※NHKサイトを離れます。

あブログ

制作スタッフによる現場日誌

現在位置
  1. あブログトップ
  2. 2018年1月

赤い人について私が知っている二、三の事柄

今回の「うごきのデザイン」は「自動改札」です。

台本をつくるにあたり、早朝の駅の風景を思い浮かべていたら「牛乳とあんぱん」で、
頭の中がいっぱいになりました。

右手に「牛乳」。
左手に「あんぱん」。
向かうは世間という名の大海原。

進め赤い人。
負けるな赤い人。
閃きまでもう一息だ。

 

FONT BAR

例えばウイスキーバーでウイスキーを注文する時、スコッチ、アイリッシュ、ジャパニーズなど、ざっくりとしたジャンル分けは何となく分かりますが、仔細に見ていくと、素人にはなかなか違いが分かりません。
フォントの場合、明朝体、ゴシック体など、ざっくりとした書体のジャンルは理解していても、さらに似たようなフォントの微差の領域に話が及ぶと、どれも同じに見えてしまいます。

お酒の場合、「マスター」がいることで、お酒がよりいっそうおいしくなることがあります。
卓越した知識と話術で、繊細な味の違いを解説し、頼んだ客が、自分のイメージにぴったりのお酒だと感じることができるからです。
フォントはお酒ではありませんが、微差を楽しむ、という点では共通しています。どこか嗜好品に近い、マニア心をくすぐる何かがあるのかも知れません。日常の仕事や友達にメールを送るような場面で、自分の気分や伝えたい気持ち、内容に応じてフォントを使い分けられたら、とても粋だし、素敵ですよね。

もしも、バーで提供するのがお酒でなくフォントだったら。マスターが超フォントに詳しかったら。そんな妄想の果てに実現したのが「FONT BAR」の世界観です。抽象的なSF空間は、アニメを作ったミズヒロさんの素晴らしいアイデアによるものです。

また、フォントの取材にあたっては、両見英世さんはじめ、タイプフェイスデザイナーの方々に大変お世話になりました。実ははじめ、「初恋の味」を明朝体で表現する、というお題を設定していたのですが、「游明朝は学級委員長」「筑紫明朝は芸術肌」「石井オールド明朝はタートルネックがよく似合う」などなど、私の想像をはるかに超える濃密なフォントークを繰り広げていただきました。この場を借りてお礼申し上げます。

最後に、NHKには、「NHK明朝」と「NHKゴシック」なるものが存在します。あまり私も使用したことがありませんが、もし見つけたら密かに萌えていただければと思います。
 

nhkfont2.jpg 

ディレクター 池田拓郎

Eテレ「デザインあ おとなスペシャル」
再放送 2018年1月6日(土)前0:30~*5日深夜 

モノの向こう側を想う

「おとなスペシャル」の「デザインの観察」では、使い終わったモノを、資源としてもう一度使う方法=リサイクルを取りあげました。コーナーの最後にOECD加盟国のリサイクル率を示しましたが、日本は25位と決して高くありません。

どうすれば、リサイクル率を向上させることができるのでしょうか?

そのアンサーの一つが、番組で放送した「捨てたあとを考える」デザインの数々。「環境配慮設計」という名前で呼ばれているものの一つです。
番組中で登場したした、素材を統一する・簡単分解できるといった視点で製造された商品のほか、環境に優しい素材を使ったり、だるまのようにリサイクル素材を用いてものづくりをする、などといった観点から商品を設計します。ゴミを捨てる段階ではなく、生産の段階からゴミになったときを想像してアプローチをすることで、リサイクル不可=焼却処理・埋立となるモノを減らす。モノの循環そのものをデザインすることの重要性を伝えたいと思い、構成に組み込みました。

recycle.jpg


製品の評価のしかたにもこれまでとは異なる視点が入ってきています。「性能」と同じぐらい高い水準で、「ライフサイクルアセスメント」が重要視されています。

一つの商品を、原材料の調達から、生産・流通・使用・廃棄に至るまで、モノのライフサイクルを、「どんな原料を使うか」「環境への影響はどうか」「労働力の搾取はないか」といった視点から評価をする手法です。製品がどのような経緯を辿って店頭に並んでいるのかを、大々的に公表している企業も出てきています。
ライフサイクルの視点を持って消費を行うことが、広くは社会貢献につながることを指し、最近は「エシカル(=倫理的な)消費」と言う言葉なんかもあったりします。

モノは、私達の手を離れたら、「資源」になります。私たちは、そのモノを所有する一時的な権利をお金を使って行使しているに過ぎません。
使い終えたモノは再び社会へと還元する必要があります。たとえば、家に眠っている昔の携帯などには、無数のレアメタルが眠っています。現在は母数があまりに少なく、採算が取れないためリサイクルの対象になっていませんが、一人ひとりが意識を変えることで、リサイクルの土俵に乗ります。レアメタルを自国で生産できるようになると、アフリカやインド、中国などで行われている、劣悪環境下での採掘や、基盤解体に割かれる児童労働を削減することにつながると考えられています。

生産者と消費者が、お互いにほんの少し、モノの向こう側を想像する。これだけで、リサイクル率はぐいっと上がると言われます。

取材を通じて、私は普段の生活態度がすっかり変わってしまいました。


ディレクター 池田拓郎

 「デザインあ おとなスペシャル」
再放送 2018年1月6日(土)前0:30~ *5(金)深夜
Eテレ

おとなスペシャル放送に寄せて

《君は見ているが、観察していない》

ご存知の方も多いかもしれませんが,
シャーロックホームズがワトソンに放つ有名なセリフです(「ボヘミアの醜聞」)。
幼い頃に読んだ本ですが、
大人になったいまも、このセリフをよく思い出します。
当然ながら“見ること”と“観察すること”では、得られる情報量と、
考察の深さが全く違いますよね。

ディレクターを担当した荒木です。
今回のおとなスペシャルは、
朝 起きてから眠りにつくまで、おとなの日常にある“当たり前”を
深く“観察”し直すことからスタートしました。

 例えば、文字(フォント)。
今 こうして入力しているパソコンの1文字1文字は、
デザイナーが100分の1mmまで考え抜いたデザインです。
“美しさ”と“読みやすさ”のせめぎ合いを繰り返しながら、
日々 新フォントの開発が続けられています。
写真はその文字を扱ったコーナー「FONT BAR」。
3つの「清」、どこがどう違うか分かりますか?(構成:池田拓郎 / Animator:ミズヒロ)

 

otona1.pngotona2.png

 

続いては消費税について。
店で支払いを済ませた後、いつもはすぐに捨ててしまうレシートを、
“観察”してみると、思わぬ発見が…。

 otona3.png

この“消費税 等”の“等”ってなんでしょう?番組では、
この“等”を視覚化したコーナー「解散!」も放送されます。(Creator:岡崎智弘)

 otona4.png

 

アプローチの1つとして、勝手知ったる街を他者の目線(になったつもり)で
観察し直してみました。例えば、赤ちゃん連れ、外国人観光客、救急患者…
すると、知っているはずの街の、知らなかった姿が浮かび上がります。
下記の写真はそのコーナー「都市のレイヤー」の1シーンで、主に観光客が利用する
あるものの分布です。場所は新宿。この黄緑のアイコン、何を表していると思いますか?
念のため「ホテル」ではありません…。(Creator:大西景太)

 otona5.png

 

ひょっとすると、
世の中を観察する興味は、
子供の頃の方が強かったという方が多いかもしれません。
わたしもそうなんですが、毎日が新しい事の連続で、好奇心も強く、
センス オブ ワンダー(不思議な感動)に満ちていました。
大人になった今、あの特別な感覚を取り戻すのはとても難しいことですが、
この番組の制作中は、確かに、
あの頃と同じような ワクワクする日々を過ごしていました。

「観察って面白い(そして果てしない)!」

 皆さまにも“大人の日常に潜むワクワク”を楽しんで頂けたら幸いです。

 

デザインあ おとなスペシャル
1月3日 午後9:25~9:45(再)
1月6日 午前0:30~0:50(再)※5日深夜

ご紹介した以外に、レギュラー版でも活躍しているクリエーター、
平本宗一郎、柴田大平、Plaplax、山中有 等のいつも以上に個性的で、
オトナな作品がお楽しみ頂けます。