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深海日記VOL.2 伝説の海洋生物学者 マーク・アードマン博士

深海取材チームの一員として撮影に参加した、写真家の山崎エリナさんの同行記。番組には登場しない裏舞台も含め、素敵な写真とともに紹介します。

今回の深海調査の中心人物が、海洋生物学者マーク・アードマン博士。
国際環境保護団体、コンサベーション・インターナショナルで海洋保全プログラムのシニア・アドバイザーを努めている。

アードマン博士はインドネシア海域を20年以上研究してきたサンゴ礁の魚類の専門家。10年以上前、インドネシア・スラウェシ島でアジア初のシーラカンスを発見したという、知る人ぞ知る研究者だ。

とにかく体力も精神力もタフ。朝、スキューバダイビングで潜り、戻った足で潜水艇での深海調査を8時間。母船アルシアに戻ると、インタビューにミーティング。朝と夜の連続ダイブの日もある。

潜水艇にはトイレがない為、ダイブ前は食事と水分制限をしなければいけない。連日のダイブが、体にこたえないハズがない。
アードマン博士の過密日程を心配していたが、いつも「大丈夫」と答えて淡々と調査をこなし挑んでいく。

水深200m。潜水艇前方に「生きた化石」、ウミユリを発見。すると視界にオウムガイがプカプカとやってきた!もうアードマン博士は興奮状態、子供が夢中になるように目をキラキラ輝かせていた。そんなアードマン博士に注目してほしい。

まず、私たちが調査に挑んだのはインドネシア。ニューギニア島の西側にある「Raja Ampat(ラジャアンパット)」。600以上の島々が集まるエリアで、海洋生物の宝庫とも呼ばれる場所だ。
10年ほど前までは知る人も少なかったラジャアンパットを有名にしたのは、アードマン博士らの調査だった。一箇所で1500種以上の海洋生物、500種以上のサンゴが生きているすごい海。地球が生まれたまんまの美しい海域で、撮影は始まった。

しかし6月は潮流が荒く激しく、透視度が悪い。マンタのタグ付けの撮影にトライするも凄い荒波に流され苦戦し、水中撮影は困難を極めた。
水中カメラマン二人も体に鞭打ってのダイブが続いた。

だからといってダイブ撮影に挑まない訳にはいかない。ラジャアンパットを知り尽くしたアードマン博士と撮影ポイントの打ち合わせを何度も繰り返した。
この頃はカメラを向けることもシャッター音さえも気を遣ってしまう程の緊迫した空気だった。

ラジャアンパットの中でもっとも北のはずれにある孤島、アヤウ島に向かった。
アードマン博士とともに、深海調査のターゲットの一つ、シーラカンスの聞き込み調査をするためだ。

上陸するや否や島の人たちは太鼓や笛を奏でて大歓迎。島中に歓迎の音色が響き渡り、子供たちも行列に並んでリズムに乗って行進。
小さな子供も太鼓を叩いて一緒に歓迎。小さな太鼓が可愛い。

島中が大歓迎ムードでお祭りのように湧いていた。定期船もないアヤウ島では、めったに外部からの訪問客はいないため、賑やかな歓迎をするのだという。今回で7回目の訪問になるというアードマン博士の信頼の厚さを感じた。
アードマン博士のご挨拶に、島の人たちと大きな拍手。
そして、心尽くしの豪華な島の魚料理などが長いテーブルに色とりどりに整列していた。味は少しスパイスの利いたお料理、新鮮な魚にフォークが止まらなかった。
主食のタロイモは繊維たっぷり、しっかり味の付いたお料理にピッタリだ。

島の人たちと料理を食べながら談笑し、島を歩き回って聞き込み調査を行った。

博士の聞き込み調査は、インドネシアだけでなくパプアニューギニアなど、広い範囲で行われてきた。人々の表情、子供達の笑顔や瞳を見れば、どんな島かが伝わってくる。

子供達は風のように飛び回っている。
私も子供達と一緒に走り回って撮影。まるで、おにごっこのように「こっちだよ~~」とカメラを向けると「きゃ~~」と、走り出す子供達。
ケラケラ笑って、転がって、心が繋がる、思いが繋がる。

子供達の笑顔や瞳を見れば、どんな島かが伝わってくる。
美しい海、美しい島、美しい瞳、そして美しい海底・・・人と触れ合って更に深海への期待が膨らみ、久しぶりにみんなの顔から笑顔が溢れた。

この日、美しい夕暮れを撮影することが出来た。
よく見ると放射状の光が海から放っている。「これはなかなか見れない」「いいことあるよ」と、みんなで期待を膨らませた。

文・写真 山崎エリナ

[動画]研究者に密着 秘境の島訪問