樋口真嗣監督は日本の特撮映画の第一人者であり、多くのアニメーション作品にも携わってきたユニークな経歴の持ち主。樋口監督が目指した映像表現とはいかなるものか。今回は映像表現の持つ新しい可能性について探っていく。
■ リアリティの追求
映画『ガメラ』の特撮監督として一躍脚光を浴びた樋口真嗣。渋谷の街を破壊し尽くし、現実にはありえない光景をリアルに再現する、その圧倒的な映像表現で注目を集めた。
今回、長編映画に初挑戦した最新作『ローレライ』は、終戦間際の太平洋を舞台に祖国を守るため一艇の潜水艦が戦うドラマ。特撮技術が全編にわたって使用され、見たことのない深海世界が見事に映像化されている。今までにない壮大なスケールを持ち、まさにハリウッド級エンタテインメントとも言えるこの超大作には、特撮出身の樋口監督ならではのこだわりが随所に盛り込まれている。
例えば、スタジオに組み込まれた潜水艦のセットは、なんと実物大。当時実在した大型潜水艦をモデルに、部屋の配置から細かい部品に至るまで忠実に再現したものだという。狭い船内では監督の居場所もなく、セットの隙間に潜り込んで撮影は続けられた。さらにこのセットは可動式になっており、セットそのものを揺さぶることで攻撃を受けて揺れる潜水艦内部のシーンがリアルに再現されている。
■ 特撮へのこだわり
樋口監督の本物へのこだわりはセットだけに留まらない。海底を進む潜水艦のシーンでは、なんと6mを超す精巧な模型を撮影した映像をもとにCGで忠実に再現している。ミニチュアが持つスケール感をCG映像で再現することで、移動する潜水艦の様子を本物に限りなく近づけているわけだ。樋口監督は‘リアリティー’にこだわることで臨場感のある映像世界を作り出している。
:::TALK:::::
中谷: 樋口監督といえば、やはり誰でも特撮のカットがどうしても気になると思うのですが、特撮で一番こだわった部分は?
樋口:この10年ぐらいの間にいろんなことが変わってきてしまって、CGで何でも出来るような時代になっちゃったんですよね。それによって自由度が増して、今までの表現の可能性がガンとして広がったんだけども、その代わり、現実との接点がどんどん離れていく怖さがあったんです。だから説得力のある足がかりみたいなものを絶えず残しておきたい、と。ミニチュアを実際に作って撮影し、それを元にデジタルで加工していくというのを第一の前提としたのですが、そのミニチュアもかなり大きなスケールのものを作らせてもらってるんです。
中谷:ミニチュアで 一番効果的だったところはどの辺なんですか?
樋口:大きなものを作った時に、“へぇ、こう見えるんだ”ってみんな口々に言うわけですよ。3Dの空間の中で、カメラを決めて、オブジェクトを決めて、ということだけじゃどうしても出てこない距離関係みたいなものはみんなそれぞれが思っていたことなので、撮影とは別に、そういう作業を進めるうえで、すごく良かったと思います。 |