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アルス・エレクトロニカ前編
放送日
 
 
 
Onair
放送風景
放送風景
今年も9月7日から12日までの6日間、オーストリアはリンツ*の街を舞台にアルス・エレクトロニカが開催されました。今年で3回目の取材となったデジスタは、今週から前・後編と2回に渡ってこの世界最大のメディアアートの祭典をたっぷりとお届けします。

今年のテーマ「 Unplugged 」の真意、奇しくも昨年の同時期に起こった‘セプテンバー・イレブン’を大胆に反映させたオープニングイベントの衝撃、'Unplugged' な国を象徴するアフリカ諸国にフォーカスした作品展示、そしてプリ・アルス・エレクトロニカ等々、見応え十分です。

さて、例年日本人の活躍が目立つこの祭典ですが、今年はデジスタの名を轟かす勢い!昨年のデジスタアウォードグランプリの鈴木康広くん、そして同じく昨年のデジスタ入賞者吉浦康裕くんの二人が揃ってプリ・アルス・エレクトロニカに入選という快挙。さらに昨年に引き続き会場に設けたデジスタ・プロモーションブースもかなりの反響で、スタッフは海外での認知度・評価が非常に高まっていることを実感!来年リンツの舞台に立つのは、キミかもしれません。特集をじっくり楽しんで、Go For Ars Electronica 2003!

*リンツ:ドナウ川が街の中心を流れるオーストリア北部の街。人口21万人というこのオーストリア第3の都市は、市街に路面電車が走り、歴史の面影を今尚残している。

 
■Unplugged-Art as the Scenes of Global Conflicts-
〜今年のテーマ「アンプラグド」の真意とは?
■Opening DayーVisualisierte Linzer Klangwolke@Donaupark 〜オープニング記念イベント
■UNPLUGGED Symposium 〜関連シンポジウム
■Concerts, Events, performances〜コンサート/イベント/パフォーマンス作品
■Change The Map@ブルックナーハウス 〜さまざまな切り口で既存の世界地図を塗り替えるテーマ展
■African Art Screen@ブルックナーハウス〜Unplugged の象徴として、アフリカ人アーティストによる作品が集結
■CyberArts 2002  Prix Ars Electronica Exhibition@O.Kセンター〜プリ・アルス・エレクトロニカ受賞作品展示

 
   
必見!担当ディレクターによるレポート
「アルス・エレクトロニカ2002雑感」
大会の概要・歴史などは、こちらも
ご参照下さいね。

 
 
上半期ベストセレクション
アルス・エレクトロニカ
アルスでは毎年、将来を見据えたテーマをかかげ、アートを通じて社会にメッセージを発信している。今年のテーマは、「 Unplugged 」直訳すると「プラグがつながってない」が、それは決してアコースティックな作品を意味するものではなかった。

アルス・エレクトロニカ2002が目を向けたのは、「グローバル化――資金・人・情報・資源などが地球規模で移動流通し、総合化が進む現象」の問題だ。90年代以降、政治や経済、文化などが、国境を越え、世界規模に広がりつつあるわけだが、しかし、先進国主導ですすめられるグローバル化には、開発途上国との格差を広げ弱者を切り捨てる側面があるとして、反発の声が高まっており、ここ数年は、NGOを中心とした激しい抗議デモも行われている。

こうした矛盾に目を向け、メディアアートを通して真のグローバル社会を目指そうというのが今大会のテーマ「 Unplugged 」の真意なのである。

UNPLUGGED
放送風景 ●ゲァフリード・シュトッカー氏
(アルス・エレクトロニカ、ディレクター)
「<アンプラグド>が象徴するのは不完全なグローバル社会です。“アンプラグド(隔絶された)”な地域、つまり、開発途上にある国々に目を向けることこそ我々ネット社会の果たす役割なのです。」
  UNPLUGGED
・・・それは、‘隔絶’であり、これまで果てしなく上昇あるのみと考えられていた‘発展曲線の破断’であり、また、進歩という名のキャラバン隊が突き進む道程の、すぐ脇に潜む‘深い闇’・・・を意味するものである。

UNPLUGGEDとは、この地球規模のネット社会が抱える厳然たる事実を踏まえたテーマである。

この社会を支配する日米欧という三大資本主義国家群とたとえどんなに隔たりがあるとしても、またコンセントを見つけることすらままならぬ国であるにしても、もはや誰もこのネットワーク化された世界から脱退するわけにはいかないのである。

UNPLUGGEDがフォーカスするのは、いわばグローバリゼーションの盲点である。この地球規模のネットワーク生成の過程へと接続、あるいは加わろうとする際に障壁となるその国の精神性や地理的特性、またネット社会そのものを不可能、不法、あるいは全く歓迎しないものとすら見なす文化的・社会的モデルの存在に目を向けようとするものである。

UNPLUGGED は、したがって我々自身の無力さを克服し、一般的な勢力構図の拡大や防御を超越する新たなネットワーク構造の中に‘その他の国々’と共に足を踏み入れて行こうとするものなのだ。

ゲァフリード・シュトッカー
アルス・エレクトロニカ2002
パンフレット・巻頭文より
*ハウプト広場にて
放送風景
放送風景
  1979年からアルス・エレクトロニカを開催しているこの街には、大会期間の6日間世界中からアーティストや美術関係者が多く訪れ、世界規模で新たなアート・シーンを生み出していく原動力になっている。
 
●石井麻由子アナウンサー

「いつもと変わらぬ美しい街の佇まいなのですが、昨年とちょっと違うのが、展示内容ですね。やはり昨年の同時多発テロの影響が感じられます。」

 
●中谷日出ナビゲーター

「緊張感のあるメッセージ性が展示に反映されて、違ったムードが漂っている気がしますね。」


 
 
アルス・エレクトロニカ

今年で23年目となる世界最大のメディア・アートの祭典、アルス・エレクトロニカ。常にアート界をリードし、その年の動向を左右するとまでいわれる存在だ。

毎年舞台となるオーストリアのリンツではもう街の名物にもなっているオープニングイベント、今年は単なる野外のショーに留まることなく、ひときわメッセージ性の強いものとなった。

水上に浮かぶ大天使を連想させる巨大オブジェ。その羽根にも見えるスクリーンに映し出されるのは、破壊や混乱のイメージ。スクリーンには去年の悲劇、アメリカ・同時多発テロの映像が流れ、フィナーレは、ドナウ川を流れてきた大きな箱船が、花火を上げながら巨大な炎に包まれ炎上。集まった9万人の観客に、一年前と大きく変わってしまった私たちの世界、そして未来への不安を提示した。

 
放送風景
放送風景
放送風景
●中谷日出
「今まで見てきたなかで、これほどメッセージ性の強いオープニングイベントは初めてでしたね。強烈なインパクトには驚きました。」 放送風景
●回転式ジャングル・ジムを使ったインスタレーション「遊具の透視法」(デジスタ・アウォード2001グランプリ受賞作)でInteractive Art部門Honorary Mentions入賞を果たした、鈴木康広さん
「カラダ的にもココロ的にもインパクトがすごくて、こわかったです。花火という意味あいも違ってましたね。」 放送風景
●アニメーション作品「キクマナ」(2001年度デジスタ入賞作)で Computer Animation/Visual Effect部門Honorary Mentions入賞を果たした吉浦康裕さん。

「単に華やかというだけでない花火というのがすごい印象的でしたね。」

放送風景

 
 
アルス・エレクトロニカ

今年も連続5日間、Plug-In I 〜 VII まで7つのテーマに基づいて熱い議論が交わされた。カタールのニュース専門衛星放送局「アルジャジーラ」やグローバル化の問題に積極的に取り組むNGOなどからの参加者が議論を重ねた。

 
放送風景 ●ローリー・ワラックさん(1971年設立の消費者団体<パブリック・シチズンズ・グローバル・トレード・ウォッチ> ディレクター)

「企業は世界市場を単一のものととらえています。例えば、世界向けに一種類の製品しか作らないことすらあります。しかし、我々の世界はもっと多様であるべき。世界企業への反グローバル化運動は民主主義を守るためでもあるのです。」


 
 
アルス・エレクトロニカ
 
放送風景 ◆VIVISECTOR(生体解剖者)
 Klaus Obermaier, Chris Haring /Austria @ブルックナーハウス

一見モザイク模様のアニメーションに見えるが、実は生身の人間の身体をスクリーンに見立て映像を投影するというアート・パフォーマンス。投影される様々な映像により、躍動する肉体のイメージが刻々と変化。リアルとバーチャルが錯綜しながらもイメージは無限に広がっていく。

放送風景

◆Artists 9-11:Part II-World Premiere
 Deborah Shaffer /USA @ブルックナーハウス

今年は大会期間中に奇しくもアメリカ同時多発テロからちょうど一周年を迎えることになった。アルスではこの日、ニューヨークに暮らすアーティストたちがテロ以降、どのように考え、活動を再開していったかを追ったドキュメンタリー・フィルムが上映された。


●観客の声
*「CNNの報道などとは異なるアーティスト達の考え方を聞いて、より理解を深めることができました。」(男性)

*「実際に起きた事件をどのようにアートに取り込むのか、アーティスト達の表現が見られたのでとても意義がありました。」(女性)

放送風景
放送風景
  ●シュトッカー氏コメント

「今こそ我々は、現実の世界を表す地図を再構築しなくてはなりません。社会の中で粉々に砕け散った破片をつなぎ合わせ新しい世界像を作り上げるためアートは有効な手段となるでしょう。」


 
 
アルス・エレクトロニカ
 
放送風景 ◆Energy Solution /Water Resources
 Peter Fend /USA

会場の壁いっぱいに貼り出されたこの作品は、国境ではなく水源を基準に世界を区分した地図。再生可能な資源エネルギーの利用を訴え、石油など限られた資源をめぐる国際紛争を皮肉っている。

放送風景 ◆Internet-Metrik::Biophily*Warp Map
 Thomas Feuerstein /Austria

www.myzel.net/geomorph

ロサンゼルス、リンツ、ボンベイなど世界6都市に置かれたネットワーク・サーバーの間の通信速度の差を、実際の地理的距離に置き換えてデータ化していくWeb作品。

ネットワークの地域格差が、そのまま地図上に現れるようになっている。インフラ整備がすすみ通信環境の良い地域間ほど地図上の距離が縮まり、大きな歪みを作っていくもの。

放送風景 ◆./logicaland
 Maia Gusberti, Michael Aschauer, Nik Thonen, Sepp Deinhofer /Austria

www.logicaland.net
(プリ・アルス・エレクトロニカ2002 Net Vision部門Award of Distinction受賞作品)

グローバル化の中、国と国がいかに依存しあっていくかを シミュレーションするWebゲーム。シンプルな四角で構成された世界地図は国土の広さだけでなく、人口、GNP、石油消費量など様々なデータを比率化して表示する。

参加者は、用意されている2000年時点の実際のデータを参考に国を選び、その国の投資分配や食料・財政援助の割合を決定しオンラインで投票。制限時間22時間の中で、相互依存による世界システムの将来を世界中の人々と共にシュミレートできる仕組みだ。

放送風景 ◆net.flag flag for the Internet
 Mark Napier /USA

www.potatoland.org/pl.htm

インターネットのための旗の創造を目指したWeb作品。

コミュニケーションの場であるインターネットの特性を活かし、誰でもこのプロジェクトに参加することができる。旗を作るための素材は、世界各国の実際の国旗のデザインから抽出したパーツ。各国の国旗デザインに込められた意味を確認しながら、それらを自由に組み合わせていくことができる。

石井麻由子
放送風景
「数えきれないほどあるパーツの中からまず私が選んだのは、レバノンの杉。続いて選んだのはカンボジアのアンコール・ワット。最後に解放と調和を意味するパレスチナのグリーンを加えてみました。出来上がったのは、何か緑豊かな国という感じ・・・何度でもやり直すことができ、気に入った旗ができたら、そのままデータを保存することもできます。国家アイデンティティの象徴である国旗が、人々の手によって次々と変化していくことに不思議な新鮮さがありました。」

 
 
アルス・エレクトロニカ

いずれの作品も、グローバル社会から無視され続けてきた彼らの状況がきわめてストレートな形で表現されている。

 
放送風景 ◆The Water Moataz Nasr/Egypt(エジプト)

 

放送風景 ◆La Valise  Souyabou Kandji/Senegal (セネガル)

 

放送風景
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◆World White Wall 
 Emeka Udemba/Nigeria (ナイジェリア)

白い壁で隔てられた、ふたつのゲート、そのそれぞれのゲートの上には看板がかかげられている。先進国を示すゲートは広くバラの花が咲いているのに対し、それ以外の国々は狭くいばらの上を通らなければならない。グローバリズムがもたらす不公平をシンプルなインスタレーションで提示した作品。

>>インタビュー>>  Emeka Udemba
 

▼あえてデジタル技術を使わずに、
  アフリカならではの表現を目指した

今年のアルスのアンプラグドというテーマは、マルチメディアや新形態の情報技術を使って、新しいグローバリゼーションの形を示そうとするもの。そのテーマを受けて、グローバル社会のなかでのコミュニケーションについてアート表現を試みた。

ヨーロッパとアフリカがこの新しい同じ技術を使えるようになれば、発展途上国はこの技術を使って、格差を飛び越えなければならない。でもつながれてなければアウト。もし人々がアートにエレクトロニックを使わなかったら、そんなに違いはない。何を発表するかはその人の経験次第となる。今回はあえてデジタル技術を使わずにアフリカならではの表現を目指した。 

この作品では2つの道が示されている。ある種の分岐点が現れるが、ヨーロッパや先端都市の住民は広い道を通れるのに、その他の国々は非常に狭い通路を通らなければいけない。

グローバリゼーションやインターネットの普及は、より多くのコミュニケーションを可能にし、文化と文化を繋げるものなのだが、情報技術の発展自体は、最終的に持つ者と持たざる者との間の格差を広げてしまっている。

情報技術発展から取り残された国々は、システムにつながれていない社会つまり「アンプラグド」な状態にあると言えるわけで、決してヨーロッパやアメリカと同じペースでは動いていない。実際そういった国々では、経済的要因のために芸術活動はもとより、新しいテクノロジーを使ったアートの生産などできないのが実状。アフリカでインターネットに繋ぐことがどれほど難しいことだかご存じだろうか?電話代さえ大変なのにインターネットなんてもっとお金がかかる。ヨーロッパでは電話代なんてどんどん安くなっているし、たいしたことだと思ってない。アフリカでは、グローバリゼーション・・・つながるなど、夢の話。いい夢ではあるが、現実的には自分達の間ですらつながる可能性などないわけだ。

そういう状況の中で、僕が芸術家としてできることは、「僕らにはメディアを通して表現する機会なんてないんだ」ということを、ここで訴えること。欧米諸国に我々にもっと目を向けてもらうように、このような討論を広げることだと考えている。


 
 
アルス・エレクトロニカ

テーマ展示と同時に、フェスティバルで開催されるもうひとつの大きな展示がメディア・アートのコンクール、プリ・アルス・エレクトロニカだ。世界最高峰ともいわれるコンクールの入選作が、サイバーアーツ2002という展示タイトルで今年もO.Kセンターに集結した。

 
 
◆ Global String  Atau Tanaka, Kasper Toeplitz/France
(Interactive Art部門Honorary Mention 受賞作品)
放送風景
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「世界サイズの弦楽器」と称するこの作品は、遠く離れた二つの地点で張られたワイヤーの間をインターネットによりつなぐことで一本の弦にしたいわばスケール無限大の楽器。

インターネットを介した二つの地点の弦は、間をつなぐコンピューターによりその距離に応じた音の出力設定がなされ、インターフェイスである弦を弾くことによって地球規模の音響が楽しめるという仕掛けだ。

ピンと張られた太い一本のワイヤーに触れると、地鳴りのような重低音が響く。反対側で演奏するパートナーをモニターで見ながら、空間を超えたコラボレーションを楽しむことができる。

作者は、日本生まれ、アメリカ育ちで現在はフランスを拠点としているアタウ・タナカさんとフランス人のカスペール・トープリッツさん。展示期間中は二人によるパフォーマンスも披露された。

放送風景 >>インタビュー>> 
Atau Tanaka + Kasper Toeplitz
 

▼インターフェイスだけじゃなく楽器を作りたかった。 

(A)元々は、ベース奏者であるキャスパーが日本に来たときの話で、すごく大きなベースを作りたい、というところから始まった・・・目的はミュージシャンだったのだが、もし大きい弦、例えば100kmのものを作るというのはかなり難しいわけで、それならメディアアート、ネットワークを使った方がより面白いんじゃないか、と・・・ふたりとも作曲家で、彼はベースを使いながら、私はネットワークやメディアを使いながら、音楽を作っていたもの、そのサウンドをメディアアートの世界に持ってきたかった。

二人の役割もきっちり分けているわけでなく、ステップごとに持ち寄って継ぎ合わせて作り上げていくとても自然なやり方だ・・・作曲家としてそれぞれソロ活動をしているけれど、インスタレーションとしては2人でコラボレーション。ここリンツでは同じ建物の中ですが、普通だったら二つの違う街にあるわけ、いずれにしても二人で演奏をする楽器だ。

(K)一番苦労した点を聞かれれば・・・このプロジェクト自体。(笑)

(A)大きいプロジェクトで、大きい弦だし。東京で元々このアイデア、コンセプトを作ったのが98年のこと。それから4年が経ち、これで3回目。来年もやると思うが、その時はまた、新しいアイデアを加味しながら楽器のパーソナリティを引き出すためのバージョンアップをする予定。

(K)楽器のパーソナリティというものはすでにある。どのようにそれを持ち込むか。音楽の魔力をどう引き出すか。

(A)それがミュージシャンの仕事だね。ビギナーだったら一応ポンポンと音は出るけど、綺麗な音楽を出すには何年かかかるかもしれない。そう言う考えでインターフェイスだけじゃなく楽器を作りたかった。つまりインスタレーションとしたら子供でも音は出せるんですけど、パフォーマンスとなったら、その中で細かい音を出すことが出来る、それを探すのが、パーソナリティー。

(K)ソフトなので弦の長さはいつでも調整できる。

(A)ソフトのなかでは500Mだったら綺麗な音が出るっていうのがわかって、そのように調節している。ここでは500Mですが、10Mでも可能。500キロまでは一応ソフトでは試し済み。普通は違う街にあるインスタレーションだが、アルスでは一つの建物のなかで作りたかった。ビジターはここで見て、2階に上がってみる。インターネットですから繋いで。情報はこの建物から投げて、グラーツという街を通して戻ってくることになっている。


 
 
◆ AlphaWolf The Synthetic Character Group/USA
 (Honorary Mention Interactive Art 受賞作品)
放送風景
放送風景

コンピューター内で生きる狼を社会化させていくもので、アメリカ・マサチューセッツ工科大学の研究者7人による作品。経験が記憶として積み重ねられることで狼が成長していくようにプログラムされている。

放送風景

体験者はマイクを通じて狼の泣き声を出す事により、まだ経験の浅い幼い狼の行動を決めていく。泣き声による行動パターンには・相手を威嚇する唸り(growl) ・仲間に呼びかける遠ぼえ(howl)・相手へこびるすすり泣き(whine)・そして、じゃれ合いや喜びをあらわすワンワンという鳴き声(bark)の4つに大きく分けられている。この鳴き声を使い分けながらコンピューター内で群れをつくる他の狼らと接し、関係を築いていくもの。

放送風景 >>インタビュー>> 
The Synthetic Character Group
 

▼オオカミの社会関係を観察・理解すれば、人間社会の関係性の中にも新しい洞察が生まれるかもしれない。

「Alfa Wolf は、マルチメディアラボで作られた合成のキャラクター。このインスタレーションは、オオカミの一員としてどのように社会関係に参加するか、ということを体験してもらうもの。インスタレーションのなかにいる2匹は人間にコントロールされ、4匹はコンピュータにコントロールされる。2人の人間が、自分達のオオカミとコンピュータ制御のオオカミとのあいだの相互作用を体験できるわけだ。オオカミをコントロールするにはマイクを使って、自分達のオオカミがどんな風に群れの一員として動いていくかを音声で指示して育てていくもの。

ヴァーチャルの犬を訓練してみようというところから始まり、このプロジェクトに至っては、オオカミの子供がどのように発達し、成長していくだろうかということを意図している。どのように社会的能力を学ばせていくか、に焦点を当てた。

難しかったのは、ヴァーチャルな生き物、コンピュータで作られたキャラクターをどのように作るか、どのように彼らの行動を本物のオオカミの行動に似せるか、ということ。

そのためにまず、本物のオオカミを観察することから始めた。自然のなかでオオカミがどのような行動をとるかを調べるために、何人かがアメリカの国立公園など、いろんな地域を訪れながら知識を収集し、Alfa Wolfのより複雑なヴァージョンを作ろうとしたわけだ。それは本物のオオカミが相互作用をとるときの言語をシステム内で構築することであり、人間が学んでも面白いようなものだった。
作品の音声認識に関しては、予想以上に良くできたと思っている。これは話したこと全部、人が出した音全てを、howl(遠吠えする)、 roar(恐ろしく吠える)、Whine(すすり泣く)、 bark(嬉しそうにほえる)のたった4つの言葉に分類するのだが、その音がどのくらい長いかや、音の波長によって決められるものだ。

見に来る人々にオオカミの声を真似してもらうようにしたが、人間の喉の構造では、まるきりオオカミと同じ音を出すのは不可能だし、またオオカミにも人間の声を出させるのは無理。だから人間の出す声と、オオカミの出すであろう声とのあいだに幅を持たせている。オオカミの声をまるっきり厳密に真似しなくても、人間の出せる音に合わせて認識できるように基準をゆるくしているわけだ。

各オオカミは様々な感情状態を持ち、2匹の感情の度合は継続的に揺れ続けている。その中でそれぞれの個体の存在を感じ取ると、社会関係が形成され始め、そこでとった行動が個体の感情状態に影響を与えることになる。

次にその同じオオカミに会ったら、前の行動によってもたらされた感情の記憶が、未来の行動に影響を与える。そうして毎回、他の個体と相互作用していくうちに、オオカミたちの感情からなる社会関係は、過去にとられた一連の相互関係を元に変化し続けていくというわけだ。

まず鍵となる要素は、注意のひき方。プレイヤー同士が、社会的関係性を形成するにあたって、他の個体とどのような関係をとるか、どのように他のオオカミに注意を払うか、ターゲットにいかに注意をひかせるかが、結果に対して一番大切な要因となる。

また人間の場合、目によるアイコンタクトで注意を引き合ったりするもの。アイコンタクトが重要な効果的要素となっている。相手の注意をいかに喚起し、自分もいかに相手に注意を向けるかが、社会関係形成の核心になるわけだ。

オオカミの子が完全に大人になるのは5分くらい。大人になるにつれ、他の子供との相互作用による関係性を形成していく。5分後には新世代のオオカミたちが生まれ、自分達がプレイしていたオオカミは次の世代の親になってしまう。親として子供たちと社会関係を持ち始めはするものの、次にプレイする新しく生まれた子供たちは、メモリーを持っていない。(つまり、リセットされる。)

マイクであなたが遠吠え(howl)すると、子オオカミが遠吠えする。この遠吠えに、他のメンバーが呼応する。

・恐ろしく吠える(roar)と、それは「その場所を俺がしきる!」という意味。そこでの関係性は、自分が支配者となり、他が従う、というもの。
・すすり泣く(whine)と、あなたの子オオカミは服従している、ということになる。
・嬉しそうに吠えれば(bark)、あなたの子オオカミは他者と遊びたい、ということ。

オオカミの吠えるパターンを覚え、群れの一員になりきって参加してほしい、そして彼らの社会関係を観察し、理解していただきたい。そうすることで、自身の人間同士という関係に対して更なる洞察が生まれるかもしれない。

オオカミの動きをキャプチャーするのは実に大変だった。オオカミが動き方のみならず、オオカミに見えるような質感を出すのも大変で、アニメーションを仕上げるのに4ヶ月かかった。プロジェクトの途中から参加した有能なコンピュータ・アーティストが、例えばオオカミのイメージをとってきてレンダーする際チャコールで仕上げたりしてくれたので、本物のオオカミのようなイメージを出せたと思う。

オオカミの行動や生活をスケッチしていたものを活かして、グラフィックにするときも、「オオカミはラフな感じに表現しよう」と決めていた。全くリアルに見えるようにCGでガチガチにナチュラル感を出そうとしても、どうしても違和感が出てしまうもの。それよりも、ラフな感じに、オオカミの動きに流れる感じを作り出そうと思った。

おそらくこの作品で一番大事なのは、キャラクターの発展。同じキャラクターデザインで、この作品を発展させていくこと。人々が関心を寄せ、相互作用したくなるようなパーソナリティーを持つヴァーチャルな生き物を、どのように作るかということを、MITでの主要プロジェクトとして続けていきたいと思っている。

このプロジェクト自体のもうひとつの可能性は、Alpha wolf システムのアイデアを使って、子供たちにコンピュータプログラムの書き方を教えることと言えるだろう。このプログラムのなかで構築された社会関係を使ってね。単に計算機の作り方なんかを教えるよりは、ずっと面白いと思う。子供たちに、この作品のなかで発展した社会関係制御ゲームを使って遊んでもらいたい。


 
 
◆ An Invisible Force Crispin Jones/Great Britain (イギリス)
 (Honorary mention Interactive Art 受賞作品)
放送風景
放送風景
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展示室にポツンと置かれたアンティーク調の机と椅子。その上には、それぞれ異なる質問が書かれた28枚の占いカード。そのカードを一枚選び机わきの差込に入れると、質問の答えが浮かび上がってくる。

Q: <Do I have enemies? 私に敵はいますか?> → A: <No You Have None.  いいえ、いません。>
Q: <What is my lucky sign? ラッキーサインは何?>  →  A: <A SHOOTINGSTAR 流れ星です。>・・・という具合。

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「見えない力」と題されたこの作品はテクノロジーと超常現象という全く正反対と思われるような題材を組み合わせたインスタレーション。しかし、このお告げは簡単に答えを教えてくれる訳ではなく、カード差し込み口の金属部分を押さえ続けていないと机の上に現れないようになっている。この金属部分、お告げと共に非常に熱くなるため、答えの代償としての我慢を強いられる仕掛けになっている。もし我慢できずに手を離してしまえば、お告げも途中で消えてしまうのだ。

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−−「アツーい!」とたまらず手を離す中谷氏。背後では石井アナの「ダメダメ、耐えて下さいよ!しっかり」と叱咤する声が!

放送風景 >>インタビュー>>
Crispin Jones
 

▼コンピュータという文化的な物体が未来を予測する、と我々人間が信じていることに興味を持った。

「まず、コンピュータが未来を予測する物、特にミサイルの予測機器として始まったことに関心を持った。アメリカのコンピュータ会社、オラクル社の社名は、ギリシャ語で未来を予想する「神託」という言葉に由来している。つまりコンピュータという文化的な物体が未来を予測する、と我々人間が信じている、ということに興味を持ったわけだ。

普通、コンピュータの外側は、ブランド名が付いた何の変哲もないただの箱。それをこの木のテーブルのように、いかにも未来を告げそうな外見にしたら面白いのではないか、そして、ホラー映画のように、物がテーブルの上を動くのを見て人間が驚いたりという、ちょっと怖いやり方でコンピュータが予測したらさらに面白いだろうと考えた。この古い机はオフィスから持ってきたもの。表面はレーザーで削って完璧な傾斜をつけている。机と椅子は共にうまくいって満足。

まず、体験者に“ちょっと馬鹿馬鹿しいなあ”と感じてもらうことだった。新聞の星占いを切り抜いて眺めながら「信じてもいないのに何故自分はこんなことしてるんだろう?」と思ってしまうのと同じような感じで・・・星占いって非常にシンプルに未来が書いてあって、誰もそれを信じこみはしないでしょう。これもそんなふうに、自分のやっていることを、まずはちょっと引いて見てしまう。

でもそんなものを、もっと信じられたら面白いなと思ったんだ。プレートが熱くなるというような、実感のつかめる体験を通して、この作品をもっと見たい、と思ってもらえるようなものにしたかった。

限界温度に達すると、ファンが廻って冷えるようになっていますので、やけどするほど熱くなりすぎることはない。ただ人によって感覚は違う。ずるしてる人も沢山いたよ。他のカードを引いてその上に指を置いて、熱くないようにしてる。(笑)

質問と答えの内容は全て、ミスティック・オラクルという既存の占いシステムを使っている。ナポレオンが使っていたと言われるほど古いシステムだ。

見かけは複雑に見えるものの、電子系統はとてもシンプル。ひとつの簡単なユニットから20個のユニットへと増やしていったもの。

一つの質問には30個の答えが用意されているので、同じカードを2回引いても、同じ答えが出るわけではない。

作業としては150個ものセルロイドをくっつけることが、主に難しかったこと。うまくくっついているか確認するのは何百回にも及んだ。

まだはっきりしたアイデアではないが、今後は、水滴を使って文字が上下して現れるもの・・・水滴がポツポツ落ちて、絵になり、言葉になる、といったウオーター・スクリーンのような物を作ってみたい。


 
 
◆ Pain Station Volker Morawe, Tilmann Reiff/ Germany (ドイツ)
 (Interactive Art 部門 Honorary Mention受賞作品)
放送風景
放送風景
放送風景


1対1の対戦型テレビ・ゲームで、体験者の身体感覚によりストレートに訴えてくる作品。

対戦者はそれぞれ左手を所定の位置におき、右手でコントローラーを操作する。

ゲームの基本は球を打ち返すだけのシンプルなピンポン・ゲームだが、ミスした球が現れたペナルティー表示にあたると左手に電撃などの痛みが与えられることとなり、この痛みに絶えられずに左手を離したプレイヤーが負け。

電撃以外にも赤外線の熱ランプや回転したワイヤーが手の甲を打つムチ打ちなどの罰がありゲームが進めば進むほどその危険度は増していく。

作者は子供の頃によくやった罰ゲームを取り入れた遊びから作品の着想を得たそうだ。

放送風景

交代で罰の実験台になり痛みに耐えたという二人の作者。我慢しすぎればかなりひどい傷になるため作品には絆創膏(!)も用意されていた。

放送風景 >>インタビュー>> 
Volker Morawe + Tilmann Reiff
 

▼ゲームという楽しみを通して、アートに近づけるのはすてきなこと。

「普通のビデオ・ゲームはいつも受身で自分がゲームに積極的に参加するわけではない。私たちは、問いかけ、反応することのできるようなゲーム、体力の強さも関わってくるようなゲームを作ろうと思った。

アイデアは子供のカード遊び。子供のころ遊んだ拷問マウマウという遊びが元になっている。負けた者には、つねられる、手を叩かれるなどの罰ゲームがある。

罰を受けることに対する不安は強くゲームに影響する。ゲームそれ自体の進行は早く、サウンドも伴って集中的にゲームの経験が得られる仕組み。それがこのゲームのコンセプトで、痛みを感じるとゲームで起こっていることから気がそれる。よりゲームに集中するとより以上の痛みが襲って来るというもの。そこがこのゲームの面白いところ。

開発には、中断もあったが1年間は試行錯誤を繰り返した。難しかったのはペイン・エクセキューションの加減を調節すること。何度もゲームを繰り返し、最大限の痛みの程度を試してみた。‘ひどい痛み’でもダメなら‘たいして痛くない’というのもダメ。

ペイン・ステーションは、ゲーム・センターの中のゲームとしてかなりの成功を収めたが、アートとしての流れの中での成功とは言えない。今までの作業を見直し、市場での販売が可能かどうかを見てみたいと思う。

アートとゲームを結びつけるのは面白いこと。人々がアートの世界に入りやすくなる。ゲームを通した楽しみや経験を自分のものにし、それによってアートに近づくことはとてもすてきなことだと思う。


 
 
◆Body Brush Young Hay, Horace Ip, Alex Tang Chi-Chung/Hong Kong (中国)
  (Honorary Mention Ineractive Art)
放送風景
放送風景
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今回のインタラクション・アートの作品の中でも、中谷・石井両スタッフが最も体を使ったという作品。タイトル「体ブラシ」そのもので、体を動かして絵筆のように使うことで、色とりどりの個性豊かな3Dの絵が描ける。

中国人の画家とコンピューター・サイエンティスト、そしてプログラマー3人を加えたチームでの製作。

スクリーン前のおよそ7メートル四方の空間は、いわばキャンバス。その周囲にはおよそ50個の赤外線センサーが張りめぐらされており、空間内での動きを逐一キャプチャーする。動きの軌跡がコンピューター処理でリアルタイムに3D変換されるという仕組みだ。

キャンバス周囲の各入り口には赤や黄色など異なる色が設定されている。ブラシとなる人は、コーナーの外側へ一旦出ることでその色を選択することができる。

また動きの大きさや速さによって線の太さや色の濃さが変わるように設定されている。

  中谷日出
 
放送風景
「アーティストとして、ここは石井さんに負けるわけにはいきません。ダンシング・ペイントで石井さんに対抗・・・しかしこのアート、やってみると体力が・・・キツイ・・体力配分も絵の完成度に影響しますね。」
  石井麻由子
放送風景

「私の完成作品を見てみると・・・恥ずかしがって動きが小さくなったところと大きい動きをしたところの違いがあらわれていて、まるで性格までが絵になっているみたい。」

放送風景 >>インタビュー>>
Young Hay+ Horace Ip
 

▼芸術家と科学者が出会い、共に働き前進し、最終的にインターフェイスを作り上げる、その融合性が面白い。

Hay:僕は基本的にずっと絵描きとして活動している。ある時ブラシを持ってカメラを据えて絵を描き始めるというプロセス全体、3次元での芸術制作を思いついた。そのきっかけは、どのように芸術制作過程の記録を3Dの情報で保存するか、ということだった。この体の動きを彫刻へと変形させるキャプチャー・システムを作ってみたかったというのが発想の元。

IP:現在我々は、人体の動きを3次元に変換してキャプチャーする技術を開発しているが、今後は人体の動きを音楽に変換するキャプチャー技術を開発していくつもり。3次元のロケーションにおける人体の動きによって音楽が形作られるという、ビジュアルと音楽パフォーマンスを結びつけるものだ。

僕は香港市立大学で、コンピュータ・サイエンス学部にいるコンピュータ・サイエンティスト。ヤンさんは豊富な芸術的知識を元にライティングを手伝ってくれたり、ビジュアル面から見た芸術的アドバイス・アイデアを与えてくれる。私の学生や私自身は技術的開発を担当しながら一緒に働いている。

Hay:芸術と科学の融合が面白いと思っている。芸術家と科学者が出会い、共に働き前進し、最終的にインターフェイスを作り上げるという巡り合わせ。芸術分野と科学分野がこのように融合するのは非常に面白い事だと思っている。


 
 
◆Body Movies  @ハウプト広場
 Relational Architecture #6  Rafael Lozano-Hemmer/MEX/CDN  (メキシコ)

 (Award of Disticntion Interactive Art 受賞作品)
放送風景
放送風景
放送風景
  リンツではサマータイム期間でもあり、日没は午後9時。街の中心ハウプト広場で大勢の観客が集まった。強い光に照らされた白いスクリーンに人々の影が写ると、その部分がもうひとつのスクリーンとなり、そこにかくされている実写映像のポートレートが浮かび上がる。実写映像に使われているのは実際のリンツ市民たちだ。

この隠されたポートレート全てを影により映し出すとセンサー・コントローラーが作動し、次のポートレートに切り替わるという仕組みになっている。

  中谷日出
  「日中は路面電車や人々が忙しく行き交い、めまぐるしい時が流れる街の中心・ハウプト広場。それをこうしたアート・パフォーマンスの場に変え、市民が身近な存在としてアートを楽しむ。アルス・エレクトロニカは、世界的なメディア・アートの祭典であると共にリンツという歴史ある街の文化の象徴でもあるのです。」

 
 
■アルス・エレクトロニカ後編は・・・

いよいよプリ・アルス・エレクトロニカで、展示の瞬間を迎えた鈴木・吉浦の両名に密着。インタラクティブ・アート、コンピューター・アニメーションと、それぞれの部門で活躍をみせた二人の、熱い、アルス奮戦記をお届けします!世界へ羽ばたきはじめたこの若きアーティストたちは、アルスでどのような評価を得るのか・・・乞う御期待!!