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制作スタッフによる現場日誌

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デッサンは回る

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「デッサンあ」担当の阿部です。

このコーナーでは、毎回ひとつのモチーフを中心に置き、その周りをぐるりと12名の老若男女が囲み、そのモチーフをデッサンします。時計に例えると中心にモチーフがあって、12個の数字の位置に参加者がいるという感じです。それぞれの人が30度ずつズレた位置から同じモチーフを見てデッサンすることになります。最後にみなさんが描き終えたデッサンをパラパラ漫画のように順番に表示すると描かれたモチーフが回転しているように見えてきます。

私は美大出身なんですが、美大受験には大抵デッサンの実技テストがあるため予備校などでさんざんデッサンをしました。その時は「デッサンあ」のように完全に同心円で均等に一列に並ぶようなことはありませんでしたが、やはりみんなでモチーフをぐるりと囲みます。制限時間が経ったら全員の絵を壁に並べて講師による講評が行われます。講評ではデッサンの技術の差(優劣)を見ます。それはそれで面白いのですが、もっと単純に、モチーフはたった一つなのに、各生徒によって、さまざまな角度、さまざまなタッチで描かれた絵を一覧すること事態がとても面白いと感じていました。
上手なデッサンを見る楽しさもありますが、「群れ」としての多様なデッサンを一度に見る楽しさ。

たまに、偶然ですが、隣りあった席で描かれたデッサンがそのまま連続して並ぶことがありました。それをひとつひとつを連続して見ていくと、視点が移動したような感覚がするのです。自分がムービーのカメラになり動いてモチーフを写しているような気分です。

この時、等間隔で同じ高さで並んで描いてパラパラ漫画のように次々切り替えればモチーフが回転し続けているように見えるはずだというアイデアが生まれました。「デッサンあ」のアイデアは高校生の時から温め続けていたものだったのです。それが不思議なご縁で「デザインあ」のひとつのコーナーとして具体化したのです。

絵のレベルが同じくらいの人が12人並ぶと滑らかに回転して見えますが、コーナーでは、子どもから大人まで、絵の得意な人そうでもない人、老若男女が一緒に描くので、回転の動きがデコボコして見えます。それぞれの人の物の見方や描き方の違いが、そのデコボコになって表れているのです。その時の12人の手でモチーフが作り直されたようにも感じられるところが楽しいと思っています。

そんな「デッサンあ」ですが意外と苦労するのがモチーフ選びです。
選び方の基本になるのは、

・誰もが知っているもの
・じっくり見てみるとデザインや造形的な発見があるようなもの

です。しかし、現実的にはその他に様々な条件があります。例えば

・スタジオに持ち込めるもの
・小さすぎず、大きすぎないもの

12人の人がイーゼルを置いて等間隔に円を描けるサイズがあり、モチーフはその中央に置けるサイズで無くてはなりません。中心から人物までの距離(半径)も決まっていますのであまり小さいものですとよく見えません。

大体1〜2㎥程度が目安でしょうか。イレギュラーで一度外ロケで、消防車なんて大物の時もありましたがさすがにモチーフから離れすぎてしまい12人では上手く回転して見えません。基本はスタジオです。まだ条件があります。

・1時間くらい動かないもの

ノージー、サンタクロース、ピエロ、消防士、ボディービルダー、獅子舞、ゴン太くんなど、人やキャラクターにモチーフとなっていただいたこともありましたが、みんなが絵を描いている間はジーっと動かず我慢して貰う必要があるのです。休憩を挟んだ後も同じポーズが取れないと困ります。ですので動物なんかはモチーフとして素晴らしいのですが現実的ではありません。

そしてさらに上記に加えて「デッサンあ」独特の条件がまた選択肢を狭めます。

・回転体でないもの

回転体と言うと聞きなれない言葉かもしれませんが要は円柱状のものの事です。360度からぐるりと眺めてもほとんど形の変わらないものは、角度を変えて描く面白みが無くモチーフになり難いのです。さらに言うと左右対称、前後対称の物も反転した形なので本当はあまり望ましくないのです。ところがいざモチーフを考えてみるとかなり多くの物が回転体だったり、左右対称だったり、前後対称だったりすることに気が付きました…。欲を言えばどの角度から見ても面白く、描きがいのある形だと最高です。

とは言うもののモチーフ選びで一番大切なのは最初に上げたこの2点です。

・誰もが知っているもの
・じっくり見てみるとデザインや造形的な発見があるようなもの

何か良いモチーフがありましたらぜひ番組までご連絡下さい。