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第149回  
タイトル
シーグラフ03特集
2003年 09月 06日放送
イントロ レビュー ベストセレクション 特集 クリエーターズカフェ
 
■CG研究の第一人者、ポール・デベヴェック氏
 〜その画期的CG技術<イメージ・ベースド>を大解剖!〜
特集
 
▼ 「マトリックス」の斬新な映像誕生の
  きっかけを作った張本人!
ポール・デベヴェック [Paul Debevec]

ポールさんは、現在、映画制作におけるCGの開発・研究を行う南カリフォルニア大学CG研究所(ICT)の助教授。

シーグラフ2001で最優秀新人研究者賞を受賞するなど、CG研究でめざましい業績をあげている。

◆The Campanile Movie [1997]
  >> The Campanile Movie web page

シーグラフでは常に注目の的となっているポールさんだが、その名を一躍CG界に知らしめたのが、6年前に自ら出演して制作したこの作品だ。

★まず、ミニチュアの塔から、CGで作られた塔に移り変わっていく。(塔の周り360度の広大な風景もすべてCG。)そして、CGからミニチュアへ、次に実写からCGへ。最後にCGから実写へと移って、一つのカメラの動きのなかで、実物とミニチュア、そして、CGが見事につながっていくもの。

<Image-Based Modeling and Rendering>
このリアルさの秘密が<イメージ・ベースド>と呼ばれる、写真を使って3次元のCGを作る技術、今やリアルなCGの表現には欠かせない技術だ。

まず、CGにする塔や景色を様々な角度から写真に撮る。次にその写真から、ポールさんが独自に開発したプログラムを使って、自動的に建物の形を割り出し、CGへ。空中からの広い景色の中の建物も、位置や寸法を入力することなく3D化することができる。最後にできた形に、写真を貼り付ける。

こうして、現実には不可能なカメラワークの映像を実現、建物の窓や周りの木など、細かく形を作らずともリアルなCGを簡単に作ることができるというわけだ。

1997年、本作はシーグラフで発表されると同時に大きな話題を呼ぶ。そしてその場に居合わせた映画「マトリックス」のCGスタッフが、即刻ポールさんに映像制作の協力を要請、<イメージ・ベースド>は、その後<ブレット・タイム>へと大きな発展をとげ、「マトリックス」第一作の成功の鍵となった、かの斬新な映像が誕生するに至った。

CG研究というアカデミズムの世界と映画産業というエンターテインメント世界がうまく結びつくことで、さらに新しい技術が生まれたのだ。

▼ 現在の研究テーマは、‘光’
「ザ・カンパニーレ・ムービー」のプロジェクトを進めている時、すでにポールさんの頭の中には、次のテーマが浮かび上がっていた。カメラを自由に動かすことに成功した次は、「‘光’を自由に操ること」である。

Fiat Lux [1999]
  >> Fiat Lux web page

シーグラフ99で発表されたコンピュータ・アニメーション。国際舞台でも発表され、数々の賞を受賞。

<イメージ・ベースド・ライティング>という技術を用いて作られた代表作。写真で様々な光を記録し、CGで再現しようというというもの。まさにリアルな光への挑戦だ。

<Image-Based Lighting>
この代表的な研究としてLight Stage 2、Light Stage 3の2つの装置が挙げられる。

★Light Stage 2
人間の顔に光を当てて、どう反射するかを計測する装置。
半円上に並べられたストロボライトがフラッシュしながら人間の周りを回る。1周約8秒間。32個のストロボライトは上から順に光ることで、人間の顔をあらゆる角度から照射する。これを6台のカメラで撮影。フラッシュライトに照らされた顔の光と影をサンプルデータとして記録する。

そのデータをパソコンに取り込むと、CGでできた顔に、より自然な光を当てることが可能となる。通常人間の顔は金属などと違って細かな起伏があるため、複雑な光の反射をするが、この装置を使うことで、リアルな光の反射を再現することが出来るわけだ。

人間の顔に自然な照明を当てることは、CGの中でももっとも難易度が高いとされてきた。この装置を使うことで、現実の俳優の顔と区別がつかないCGの顔を作ることが可能になった。

★Light Stage 3
はCGの顔に照明を当てるものだったが、こちらは、ある場所の光をバーチャルに再現して、人間の顔に当てるというもの。

2メートルほどの球体につけられた156個の照明は赤・青・緑のLEDが組み込まれており、これをコンピュータで制御することによって、どんな環境のライトも再現することができる。

この装置に写真から計測した光のデータを入力すると、その場所にあたかも立っているかのような照明を再現することができる。

▼ 常識を突き破る、新たなCGの挑戦!
CGを写真から作り上げていくという新しい技術が、よりリアルなCG表現を可能にしたわけだが、この技術の応用はエンターテインメントの分野にとどまらない。失われつつある文化的・歴史的な世界遺産をCGで記録しようという試みがすでに始まっているという。

◆ Parthenon 「パルテノン神殿」
  >> Parthenon web page

ポールさんが今取り組んでいるのが、ひとつの町をまるごと全部バーチャルな世界に写し取ろうという試み。ギリシャのパルテノン神殿などの文化遺産を、CGとして記録しようとする新たな挑戦だ。建造物の色や形だけでなく、そこに差し込む太陽の光や壁の手触り、雰囲気までも、写し取ろうとする画期的なもの。

6歳の時に、「スター・ウォーズ」に感動し、いつかは自分で特撮映画を作りたいと考えたポールさん。祖父から譲り受けた8ミリカメラで初めてコマ撮り映画に挑戦、10歳の時には、新聞配達をしてパソコンを購入!14歳で自らプログラムをかいたCGアニメーションの制作に成功。その後、イメージ・ベースドの実験第一弾となる作品を作ったのが、19歳大学生の時。

「<イメージ・ベースド>の研究をするようになった理由として、祖父の影響で、8ミリ映画や写真が好きだったことと、CGを作るのが好きだったことがあげられます。2つの好きなものを組み合わせることが現在までの私の研究のテーマとなっています。」

まさにポールさんの半生は、CGの歴史とともにあると言えるだろう。

リアルなCG映像へのあくなき追求を続ける、ポール・デベヴェック氏。今後もますますこの若きCG研究者から目が離せなくなりそうだ。■

▼ イメージ・ベースド講座
 〜バーチャル中谷日出はこうして出来上がった〜
現在CGの世界で主流となりつつある<イメージ・ベースド>。この写真から立体を作る原理は、いったいどうなっているのか? 簡単に説明してみよう。

*イメージ・ベースドとは?
立体物を、ある角度から撮影した写真を元に実物を再現しようとしても、平面の写真からでは、立体物の奥行きがわからない。しかしそこに、別の角度から撮った写真の情報を加えると奥行きがわかり形を決定することができる。
このように2枚以上の写真から類推してCGを作ることを<イメージ・ベースド>という。

*実際のCGを作ったときの様子を見てみよう。
他のものが極力写らないように、ブルーの背景で撮影する。
6台のデジタルカメラで顔の周囲を余すところなく撮影できるように、ぐるっと囲む。6台のカメラは、同時にシャッターを押せるように、機械につながれている。
まずはテスト撮影→撮影した写真をチェック→本番撮影

撮った写真はパソコンに入力し、画像の色や明るさなどをそろえる。そして、イメージ・ベースドのソフトに入力し計算させる。

すると、6枚の写真から自動的に中谷さんの上半身モデルが出来上がってきた。
最初に撮影した6枚の写真と合わせると、それぞれとピッタリと重なることがわかる。こうして、リアルな中谷日出CGバージョン!が完成したのだ。

☆中谷日出
「私もイメージ・ベースドのモデルをしたのは初めてだったのですが、撮影は思ったより簡単に終わりました。ソフトの進化で、こうしたCG作りが、より手軽になってきているようです。これまでは時間も手間もかかったリアルなCGが、今後はもっと普及していくことを予感させます。」■

 
 
   
 
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