| 「Alfa Wolf は、マルチメディアラボで作られた合成のキャラクター。このインスタレーションは、オオカミの一員としてどのように社会関係に参加するか、ということを体験してもらうもの。インスタレーションのなかにいる2匹は人間にコントロールされ、4匹はコンピュータにコントロールされる。2人の人間が、自分達のオオカミとコンピュータ制御のオオカミとのあいだの相互作用を体験できるわけだ。オオカミをコントロールするにはマイクを使って、自分達のオオカミがどんな風に群れの一員として動いていくかを音声で指示して育てていくもの。
ヴァーチャルの犬を訓練してみようというところから始まり、このプロジェクトに至っては、オオカミの子供がどのように発達し、成長していくだろうかということを意図している。どのように社会的能力を学ばせていくか、に焦点を当てた。
難しかったのは、ヴァーチャルな生き物、コンピュータで作られたキャラクターをどのように作るか、どのように彼らの行動を本物のオオカミの行動に似せるか、ということ。
そのためにまず、本物のオオカミを観察することから始めた。自然のなかでオオカミがどのような行動をとるかを調べるために、何人かがアメリカの国立公園など、いろんな地域を訪れながら知識を収集し、Alfa
Wolfのより複雑なヴァージョンを作ろうとしたわけだ。それは本物のオオカミが相互作用をとるときの言語をシステム内で構築することであり、人間が学んでも面白いようなものだった。
作品の音声認識に関しては、予想以上に良くできたと思っている。これは話したこと全部、人が出した音全てを、howl(遠吠えする)、
roar(恐ろしく吠える)、Whine(すすり泣く)、 bark(嬉しそうにほえる)のたった4つの言葉に分類するのだが、その音がどのくらい長いかや、音の波長によって決められるものだ。
見に来る人々にオオカミの声を真似してもらうようにしたが、人間の喉の構造では、まるきりオオカミと同じ音を出すのは不可能だし、またオオカミにも人間の声を出させるのは無理。だから人間の出す声と、オオカミの出すであろう声とのあいだに幅を持たせている。オオカミの声をまるっきり厳密に真似しなくても、人間の出せる音に合わせて認識できるように基準をゆるくしているわけだ。
各オオカミは様々な感情状態を持ち、2匹の感情の度合は継続的に揺れ続けている。その中でそれぞれの個体の存在を感じ取ると、社会関係が形成され始め、そこでとった行動が個体の感情状態に影響を与えることになる。
次にその同じオオカミに会ったら、前の行動によってもたらされた感情の記憶が、未来の行動に影響を与える。そうして毎回、他の個体と相互作用していくうちに、オオカミたちの感情からなる社会関係は、過去にとられた一連の相互関係を元に変化し続けていくというわけだ。
まず鍵となる要素は、注意のひき方。プレイヤー同士が、社会的関係性を形成するにあたって、他の個体とどのような関係をとるか、どのように他のオオカミに注意を払うか、ターゲットにいかに注意をひかせるかが、結果に対して一番大切な要因となる。
また人間の場合、目によるアイコンタクトで注意を引き合ったりするもの。アイコンタクトが重要な効果的要素となっている。相手の注意をいかに喚起し、自分もいかに相手に注意を向けるかが、社会関係形成の核心になるわけだ。
オオカミの子が完全に大人になるのは5分くらい。大人になるにつれ、他の子供との相互作用による関係性を形成していく。5分後には新世代のオオカミたちが生まれ、自分達がプレイしていたオオカミは次の世代の親になってしまう。親として子供たちと社会関係を持ち始めはするものの、次にプレイする新しく生まれた子供たちは、メモリーを持っていない。(つまり、リセットされる。)
マイクであなたが遠吠え(howl)すると、子オオカミが遠吠えする。この遠吠えに、他のメンバーが呼応する。
・恐ろしく吠える(roar)と、それは「その場所を俺がしきる!」という意味。そこでの関係性は、自分が支配者となり、他が従う、というもの。
・すすり泣く(whine)と、あなたの子オオカミは服従している、ということになる。
・嬉しそうに吠えれば(bark)、あなたの子オオカミは他者と遊びたい、ということ。
オオカミの吠えるパターンを覚え、群れの一員になりきって参加してほしい、そして彼らの社会関係を観察し、理解していただきたい。そうすることで、自身の人間同士という関係に対して更なる洞察が生まれるかもしれない。
オオカミの動きをキャプチャーするのは実に大変だった。オオカミが動き方のみならず、オオカミに見えるような質感を出すのも大変で、アニメーションを仕上げるのに4ヶ月かかった。プロジェクトの途中から参加した有能なコンピュータ・アーティストが、例えばオオカミのイメージをとってきてレンダーする際チャコールで仕上げたりしてくれたので、本物のオオカミのようなイメージを出せたと思う。
オオカミの行動や生活をスケッチしていたものを活かして、グラフィックにするときも、「オオカミはラフな感じに表現しよう」と決めていた。全くリアルに見えるようにCGでガチガチにナチュラル感を出そうとしても、どうしても違和感が出てしまうもの。それよりも、ラフな感じに、オオカミの動きに流れる感じを作り出そうと思った。
おそらくこの作品で一番大事なのは、キャラクターの発展。同じキャラクターデザインで、この作品を発展させていくこと。人々が関心を寄せ、相互作用したくなるようなパーソナリティーを持つヴァーチャルな生き物を、どのように作るかということを、MITでの主要プロジェクトとして続けていきたいと思っている。
このプロジェクト自体のもうひとつの可能性は、Alpha wolf システムのアイデアを使って、子供たちにコンピュータプログラムの書き方を教えることと言えるだろう。このプログラムのなかで構築された社会関係を使ってね。単に計算機の作り方なんかを教えるよりは、ずっと面白いと思う。子供たちに、この作品のなかで発展した社会関係制御ゲームを使って遊んでもらいたい。
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