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取材ウラ日記
「ダーウィンが来た!生きもの新伝説」のロケはディレクターとカメラマンの2人きり。耳寄りな情報があれば、砂漠やジャングル、極寒のツンドラ、世界中どこへでも出かけていきます。このコーナーでは、ディレクターの撮影裏話をのせていくことにしました。これを読むと、一味違った番組の楽しみ方ができるかもしれません。
この先はディレクターの個人的見解と誇大な表現が満載です。マユにツバをつけてお読みください。
宮崎・枇榔(びろう)島編 →取材の成果:第62回「絶壁落下!ヒナの大冒険」
取材ウラ日記のバックナンバー
“究極の海鳥”に迫る!
大海原で暮らす
大海原で暮らす
断崖の島に上陸
断崖の島に上陸
カンムリウミスズメってみなさんご存知ですか。
この鳥をひと言で言うなれば、「究極の海鳥」。何しろずーっと海の上を泳いで暮らしています。空を飛んでいるでもなく、陸に上がるでもなく、泳いでいるんです。海鳥の中でも、最も陸と決別し、海で生きることを選んだ、海鳥の中の海鳥なのです。
そして何より驚くのは、巣立ちの仕方。
なんと生まれたばかりのヒナが、真夜中に崖を転げ落ちながら海に向かうのです。まさに命がけの大冒険です。
彼らはどうしてそんな過酷な巣立ちをするのでしょう?
その謎を解き明かすべく、カンムリウミスズメが最も多く集まる島、宮崎県の枇榔(びろう)島に向かいました。
撮影は予想通り、簡単ではありませんでした。何せ相手は究極の海鳥。実に警戒心が強く、なかなか姿を見せてくれません。
どうすれば、彼らのありのままの姿を撮影できるか。試行錯誤の繰り返しです。ある時は待ちぶせ、またある時は大捜索。超高感度カメラ、赤外線カメラ、リモコンカメラ、超望遠カメラ、虫の目カメラ、ハイスピードカメラ、潜水カメラ、小型水中カメラ・・・。
我々は様々な手を尽くし、これまでほとんど撮影されたことのなかったカンムリウミスズメの知られざる世界に迫っていったのです。
海の捜索 船長さんの目が頼り!
船で捜索
船で捜索
カンムリウミスズメを探して
カンムリウミスズメを探して
超望遠カメラ
超望遠カメラ
小型水中カメラ
小型水中カメラ
カンムリウミスズメは昼間、陸上には絶対姿を現わしません。
そのため、我々は彼らの姿を探し求めて、船で海に出ます。
これがなかなか見つからないんです。カンムリウミスズメは体長24センチほどと小さく、黒〜灰色なので、海と同化して見えます。それを広い海の上で見つけようというのですから、大変です。少し波が高いとまったくと言っていいほど、見つかりません。
そんな海での撮影で、強力な戦力となったのが、漁船や渡船の船長さんです。彼らの目はすごいです。数キロ先にいるカンムリウミスズメを見つけてしまいます。
船長さん「あそこに2羽おるね」
ディレクター「えっ、どこですか?」
船長さんの言う方向に船を走らせます。まだ我々スタッフの目には見えません。だいぶ近づいてきてようやく、、
ディレクター「あ、ほんとだ!いた、いた!(すごい、あれが見えてたのか・・・)」
私もカンムリウミスズメ探しは、2年目。この目で見つける!と意気込んでいたものの、やはり長年海で仕事をしている船長さんの目にはかないませんでした。
船長さんたちは、我々撮影チームに欠かせない大事なメンバーでした。
撮影成功!真夜中の巣立ち
取材班
取材班
超高感度カメラで待つ
超高感度カメラで待つ
親子が崖に!
親子が崖に!
今回の番組の目玉は、ヒナの巣立ち。そのありのままを撮影しようと、とっておきの秘密兵器を用意しました。なんと月明かりでも撮影できるという、最新の超高感度カメラです。
しかし、なかなかヒナは姿を現わしてくれません。わずかな気配も逃さぬよう、目と耳に神経を集中させて、一晩中崖の上を探し回ります。ふぅ〜、今夜も見られなかった・・・。そんな夜をいくつ数えたでしょう。
「カサ、カサ、カサ」 はっ!・・・なんだ、フナムシか。
(フナムシの歩く音にさえ反応してしまうほど、研ぎ澄まされた神経)
「ピー ピー ピー ピー」はっ!ヒナの鳴き声!?何度幻聴を聞いたことでしょう。
「ぴょこ ぴょこ ぴょこ」はっ!走るヒナ!?寝袋の中で、何度夢を見たことでしょう。

「ピー ピー ピー ピー」また幻聴?
「ぴょこ ぴょこ ぴょこ」また夢?
いやっ、間違いありません。現実です。やっと現れたんです。
ああ、危ない!!ヒナはすごい勢いで崖を落下していきます。
しかし、実はそれを撮る方も危険でした。ヒナと一緒に我々も崖から落ちてしまいそうになります。朝には膝がガクガクなんてことも。

粘りに粘って数少ないチャンスをものにできたとき、我々は、「ふーっ」と息をつき、顔を見合わせます。その「ふーっ」は、まだ止まない興奮を押さえながら胸のうちでつぶやく「よしっ」なのでした。
カメラの前では予想外の出来事がたくさん起こりました。きっとみなさんのまだ知らない命のドラマ、ぜひご期待ください。
撮影を終えて、今
枇榔島
枇榔島
枇榔島から見る夕日
枇榔島から見る夕日
今頃、彼らはどこの海にいるのだろう。
枇榔島からの巣立ちを終えたカンムリウミスズメたちが、どこの海で暮らしているのか、それはまだ謎に包まれているそうです。

海に潜りながら、飛ぶことを忘れないカンムリウミスズメ。
彼らは、飛ぶことをやめたペンギンが辿ってきた進化の過程を、今に教えてくれているとも言えます。彼らも、何千万年後には、ペンギンと同じように飛べない鳥になるかもしれないのです。 いや、しかし、その前に絶滅してしまう可能性の方が高いかもしれません。

そう考えると、ペンギンもカンムリウミスズメも今我々が目にすることのできる生きものたちはすべて、途方もなく長い年月をかけて進化を遂げ、今やっとあるのだ、ということにあらためて気づかされます。そしてこれから先も、どんな進化を遂げるかわからない、実はみな進化の途中にあるのだということに。
生きものたちの種の重み、命の重みに圧倒されます。

未完成の命たち。きっとみな必死に、みな不器用に生きているんですね。
空と海の間に生きるカンムリウミスズメの不思議な命の営みがいつまでも続くことを願ってやみません。

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