11月17日の放送
金星 ビーナスの素顔に迫れ!

NASA

金星は、太陽と月以外では全天で最も明るく輝く天体であり、西洋では美の女神“ビーナス”の名が付けられている。地球のすぐ内側を公転し、大きさや内部の構造も地球によく似たこの惑星は、古くから「生命が住める楽園」と信じられ、人々は様々な想像を膨らませてきた。ところが、20世紀後半、米ソが金星に探査機を送り込むようになると、その見方は一変する。金星は濃硫酸の厚い雲に覆われ、地表は高温高圧の異世界が広がっていた。なぜ、地球の双子星と言われる金星はここまで地球と環境の異なる惑星になってしまったのか?研究者たちはそのミステリーを解き明かそうと新たな挑戦を始めている。その先頭を走るのが2015年12月に周回軌道への投入に成功した日本の探査機“あかつき”。金星大気の本格的な観測を始めた“あかつき”はその素顔に迫ることができるのか?最新報告を交えながら、謎多き惑星、金星の正体に迫る。

  • 放送日時
  • 11月17日(木)午後10時00分~
  • 11月24日(木)午前0時00分~(再)

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Q & A

金星とは?

太陽系で2番目の惑星。地球に比べて直径は0.94倍。質量は0.82倍、内部構造も核、マントル、地殻があることから、地球の双子星と呼ばれています。西洋ではローマ神話の美の女神にちなんで「ビーナス」と名付けられました。1761年にロシアの科学者ミハイル・ロモノーソフが金星の太陽面通過を観測した際に金星の縁がぼやけていることに着目、大気が存在すると提唱します。そこから「生命が居住可能な楽園」かも知れないという仮説が浮かび上がります。しかし、1962年、アメリカの探査機マリナー2号が地表温度を観測すると、425℃を越える高温であることが判明。その後の研究で大気の96.5%が二酸化炭素で満たされ、温室効果によって灼熱の惑星になっていることが明らかになりました。

なぜ金星の地表は地球と大きく異なるのか?

現在の金星の地表は7億年前~5億年前に作られた新しい地表と、それ以前に作られた古い地表の2種類があると推測されています。大部分を占めているのは、新しい時代の地表で、火山活動で噴出した溶岩が地表を覆っていると考えられています。金星と地球との最大の違いは海の存在で、地球ではプレートが移動する際に海の水が重要な役割を果たし、プレートテクトニクスという現象を生み、さらに海の水が二酸化炭素を吸収する働きもしています。海がないために金星は地球と環境が大きく異なることになったのです。

金星に海はあったのか?

アメリカの探査機ガリレオの観測データから、金星には花こう岩と呼ばれる岩石が存在する可能性が指摘されています。花こう岩はプレートテクトニクスによって玄武岩と水が混ざり、マントルの熱で溶かされて作られることから、かつて金星に海があったということを示す証拠になるというのです。その一方で、金星は地球よりも太陽に近いことから、誕生した頃のマグマオーシャンの高温状態から冷えて固まるまでの時間は地球の20倍近くかかり、その間に水が失われ、海はもともとできなかったという計算に基づく研究結果もあり、専門家の間でも議論が続いています。

スーパーローテーションとは?

金星上空に秒速100mで吹き荒れる猛烈な速さの風のことです。金星の自転周期は地球の243日で、自転速度は赤道付近で秒速1.6m。通常大気の流れる速度は自転と同じ程度と考えられていましたが、スーパーローテーションの速度は自転の約60倍を越えています。このメカニズムとしては、コーネル大学のピーター・J・ギーラッシュさんが提唱した「ギーラッシュメカニズム」がありますが、完全に解明されたわけではなく、大きな謎とされています。  

金星探査機あかつきについて

2010年5月21日に種子島宇宙センターから打ち上げられましたが、同年の金星への周回軌道投入に失敗。2015年12月7日に再投入に成功します。今年4月から本格的な観測を開始。搭載された5台のカメラを駆使して、金星大気を詳細に観測することが目的です。現在、次々と 新たな観測画像が地球へと送られて来ています。

今後、金星に探査機を着陸させる予定はありますか?

現段階では予定はありません。高圧、高温の金星地表に探査機を送り込むことは難しく、ソ連の探査機ベネラ着陸の際も着陸後の稼働時間は短く、すぐに使えなくなっています。そのことが金星の基本的なデータの解明や研究が進んでいない大きな要因の一つとされています。