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取材ウラ日記
「ダーウィンが来た!生きもの新伝説」のロケはディレクターとカメラマンの2人きり。耳寄りな情報があれば、砂漠やジャングル、極寒のツンドラ、世界中どこへでも出かけていきます。このコーナーでは、ディレクターの撮影裏話をのせていくことにしました。これを読むと、一味違った番組の楽しみ方ができるかもしれません。
この先はディレクターの個人的見解と誇大な表現が満載です。マユにツバをつけてお読みください。
沖縄・西表島編 →取材の成果:「火の鳥 森をダイブ」
取材ウラ日記のバックナンバー
火の鳥、アカショウビン
赤く大きなくちばしが目を引きます
赤く大きなくちばしが目を引きます
火の鳥アカショウビン
火の鳥アカショウビン
「火の鳥」といえば、漫画家、手塚治虫さんの創作として知られていますが、それとは別に、火の鳥と呼ばれる鳥が日本に実在することをご存知でしょうか。その鳥は、燃えるような赤いくちばしをもち、全身がほぼ赤。まさに炎のイメージがぴったりの鳥です。その名もアカショウビン(赤翡翠)。ショウビンというのはカワセミの別称ですから、アカショウビン=赤いカワセミという訳です。

火の鳥アカショウビンは、印象的な赤い体がかもし出す不思議な魅力と、山奥にひっそり暮らしてなかなか見られないという珍しさから、多くのバードウォッチャーやアマチュアカメラマンがあこがれる鳥でもあります。実は、鳥好きの私もその魅力に取り付かれた人間の1人。なみなみならぬ意気込みで撮影に臨みました。
謎のダイブを狙え!
撮影地、西表島
撮影地、西表島
亜熱帯のジャングルが広がっています
亜熱帯のジャングルが広がっています
今回撮影に訪れたのは、沖縄・八重山諸島の西表島。イリオモテヤマネコを始め、固有の生きものが数多く暮らすことで知られる島です。実はこの島、日本の他の場所では目にすることさえ難しいアカショウビンがあちこちで見られる場所でもあります。その証拠に、森で耳を澄せば、「キュロロロ〜」という独特な鳴き声が、何重奏にもなって聞こえてくるのです。

なぜ西表島には、たくさんのアカショウビンが見られるのかといいますと、日本では八重山諸島の島々だけにある“あるもの”が大きく関係していると言います。それは、森の中にある茶色いこぶのような固まり。それがアカショウビンにとって欠かせない大切なものなんだそうです。さらにアカショウビンは、その固まりに向かってダイブすると、なんと突き刺さると言います。一体どんなことが起るんでしょう。そして大切な“あるもの”とは果たして何?謎のダイブ、その真相に迫ります。
スクープ映像は入念な準備から
木に付いている茶色い固まり
木に付いている茶色い固まり
1m以上の巨大なものもあります
1m以上の巨大なものもあります
まず謎のダイブを撮影するために、最初にしたことをご説明しましょう。それはダイブが見られるという、茶色いこぶのような固まりを見つけることです。5月上旬、撮影に先立って森に入り、目的の固まりを探します。うっそうとした亜熱帯のジャングルをナタでかき分け、ヤブこぎしていきます。道を作りながら進むと、意外にも、森の中には目的の固まりがたくさんありました。今回発見したのはおよそ60個。直径1メートル以上の巨大なものもありました。見つけるたびに地図にその位置を書き込み、大きさや周りの環境などを詳細に記録します。「この中のどこかで、謎のダイブが見られるはず」 でも、いくらダイブをしたとしても、撮影出来なければ話になりません。大きくて見通しが良く、なおかつ近くでアカショウビンが鳴いているものだけに狙いを絞ることにしました。
機材と撮影方法
撮影場所、シダやツルを編んでカムフラージュ
撮影場所、シダやツルを編んでカムフラージュ
特殊機材ハイスピードカメラ
特殊機材ハイスピードカメラ
ハイスピードカメラ
ハイスピードカメラ
真ん中にある茶色い固まり
真ん中にある茶色い固まり
この固まりを狙うことにしました
この固まりを狙うことにしました
今回、撮影に備えて特別に準備した機材は、これまでも数々のスクープ映像を捉えてきたハイスピードカメラ。一瞬の出来事を超スロー映像で表現できるため、謎のダイブを克明に記録するためには欠かせない特殊機材です。でも、このハイスピードカメラは「ダーウィンが来た!」では大人気の機材。我々だけで長期間占有できるものではありません。そのため、ダイブの撮影に与えられた時間は3週間弱。なんとかこの期間内で、撮影を成功させなければなりません。

撮影は固まりから10メートルほど離れた場所に、大人一人がやっと入れるほどの小さなテントを建て、そこから行なうことにしました。周りをツルやシダやで目立たないようにカムフラージュ、テントの中に人と撮影機材が入ります。期待と不安が入り交じりながらの撮影開始です。それが過酷な持久戦の始まりだったとは…、その時は知る由もありませんでした。
冷や汗もの、超持久戦
撮影は朝から晩まで14時間
撮影は朝から晩まで14時間
がっくり…今日も来ませんでした
がっくり…今日も来ませんでした
撮影は毎日、日が昇る朝5時過ぎに、山中に機材を担ぎ込んでカメラをセッティング。そして暗くなり始める夜7時頃までの約14時間行ないました。アカショウビンに警戒されないように、テントの中でひたすら待ち続けます。中は狭く、身動きもできないほど。立ち上がれないから腰は痛いし、日中は相当蒸し暑くなります。当然、蚊の侵入も防げません。外に出られるのは昼食とトイレの時だけという過酷な条件です。それでも、アカショウビンが来てくれればまだ良いのですが、待てど暮らせど、いっこうに来る気配はなし。さらに困ったことには、目をつけていた別の場所にダイブの形跡があったり、カメラアングルを変えた一瞬のすきにコトが起こったり。謎のダイブがいつどこで起こるのかなかなか分からないんです。「本当にここに来るんだろうか…」、「僕は帰れるのだろうか…」不安は募るばかり。でも目の前にある固まりを信じて待つしかありませんでした。
奇跡の大逆転劇
アカショウビンが目の前に!
アカショウビンが目の前に!
最後のチャンス
最後のチャンス
謎のダイブ
謎のダイブ
一体、どうなるのか?
一体、どうなるのか?
火の鳥と茶色い固まりに驚くべき関係が!
火の鳥と茶色い固まりに驚くべき関係が!
収穫がないまま時間だけが過ぎ、2週間以上が経ちました。カメラマンとの会話は「今日も来ませんでしたね…」という寂しい報告だけ。ハイスピードカメラの返却期限を2日伸ばしてもらいながらも、とうとう返却日は明日というところまで追い詰められました。他の撮影クルーの都合もあります。これ以上引き延ばすことは出来ません。最後の望みをかけてテントへ。そして、いつものように頭の中で華麗なダイブの絵を思い描きながら待ちました。そのとき…近くで「キョロロロ〜」と、鳥の鳴き声がしたんです。ハッと我に返り、テントの隙間から外をのぞきます。なんと、目の前にアカショウビン!しかも今にも何かしそうな雰囲気です。震える手を押さえながら、 を込めてカメラを起動。これを逃したら最後、もう二度とチャンスは来ないでしょう。そして次の瞬間、茶色い固まりに一直線、火の鳥がダイビングを繰り出したんです。それから数十分、無我夢中でカメラを回し、ダイビングの一部始終を収めることに成功しました。

立ち去ったアカショウビンを確認して「諦めずに待っていれば、良いこともあるんだなぁ…」という安堵のため息。それと同時に、生きものの行動を予測して待った末に、狙ったものを撮影するという、自然番組を作る醍醐味を再確認したのです。

番組では、謎のダイブの真相、そして自然豊かな西表島ならではのアカショウビンの暮らしが明らかになります。火の鳥の新伝説、ご期待下さい。
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