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取材ウラ日記
「ダーウィンが来た!生きもの新伝説」のロケはディレクターとカメラマンの2人きり。耳寄りな情報があれば、砂漠やジャングル、極寒のツンドラ、世界中どこへでも出かけていきます。このコーナーでは、ディレクターの撮影裏話をのせていくことにしました。これを読むと、一味違った番組の楽しみ方ができるかもしれません。
この先はディレクターの個人的見解と誇大な表現が満載です。マユにツバをつけてお読みください。
第2回小笠原諸島編→取材の成果「第2回:幻の巨大イカを見た!」
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幻の巨大イカを追え!
『ダイオウイカ』って聞いたことありますか? 最大で18メートルもの記録のある、とてつもなく巨大なイカです。
ただ目にできるのは、時おり海岸に打ちあがる死がいばかりで、これまで泳ぐ姿を誰一人として見たことがない、まさに『幻の巨大イカ』です。西欧では数多くの伝説がうまれたほど、ミステリアスな海の怪物なんです。
こんな得体の知れない巨大生物を番組の対象にしようというんですから、我々撮影スタッフの度胸もたいしたものというか、少々あきれ返るほどのもの。「そんな幻のようなモノを追いかけて、ホントに番組になるの?」なんて声もちらほらでした。
でも、ちゃんと撮影できるかもしれないという証拠は、たくさん?揃えたんですよ。
(証拠その壱)ダイオウイカの伝説では、しばしば深海でマッコウクジラと闘う様子が描かれます。ダイオウイカの巨体は、マッコウクジラの最高のご馳走といわれています。そんなマッコウクジラが一年中みられる凄い海があるとのとっておき情報が舞い込んだんです。

(証拠その弐)さらにその海で、水面にぷかぷか漂う巨大なイカの残がいが発見されました。専門家がよく調べたところ、そのイカはまさにダイオウイカでした。人よりも大きなイカの胴体には、マッコウクジラの歯形がくっきりと残っていたんです。

(証拠その参)さらにさらにその海の深いところから、巨大なイカが釣りあがりました。深海にひそむ魚を狙う深海漁業で、たまたま引っ掛かってきたのがダイオウイカでした。漁船にあがったときには瀕死の状態でしたが、まだ息があったというんです。
そんなダイオウイカの確かにひそむ海が、本当に実在していました。それも遠い外国のことかと思いきや、なんと身近な日本の海だったんです。東京から南に一千キロ、小笠原諸島でした。研究者とともに島に通い続けること3年半。ようやく番組の実現までこぎ着けたのでした 。
マッコウ顔アップ
証拠(1)マッコウクジラがいた
巨大イカ残骸と人
証拠(2)クジラの食べ残し発見
船上の巨大イカ
証拠(3)ホンモノが釣れた!
手は届かない! 暗黒の深海1000m
幻のダイオウイカは、いったい海のどこに住むんでしょうか?ひとくちに小笠原諸島の海といっても、海はあまりに広すぎます。マッコウクジラの目撃情報、ダイオウイカの漁獲情報・死骸の発見情報…。クジラ研究者、ダイバー、漁師さん、島の人たちへの聞き込み捜査は延々と続きますが、泳ぐダイオウイカの目撃者はやっぱり誰もいないんです。

ダイオウイカがひそむのは、水深数百メートル以上の『深海』といわれています。深海ってどんな世界なのか、みなさん、想像つきますでしょうか?取材しているスタッフでさえ、実際のところあまり実感がありません。太陽の光はほとんど届きません。目をしっかりとつぶった時のような真っ暗闇です。地上の百倍という強烈な圧力がかかり、人などぺちゃんこになってしまう世界です。いくら潜水ボンベを使っても、決して潜れない深さだということは間違いありません。

そんな深海にすむダイオウイカを撮影しようというんですから、撮影する機材も一筋縄ではいきません。物凄い圧力に耐えられる防水のカメラケース、暗闇を明るく照らす特殊ライト…。まったく手の届かない世界で、遠隔操作しなければなりません。機材の取り扱いをちょっとでも間違えると何にも映りません。機材の防水装置に少しでも緩みがあると、完全に水没して、撮影どころではありません。

考えつく限り、そして実際に何とか開発できる限りの撮影機材で挑戦です。海底に設置したり宙づりにして、自動的にハイビジョン撮影するカメラ(写真左)。30秒に1回ストロボの光を発して、連続的にデジタル写真を記録するカメラ(写真中央)。マッコウクジラの背中に取りつけて、獲物のダイオウイカの撮影を狙う小型カメラ(写真右)。

泳ぐダイオウイカの撮影は世界で誰も成功したことがありません。ですから、「撮影方法は何が正解なのか」、研究者も撮影スタッフも誰にもわかりません。手探り、暗中模索、試行錯誤、七転び八起き…。
「きっとこうした方がいいのかも…」というほんのわずかな直感だけが頼りでした。

では、ここでいきなりクイズです。 (※答えは番組のなかで)ダイオウイカの撮影を成功させたのは、いったいどの機材だったでしょうか?
特殊カメラ2台
深海ハイビジョンカメラ
小型カメラと魚
小型デジタルカメラ
クジラ追うボート
クジラ取りつけ型カメラ
怪物がいっぱい! 未知の世界
潜水艇にでも乗って、直接深海に潜っていけばいいじゃない?なんて言われることも良くありますが、そうできない理由もあるんです。水深一千メートルくらいの世界では、僅かにですが太陽の光が届くと言われています。もちろん人間には見えない量の光ですが、深海に特化した生き物では様子が異なります。かすかな光を巨大な眼で集めながら、目を使って生活しているというんです。そんな深海で、明かりを煌々と付けて移動する潜水艇は、当然のごとく目立ちすぎ。「怪しい物体がやってきた」と感づかれ、逃げられてしまうのがオチなんです。

ですから、撮影では、深海の暗くて静かな環境になるべく影響を与えないよう配慮しました。おかげで、今まで見たことのないような奇妙な世界の撮影に大成功!ここでは深海の変わり者に少し登場してもらいましょう。

まずは、からだ全体がぷよぷよの深海タコ、カンテンダコ(写真左)。深海でふわふわ漂って暮らすために、体の比重は海水とほぼ同じだといいます。番組の中では、このタコが深海でみせる鮮やかな泳ぎを世界で初めて紹介します。ギザギザにとがった歯と、大きな目を持つのは深海魚、バラムツです(写真中央)。狙った獲物はそう簡単には逃さないといいます。栄養が乏しい深海で生きるために、どん欲な性格の生き物も多いんだそうです。

ちょっとどこかで見たことのあるような魚、クロマグロです(写真右)。実は、小笠原諸島の水深数百メートルの深海をクロマグロが回遊してくるんだそうです。島の周りの深海は意外と豊かで、まだまだほとんどわかっていない未知の世界なんです。

世界で初めてのダイオウイカの姿をはじめ、詳しくは番組の中でご紹介しましょう。
カンテンダコ
深海で泳ぐ姿は必見!
深海魚
怪しげな魚もたくさん
マグロ
マグロもすむ小笠原の深海
世界一遠い場所!? 小笠原諸島
ダイオウイカのひそむ小笠原諸島に行くには、今のところ船でしか方法がありません。定期船が6日に1往復。東京・竹芝桟橋から小笠原諸島・父島まで25時間半の船旅です。世界各国への空路が整備されている現在、ある意味では、小笠原は行くのに時間がかかる世界で一番遠い場所の一つだといっていいのかもしれません。

でも、それだけにまさに「大自然」を感じることのできる世界でも稀有な場所でしょう。今回は、取材のほとんどが海の上でしたから、なおさらそう強く感じました。自分たちの360度すべてが大海原なんです。

太平洋にぽつんと浮かぶ島々の上空だけ、雲が生まれていきます。太陽は海と接するとき、絵の具では出せないような色で空と雲を染め上げます。真っ青な海面に、カジキ(魚)が背ビレを出して日向ぼっこしていたこともありました。次々に降り注ぐ流れ星、名前を知っている星がわからなくなるほどの満点の星空でした。

見渡すかぎり何にもない大海原と、その水面のはるか下の深海にひそむ幻のダイオウイカ。地球の大自然に埋もれる新伝説を肌で感じることのできる瞬間でした 。
小笠原の朝焼け
海から見た小笠原の朝焼け
カジキの背ビレ
バショウカジキの背びれ
小笠原の夕日
小笠原から見た夕日
おまけ
それにしても、取材で何度も訪れる小笠原諸島の魅力が尽きることはありません。東洋のガラパゴスとも呼ばれる島々の大自然に圧倒される日々。そして、長らく過ごした島をたつときの見送りには、涙腺がゆるむことしばしばです。
ヤドカリ看板
陸の上も相当おもしろい
港で見送る人
島を出る人に別れを惜しむ
見送る船
いつまでも見送りは続く
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