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祝! もんスペシャル放送に寄せて

「もん」コーナーを演出している荒木です。

毎回このコーナーは、
“にっぽんに古くから伝わる、もん。“というナレーションで始まります。 

もん。
わたしはこの言葉の響きが気にいっています。
“紋”ではなく“もん”。
平仮名にして読んだ方がリズムを感じるんです。
それに、漢字より可憐で愛らしい感じがしませんか?
そう思って、ナレーターの渡辺篤史さんに読んでいただく原稿には、
必ず“もん”と表記してお渡ししています。
渡辺さんの声は、なんとも魅惑的なバリトンです。
紋という気品溢れるデザインに寄り添いながら、
愛着も感じられるように“もん”と読んで頂いています。 

さてきょうは、番組ではお伝えできない紋の美しさをご紹介します。
作図途中の姿です。

mon_araki_1.jpg

これは 今制作中のある紋(ヒントは 鳥)の作図ですが、
円が幾何学的に、リズミカルに交わっている様子はそれだけで美しい作品です。
番組では、どの円のどの部分が使われて紋になっているのか“細部”を紹介しているので、
作図の全容までは中々お見せできないんです。
こちらも、ある紋を描く途中の様子です。

mon_araki_2.jpg

わたしには 紋 が楽しく遊んでいるようにも見えてきます。

円と線で、どんなものでも描き出す紋。
描き方に一定の基準はありますが、
ディテールは絵師のセンスと力量に委ねられています。
菊なら菊、鶴なら鶴、でも全部同じカタチではないんです。
番組でお世話になっている絵師・波戸場承龍さんは、
ときどきこんな風に呟きます。
「それは、俺のカタチじゃない…」
紋帳(たくさん紋が掲載された事典)の中から選んで図案を決めていますが、
そこに描かれているのは標準的な目安に過ぎません。
葉や花びらの可憐さ、鳥の目の優しさ、広げた翼の躍動感…
円の大きさや重ね方を調整してニュアンスを出し、
“承龍菊”、“承龍鶴”を描いているんです。
「俺のカタチじゃない…」という言葉を初めて聞いたとき、
正直とても驚きました。
だって、わたしの周りにある「俺の…」は、家とか、嫁とか、ハンバーグとか…
いや失礼しました。
もちろん分かるんですよ。
作家に自分の文体があるように、
サッカー選手に自分のプレースタイルがあるように、
紋の絵師という名のアーティストに自分のカタチがあるのは当然です。 

にっぽんの至る所にある紋は、
そういう人たちが作っているんです。 

もんスペシャル放送予定
5月13日(土)/5月27日(土) 午前7:00~  NHK Eテレ

5月18日(木)/6月 1日 (木) 午前11:15~ BSプレミアム

15分の番組の内、大半を“もん”で埋め尽くすというスペシャル回です。
ぜひご覧ください。