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地域づくりナビ

地域の暮らしを支える医療へ

地域の暮らしを支える医療へ

2018年6月11日更新

地域医療の深刻な現状。
ここから「地域のいのちを支える」取り組みが生まれています。

経済成長と医療の発達のおかげで、日本は世界有数の長寿国となりました。しかし超高齢化と人口減少、長期不況が重なった結果、増大し続ける医療費は国の財政にとって、重い負担となっています。また、都市部以外の地域では、自治体病院や診療所の閉鎖や医師不足などの深刻な課題が浮かび上がっています。
こうしたなか、これまでの医療のあり方を見直していこうという動きが、さまざまな人々の手で始められています。

医療の公的補助がめざしたものは

日本国憲法25条は「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障しています。この理念に基づき、1961年には、すべての人が公的医療保険制度に加入することで、必要なときに安心して医療を受けられる国民皆保険制度が実現しました。しかし1973年に高齢者医療費が無償化されると、医療的必要のない「社会的入院」が増え、医療費も急増。その後、国は無償化を止め、医療費抑制に転じていきます。
しかし、国に先駆けて無償化を実現した岩手県沢内村が目指していたのは、医療への依存ではなく、むしろ病院にかからなくても済むように、お年寄りの生活の質を改善することでした。沢内村の取り組みは、医療を公的に支える原点について考えさせてくれます。

行政・医療・住民の力で健康な暮らしを実現した村

医療費の急増と社会的入院を招く原因になったと言われる1973年の高齢者医療費無料化。しかし、1961年に全国で初めて無料化を実現した岩手県沢内村では、事情は異なっていました。当時、貧困のために病院にかかれない高齢者が多かったため、医療費を無料化する一方、医療と行政が連携して予防医療に力を入れたのです。住民たちのネットワークで生活改善運動を展開した結果、病気で亡くなる人が減り、生活の質を改善させてきました。

ハートネットTV
シリーズ 戦後70年 第2回 「高齢者をどう支えてきたか」
(2015年1月6日放送)

在宅医療のカギは連携

増大し続ける医療費を抑制するため、国は病院での看取りから在宅医療への転換を促進しています。しかし家族関係の変化や高齢化のため、高齢者を支える家族の力も弱っています。
こうしたなかで重視されるのが、医療と介護・福祉の連携。尾道市では関係者間のケアカンファレンスが効果を挙げてきました。

医療・福祉の連携で高齢者を支える

広島県尾道市では、高齢者の生活を地域で支えるため、医療と福祉の連携を進めてきました。その中心となるのがケアカンファレンス。地域診療所と拠点病院の医師、ケアマネジャー、訪問看護士、介護施設、業者など、多数の関係者が情報を共有し、一人一人の患者に最適なサービスの組み合わせを検討します。さらに医師同士の連携を強化し、ボランティアの力も借りて、医療だけでは対応できない患者のニーズに応えています。

福祉ネットワーク
シリーズ 我がまちの福祉自慢(2)在宅高齢者 私たちチームが支えます」
(2006年4月11日放送)

他の地域に先駆けて高齢化と地域医療の危機を経験した日南市では、地域ぐるみで住民の健康を支える拠点として病院をとらえ、改善を重ねてきました。いつでも頼りにできる病院の存在は、介護を担う家族にとっても大きな支えとなっています。

総合病院を拠点に医療・介護・福祉が連携

医療・介護・福祉が連携し、最期まで安心して暮らせる地域づくりを進めている鳥取県日南町。町唯一の総合病院が、経営危機に陥ったことをきっかけに、福祉と連携した訪問診療体制を作ってきました。黒字経営の秘密は、常に確保してある空きベッド。緊急患者を受け入れることができ、充実した在宅医療で入院日数も減らせます。さらに在宅患者が定期的に空きベッドを利用することで、介護をしている家族の支えにもなっています。

福祉ネットワーク
シリーズ 地域からの提言(5)「町は大きなホスピタル~鳥取県・日南町~」
(2010年10月4日放送)

コミュニティの力を高める

地域で高齢者の健康をささえていくためには、家族や医療・介護関係者の力だけでなく、コミュニティ全体の力を高めていくことが必要です。山形・大蔵村では、住民たち同士で健康診断の受診を呼びかけあったり、介護をしている家族同士が支えあうなど、地域ぐるみで健康に暮らす取組みを行ってきました。

安心して老後を迎えられる村に

在宅看取り率が3割を超える山形県の大蔵村。その中心となってきたのが、診療所の医師、荒川光昭さんです。23年前に村で唯一の医師として赴任して以来、最後まで自宅で過ごしたいという住民たちの願いに応えるため、在宅医療に力を入れてきました。民生委員も老老介護の家庭を見守り、看護師や保健師とも連携。さらに、「みんなで考えて作る医療を」とよびかけ、住民たちの意識を高めてきました。積極的な予防の取り組みにより、医療費の削減にもつながっています。

ハートネットTV
支えあえば笑顔に~山形・大蔵村の在宅医療~~
(2013年5月14日放送)

災害のために生活が激変し、コミュニティが分断されてしまった被災地では、健康を急激に損なう人たちが少なくありません。長野県で地域医療に携わってきた医師の長純一さんは、患者だけでなく家族にも目を配り、福祉とも連携しながら、地域がもつ互助の力を回復させようとしています。

地域の互助力回復をめざす仮設診療所

東日本大震災後、高齢化が急速に進んだ宮城県石巻市。地域の絆も分断され、仮設住宅では心の病を抱えるお年寄りも増えています。地域医療の先進地、長野から仮設診療所の医師に就任した長純一さんは、患者の元に足を運び、暮らしぶりや心の状態、介護する家族にも目を配り、福祉と連携。さらに自治会活動にも積極的に参加して、地域の互助の力を回復させながら、高齢化が進む地域全体の健康を支えようとしています。

ハートネットTV
被災地の福祉はいま“地域を診る”~石巻・ある医師の挑戦~
(2005年10月5日放送)

「病気を治す」医療から「地域で暮らしを支える」医療へ

地域の人々と関わる中で、病気を治すことに力を注いできた医療のあり方を見直し始めた人もいます。総合病院の勤務医をやめて、千葉県千倉町で診療所を開いた医師の伊藤真美さん。ホスピス、デイケア、気功教室など、医療の垣根を越えた多様な活動で、地域の「いのち」を総合的に支えようとしています。

地域の“いのち”を支える診療所

千葉県千倉町にある診療所では、外来診療のほか、在宅診療、末期がん患者のためのホスピス、高齢者のデイケア、障害者のショートステイ、住民も参加する気功教室など、医療と福祉の壁を越えたユニークな活動を行っています。院長の伊藤真美さんが目指すのは、病気を治す専門の場所ではなく、地域の健康を支える拠点。病院らしくない病院のかたちは、ここを訪れる地域の患者や家族に教えられて、自然と出来上がってきたといいます。

福祉ネットワーク
地域の“いのち”を支える 千葉県千倉町・ホスピスのある診療所
(2005年10月5日放送)

地域の健康をささえる、力強い担い手である看護師。島根県雲南市で活動する看護師の矢田明子さんは、スマホアプリを開発したり、学生たちの現場教育を行うなど、あたらしい発想と情熱で、地域に常駐して住民たちの健康を見守る「コミュニティナース」を根付かせようとしています。

地域医療を実現するコミュニティーナース

高齢化が進む島根県雲南市で、住民たちが最期まで自宅で過ごせるよう、訪問看護の体制づくりを進めている看護師、矢田明子さん。病気を未然に防ぐため、地域に常駐して住民の健康を日ごろから見守るコミュニティーナースを根付かせようとしています。さらに、地域医療に携わる若い世代を育てようと、年間120人ほどの学生を受け入れて現場教育も。医師や住民たちと話し合いながら、地域でのみとりを実現するため奔走しています。

サキどり↑
地域医療に挑む コミュニティーナース
(2016年11月13日放送)

私たちの健康を支えてきた公的医療制度の危機は、健康とは何か、誰が健康をささえるのか、根本的に問い直すきっかけにもなっています。専門家だけに任せるのではなく、私たち一人ひとりが生活者の視点からこの問題に向き合い、健康と質の高い暮らしをみんなで支えあう新しい仕組みづくりに参加していくことが求められています。