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BS2 毎週土曜日 24:30〜25:10(日曜0:30〜)
BShi 毎週日曜午後11時00分〜11時40分 再放送 金曜午後4時00分〜4時40分
2005年 05月 21日放送 (第224回)
テーマ:「“技術”」
キュレーター:竹中直純  ゲスト:千秋
イントロ 作品レビュー ベストセレクション ナビゲーターズ・アイ
セレクション作品
「独りロックンロールマシーン」
梶原祥平+渡辺圭介
「Gate vision」
小林和彦
「Instant Processing」
牧野雅人
「さねかずら」
青木啓剛+鎌田武俊
Selection#1
独りロックンロールマシーン  Automatic-Rock'n' Roll Machine
梶原祥平+渡辺圭介  Shohei KAJIWARA+Keisuke WATANABE
 
誰でもロッカーになれるというこの作品。作者の梶原祥平さんが自ら、スタジオにて作品のデモンストレーションを披露!

トップギタリストのような速弾きでノリノリの梶原祥平(カジワラ・ショウヘイ)さん。実はデタラメにギターを弾いているだけ…。その秘密はギターと繋がったパソコン。演奏した音をリアルタイムで解析し、特定のコード進行から外れた音を出すと、ソフトが自動的に修正してくれるのだ。他にも、勝手にベースとドラムの伴奏をつけてくれたり、観客が呼びかけに答えてくれたり、全部で4種類の<サウンドショック>で、楽器のできないあなたも独りロッカーに!

さらに、パフォーマンスを盛り上げる5種類の映像効果、<ビジュアルショック>も用意されている。ギターの先端に取り付けられた豆電球の動きをビデオカメラで撮影して、パソコンで解析。ギターの動きに合わせて、後ろの壁に投影された炎などが様々に変化する。伝説のライブにつきものの雨を降ら_ケたり、分身を作り出して、独りでも寂しくないステージにもなるのだ。この作品を考案した梶原さんは、地元でバンド活動もしている。

梶原「(バンドでは)周りの友達に演奏を合わせないといけないじゃないですか。それがいやで(笑)自分に合わせてほしいなと思って」

そんな梶原さんがサウンドのプログラミングを、そして梶原さんのバンドが生き甲斐とさえ語る、熱烈なファンの渡辺圭介(ワタナベ・ケイスケ)さんがビジュアル面のプログラミングを担当し、この作品が実現。でもやっぱり独りよりもバンドで仲間と一緒にやった方がいいと再確認したそうです。最後に、梶原さんにとってロックとは何ですか?

梶原「ま、目立ちたいってことですね」

これだけ目立ちたいという気持ちを具現化した人がいるでしょうか? これからも熱いロック魂でスパークしてください!

::: point of view :::::

【完成度】竹中直純

「こういうものは、単品なら過去にメディアアートの分野でもあったけど、これはちゃんとパッケージになってる。自分をかっこよく見せるためだったら、どこまでも完成度を追究できるという作品。アートを作ると、作品そのものの中に拘泥してしまうことが多いけど、これはメディアアートそのものが目的じゃなくて、総合的に自分をかっこよく見せるところに結実しているのがすごくいい。

目的がはっきりしているので、どんどん発展していく技術を、その時々で取り込めばいいと思う。最近、何もないところに映像が出せるような技術が実用化されそうなので、後ろ(のスクリーン)にスパークしていたものも、(ギターから)実際にスパークしているように見せられるようになるかも」

【いやし】千秋

「もともと梶原君が目立ちたくて、自分の欲望で作って、夢を叶えて満足して…結局バンドがいいって言ってたので、彼にとっての癒しなんじゃないかと。作った人にとって癒しになって満足すれば、一番いいんじゃないかな。わたしもバンドを組んでいるので、一人でやったらどんなのかなっていう気持ちは分ります」

【ビジュアル】中谷日出

「彼は音楽という才能を利用して、自分を目立たせたいというビジュアル志向。自分のパフォーマンスを盛り上げていこうというもので、ショーになってる。それをデジタルツールを使ってどんどんやっていくぞ、というところがいいね。今、時代はビジュアルとミュージックの融合の時代なので、典型的なお2人の、技術同士の相思相愛ぶり。

過去にも音楽のゲームで似たようなものがあったけど、それとは全然ポテンシャルが違う。マグマのような(笑)。これで完成じゃなくて、これからどんどん複合したり新しい技術を取り入れたりして伸びていく発展途上のものなので、楽しみです。(千秋:でも早く技術開発していかないと、どんどん歳をとっていくから。早く噴火してしまえ!)」
 
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Selection#2
Gate vision  ゲイト・ヴィジョン
小林和彦  Kazuhiko KOBAYASHI
 
どこかで見たことがある風景のようにも見える、何とも不思議な映像作品。作者の小林和彦(コバヤシ・カズヒコ)さんは、去年『
scan Gate
(スキャンゲート)』という作品で、竹中さんの回のベストセレクションに選ばれている。それが今回の作品の元になった静止画の作品だ。

小林さんは、この春から四国は高知の専門学校でCGを教えているピカピカの1年生先生。今回、この作品の作り方を学生に特別講義してもらった。まず、元になった写真を短冊状に切り取って、それらを円形に並べれば『scan Gate』の出来上がり。これを動画にするのも、同じ理屈なのだそう。

小林 「動画というのは静止画の集合体で出来ています。こちらにも同じような加工を施していきます。この静止画を連続して再生することによって、『scan Gate』の動画バージョン『Gate vision』ができました」

新幹線の車窓から撮影した映像を作者の小林さんが独自の方法で加工。摩訶不思議な円形の映像の出来上がり!


::: point of view :::::

【オリジナリティー】竹中直純

「これはものの見方を非常に独自に楽しく歪めてくれるもの。前の『scan Gate』は、動画を線でスキャンして一枚の静止画にするものだったけど、今回はその時間方向の伸びを展開した作品。これはもう小林さんの作品でしかありえないような世界、完全に小林ワールド。今回は新幹線の車内の音を出すことで、多少ビジュアルが説明的になってしまったのが少し残念ですが、その独自性は全然失われていない。アイデンティティがちゃんと出来てるので、羨ましいです(笑)。

静止画の時は情報量が少ないので、元のものが分らない不思議さがあったけど、動画だと情報量が多い。人間の頭というのは、これは何かということを一生懸命考えるわけで、情報が増えれば増えるほど、その何かというのが真実に近づいていくから、新幹線の車内だと、やっぱりこれは新幹線の車内だと分かってしまう。この一連の作品はやっと素材を吟味するタイミングにきてるのかも。ちゃんと謎めかすというか、作品が生きてくるような素材を見つけないと。小林さんは'素材見つけの旅'をした方がいいかもしれませんね。」

【いやし】 千秋

「音はどこかで聞いたことあるけど、絵は見たことがないので、始めは何だろうと。でもずっと見てたらだんだん分ってきました。象徴的なビルとか緑の木とかの絵が出てきた時に、絵本みたいに、ふわっと動いたり消えたりするのがすごく面白かった。(平井:こういうオモチャあったら買いますか?)買う買う買う(笑)。

こういう万華鏡があったら、何時間でも見れちゃう。癒されるなと思いました。ただの普通の空とかビルが、すごくきれいな不思議な絵みたいになるから。南の島とか北極とかオランダとか、国ごとのがあっ_スらきれいだろうな。お花畑とかカラフルなところで、色がいっぱいのも見たいな」

【完成度】中谷日出

「小林さんは静止画で培ったノウハウをたくさん持っていて、ちゃんと技術を積み重ねていきながら、完成度が高まってる気がする。でもその先にいろんな可能性が見える将来性もある。完成度があるから先が見えるのかもしれない。このまま癒しだけに終わるともったいない。回転することによって共通項が見えたり、発見できるような視点があると、さらにアート性が高まって、すごいものになっていくんじゃないかな。

万華鏡もそうだけど、見れば見るほどイメージが広がるんですよ。かたち、色、ものの動き、いろんなものに気づかされる。発想するための支援になるツールのような気がするな」
 
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Selection#3
Instant Processing  インスタント・プロセッシング
牧野雅人  Masato MAKINO
 
人間の肌色の部分を認識して、リアルタイムにモザイクをかけるプログラム作品。カメラの映像がその場で自動的に処理されて見られるので、誰でも手軽に楽しむことができる。他にも、赤いマイクの色を認識して、そこから音の波紋が広がるバージョンや、ネギバージョンもある。ネギの緑色を認識して光らせる様は、まさにスターウォーズのライトセーバーのよう!

作者は見るからに好青年な牧野雅人(マキノ・マサト)さん。現在美術大学の大学院でデザインの研究をしている。この作品のプログラミングに要した時間は1ヵ月半。そこから、展示をしては人の意見を聞くプロセスを繰り返し、半年かけて仕上げていった力作だ。メインに画像認識のプログラムを一つ置き、そこから様々なバリエーションを作っていった牧野さん。映画やテレビの世界で特殊効果を後処理する'ポスト・プロセッシング'をもじって、インスタントに(その場で)処理していくこの作品を「Instant Processing」と命名。それにしても、なぜネギだったのでしょうか。

牧野「キーボードやマウスをインターフェース(入力装置)に使っていたこともあったんですが、それだとなかなか抵抗感があって、作品に近づいてきてくれないんですよ。それで実際ネギを置いてみると、これは何だっていうふうに近づいてくれるんですよ」

千秋さんと平井さんが大はしゃぎで体験したこの作品の人気の秘密は、親しみやすいネギにあったこと間違いなし。ネギも立派にインターフェースになるんですね。

::: point of view :::::

【ビジュアル】竹中直純

「これは見た目のインパクトがすごいので、まずビジュアル。ビジュアルというのは見た目で、言葉のことは関係ないと感じられることが多いけど、実は非常に意味と結びついてると気がつけるんじゃないかな。モザイクであれば何かやましいこととか…。解像度が少し粗いとか、精度のツメの甘さはあるけど、頑張った、という印象です。

こういう映像処理は後からやることが多いけど、これはその場で見れるのが非常に面白い。映画の撮影とかで、何やってるか分らないで演じるのが辛い場合、出来上がりをこれで想像しながら出来ると、役に立つかもしれませんね」

【とんがり】千秋

「ネギというダサいイメージの代名詞みたいなのをあえてアートと組み合わせるということがとんがってるなと。ネギに人を引き付けるものがあるというのをあらためて知ったし(笑)、ちゃんとそれをチョイスしてアートに生かしてるところがすごい。この画面だけ見てたら、不思議な世界に行ってるみたいです。

今日はねぎの緑が動くけど、明日はオレンジが動くとか、毎日いっぱい野菜が置いてあって、今日は何でしょうって、早当てゲームみたいないろんな応用ができる。子供でも遊べそうな感じ。ゲームセンターとかで長蛇の列が出来てるイメージがします」

【コミュニケーション】中谷日出

「例えば人が集まる場所にこの装置が一つあるだけで、みんなが簡単にできて、仲良くなって、会話が生まれて、コミュニケーション。パーティーとかお見合いの席に(笑)。将来性はすごくありますよ。みんながこれを踏み台にしていくような気がするので(笑)、本人も頑張って、もっとたくさん作ることが大事かな。

メディアアートとか、ヴァーチャルリアリティの分野では、ものの色や形に反応して何かなるという、こういうものは王道でもあるけど、これまではシステムやハードの問題で敷居が高かった。これはお茶の間にそれが下りてきた。ネギがまさに象徴してますけど(笑)。第二世代のメディアアートになってる気がします」
 
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Selection#4
さねかずら  SANEKAZURA
青木啓剛+鎌田武俊  Keigo AOKI+Taketoshi KAMADA
 
インターネットで繋がっている2つの小さな枕。どんなに遠く離れていても、お互いが寝転がると、枕の中のセンサーがそれを感知し、相手側の枕が光る仕組みの作品だ。この枕の中には更にマイクとスピーカーが入っていて、相手とお話もできる。

作者は青木啓剛(アオキ・ケイゴウ)さんと鎌田武俊(カマダ・タケトシ)さん。スタジオに登場した青木さんは現在、大学院の一年生。ユビキタスの技術を使ったコミュニケーションツールの開発研究を行っている。ユビキタスとは'あらゆるところで'という意味の語で、小さくなったコンピュータがあらゆるところに入った環境で、みんながコンピュータの存在を意識することなく利用し、ネットワークで繋がっていく、という意味の用法で'ユビキタス・コンピューティング'などと使われるIT用語。この小さな枕の中にも、小さくなったコンピュータが入っているのだ。

青木「話さなきゃいけないという、電話のような強制感を全く排除してるんです。使おうとして使うものではなくて、なんとなくそこにあって、なんとなく使えてしまうような。生活に溶け込んでいった時に、自分の身体の延長のようなかたちで使ってもらえるようになるのではないかと考えています」

タイトルの「さねかずら」とは、秋に赤い実をつける、つる状の植物。そして、「逢ふ(あう)」という言葉に掛かる枕詞でもある。万葉集にも登場する、由緒正しい言葉。離れて暮らしていても、枕もとで出会うという意味をこめて名づけられたこの作品。家族というものにフォーカスをあてて作るうえで「枕を並べて寝る」という言葉を大切にするという意味も込められているそう。ロマンチックですね。


::: point of view :::::

【インパクト】竹中直純

「技術者は夜型という印象が強いですよね。その原因の一つが、夜中にチャットやメールのやりとりをすると。この作品も夜にやりとりをするけど、今までと違って、背筋を伸ばして画面を見てキーボードを叩いてと、脳をフルに使わなくても、寝てる姿勢で睡眠に誘われながらコミュニケーションができる。ほとんど技術のことを気にしなくていいわけです。その部分が今までのツールとは非常に違う側面。夜中のそういうコミュニケーションは、やる人の身体にインパクトを与えていたはずで、それをあえて和らげるようなもの。

技術的にはごく普通だけど、大事なのは、やる前にダイヤルアップしたり、コンピュータを起動したりしなくてもいいところ。特に難しいことではないけど、実は重要で、今までにあまりない着眼点だと思います」

【ツボ】千秋

「これは、家族のツボを抑えたアートだなと。ちょっと離れちゃった家族の寂しい気持ちをこれで暖かくまとめた感じ。今はまだコンピュータとか電話だと、さあやるぞって、こっちも準備してからだけど、それを自然なかたちで生活に取り入れるという…コンピュータの使い方のツボだなと思いました」

【いやし】中谷日出

「これからは、人と人とが繋がるというテーマがすごく大事なこと。アートもそういうところにもっと役割を演じていかなければいけないので、そういう意味では癒しがテーマなんです。それを真っ向勝負で研究していて、それがまたいい感じに出来上がってる。枕は必ず一人に一つあるマイ枕だから、まさにユビキタスですよね。個人と個人を繋ぐという意味の'P2P(ピア・ツー・ピア)'というインターネット用語があるけど、この作品はまさにP2Pの新しい形。枕、つまりピロウ(=pillow)。ピロウ・ツー・ピロウ(笑)。

インターネットって、ややもすると冷たいものに思われがちだけど、こうやって、ほんとに人のぬくもりを感じられるようなシステムは、ほんとにいいよね」
 
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