1. ホーム
  2. 地域づくりナビ
  3. 人のつながりで孤独死を防ぐ

地域づくりナビ

人のつながりで孤独死を防ぐ

人のつながりで孤独死を防ぐ

2018年12月21日更新

誰にも気づかれないまま亡くなる「孤独死」。死後かなりの時間が経ってから発見されるケースも少なくありません。
家族・親戚のつながりや隣近所の付き合いが希薄になる中、孤独死は若い世代を含め、誰にでも起こりうる問題になっています。孤独死の全国的な統計はありませんが、東京23区だけでも年間およそ6000人に上るという統計もあります(東京都監察医務院)。
世界的に見ても、日本社会の孤立は深刻です。先進35カ国が加盟するOECD(経済開発協力機構)の調査によれば、家族以外と付き合いのほとんどない「社会的孤立」の状態にある人の割合は、日本では15.3%と、最も高くなっています。たとえ今は家族にめぐまれ職場で活躍していても、失業や病気、家族関係の変化などをきっかけに、社会とのつながりを失ってしまうのではないかという不安を、多くの人が抱えています。
孤独死の問題は、1995年に発生した阪神淡路大震災後、コミュニティとのつながりを失ったお年寄りの孤独死が相次いだことから、広く知られるようになりました。災害を乗り越えて地域のつながり作りを進めてきた地域の活動は、孤独死に悩む他の地域にとっても、多くのヒントをあたえてくれるはずです。

広がり発展するボランティア

阪神淡路大震災は「ボランティア元年」とも言われました。震災直後から、水くみや炊き出しを担う住民ボランティア活動を立ち上げてきた兵庫県神戸市の中村順子さん。孤独死を防ぐ見守りやサロンの活動もその中から始まりました。災害ボランティアから始まったこれらの活動は、今、地域を支えるコミュニティ事業に発展しています。

災害復興ボランティアからコミュニティ事業へ

阪神淡路大震災によって自らも被災しながら、すぐに住民ボランティアを組織し、自分たちの力でさまざまな課題に立ち向かってきたNPO代表・中村順子さん。高齢者のための水くみ代行、病院への送迎、炊き出し、さらに仮設住宅での孤独死を防ぐための交流サロンづくり。震災をきっかけに始まったこれらの活動は、15年が過ぎた現在、形を変えながら地域を支えるコミュニティ事業へと発展しています。

明日へ 支えあおう 復興サポート
故郷のため 自分たちで出来ること ~岩手・大槌町~
(2013年1月27日放送)

高齢者の見守りから地域課題の解決へ

神戸と同じく、阪神淡路大震災後、お年寄りの孤独死という問題に直面した大阪府豊中市。ここでは、住民ボランティアのほか、新聞配達員や、電気・ガスの検針員なども巻き込んで、高齢者の見守りネットワークを作り上げてきました。このネットワークは、孤独死だけでなく、引きこもりやゴミ屋敷など、さまざまな地域課題を発見し解決する基盤となっています。

地域の課題を発見・解決する見守りネットワーク

阪神淡路大震災を経験した大阪府豊中市では、孤独死を防ぐため、住民ボランティアや新聞配達員が協力して、地域の見守りネットワークをつくりあげてきました。現在では、孤独死以外にもさまざまな地域課題を発見し解決する仕組みへと発展しています。社会福祉協議会の勝部麗子さんは、本人の気持ちによりそいながら、いわゆる「ごみ屋敷」などの問題に対応しています。

明日へ 支えあおう 復興サポート
地域の”セーフティーネット”を作ろう ~岩手・釜石市~
(2012年6月24日放送)

東日本大震災の被災地でも

大規模災害による避難生活で、元のコミュニティから離れてしまった人たちが仮設住宅などで孤独死してしまうという問題は、東日本大震災でも繰り返されました。特に、ひとり暮らしの体の弱い高齢者の状況は深刻です。そこで岩手県釜石市の人々が目を向けたのが、大阪府豊中市の取り組み。復興公営住宅だけでなく、周りも含む地域全体のお年寄りをみんなで支える活動が始まっています。

阪神淡路に学んだ見守りボランティア

東日本大震災からまもなく7年目を迎える岩手県釜石市。しかし復興公営住宅の高齢化率は高く、孤独死も起きています。悩む町内会の人々にとってヒントとなったのは、阪神淡路大震災後に増えた孤独死の対策に長く取り組んできた大阪・豊中市の活動でした。復興住宅だけでなく、町中の高齢者を住民みんなで見守る豊中市の活動に学び、釜石市でも始まった見守りボランティア。高齢者にとって、生活と心の大きな支えとなっています。

明日へ つなげよう 復興サポート
人と人のつながりが命を救う~岩手 釜石市・大槌町 Part8~
(2018年1月21日放送)

都会でつながりを取り戻す

大規模災害をきっかけに明らかになった、地域のつながりの希薄化と社会的孤立。それは、日本各地に共通する問題でした。住宅の高層化が進み、隣近所の顔が見えなくなるにつれ、孤独死が増えたことに心を痛めていた、東京都立川市の佐藤良子さん。自治会長に立候補し、つながりを取り戻す活動に力を入れてきました。「向こう三軒両隣」の精神が生きる団地は、若い人々も引きつけています。

ゆりかごから墓場まで支え合う団地

東京都立川市にある都営住宅「大山団地」では、孤独死が相次いだことをきっかけに、かつての近所づきあいを取り戻そうと住民たちが隣近所の見守り活動をしています。スローガンは「向こう三軒両隣」。生け花やカラオケなど180種類ものサークルを作るなど、都会の住民がつながり合える場を設けてきました。さらに、自治会では「団地葬」として集会所で低額の葬儀を開くなど、ゆりかごから墓場まで住民同士が支え合っています。

ふるさとの希望を旅する
“無縁”から“創縁”へ 都市の地域づくり
(2016年11月23日放送)

ご近所さんを紹介というアイデア

とはいえ、近所のボランティアの方に、ずっと頼り続けるのは心苦しいという声も良く聞きます。長野県駒ヶ根市では、お年寄りの求めに応じて、社会福祉協議会が、近所の住民の中から有償ボランティアを紹介するという試みを行っています。間にお金を介在させることで、気兼ねなく近所づきあいが始まるきっかけを作る。新しい時代に対応したコミュニティつくりが始まっています。

お年寄りの家にご近所さんを派遣する宅福便

長野県駒ヶ根市では、地域住民が近所のお年寄りの家で身の回りの世話をしたり話し相手となったりする「宅福便」を行っています。お年寄りが希望する地域住民を挙げて市社会福祉協議会に申し込み、交渉がうまくいけば時給制で派遣。顔見知りの住民がいない場合は、社福協が趣味などからお年寄りに合いそうな人を選びます。宅福便によって本当の近所づきあいに発展した例もあり、お年寄りの日々の暮らしの安心感につながっています。

難問解決!ご近所の底力
お年寄りの閉じこもり 解消大作戦
(2003年9月11日放送)