗くなってしまう…。そこで彼はスクリーンの材質を工夫。様々な素材の中から、5cmの厚みのある特殊な綿(わた)を選びました。この綿に映像を投影すると、表面の細かい繊維が適度に映像をぼやかし、奥行き感のあるノスタルジックな映像になるのです。更に、この雰囲気を生かすために、投影する映像は子供の頃の思い出など、誰にでも共通する心の原風景を選び、なおかつ、いくつかのスクリーンにはスピーカーが入っていて、360°音に包まれるような体験が出来るようにしたのです。

山田「見ている人の記憶に訴えかけるような映像にすることによって、見てる人自身が、忘れているような思い出とかを思い出して、懐かしい気持ちになってもらえばなあと思っています」

ぐるりと取り囲むスクリーンをひとつひとつ振り返りながら、思い出も振り返ることが出来る作品です。

::: point of view :::::::

【デザイン】八谷和彦
__広い意味での「デザイン」。最終的に作りたいもののために全てを完璧にコントロールしてあるところが気に入ってます。鏡も非常に正確に切ってあるし、真ん中に実はちゃんと作品タイトルが入ってたり(笑)、真っ黒い床の部分も、実は作家の人が持ち込んだもの。あのスクリーン以外に目が行かないように、スピーカーのケーブルとかを多分人に見せたくなかったんだと思うんです。ノスタルジックな雰囲気を100%満喫してもらうために、細心の注意を払って、おもてなしするような心でモノが作られてる。素晴らしいことだと思いました。音楽も音の設計も良かったと思います。このシステムを使ってまた別の映像もぜひ見てみたいなと思います。

リアルって何だろうってあらためて思いましたね。高解像度のモニタにいいカメラで撮ったものも確かにリアルだけど、僕らの心の中にある思い出は、もっとずっと曖昧な状態で保存されてる。でも、すごくリアリティーを感じる。この作品はそこにフォーカスして、すごくいいものを作ってるなと感じました。

【技術力】大沢あかね
__プロジェクターを箱の中に入れた演出がすごいのと、粗い映像を綿によって優しい暖かみがある映像にするという技術力。あとちょっといやしも加わるって感じですね。素敵でした。

360°女の子が遊び回ったり、音がするので振り返ってみたら花火が上がってたり、見たり聴いたりすることがいろんなところで起こってて、不思議な感じがする作品。違う空間に入り込んだって感じがします。ピンスポが当たってて箱を開ける瞬間もいいですね。

【ビジュアル】中谷日出
__作者は懐かしくも新しい映像ビジュアルの表現をするシステムを開発してるわけです。今どんどん高精細になっていく世の中に、こういう価値観を持った人がいることは、映像文化にとってすごくいいこと。ものの手作り感も良かったね。あのスクリーンのペンキ塗ってる感じに大工仕事を感じたもん。

作家の優しさ、いろんなイメージを込めた彼らしさがここに全部出てるような気がして。思い出の中に飛び込んじゃったみたい。ケンケンしてる子が自分の幼い時の友達みたいな感じもするね。よく見えなくて…「○○かな?」みたいな。その見えなさ加減が計算なんでしょうね。
 




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