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on air review
 
第213回  
タイトル 2005年 02月 19日放送
イントロ 作品レビュー ベストセレクション ピックアップ クリエーターズカフェ
 
作品レビュー
 
ノミネートNo.1
作品写真
チャコの恋わずらい
鈴木 万紀子
ノミネートNo.2
作品写真
走れ!
青木 純
ノミネートNo.3
作品写真
Radiotron
森 真樹
ノミネートNo.4
作品写真
希望の世界
雨宮恒平
   
ノミネート1  
作品写真
作品写真
作品写真
 
チャコの恋わずらい (チャコ・ノ・コイワズライ)
鈴木 万紀子 (スズキ・マキコ)
作品ノート
美術大学の3年生。
人形を作るのが大好きで、作っているうちにこの人形を動かしてみたいと思ったのが制作のきっかけ。祖母が呉服屋をやっていた関係で和服の端切れがたくさん手に入ったので、それで人形の服を作った。人形やセットの作り込み、色にこだわった。セットは自分が住んでみたい部屋をイメージし、宝石箱、化粧品、絵本など、自分の好きなものを詰め込んだ。自分にとって可愛い人形の表情とは、ちょっと崩れていて眠たそうで、少し悲しげな顔。曲は最初からシルヴィ・ヴァルタンの『幸せの2分35秒』に決めていた。メロディに合わせて人形の動きやシーン変わりを決めたので、音楽とコマ撮りの計算にとても苦労した。
コメント

▼ 季 里

「私も布とかボタンとか人形が好きなので、この作品は私のツボに入りましたね。このセットの中に入りたいくらい大好きな世界。ポーズや仕草の一つ一つがすごく可愛らしくて、女の子の気持ちを感じ取れるし、全然表情がなくても、いろんな気持ちを雄弁に語っている。これは人形遊びの時の、止まってるものを自分で動かしながら声を出したりしてるうちにそれが動いて見えるという‘見立て’。最初はもうちょっと表情が動けばいいのにと思ったけど、実は見てる人が気持ちを込めながら見ていくんじゃないかと思えました。この作品やこの人形が可愛くてしょうがないという作者の気持ちが作品から滲み出てますね。

色合わせ・柄合わせは難しくて、ごちゃごちゃするほど無茶苦茶になってくるけど、この作品はいろんな要素や色、形、模様があることがかえって古くて新しい感じを出して、センスの良さを感じさせる。途中に挿入されている白黒のアニメーションも劇中劇のダンスも、全体の中のアクセントとなって、すごくニクイ演出。

音楽と映像の合った作品を作る時、最初はメロディや声の素敵さに引っ張られて、音楽を構成として聴かなかったんですが、ドラムを習いまして(笑)、構成で成り立っているところが初めて見えてくるようになった。それで音楽の構成も参考にしながら自分の表現したい映像世界もその中に合わせ込んでいって、構成を考えるように…。(岡本:パーカッションを選んだのは素晴らしい。音はいくらでも分割できて、太鼓をいくらでも叩くことができるんです。そのリズムや叩く数によって映像を動かすことができるし、全くなくして一拍を滑らかな線にすることもできる。太鼓と映像の動かし方は、ちょっと通ずるところがあるかも)

ただし、平面的な画面に影があるのが気になりましたね。作品の技術的な質を上げるためにどうしたら良いのかということにも客観的に気を配ることができたら、この作品はもっと素晴らしいものになる気がします」

▼ 岡本知高

「可愛いですねえ。女性的な良さが出てる作品だと思う。女の子たちが着てる洋服の生地が日本の昭和とか大正を思わせるような感じで、それとフランス語の古めかしい音楽の組み合わせが素敵でした。

(表情は)多少動いてほしかったかなという面はあるけど、人形は動いてるし、全体の世界観はとても暖かかったので、あれでもいいのかな。人形の動きの一つ一つが音楽の可愛らしさとよくマッチしていたと思います」

▼ 中谷日出

「始めと終わり両方が人形アニメで、中盤に普通のアニメーションがあるという組み合わせが絶妙。素人っぽい可愛い女の子が作ったような雰囲気だけど、中間のあのアニメーションを見ると、かなり手練れかな。総合的にけっこうイケてるなって気がします。

アート作品には新しさが必要だと思うんです。普通この曲を使って作品を作ると、どうしてもフレンチにいっちゃうところを、おばあちゃんの和服な雰囲気を入れながら世界観を作ってるから、微妙な新しさがありますよね。

劇中の白黒のアニメーションはかなり上手なので、人形の顔が動かないのは多分戦略的なもの。その戦略が果たしてこの全体の中でいいかどうか、もう一度引いた目で吟味すると、皆が入っていけるようなアニメーションになるんじゃないかな」

▼ 相沢礼子

「自分が食べたケーキを男の子が食べてくれた時に‘ドキッ’っていうのと、曲のため息がマッチしていて、余計に女の子の気持ちを表していたり、お洋服を“明日何着ていこうかなぁ”って迷ってるところも可愛かったです」
 
   
ノミネート2  
作品写真
作品写真
作品写真
 
走れ! (ハシレ!)
青木 純 (アオキ・ジュン)
作品ノート
アニメーションを中心に勉強している、美術大学の3年生。
この作品は、学校の課題として作った初めてのアニメーション。制作期間は3週間で経験もゼロという制約があったので、尺は30秒。キャラクターも自分が一番ラクに描けるシンプルなものにした。音楽は、絵を描いている時からなんとなく『天国と地獄』のイメージがあったが、完成してみるとやっぱりぴったりだなと思った。一番苦労したのが色塗りで、250枚の原画の線は油性のマジックで描き、色はパソコンを使って、水彩画風に一コマ一コマ描いた。

★『奈良鹿物語』>> #212田中秀幸セレクション
 『テレビ』  >> #190伊藤有壱セレクション

 
コメント

▼ 季 里

「ほんとに選曲いいですよね(笑)。音楽とのシンクロも、キャラクターや絵、30秒間の中にギュッと詰め込むテクニックも、文句の言いようないですね。あるものの形が次々と変化していくことをメタモルフォーゼというんですが、この手法を使うと、ただ走っていくだけでなく、その中でメタモルフォーゼしていくことによって、人生の時間を圧縮して表現することができるんです。実写では人の人生を30秒に早回しにはできない。アニメーションならではの作品。メタモルフォーゼを使う時に、誰もが人生というテーマを一度は考えると思うんですが、それでもこのエピソードをこんなふうに撮って作れるかなと思うと、なかなか難しいですよね。

大笑いして見た後に、ちょっと悲しくなるような、人生を考えさせられるような面も持っていて、いい作品というのは面白いだけじゃなくて、人生観にも影響を与える、見た後に何かずっとひっかかりが残るような作品だと思うけど、これはそういう意味ですごくいい作品。

30秒しかない中に、すごくたくさんのエピソードを盛り込んでいるのに、満員電車の中と道でお酒に酔っ払ってもどしてるっていうところにけっこう時間を使っていたりして(笑)、その時間の配分もすごく面白いですよね」

▼ 岡本知高

「これは好きですねえ。ビビッときてしまいました。あっという間に、走馬灯。最初目を閉じていた生まれたての赤ちゃんが、目を開けた時にはもうゴールを見据えているような鋭い目をしてて、一番気に入りました。(中谷:あの瞬間が全てですね)あそこで決まってましたよね。

シチュエーションが全部“あるある”みたいな、自分にもかぶるようなシーンがあったりするので。(季 里:しかも日本人的な駆け抜けていく人生ですよね)曲が『天国と地獄』ですからね。音楽にぴったり。別に地獄は出てこなかったけど、やっぱり人生は山あり谷ありですからね。(季 里:ゴールした時、一番嬉しそうな顔でしたよね)そう、浮かばれちゃってるの(笑)!

見てて気持ちのいい作品ですよね。今度は女性版を作っていただきたいかな。(季 里:いろんな人生を繋げていくと面白いかも)」

▼ 中谷日出

「観察力も表現力もあるけど、やっぱりシチュエーションの作り方がすごくうまい。30秒という短い時間の中で、こんなに人を楽しませて、情緒感も感じさせるという全体の構成力。縦にずっと走ってくる、この勢いが一回も途絶えずに、満員電車の中にいても回転しながら勢いを保ってる。その小気味よいワザはハンパじゃないですね。

細かい表現で気を遣ってるなと思ったのは、子供の頃の絵の時に縦にドブの側溝を描いてるところ。あれでスピード感がまた出たり…。おじさんが気持ち悪くなって街灯の下でもどしてる時に、止まってるおじさんを置いてきぼりにしながらもカメラが猛スピードで動いてスピード感を出してる。だから勢いが全然止まってないんですよね。その辺の表現が心ニクイ。

作者はデジスタ常連の方で、わりと速く作れる多作な人。シリーズ化していっぱい作るのも、この人だったら出来る気がする。ユーモアのセンス、表現、小気味よさ、メッセージの的確さ。どれをとってもかなりハマッた映像が作れるんじゃないかな。(季里:とにかくいっぱい作っていって、この世界を広げていってほしいですね)」
 
   
ノミネート3  
作品写真
作品写真
作品写真
 
Radiotron (ラジオトロン)
森 真樹 (モリ・マサキ)
作品ノート
17歳の高校3年生で、東大で数学を学ぶことを目指す受験生。
映像作品は今回が2作品目で、受験勉強の合間にゆっくり半年くらいかけて作った。音楽は小学校1年の頃より約10年ピアノをやっている。作品の中に出てくるテレビは、現実空間と仮想空間を行き来する扉を象徴。テレビの向こうの作られた世界と、テレビのこちら側の現実。“この世界は本当にリアルなのか!?”という怪しい妄想を表現した。愛読書は『ゲーデル・エッシャー・バッハ』。この本で知った理論から得たイメージをこの作品にも取り入れた。
コメント

▼ 季 里

「音楽と映像のシンクロという点だけでみても、この作品は出だしのピアノの部分からすごく気持ちのいい合い方をしてる。ピアノの内部でピアノ線が揺れてるところや、歯車がズームアウトしていって、その次に反転したイメージがドアの中からパッと出てくるところは、本当に音とぴったり合っていて気持ちよかった。

作品は、思い入れだけで作る情念派と、いろいろ組み立てて作る論理派の作品があると、勝手に分けてるんですけど(笑)、『チャコの恋わずらい』は、思い込んだら命がけで作り出しちゃう感じがあったけど、この作品は自分の論理の組み立てをメモに描きながら考えるような感じで映像を作ってる気がする。こういう論理派の人は、文字や言葉にする人が多いけど、彼はどうして映像という表現手段を選んだのか気になりますね。CGの最初の頃は、わりとプログラム寄りでないとモノが作れなくて、数学者や物理学者がコンピュータを使って、数式や理論を可視化するということで映像にした作品もたくさんあったんです。私が初めてCGを作った時もマウスがなかったので、プログラム的なものを打ち込みながら作っていったんですが、その時に論理的にモノを作っていたような気がします。考えを一旦数値や理論に置き換えて映像化していくという手法が確かにありました」

▼ 岡本知高

「正直ちょっと怖かったです。ピアノの鍵盤も譜面も白と黒の世界なので、音楽の感じなのかなと見てたんですが、だんだん五線に見えてた線が波打ったり玉が飛び出したりして、音符の反乱をイメージしちゃって。音楽のアクセントのところで出てくる角の鋭い四角が、グサッと強烈に突き刺さってしまう感じがして怖かったんですけど。

音楽が映像マッチする時に計算されてたと思うんです。例えば歯車が出てくる場面は5拍子。5拍子というのはちょっと特別な感じで、あまり音楽として噛み合わないところで歯車が出てきて、これはわざとかなぁと」


▼ 中谷日出

「点や線のシンプルでミニマルな表現の中に、ピアノなどの具体物。そのピアノも歪んでたり、テレビのノイズが走ったり、そのバランスが、音に合わせて絶妙な掛け合いをしている。音楽と画像のシンクロだけじゃなく、いろんな微妙なせめぎ合いをやってるので、見るところがたくさんあるし、かなり深い作品。

5,6年前に出てきた‘モーション・グラフィクス’という表現で、こういう音楽に合わせた表現が多かったような気がする。でも5,6年前にこの作者まだ12歳でしょ(笑)。知らないんですよ。すごいね。彼はチャレンジャブルにやってるけど、それにしては表現が深い。

音楽作る人が映像作ったりと、世の中シームレスになってますんで、この方も大学入って数学やいろんなことをやると思うけど、映像を作り続けて、数学者的な映像表現をどんどんやってくれると、このボーダーのない時代に、また新しいいろんな表現が出てくるのかな」
 
   
ノミネート4  
作品写真
作品写真
作品写真
 
希望の世界 (キボウ・ノ・セカイ)
雨宮恒平 (アメミヤ・コウヘイ)
作品ノート
大学のグラフィック科を卒業後、就職浪人している時に制作。
メッセージをしっかり伝えたかったのでテロップを使用。絵だけではなく、和紙や写真をコラージュして表現することに力を入れた。草には葉っぱやお花畑の写真をコラージュした。一番こだわったのはニワトリが空を飛ぶシーン。努力すれば不可能は可能になることを表現したかった。

★『ザ・ガール・トリップ・トゥ・ワンダーランド・ウィズ・サンダーアフロ』>> #169松浦季里セレクション
 
コメント

▼ 季 里

「前回応募していただいた時は、ナンセンスなトボけた感じがすごく面白かったんですが、今回は社会的なメッセージ。でもちゃんと彼なりの見方やユーモアでくるんだ上で表現されていて、すごく伝わりやすい、良い作品だったと思います。ちょっと、じーんと(笑)。彼の作品は前もそうだったけど、ユーモアのセンスがすごくいい。そのユーモア感を失わずに、今回は自分なりのメッセージを作品にしてきてますね。私自身の課題でもあるんですが、いろんな意味でいっぱいいっぱいだと、なかなかユーモアのセンスは表現できなくて難しいものですから。

出だしのエピソードは受験という、私たちの誰もが経験したことがある身近なテーマ。そこをとっかかりに共感を得て、今いろいろ起ってる社会的な難しい問題やイヤな事件を繋げていくことで、自然に彼が問題だと思っていることに入っていけたような気がします。

途中の台詞の部分の文字も良かったけど、タイトルや終わりの文字も、中と合わせて装飾的に作ったと思うんですけど、すごく素敵でした。

前の作品も含めて3作、どれもが80年代にあったような、パレットアニメーションっぽい表現をしながら、その方法は同じでも、確実に絵の質感はアップグレードしてきてますね」

▼ 岡本知高

「素敵ですねえ。希望が持てる。きっとお若い方が作ってるんだと思うんですけど、見てて嬉しくなりました。

メッセージが文字で出てきたのも面白いですね。(季 里:黒い画面にああいう文字が出てくると、すごく暗いメッセージだったり、これから不吉なことが起るんじゃないかと思うのに、装飾的なキラキラしてる部分があることによって、最初から希望みたいなものに繋がっていくのかなとも思えました)(相沢:宝石が散りばめられてるみたいできれいでした)

中谷:これまでの作品は、わりと音楽がガンガンきてたけど、この作品は、音楽を非常にシンプルに使ってますね)最初は昔のゲーム音楽のような単純な刻みの音しかなかったんですが、それが突然なくなりましたよね。音がなくなった途端に、僕の大きな身体がシュッと(笑)、吸い込まれました。

“意志さえあれば”というメッセージが出てきたけど、やっぱり、彼が伝えている平和というものは、みんな一人一人が願ってはいるんだけど、やっぱり意志を持たなければ実現しないものかもしれないなと。いろんなものを与えてくれる作品だったと思います」

▼ 中谷日出

「かつて日本にあった尾形光琳や俵屋宗達といった琳派の歴史の流れを感じさせるような、何ともいえない様式化がされている。西洋ではクリムトなどのイメージをうまくやって、でもこれは真似じゃなくて彼なりの様式化。雨宮流なんですよね。

デジタルで絵を描く時は、レイヤーというスクリーンを重ねていく描き方をするけど、この人はコテコテにやってるのに、なぜかそれが整理されて、混沌とした今回のこのテーマに、非常に合った絵の作り方になってる。

受験の番号が貼ってあるボードを見たりすると、僕たちも今でもドキドキするわけじゃないですか(笑)。だからグッと来ますよね。

彼がやろうとしていることは確実に我々に伝わっているので、大成功と言えるでしょうね。前の作品もいいけど、違うステージに入ってきたような気がします。これからの作品、すごく期待できる」

▼ 相沢礼子

「この方のメッセージが、本当に一生懸命がんばれば、最後にはそれが報われて、あとほんのちょっとの努力、っていうのが、すごくじーんときましたね」
 
   
 
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