このページではJavaScriptを使用しています。

奇跡の潜水艇 トライトンがやって来た!1. 3トンの潜水艇を人力で移動する!

はるばるフロリダから、あの最新型・潜水艇トライトンが、番組のためにNHKにやって来た!
トライトンをめぐる初夏の奮闘を紹介しよう。

巨大なコンテナが設置された

2013年初夏のある日。1つのコンテナがNHK西口駐車場へ到着した。巨大なクレーン車が茶色いコンテナを駐車場敷地に降ろす。

このコンテナの中身こそ―――そう、潜水艇トライトンだ。

2012年、世界初の深海でのダイオウイカ撮影を成し遂げたトライトン3300/3の兄弟機になる、トライトン1000/2だ。トライトン3300/3は3人乗りで水深1000mまで潜れるのに対し、トライトン1000/2は2人乗りで潜航深度300mになる。
潜水艇整備のために3人の技術者もフロリダからやって来た。この日は、潜水艇が無傷で運ばれたことを確認し、作業は終了。明日からが本番だ。

コンテナに斜めに押し込まれたトライトン

翌日朝9時、真夏を思わせる太陽が照り付けていた。コンテナの扉を開けると、トライトンが左にやや傾いた姿で入っている。横幅が広くコンテナに入り切らなかったため、なんとも不安定でバランスが悪そうだ。トライトンの特徴の一つである左右の黄色いバラストタンク(浮力調整用タンク)は取り外され、船体を支持する2本のポールがむき出しになっている。この2本のポールが、コンテナからトライトンを引き出すための最大の難関になる。
今日の作業では、コンテナから潜水艇を出し、スタジオまで運び入れなければならない。まずは、トライトンを十分に傾け、張り出した2本のポールがコンテナの入り口に引っ掛からないようにする。トライトンの下にジャッキを入れ、角材の高さ分まで上げてはさらに角材を滑り込ませる。かなり大胆かつ繊細な作業が繰り返される。 

2時間が経過した。
屈強な技術者3名がフォークリフト2台を重しとし、チェーンブロックという道具を使ってトライトンをコンテナより引き出す。殺人的な重さをいなし、角材が崩れないように微調整を重ねる繊細な作業が要求される。その上での力仕事が目の前で展開されていく。取材班が手伝おうにも、危険過ぎてかえって足手まといになりそうだ。

作業開始後、3時間経過。
やっとトライトンがコンテナより出た。次は、アメリカから持ってきた専用の台車4個が、トライトンの下部四隅に入れられる。この小さな赤い台車で、3トンのトライトンをスタジオまで運んでいくことになる。
今回、撮影が行われるのは、NHKで一番大きな101スタジオ。駐車場からの距離は数百mはありそうだ。
トライトンの移動を始めてすぐに、われわれは思わぬ現実を突き付けられた。一見、平らに見える地面が、驚くほど凸凹しているという事実である。トライトンをただ載せただけの4台の台車は、この凸凹によってすぐに外れてしまう。

1台でも台車が外れると、トライトンはバランスを崩して、次の瞬間にはドガッ!と傾くことになる。3トンが一気に倒れ込むと、トライトン自体の故障もさることながら、人間も危ない。

3トンをなめるな!

それまでは手出しをしてはいけない雰囲気だったが、押す作業は手伝ってもよいらしく、周囲の人たちがわらわら動員された。息を合わせて進もうとするも、たびたび台車が外れてストップ。先頭で指示を出している技術者のエドが右! 右! などと叫んでいる。何度も台車が外れ、そのたびにジャッキを入れて台車を調整した。
時には鋼鉄製の大きなハンマーで横からガンガン台車を殴り、方向替えをする。台車はハンマーの衝撃とトライトンの重さに悲鳴を上げ、サイドがややゆがんできた。

作業開始から6時間。やっとトライトンがスタジオに入った。
手押しを手伝ってくれていた大道具さんの若者チームが、次の予定のために走り去った。不安な気持ちにさいなまれたが、なんとかスタジオ内の予定の場所まで移動し、本日の作業はここで終了。移動するだけで一日が終わった。やはり、潜水艇は水の中で活躍するものだ、陸上ではなんとも扱いづらい。