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ふるさとグングン!大人に伝えたい、中学生の孤独な気持ち

ふるさとグングン!大人に伝えたい、中学生の孤独な気持ち

2018年4月26日更新

孤食や貧困など、孤立する子どもをなくしたいと、
中学生たちが立ち上がりました。

今、全国で問題となっている子どもの孤食や貧困などの様々な課題。誰にも相談できずに一人で悩む子どもたちが多くいます。大阪府高槻市富田地区では、地元の中学生達が、地域の大人たちの協力も得ながら、子どもの「ひとりぼっち」の課題に向き合い、解決策を考えました。その中で彼らが制作した、ひとりぼっちの中学生の気持ちを描いた映像作品をご紹介します。

日本は、世界一の“孤独な国”とも言われています。特に子どもの状況については、無視できないデータがあります。
2007年にユニセフ(国連児童基金)が先進25か国の15歳を対象に調査した報告書では、「自分は孤独を感じている」と答えた子どもの割合は、日本が1位で29.8%。約3人に1人が孤独を感じています。2位のアイスランド(10.3%)と比べても突出して高い数字でした。
「孤独を感じている子ども」と言われても、ピンとこないかもしれません。例えば、学校でいじめを受けていても、誰にもSOSを出せずに悩む子は少なくありません。家庭の経済的な事情から、部活動に必要な道具を買うことができない子もいます。あるいは、勉強などで親の期待にうまく応えることができず、強いプレッシャーに押しつぶされそうになりながら苦しんでいる子もいます。
「孤独」自体は決して悪いこととは言えません。学校の友達と一緒に遊んだり、家族と過ごしたりすることとは別に、一人きりで興味・関心のあることに没頭することもあります。一人でゆっくりと自分の考えを整理したり深めたりしながら、その後の人生を豊かに生きていく力を養う時間も必要です。
しかし、自分だけではどうしても解決できない危機に直面して困っている時に、「孤独」によって周囲の人たちとのつながりがなく、誰にも助けを求めることができない状況であったとしたら、話は大きく変わってきます。
「孤独」の中での最大の課題は、助けてほしくても「助けて」と言えない、「ひとりぼっち=孤立」の状態です。全国的に見ても、いじめや貧困、虐待など、様々な複雑な事情により、居場所をなくして、ひとりぼっちで苦しむ子どもたちは数多くいます。子どもたちのSOSは外からは見えにくく、気づかれないことが少なくありません。つらい気持ちを誰にも相談できずに黙って命を絶つケースもあります。2017年における中高生の自殺の数は、346人(厚労省・警察庁発表)で、平成に入って以降では最多という、深刻な状況になっています。

どうすれば、子どもたちの見えないSOSをキャッチして、「ひとりぼっち」を無くすことができるのでしょうか。今回、大阪府高槻市富田地区にある高槻市立第四中学校の中学1年生107人が立ち上がりました。始まったのは、「レインボープロジェクト」と呼ばれる授業。4か月をかけて中学生自身がひとりぼっちの課題と向き合い、解決策を考えていく取り組みです。その中で彼らが創作したのは、3つの映像作品です。ひとり親家庭、共働き家庭、親がいない家庭に暮らす中学生がひとりぼっちになっていくプロセスがフィクションとして描かれています。大人たちに届けたい、中学生の見えづらい気持ちを表現しています。

今回の地域づくりナビでは、番組では紹介しきれなかった映像作品をフルバージョンでご紹介したいと思います。

1つ目のストーリーは、「一人親家庭」にスポットを当てています。主人公のあやは、パートで働く母親のしんどさをよくわかっていて、その親に心配をかけないようにがんばる子です。親の都合で引っ越しをしますが、すぐに友だちをつくります。ところが、ある出来事からひとりぼっちになってしまいます。

ひとり親家庭 あやのストーリー

2つ目のストーリーは、「共働きの家庭」です。主人公のあきらは、悩みを一人で抱え込んでしまうところがあります。両親からの強いプレッシャーを感じ、自分の思いを相談できないあきらは、強い孤独を感じ、ある行動に出ます。

共働き家庭 あきらのストーリー

3つ目のストーリーは、「親がいない家庭」です。主人公のつばさは、家庭の環境が大変で、学校でもいじめられています。さまざまなしんどさを抱えるつばさですが、あることをきっかけで環境が大きく変わっていきます。

親がいない家庭 つばさのストーリー

いかがでしたか。今回のレインボープロジェクトでは、中学生たちが富田地区の大人たちの前で、映像作品と学びを発表しました。学年代表の女性生徒は、最後に「ひとりぼっち」についての自分たちの考えを、こう表現しました。

女子生徒の言葉

「ひとりぼっち」と聞くと、みなさんは、どんなことを想像しますか?私たちは、本当のひとりぼっちとは、自分のしんどさを誰にも相談することができず、わかちあうことができないことだと考えました。ひとりぼっちをなくすためには、どんなにしんどくても、安心して自分の思いを打ち明けられるような居場所をつくっていくことが必要です。その居場所の中で、笑顔になることができれば、しんどいことを乗り越えていく力がわいてくると思います。居場所を通じてたくさんの人と出会い、つながりの輪が広がっていけば、ひとりぼっちは減っていくと思います。そして何よりも、私たち自身が、周りにいるひとりぼっちに気づき、笑顔でつながっていくことが大切だと考えます。

「ひとりぼっち」(社会的孤立)という難しい課題の解決に対して、中学生も地域の一員として参加し、大人たちがバックアップしながら子どもの力を引き出した今回の富田地区の取り組みは、“子どもの声にしっかりと耳を傾けること”の大切さと“子どもを信じること”で広がる可能性の大きさを私たちに教えてくれています。