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Mar.29/2003 世界の新世代アニメーション特集
1.小川謙治のポーランド取材記 2.前田聖志のDEAFのススメ
 

1.小川謙治の「不思議に身近な国ポーランド取材記〜ポーランドは寒かった。でも人は温かかった。」

ヴォイテック・ヴァフシチェック
自画像
 
ヴォイテック・ヴァフシチェック
フィルモグラフィ
■「PRZEPRAZAM」(1998年)
■「headless」(1999年)
■「mouse」(2001年)
■「pingwin」(2003年)

今回、僕がポーランドに向かったのはある若手のアニメーション作家に会うためでした。機が熟したとでもいうのでしょうか。巡り合わせというのは不思議なものです。彼の作品に興味を持ち始め、メールで連絡を取り合っているうちに、なんとポーランドへ取材に行くことになってしまうのだから。

彼の名はヴォイテック・ヴァフシチェック。デジスタでも昨年のアルスエレクトロニカで「キクマナ」の吉浦くんと一緒に取材をしていました(その時は僕は取材には同行できませんでしたが・・・)。彼の作品はどこか絵本のような力を持っています。子どもが見ても楽しめて、なおかつ心にぐっとくるモノがある。そして、何よりも言葉に頼らない表現のスタイルというのが魅力的なのです。極端に不細工で個性的なキャラクター。作品全体に流れるユーモアとそれとは裏腹のアイロニカルな真実。僕がここで様々に語るよりもまず作品を多くの人たちに見てもらいたい。そういう思いから今回の取材は始まりました。

実際にポーランドまで赴き、彼と出会ってみて、ますます彼の作品が好きになりました。とにかくヴォイテックはいい奴なのです。短い間でしたが毎日のように取材に付き合ってくれて、母校の映画学校にまで案内してくれました。ヴォイテックの子どもの頃の夢は料理人。今もその腕前はなかなかのモノ。彼の作ってくれたポーランド風スープは絶品でした。番組を見てもらえれば分かりますが、とにかく彼の作品は物語のディテールを作り込んでいます。普通に見ていては気づかないような、でもどこか心に引っかかるような演出を数多く用意しています。それは料理人にも通じるセンスなのかも知れません。

ポーランドのアニメーション事情は必ずしも恵まれてはいませんが、彼のようなマインドをもった作品がまだまだあるはずです。これまでの歴史を見てくると政治的にはかなり抑圧されてきましたが、その分、文化的には「黒いマリア」など特異な表現を作り上げてきました。アニメーションもこれまではどちらかというと芸術的過ぎる部分があったと思います。だけど、89年の民主化以降、表現の自由も確保され、新たな局面を迎えようとしています。ヴォイテックも大学の交換留学でドイツへと留学しました。そのことは彼にとってもすごく大きなことで、ポーランドをどこか客観的に見られる目と、外へ向かって表現してゆくグローバルなベクトルを手に入れたに違いありません。それがよりポーランドらしい表現をより強固にしていると思います。それに彼は本当に勉強家です。映画学校出身だけあって、あらゆる映画に精通しているのです。さらに彼は大の宮崎駿ファンでもあります。ちなみに一番好きな作品は「トトロ」だとか。その他、新海誠の「彼女と彼女の猫」にはいたく感動したと言っていました。そんな中から彼独自のスタイルと表現を作り上げてきたんだと思います。今回は残念ながら最新作の「PINGWIN」は一部しか紹介できなかったのですが、いつかデジスタでもちゃんと紹介しますのでお待ち下さい。

今回はヴォイテック以外にもポーランドの人たちにはお世話になりました。これで僕自身、3回目の取材になるトメックもアカデミー賞ノミネートで忙しい中、時間を割いてくれました。昨年末に会ったばかりでしたが、その時とは比べものにならいくらい自信に満ちた感じがしました。彼は周りのスタッフからも本当に信頼されているのが取材をしてみてよく分かりました。作品に関してはストイックな反面、人に対してはやさしさをもった人です。彼も今新作の準備に入ろうとしています。なんと今度は6年をかけて作ると言ってました。

そして、デジスタ作品の上映会を企画してくれたWROの人たち。中谷さんと二人で英語もままならない中、とことん準備に付き合ってくれました。会場に行くまで、どんな状況での上映会なのか見当もつかなかったのですが、会場を見てみてびっくり。歴史を感じさせる佇まいの美術館。立派なパンフレットまで用意されていました。さらにあの観客の数。相当、パブリシティをしっかりとやってくれたのだと思います。クラクフには日本の美術を紹介する美術館までありました。通称「マンガ館」(日本美術技術交流センター)は18世紀に日本の美術を個人的に収集していたポーランド人のコレクションを国立美術館に寄贈されたされたものだとか。結構なコレクションだそうです。磯崎新の建築で、アンジェイ・ワイダ監督の寄付で設立されたそうです。意外に日本とポーランドの繋がりはあるんです。ここでもデジスタの上映会が開かれました。

ポーランドは寒かった。でも人はすごく温かかった。取材をしていて感じたのはポーランド人と日本人のマインドの近さ。イメージとしてはポーランドはすごく遠い国なんだけど、実際に彼らと接してみると意外なほど身近に感じられたのが不思議でした。夜は地元の店に連れて行ってもらい、いろんな言葉を交わしました。世界では今いろんな問題を抱えていて、戦いも起こっています。そのことに対して今何が出来るのか僕にはまだよく分かりません。ただ、その国に友達を作ること。それだけで茫漠とした世界の広がりがよりリアルなモノになってくると思います。自分の知り合いがいる場所で何かが起ころうとしていたら、それに対する切実さは全く違うはずです。アニメーションもそんな人と人とつなぐひとつのきっかけになるのではないかでしょうか。直接的な表現ではなくても、どこか心に引っかかるモノ。子どもたちが大人になっても心の隅で憶えているような、そんなじんわりと心にしみるメッセージを伝えてゆけたらと思います。

取材担当:小川謙治  
 
 
2.前田聖志の「DEAFのススメ〜トータルフットボールの国オランダに集結するアートスピリット。」

 デジスタスタッフの前田です。
 今回はオランダはロッテルダムに行って来ました。
 番組では伝えきれなかったことを書きます。

 オランダは仕事では初めてだったんですが、スキポール空港に到着した時の印象は、2年前よりも随分ウンコくさい国になったもんやなあというぐらい、ウンコくさかったです。これは、オランダ中を巡る運河に生活用水が垂れ流しになっているからやと思います。加えて、オランダには犬が多く、街を歩くと、必ずウンコがあります。特にロッテルダムは、ピートブロム設計のキューブハウス、レム・コール・ハースのクンストハル、バケマのラインバーンなどの現代建築と同じくらい、ヨークシャーテリア、ビーグル、グレイハウンドらによるウンコの建設がさかんだという印象を受けました。

 DEAF(Dutch Electoronic Art Festival)はそうしたロッテルダムの街を舞台に行われます。1981年に誕生したオランダのアーティスト集団V2(創設者はDEAFの主催者アレックスさん)が1994年から始め、今回で6回目。

 V2は当時TV、ラジオ、ポップ音楽、スーパー8フィルムを使った第三世代集団で、若いアーティスト達がやっていることを人に見せる場がを作るために設立され、メディアたるものを考えていたわけです。それで90年代に入ると、みんなメディアとかテクノロジーとかそういうことを話したがって、「お、なんか結構昔からメディアとかやってる奴らがいるみたいだぜ」ということになって、世の中に知られるようになったらしいです。それで、「じゃあフェスティバルでもやってみっか」ということになり、DEAFが始まりました。
 フェスティバル自体の雰囲気は、「さあ、行こうぜ行こうぜ」「おまえがやらんかったら、おれやるわ」という感じ。分からんかも知れませんが、ロックを感じます。

 それは、運営している人たちが醸し出してるんです。総勢70人以上にも及ぶスタッフが多少時間にはルーズであるけれども、鈴木君はもちろんのことアーティスト全員に親身でした。展示はもちろんのこと、アーティストにも普通に接しているというか、みんなで作り上げていくような感じがしました。サッカーでいうと、もちろん
トータルフットボール。ファン・バステンというよりも、ヨハン・クライフ。美しく勝利せよ。
 鈴木君はというと、鈴木君は鈴木君でした。
 一緒に行ったのは、去年のアルスに、そして番組では紹介できなかった名古屋(ISEA2002)に続き3度目ですが、やっぱり鈴木君と一緒に仕事をして面白かった、というのが感想です。

 また、どこかで鈴木君と仕事をできればなと思います。
 それでは。
 美しく勝利せよ。

デジタルスタジアム 
前田聖志 
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