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制作スタッフによる現場日誌

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おとなスペシャル放送に寄せて

《君は見ているが、観察していない》

ご存知の方も多いかもしれませんが,
シャーロックホームズがワトソンに放つ有名なセリフです(「ボヘミアの醜聞」)。
幼い頃に読んだ本ですが、
大人になったいまも、このセリフをよく思い出します。
当然ながら“見ること”と“観察すること”では、得られる情報量と、
考察の深さが全く違いますよね。

ディレクターを担当した荒木です。
今回のおとなスペシャルは、
朝 起きてから眠りにつくまで、おとなの日常にある“当たり前”を
深く“観察”し直すことからスタートしました。

 例えば、文字(フォント)。
今 こうして入力しているパソコンの1文字1文字は、
デザイナーが100分の1mmまで考え抜いたデザインです。
“美しさ”と“読みやすさ”のせめぎ合いを繰り返しながら、
日々 新フォントの開発が続けられています。
写真はその文字を扱ったコーナー「FONT BAR」。
3つの「清」、どこがどう違うか分かりますか?(構成:池田拓郎 / Animator:ミズヒロ)

 

otona1.pngotona2.png

 

続いては消費税について。
店で支払いを済ませた後、いつもはすぐに捨ててしまうレシートを、
“観察”してみると、思わぬ発見が…。

 otona3.png

この“消費税 等”の“等”ってなんでしょう?番組では、
この“等”を視覚化したコーナー「解散!」も放送されます。(Creator:岡崎智弘)

 otona4.png

 

アプローチの1つとして、勝手知ったる街を他者の目線(になったつもり)で
観察し直してみました。例えば、赤ちゃん連れ、外国人観光客、救急患者…
すると、知っているはずの街の、知らなかった姿が浮かび上がります。
下記の写真はそのコーナー「都市のレイヤー」の1シーンで、主に観光客が利用する
あるものの分布です。場所は新宿。この黄緑のアイコン、何を表していると思いますか?
念のため「ホテル」ではありません…。(Creator:大西景太)

 otona5.png

 

ひょっとすると、
世の中を観察する興味は、
子供の頃の方が強かったという方が多いかもしれません。
わたしもそうなんですが、毎日が新しい事の連続で、好奇心も強く、
センス オブ ワンダー(不思議な感動)に満ちていました。
大人になった今、あの特別な感覚を取り戻すのはとても難しいことですが、
この番組の制作中は、確かに、
あの頃と同じような ワクワクする日々を過ごしていました。

「観察って面白い(そして果てしない)!」

 皆さまにも“大人の日常に潜むワクワク”を楽しんで頂けたら幸いです。

 

デザインあ おとなスペシャル
1月3日 午後9:25~9:45(再)
1月6日 午前0:30~0:50(再)※5日深夜

ご紹介した以外に、レギュラー版でも活躍しているクリエーター、
平本宗一郎、柴田大平、Plaplax、山中有 等のいつも以上に個性的で、
オトナな作品がお楽しみ頂けます。

 

祝! もんスペシャル放送に寄せて

「もん」コーナーを演出している荒木です。

毎回このコーナーは、
“にっぽんに古くから伝わる、もん。“というナレーションで始まります。 

もん。
わたしはこの言葉の響きが気にいっています。
“紋”ではなく“もん”。
平仮名にして読んだ方がリズムを感じるんです。
それに、漢字より可憐で愛らしい感じがしませんか?
そう思って、ナレーターの渡辺篤史さんに読んでいただく原稿には、
必ず“もん”と表記してお渡ししています。
渡辺さんの声は、なんとも魅惑的なバリトンです。
紋という気品溢れるデザインに寄り添いながら、
愛着も感じられるように“もん”と読んで頂いています。 

さてきょうは、番組ではお伝えできない紋の美しさをご紹介します。
作図途中の姿です。

mon_araki_1.jpg

これは 今制作中のある紋(ヒントは 鳥)の作図ですが、
円が幾何学的に、リズミカルに交わっている様子はそれだけで美しい作品です。
番組では、どの円のどの部分が使われて紋になっているのか“細部”を紹介しているので、
作図の全容までは中々お見せできないんです。
こちらも、ある紋を描く途中の様子です。

mon_araki_2.jpg

わたしには 紋 が楽しく遊んでいるようにも見えてきます。

円と線で、どんなものでも描き出す紋。
描き方に一定の基準はありますが、
ディテールは絵師のセンスと力量に委ねられています。
菊なら菊、鶴なら鶴、でも全部同じカタチではないんです。
番組でお世話になっている絵師・波戸場承龍さんは、
ときどきこんな風に呟きます。
「それは、俺のカタチじゃない…」
紋帳(たくさん紋が掲載された事典)の中から選んで図案を決めていますが、
そこに描かれているのは標準的な目安に過ぎません。
葉や花びらの可憐さ、鳥の目の優しさ、広げた翼の躍動感…
円の大きさや重ね方を調整してニュアンスを出し、
“承龍菊”、“承龍鶴”を描いているんです。
「俺のカタチじゃない…」という言葉を初めて聞いたとき、
正直とても驚きました。
だって、わたしの周りにある「俺の…」は、家とか、嫁とか、ハンバーグとか…
いや失礼しました。
もちろん分かるんですよ。
作家に自分の文体があるように、
サッカー選手に自分のプレースタイルがあるように、
紋の絵師という名のアーティストに自分のカタチがあるのは当然です。 

にっぽんの至る所にある紋は、
そういう人たちが作っているんです。 

もんスペシャル放送予定
5月13日(土)/5月27日(土) 午前7:00~  NHK Eテレ

5月18日(木)/6月 1日 (木) 午前11:15~ BSプレミアム

15分の番組の内、大半を“もん”で埋め尽くすというスペシャル回です。
ぜひご覧ください。