▼ 季 里 「音楽と映像のシンクロという点だけでみても、この作品は出だしのピアノの部分からすごく気持ちのいい合い方をしてる。ピアノの内部でピアノ線が揺れてるところや、歯車がズームアウトしていって、その次に反転したイメージがドアの中からパッと出てくるところは、本当に音とぴったり合っていて気持ちよかった。 作品は、思い入れだけで作る情念派と、いろいろ組み立てて作る論理派の作品があると、勝手に分けてるんですけど(笑)、『チャコの恋わずらい』は、思い込んだら命がけで作り出しちゃう感じがあったけど、この作品は自分の論理の組み立てをメモに描きながら考えるような感じで映像を作ってる気がする。こういう論理派の人は、文字や言葉にする人が多いけど、彼はどうして映像という表現手段を選んだのか気になりますね。CGの最初の頃は、わりとプログラム寄りでないとモノが作れなくて、数学者や物理学者がコンピュータを使って、数式や理論を可視化するということで映像にした作品もたくさんあったんです。私が初めてCGを作った時もマウスがなかったので、プログラム的なものを打ち込みながら作っていったんですが、その時に論理的にモノを作っていたような気がします。考えを一旦数値や理論に置き換えて映像化していくという手法が確かにありました」 ▼ 岡本知高 「正直ちょっと怖かったです。ピアノの鍵盤も譜面も白と黒の世界なので、音楽の感じなのかなと見てたんですが、だんだん五線に見えてた線が波打ったり玉が飛び出したりして、音符の反乱をイメージしちゃって。音楽のアクセントのところで出てくる角の鋭い四角が、グサッと強烈に突き刺さってしまう感じがして怖かったんですけど。
音楽が映像マッチする時に計算されてたと思うんです。例えば歯車が出てくる場面は5拍子。5拍子というのはちょっと特別な感じで、あまり音楽として噛み合わないところで歯車が出てきて、これはわざとかなぁと」
▼ 中谷日出 「点や線のシンプルでミニマルな表現の中に、ピアノなどの具体物。そのピアノも歪んでたり、テレビのノイズが走ったり、そのバランスが、音に合わせて絶妙な掛け合いをしている。音楽と画像のシンクロだけじゃなく、いろんな微妙なせめぎ合いをやってるので、見るところがたくさんあるし、かなり深い作品。 5,6年前に出てきた‘モーション・グラフィクス’という表現で、こういう音楽に合わせた表現が多かったような気がする。でも5,6年前にこの作者まだ12歳でしょ(笑)。知らないんですよ。すごいね。彼はチャレンジャブルにやってるけど、それにしては表現が深い。
音楽作る人が映像作ったりと、世の中シームレスになってますんで、この方も大学入って数学やいろんなことをやると思うけど、映像を作り続けて、数学者的な映像表現をどんどんやってくれると、このボーダーのない時代に、また新しいいろんな表現が出てくるのかな」 |