ソーシャル分断社会

対立か共闘か? メディアとプラットフォーム

2月16日 20時00分

「フェイスブックとグーグルによって、質の高いジャーナリズムが壊された」-1月にロンドンで開かれた討論会で、CNNやガーディアンなどの従来メディアとネットメディア、そしてフェイスブックやグーグルの担当者たちが、「フェイクニュース」対策を巡って激しい議論を交わしました。

「フェイクニュースという呼び方はもうやめよう」

※討論会はイギリスの制作会社ITNなどが1月11日にロンドンで開いた。パネリストは次の6人。
ジョン・スノー氏 (チャンネル4ニュース・司会)
ブライアン・ステルター氏(CNN)
ジム・ウォーターソン氏(バズフィード)
アイシャ・ハザリカ氏(コメンテーター)
キャロル・キャドワラダー氏(ガーディアン)
パトリック・ウォーカー氏(フェイスブック)



:ジョン・スノー(チャンネル4ニュース)
まずは「フェイクニュース」の定義から始めましょう。

:ブライアン・ステルター(CNN)
フェイクニュースには3つの種類があると思います。1つは人をだますために作られた「フェイクニュース」=作り話です。何百万というPVを獲得して利益を得るのが目的です。2つ目は半分真実で半分うそ、または少しだけ真実で、ほとんどうそという、「ハイブリッド」型です。記事の1段落目は完全に真実で、その後の段落がすべて作り話の場合、どう見極めたらいいでしょうか。真実がどこで終わってうそがどこから始まるかなんて、とても分かりません。
そして3つ目はフェイスブックやツイッターにある、「ハイパーパルチザン系」です(訳注:党派色が極めて強い層をさす)。SNSでは、真実を無視したハイパーパルチザンのコミュニティが至るところにあります。情報が間違っているわけではないですが、紛らわしいのです。例えばヒラリー・クリントンの健康問題に関する虚偽情報の多くは、こうしたハイパーパルチザン系のサイトが出どころでした。彼女が実際によろけたときの写真を使って作り話をでっち上げたのです。
ワシントン・ポスト紙のマーガレット・サリバンは、「フェイクニュースということば自体をやめたら?」と提案していますが、正しいかもしれません。このことば自体、パルチザンたちから乱用、誤用されています。アメリカの次期大統領(訳注:イベントが行われた時点、以下同)ですら、つい数時間前も昨今のロシアに関する報道を「フェイクニュース」呼ばわりするなど、ことばが再定義されつつあります。

「イギリスでは”完全なデマ”はない」

:ジム・ウォーターソン(バズフィード)
イギリスでは、完全なデマという意味の「フェイクニュース問題」はまだ起きていません。「ジェレミー・コービン(訳注:イギリス労働党党首)は法王の支持を得た」といったニュースがイギリスのネットで拡散することはありません。しかし「ドナルド・トランプは法王の支持を得た」というニュースは、アメリカで話題になりました。 イギリスで話題になるのは先程の分類の2つ目のフェイク、つまりわずかな真実をものすごく政治的に膨らませたニュースです。こうした伝統的なイギリスのタブロイドジャーナリズムには、3つの傾向があります。
「イスラム教やイスラム教徒への偏見」「トランプやEU離脱、UKIP(イギリス独立党)の支持者はバカで、自分だけは違うからこの記事をシェアして、いい人に見えるようにしよう」「主流メディアが報道していない記事」の3つです。こうした記事が、イギリスのインターネットでは拡散するのです。

「ポスト真実」についていえば、バスにラッピング広告されていた3億5000万ポンド問題(訳注:EU離脱で浮いた3億5000万ポンドは国営医療制度にまわすというUKIPの公約のこと)は嘘だったのか。もちろん事実を確認して記事を書いてもいいですが、誰も読まないし反論もしないでしょう。これに完全な「フェイクニュース」というレッテルを貼るべきでしょうか。無謀な公約を掲げたことを、報道機関が大々的に追及したり、フェイスブックなどのSNSがその記事を禁止したりしないといけないのでしょうか?多少はだまされた人もいるでしょうけど、イギリスの新聞だって数十年来、そのような記事を書いてきました。イギリスのメディアやインターネット、フェイスブックにおける問題は、ハイパーパルチザン系のサイトが文脈を完全に無視して事実を解釈し、先ほどの3つのカテゴリーに分類して、読者が満足しそうな記事に仕立て上げていることなのです。イギリスにおいては完全なデマが拡散するのは非常に稀なのです。

読者が何を見ているのか分からない

:キャロル・キャドワラダー(ガーディアン)
私はEU離脱の国民投票後に取材をして不思議に思ったことがあります。当時の状況についてフェイスブックやグーグルなどで情報のソースを調べたところ、情報がどこから来ているのか分かりませんでした。フェイスブックのページやグーグルの検索結果は高度にパーソナライズされているため、私たちには皆目見当がつかないのです。こうして去年起こったことを振り返り、「皆、どこから情報を得ていたんだろう?」「何を読んでいたんだろう?」と考えてみたところで、永久に分からないのです。


:ジョン・スノー(チャンネル4ニュース)
アメリカでは、既存のメディアは十分にトランプを非難してきたのでしょうか?一般の人たちは、信用はできないけれども斬新でおもしろそうなニュースばかり求めるようになったのでしょうか?

:ブライアン・ステルター(CNN)
有権者がフェイスブックのページやニュースフィードで何を読んでいたのか、友人に何をシェアしていたのかは、まったく分からない。それは完全にアルゴリズムの問題であって、パーソナライズされているからです。フェイスブックの中にいたトランプ支持者たちが、クリントンに関するデマを拡散し、トランプに票を投じるよう呼びかけていたのだと大統領選の後になって思うようになりましたが、これも確定的ではなく、証明もできません。リベラル系の中にはヒステリックになっている人たちもいますが、同時に学者やジャーナリストたちは、フェイスブックやツイッター、グーグルの協力を得ながら検証を始めています。 去年4月にドナルド・トランプが言った「私はインターネットに書かれていることしか知らない」という発言は、私のお気に入りです。私たちのほとんどは同じような感覚をもっているのではないですか?私たちはインターネットで読む一言一句の事実確認はしていません。主流のメディアは、有権者が求め、必要としていた事実や情報はすべて提供していました。ところがそれを求めなかった人たちもいたのです。
私は現在のフェイスブックの取り組みに大変勇気づけられています。「フェイクニュース」と疑われる記事の下にラベルをつける実験が始まっており、ユーザーに真実を探しだす選択肢を与えてくれています。

:パトリック・ウォーカー(フェイスブック)
フェイスブックは、まだ12、3年しか経っていない新しいプラットフォームです。ニュースフィードに至ってはまだ10年です。フェイスブックは重要な情報源、ニュースソースとなりましたが、自身がニュースを作り出しているわけではありません。視聴者層を広げたいCNN、ガーディアン、バズフィード、チャンネル4などとパートナーシップを組んでいるのです。 フェイスブックではユーザーが何でもシェアできるようになっているため、危険なネタやデマだと思われる内容を特定したり、フラグをつけたりできるセーフガードを設置しなければならない課題も出ています。すでにヘイトスピーチや暴力に関わるコンテンツなどについては、長年に渡るコミュニティ・スタンダードが確立されています。そこにフェイクニュースが登場し、さらにたくさんの新しい取り組みの必要が出ています。
その1つはユーザーが簡単に通報できること。もう1つは真偽不明な記事にフラグを立てる機能です。瞬時に拡散される最悪の事態を避けるために、事実を確認する第三者機関に協力してもらっています。だからと言って記事をシェアできなくなるわけではありませんし、規約に反していない記事を削除するわけでもありません。「この記事はフェイクの可能性があります」という警告ラベルをつけることで、記事を勧めたり広告を載せたりできなくするわけです。

フェイクニュースがどうやって資金を集めているか注目したところ、別の団体を装うケースがいくつかありました。そこで偽サイトを複製できないようにし、またフェイスブックに広告を出すときは過去を洗い出して検証します。これで大部分のフェイクニュースに取り組むことができると考えています。
さらに、ニュースフィードの価値を改めて発信していきます。信頼性のあるニュースフィードは命で、ユーザーはそこから情報を入手し、私たちはユーザーの日々の利用から情報を読み取っています。記事を読んでもシェアしていないとか、途中で止まっていたら、それは正確ではなく有益ではない情報と分かります。この2か月間にヨーロッパの7都市で報道機関とワークショップを開催していますが、容易に解決できる問題ではありません。モグラ叩きみたいで、何かの対策をすると別の対策をとろうとする人が出てくるのです。

みんな自分が聞きたいことだけ聞いていたい

:ジョン・スノー(チャンネル4ニュース)
EU離脱では、ロンドン中心部と郊外では大きな差があったようですね。

:アイシャ・ハザリカ(コメンテーター)
当時、テレビのスタジオではロンドンの大勢のコメンテーターが、すごい確信を持って「EU離脱なんてあり得ない。絶対にないです」と言っていました。しかし北部に選挙区を持つ労働党の国会議員らの情報源によると「7週間、毎週末、一軒一軒回ってきたが、これまでEU残留に投票すると言った人は一人もいなかった」と言っています。 ツイッターやフェイスブックで、政治は本質的にハイパーパルチザンになりがちです。テレビは公平性の原則などがあるのでそうでもありませんが、新聞メディアはかなりパルチザンと言えますし、ニュースや論説なども対立しています。そんなことから国民は「政治とは何か」を考えるようになり、今や自分の見解を持つことはハイパーパルチザンになることなのです。実際に何が起きているかに目を向けるのではなく、自分が安心できる世界で、自分が聞きたいことを聞いて、確信したいのです。私たちは自分たちのツイッターフィードというタコツボに入り込み、「すごく居心地が良い」と思うようになっているのです。

政治においては世論調査の業界が、EU離脱やヒラリーと言ったメジャーなニュースに、ついていってないという問題がありました。有力な政治家や論説委員を含め、誰もが自分のツイッターのフィードやフェイスブックという、自分たちが居心地の良い世界の中に逃げ込んでいたのです。ですから、権力、影響力を持つロンドンと、それ以外の地域との間には危険なほどの隔たりができたのです。これがまさにEU離脱で起きた問題だったと思います。

グーグルとフェイスブックはなぜアルゴリズムを公開しないのか?

:キャロル・キャドワラダー(ガーディアン)
グーグルやフェイスブックを巡る問題は膨大で、民主主義や政治体制が危機にさらされていると考えています。私たちがここであれこれ言い合っても彼らには何ともないのです。グーグルとフェイスブックはテクノロジーの巨大企業で、私たちには仕組みの分からないものを提供しています。彼らのアルゴリズムが個々のユーザーにどうやってニュースを配信しているのか、さっぱり分かりません。この1ヶ月間、グーグルの記事を書いてきましたが、グーグルの検索アルゴリズムがどういう仕組みになっているのか分かりませんし、なぜ簡単な質問を入力しただけで、極右のヘイト系のウェブサイトがあがってくるのか分かりません。グーグルの検索バーに「ユダヤ人は」と入力したところ、「悪だ」と候補に挙がってきました。「グーグルにこんなことを入力する人がいるのか」と思ってクリックしてみると、検索結果の上位10件のうち8件は、反ユダヤ的なヘイト系サイトで、確かに「ユダヤ人は悪だ」と書かれていました。単純な質問を入力しただけで、グーグルはこうしたネオナチ系のウェブサイトを表示するのです。これに関してグーグルから回答は得られず、私は非常に不満です。こうした情報がどうやって私たちに配信されているのか、何を根拠に配信しているのか、市民として知る権利があると思うのです。

:パトリック・ウォーカー(フェイスブック)
私がここに参加しているのは、対話が重要だと考えているからです。私たちはニュースのエコシステムにおけるフェイスブックの役割を真剣に考えています。フェイスブックは家族や友人とつながる場です。ユーザーはフェイスブックで誰とつながり、誰をフォローし、誰をフォローから外すか自分で選べます。皆さんの中でこれまでフェイスブックで誰かのフォローをやめたり投稿の表示を減らすようにしたことがある人は?・・・かなりいますね。私たちは皆さんの選択を尊重しています。
では皆さんの中で、通常一日にやりとりする友人の数より多くの友人をフェイスブックに持っている人は?・・・ほぼ全員ですね。それを時系列でそのまま表示させると、ニュースフィードにはとてつもない数の投稿が、何の規律もなく表示されます。そうするとシェア数も減り、利用頻度も減ることが分かりました。フェイスブックがユーザーの役に立っていないということですから、本当のコミュニケーションが行われているかどうかに基づき、アルゴリズムを、基本的に友人と家族を優先するよう調整しました。でも、このアルゴリズム自体を公開することはできません。個人の目的のために操作するなどの問題が発生するからです。
フェイスブックは弱いきずなを強いものにしてくれます。日々の暮らしで接するより多くの人たちとフェイスブックではつながっています。つまりフェイスブックでは、地元のキオスクで新聞を買ったり、オフィスで誰かと話をしたり、友達にメールを送るよりも、多様な情報や意見を得やすいのです。


:キャロル・キャドワラダー(ガーディアン)
アルゴリズムは公開できないでしょうが、専門家に入ってもらって検証することは出来ますよね。アルゴリズム監査というものがあります。あなたはフェイスブックがツールだとおっしゃいますが、実は巨大企業で、私たちからお金を稼ごうとしているだけなのです。それがあなたがたの事業です。私たちはみな、今世界で起こっていることに心を悩ませていると思います。そして、あなたのおっしゃるところの「一緒に取り組む」というところは同じ意見で、非常に重要だと思います。

これは「情報戦争」だ


:ジョン・スノー(チャンネル4ニュース)
ところでこうしたこと(フェイクニュース)に長けているのは右派と左派、どちらでしょう?

:アイシャ・ハザリカ(コメンテーター)
右派ですね。

:ブライアン・ステルター(CNN)
英国では、左派が勢力を伸ばしています。左派は特に英国のEU離脱などの問題で、事実を無視する姿勢を急速に取り始めています。

:アイシャ・ハザリカ(コメンテーター)
今、私たちは非常に興味深い現象を目の当たりにしていると思います。一般の人々は主流のメディアについて軽視するようになり、フェイスブックやツイッターなどの偏向度の高いソーシャルメディアを追うようになってきています。

:ブライアン・ステルター(CNN)
これは「情報戦争」なのであって、ジャーナリストやニュース組織がその戦争に加担しなくてはならない、その戦場に立って、やり返さなくてはならないということです。

:ジム・ウォーターソン(バズフィード)
私たちはもともとネット上の存在なので、いかにこうしたものがネットで拡散するか分かっています。アルゴリズムも理解していますからフェイクを暴こうとしていきますし、フェイスブックのフィードのあちこちで目にしてきたニュース内容も、事実確認しようと努めています。

:キャロル・キャドワラダー(ガーディアン)
フェイスブックやグーグルの前では、私たちなど少数派です。フェイスブックとグーグルによって、質の高いジャーナリズムが壊されてしまったのです。そして明確な特効薬はありません。年々、質の高いジャーナリズムに投資するのが困難になってきています。
しかしこうしたプラットフォームは、私たちニュースを編集していながら、「プラットフォームだ」と言いはります。私はこれらがプラットフォームだとは思っていません。あなたがたはコンテンツを編集していると思います。アルゴリズムが私たちの目にするものを編集しているのです。あなた方はそれを白状して、責任をとっていく必要があると思います。

:パトリック・ウォーカー(フェイスブック)
私は以前BBCのジャーナリストで、カンボジアや東ティモール、パキスタンで紛争地域を取材していました。20年前にリポートを放送するには、テープに録画したあと、映像を送信できる場所まで危険を避けながら進み、そこにつくと守衛や技師にわいろを送り、10時のニュースに間に合うように映像をロンドンに送るために3000ドルを払わなければなりませんでした。それほど情報を出すのは困難なことでした。
技術の発達によりメディアは大衆に開かれましたが、新しいルールに人々は不安を覚えています。現在、私たちは世界中の何千ものニュース組織やジャーナリストのためにコンテンツを作り出し、瞬時に配信する力を与えているのです。それはユーザーがコンテンツを作り出し、瞬時に世界中に配信できることも意味しています。
難しい課題への対処方法を見つけなければならず、私たちは大きな努力を重ねています。あなたはまるで、広大な景色を望遠鏡で眺めているようですが、情報を共有することを可能にした技術には、たくさんのいい点があるのです。チャンネル4ニュース自体、フェイスブックのビデオ映像の視聴数が世界で月500万ビューから月2億5000万ビューに増えているではないですか。

:ブライアン・ステルター(CNN)
信頼の再構築という問題においては、フェイスブックの責任だとは思いません。個々のジャーナリストとそのニュース組織にかかっているのだと思います。読者や視聴者は情報に飢えていて、本物のジャーナリズムを心から求めていると思います。本物のジャーナリズムを提供し、視聴者を我々と一緒にその旅に連れて行くことで、信頼を再構築できると思います。我々が視聴者の生活など気にしていない遠くの存在ではなく、視聴者の生活に寄り添っているのだと感じてもらうのです。

グーグルとフェイスブックの反論

:ジョン・スノー(チャンネル4ニュース)
この場にグーグルの人はいますか?

:トム・プライス(聴衆)
トム・プライスです、グーグルに勤めていて、ユーチューブの仕事もしています。キャロルさんが言っているようにこれは大きな問題で、正しい答えを出そうとする場合、常にすべてが正しくできているわけではないということです。ホロコーストについて彼女が強調した問題のいくつかで、私たちが提供していたのは間違った答えでした。そうした問題も私たちが取り組もうとしていることです。

:ジョン・スノー(チャンネル4ニュース)
パトリックさんはフェイスブックの戦略を説明してくれましたが、グーグルの戦略はありますか。

:トム・プライス(聴衆)
私たちのアルゴリズムは、情報を正確で役立つようにするもので、わが社の基盤そのものです。キャロルのように、お金を稼ぐことのみを考えている大企業で取り分を横取りしているように思われると、私たちは公正に意見を聞いてもらえるのかと疑問に思うことがあります。しかし間違いなく私たちもこの問題について考えていますし、アルゴリズムを改善しようと努めています。

:パトリック・ウォーカー(フェイスブック)
我が社では近いうちに、ジャーナリズムやネットワーク各社などニュースのエコシステム全体とのコラボレーションの強化を発表する予定です。コラボレーション分野は大きく3つあります。
1つ目は、コンテンツの有料購読者を集めること。ニューヨークタイムズやフィナンシャルタイムズをはじめ多くの報道機関が順調に購読者数を伸ばしています。2つ目に、新たな収益チャンスを支援します。ビデオ収益の強化に向けた新たな広告フォーマットを立ち上げる予定です。3つ目はテクノロジー面のコラボレーションです。報道機関に360度カメラを利用してもらい、新しいストーリーテリングを生み出していきたいと思っています。
このように各種の解決策がありますが、忘れてはならないのは報道、出版業界はフェイスブックが誕生するずっと前から課題に直面していることです。その中には財政的な課題もあります。大衆の消費習慣やテクノロジーの変化への対応も、何十年も前からある課題です。音楽業界も直面してきたし、テレビ業界も現に直面している課題です。ですからこれは特効薬ではありません。

裏付けが取れていない文書を報道すべきか

:フランク・ラディス(聴衆)
元ジャーナリストで今はマーケティングコンサルタントをしています。インターネットの配信プラットフォームや報道機関は、良かれ悪しかれ今や情報源となっています。ジャーナリストがそうした情報源と戦うのではなく、コラボしていくという発想は悪くないと思いますが、私が聞きたいのは、バズフィードが公開した文書、あれは公開すべきだったのか否かということです。(※訳注:バズフィードが、ドナルド・トランプ氏とロシアとの関係について事実確認ができていない調査文書を全文公開したこと)

:ジム・ウォーターソン(バズフィード)
未確認の情報ですが、この文書はマスコミや安全保障の業界で議論の焦点になっています。その文書が次期大統領についての話題であるなら、わかった方がいいでしょう?それが我が社の方針です。

:フランク・ラディス(マーケティングコンサルタント)
かつてはこの種の文書が公開された場合、ジャーナリストは内容を吟味して、裏づけがとれるのはどの部分か、報道してもいいのはどの部分かを取捨選択しました。

:ブライアン・ステルター(CNN)
この記事を見たときの私の反応はこうでした。バズフィードが公開しなくても誰かがしただろう、と。それが正しいか間違っているかを言いたいわけではありません。今は、この種の素材はいつか必ずインターネットのどこかに登場するもので、私はその前提で仕事をしているということです。

:ジョン・スノー(チャンネル4ニュース)
あれは「フェイクっぽい」と感じていますか?

:ブライアン・ステルター(CNN)
CNNなどが文書の情報を公開しなかったのは、未確認の内容があったからです。しかし今から5年から10年後には、嘘をついたりミスリードしたり、誤った情報を提供したりするテクニックはさらに高度になるでしょう。その点に正面から向き合うべきです。本物のようにみえる100%フェイクのビデオや、でっちあげの文書などで、大衆をあざむくのはますます容易になっていく一方でしょう。だからこそ我々は戦闘態勢に入り、高度になる一方のフェイクニュースに積極的に反撃し、対処すべきなのです。

「フェイクニュースでどれだけもうけたの?」

:ニール・グリフィス(聴衆)
メディアリサーチ会社につとめています。報道メディアはみずから襟を正すべきです。本物のニュースが娯楽番組に変貌しつつあるといえます。従来の報道番組はどこへ向かうのか。われわれは誰の言うことを聞けばいいのでしょうか?

:ベン・ダペント(聴衆・チャンネル4ニュースのエディター)
多くの人が声高に意見を言うようになったのは、世界に怒りが充満しているからです。チャンネル4ニュースには、嘘を報道するのを防ぐためのプロセスがあります。うちは絶対に嘘は報道しないとか、報道内容は全面的に真実ですとまでは言いません。しかし我が社には信じられないほど長く複雑で、しかも金をかけたニュース報道プロセスがあります。
フェイスブックはフェイクニュースでいくらぐらい利益を上げたと思いますか?また、フェイクニュース対策にいくらぐらいかけていると思いますか?報道機関がフェイスブックで1ポンド儲けるごとに、そちらも少なくとも同じだけ儲けているはずです。一切開示されていないので金額は不明ですが。

:パトリック・ウォーカー(フェイスブック)
具体的な数値でお答えすることは難しいです。我が社は誤った情報や作り話を配信して利益を得ている人々の情報源を直接叩くために、さまざまな対策をとっています。いろいろな目的でフェイスブックの広告枠を買っている人はたくさんいます。それに主流のメディアだって、正直かそうでないかわからない人々のインタビューや、スピーチややりとりを報道しています。あいまいな点がたくさんあります。大事なのは、フェイクニュース全般に対処する方法を見つけることです。

:ブライアン・ステルター(CNN)
国や一般大衆向けの、よりよいメディアリテラシーを見出す必要があります。メディアリテラシーと言うと退屈そうですが、われわれは切実に必要としています。さらに、ニュースというものはなぜこうも派手で、娯楽的にみえて、それでいて事実なのかについても、もっと理解を深めるべきです。そしてわれわれがどうやって真実を探り出しているのか、それにいくらぐらいお金をかけているのかを視聴者に説明すべきです。今こそそうした努力をもっとすべき時です。

:パトリック・ウォーカー(フェイスブック)
我が社の分析によれば、選挙までにシェアされた情報のうち、誤った情報や作り話とみられるものは1%足らずでした。これは多すぎだと思います。だから我が社は、問題に直接対処するために多額の時間とエネルギーを投じているのです。認識していただきたいのは、皆さんがフェイスブックで情報にアクセスするとき、実はフェイスブック上のチャンネル4やBBC、アルジャジーラにもアクセスしているということです。友達や家族の画像にアクセスするのと同時に、フェイスブックというプラットフォームを通じて、すばらしいジャーナリズム活動をしている合法的な報道機関にもアクセスしているということです。

:キャロル・キャドワラダー(ガーディアン)
でもあなたは質問に答えていないでしょう?あなたは「金儲けしている大企業にすぎないというのはナンセンスだ」とおっしゃった。でも現に金儲けしている大企業じゃありませんか。それがすべての根っこにあると思います。

:パトリック・ウォーカー(フェイスブック)
わたしは質問をごまかそうとしているわけではありません。あいまいなところのある分野を定量化しようとするのは困難だと言っているだけです。今、我が社が追っているのは、不正確な情報源という点では最悪の相手です。多大な努力はしています。我が社には、ミスを犯したら名乗り出る制度もあります。新聞に、あるいは報道機関のウェブサイトに誤った情報が載ったら、何日もたってから削除されるか、36ページあたりにひっそり書かれるくらいでしょう。ソーシャルメディアの世界ではこうしたことにはすぐ、かつ公に対処します。今や一般の人がかつてないほどに声を上げることができるようになったのです。

:ブライアン・ステルター(CNN)
グーグルやフェイスブックだけではありません、政治家もです。ドナルド・トランプは、グーグルは自分にいやがらせをし、選挙に負けさせようとしていると主張しました。1月になった今、わたしはトランプが選挙中に言ったことを思い出そうと苦労しています。嘘があまりにたくさんあったからです。いくら報道機関がベストを尽くしても、いくらソーシャルネットワークが対処策を考案しても、政治家が人々を新たな方法でミスリードしたら、このパネリストの誰ひとり、それに対する解決策は持ち合わせておりません。

:アンナ(聴衆)
娯楽番組の制作会社につとめていて、今はBBCの番組の仕事をしています。フェイクニュースに関する新たなルールや規制を導入したら、それに対する風刺的なものが出てくるんじゃないかという懸念はありますか?

:アイシャ・ハザリカ(コメンテーター)
わたしたちの政治的議論に欠けているのは、実は良質で痛烈な風刺だと思います。私の知人なら「スピッティング・イメージ」(イギリスで放送されていた風刺人形劇番組)を復活させろと言いそうです。わたしたちが今陥っている理不尽な状況を解決するには、きっと風刺が役に立つでしょう。

:ジョン・スノー(チャンネル4ニュース)
聴衆の皆さん、ありがとうございました。今日のために飛んできてくれたパネリストのみなさん、ご参加ありがとうございました。