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TVシンポジウム 生きがいと役割が実感できる社会へ

TVシンポジウム 生きがいと役割が実感できる社会へ

2018年2月2日更新

生きがいと役割が循環する社会をどう作るか。
各地の取り組みをもとに話し合いました。

人口が減り、「地方都市消滅」の可能性さえ言われる今日の日本。でも、各地に目を向けてみると、一人ひとりが「生きがい」と「役割」を実感できる地域、未来世代に暮らしをバトンタッチしていける持続可能な社会に向けた取り組みが、すでに始まっているようです。
農村と都市での具体的な地域活動の事例を紹介しながら、これからの日本社会のありかたを話し合うシンポジウムが、2017年11月に開かれました。その内容をまとめた番組「TVシンポジウム“生きがい”と“役割”が循環する持続可能な社会」を、動画とテキストでご紹介します。

これまで、日本の山間部や離島は、人口減少や高齢化により、「自治体が消滅する可能性がある」とまで言われてきました。しかし今、若い世代が移住し、生きがいと役割をもって暮らしている地域が、全国各地に現れ始めています。たとえば、こちらの図を見ると、この5年間で30代女性が5パーセント以上増えた自治体は、都会よりもむしろ地方、しかも、山間部や離島などで目立ちます。

出典:持続可能な地域社会総合研究所「全国持続可能性市町村リスト&マップ」(2017)
http://www.susarea.jp/news/images/zentaigaiyo.pdf

一方、これまで多くの人口を吸収してきた東京、大阪などの大都会は、これまでのような勢いを失っています。工場の海外移転が続いたことなどから、雇用の劣化が進みました。働く人の中で、非正規労働者の数は増え続け、去年初めて2千万人を突破。働く人全体の37.5%に達しています。こうした中で、都会の地域でも貧困の拡大、孤独死、引きこもり、ごみ屋敷などの課題が噴出しています。
日本の地方も都会も多くの課題を抱える中、どうすれば一人ひとりが生きがいと役割を見出しながら、持続可能な地域社会を作っていくことができるでしょうか?このシンポジウムでは、地域づくりの活動や研究を行っている4人の方々をパネリストに迎え、各地の取り組みを動画で見ながら進めていきます。

■藤山浩さん
持続可能な地域社会総合研究所所長。島根県で地域づくりのアドバイスを続けてきた。

■勝部麗子さん
豊中市社会福祉協議会福祉推進室長。住民ボランティアとともに地域づくりをしてきた。

■高橋卓志さん
長野県松本市・神宮寺の住職。寺を拠点に地域の課題を解決してきた。

■広井良典さん
京都大学教授。今後の日本社会の中での地域づくりについて、様々な提言をしている。

司会 後藤千恵(NHK解説委員)

司会:それではまず、藤山浩さんが関わってきた島根県邑南町の人口減少問題に対する取り組みを見ていきます。

人口呼び戻し1%戦略

藤山:1%戦略は、邑南町だけではなく、全国的にもちゃんと通用するものです。私の研究所では、過疎指定の市町村について、あとどれぐらい多く移住を増やせば人口が安定するかを割り出しています。

出典:持続可能な地域社会総合研究所「全国持続可能性市町村リスト&マップ」(2017)
http://www.susarea.jp/news/images/zentaigaiyo.pdf

色分けされていますが、全部を足しあわせて平均すると、だいたいその町の人口の1.15%になります。つまり、1%ちょっと多く取り戻したら、人口も安定し、高齢化や少子化も止まる。ですから住人100人につき1人定住を増やせば、かなりの地域では、人口の安定化を手にすることができるということなんです。

司会:それとともに所得も合わせて1%分上げなければいけないというのは?

藤山:人口が1%でいいなら、所得も住民所得も1%ずつ毎年取り戻せばいいんです。でも今までは、みんな町や村の外でものを買いすぎていたんです。だからお金が地域から外へ流れ出す。実は外食なんか、ものすごい外に出て食べてしまっているんですね。

藤山浩さん作成資料

司会:赤いところが地域外ということですね。実際に、もしも地域内で消費すると、どんなふうになっていくんですか?

藤山:昔は食料や燃料のほとんどを地元で作っていましたが、今は、1割も作ってないところがほとんどです。それを5割まで引き上げて、地域の中で回すようにすると、これは1650人・705世帯の実際にある小さな村で計算したんですが、1億8千万円を超える需要、経済効果が生まれるわけですね。

藤山浩さん作成資料

藤山:先ほどの映像でもそうですよね。そば屋さんが始まる。そうすると農家からそばを買う。あるいは直売市で売る。そうすると健康に影響が出て、さらに介護費用にまで影響する。本当にうまく回って連鎖反応が起きています。みんなが経済の循環に関わっている。そういう循環を作っていくことが大切だと思いますよ。

司会:島根県邑南町で実際に1%戦略に取り組んでおられる市木地区のリーダー、福井竜夫さんにお越しいただいております。福井さん、実際にどんな取り組みをしておられて、どんなことを感じていらっしゃいますか?

福井:まず1%戦略、やっていて非常に楽しいというのが正直なところです。実は10年前に藤山先生から、うちらの市木地区が10年後にはどうなるかという人口の予測値を見せていただきました。10年前は実際にうちの地区には500人ちょっといたんですけども、それが10年後には380人に減っちゃうというデータを見せられたんですね。
しかし1%戦略を実際に実行してみて、現在の人口は460人。380人の予定が、80人も多い。それも高齢化率もほとんど上がってないという状態です。そのおかげで、この10月からまた2名、こちらに移住したいということで、空き家を段取りしまして、彼らも夢を持って起業したいと言っていますので、みんなで応援してやっていきたいなと思っています。

広井:やはり高度成長期というのは、言うなれば飛行機が飛び立つように、地域からどんどん人々が離れていったような面があった。これからはむしろ地域に着陸していくと言いますか、そういう流れが、いろんな世代を通じて広がっているように感じています。だから、これから大変なのは、農村部とか地方より、東京のような大都市圏だという話があるわけですよね。なぜ今、首都圏が急速に高齢化しているかというと、元をたどれば、高度成長期に若い世代が一気に地方から東京に集まった。その人たちが今高齢化しているわけです。実は今、「人口減少社会の課題」と言っている問題は過去に原因がある。ある意味では高度成長期の負の遺産をどう改善するかですね。

藤山:今までは、東京へ来た人が、そこそこ若かったから良いんですね。ここからは高齢者が増えてきます。私の研究では、2050年には高齢者が23区内だけで281万人に達するんです。

藤山浩さん作成資料

藤山:しかもそれが非常に狭い地域に集まってしまいます。どれぐらいかというと、100メートル四方に45人。ということは介護や医療もパンクすると思うんですが、それ以前に、どういう暮らしが、生きがいや役割をもった形で成り立つのかということが見えてこない。本当に深刻な限界を、今迎えようとしていると思います。

司会:それでは次に大都会の地域づくりについて見ていくことにしましょう。

都会の農園でつながりと生きがいを取り戻す

司会:いや勝部さん、定年退職後の男性のみなさん、本当にイキイキと楽しそうでしたよね。

勝部:福祉の業界では、男性、特に都市部における男性の定年後の居場所について、今まで苦戦していたんですね。サロンをやってもなかなか来られない。食事会も2~3回来ると、女性パワーに圧倒されて、もう来れなくなったり。どうしたらうまくいくのかなというのが、ずっと悩みだったんです。
そこでいろいろ考えた時に、被災地の支援に行っていますと、地方のみなさんが本当に農業をやって元気にしている。定年ってないし、すごいなと感じていて。都市部の人たちも農業ができないかと思ったことがきっかけなんですけれども。
農園を作って1年半で70人男性が出てきて、その方たちが今度は生活支援サービス、高齢者が高齢者を支えていくような地域のボランティアの役割も担ってもらうことで、さらに大事な存在として輝いている、そんな感じになってますね。
豊中市は大阪のベッドタウンで、今までは寝に帰ってた街だったんですけれど、そこでお友達ができて、そして地域課題を知ると、それぐらいだったら自分もできるんじゃないかということで、なにかワンクッション置くことで、みなさんすごく変わっていかれたなというふうに思います。仲間ができると、みんなで行けば怖くない感じですかね。

藤山:こうした高齢者の生きがい・役割については面白いデータがありまして、誰もが出荷できるような直売所みたいなものがあると、非常にお年寄りはお達者になる。たとえば邑南町の田所地区は人口1800人ぐらいですが、全国に比べて、年間で介護費用が5000万円くらい浮いているという計算があるんですね。日本全体で換算したら3兆円以上にあたります。これはすごいことで、ぜひ今度は都会でも分析してみたいなと思っています。
その浮いたお金を、うまく地域づくりやいろんなものに使っていけないのか。たとえば、介護や医療それぞれ縦割りの単独決算じゃなくて、地域全体のいわば連結決算で本当は見てほしいなと。そうすると、今までにない、いろんな活路が見えてくるんじゃないかなと思っています。

広井:私はコミュニティー経済と言っているんですが、先ほど藤山先生も言われたような、地域の中で人・モノ・カネが循環して、経済も循環するし、コミュニティー的なつながりにもプラスになるという意味で、この邑南町と豊中市、対照的な地域であるにもかかわらず、そこが共通しているのがすごく面白いなと思いました。

司会:地域で拠点になる場所が必要だということにもなりますか?

広井:実は私、そういう拠点としてどこが重要かという全国アンケート調査をしたことがあるんですが、それで出てくるのが商店街や、農園とか自然関係、それから最近は福祉医療施設も、拠点として重要だったりするんです。もう1つ出てきたのが、お寺や神社。日本にはお寺と神社の数がそれぞれ約8万前後あって、コンビニよりも多いんです。もともと、まさにコミュニティーの中心というか拠点でしたので、新しい意味が出てきているんではないかと思います。

司会:では次に、長野県松本市神宮寺の取り組みを見てまいります。

地域住民の人生に寄り添う寺

高橋:生・老・病・死という人生のプロセスがあるんですけれども、その中の生・老ぐらいまでは、今までお話しされていた“生きがい”とか“役割”というところがある。でも、病・死というところには、そういうのが少ないんですよ。
それで、あるとしたら“生きがい”じゃなくて“死にがい”になってくると思うんですね。どんなふうにして死んでいくか、死に向かっていく時、それから看取る時、亡くなった時、その後の葬儀、お墓。こういったものが一体化して、いわゆるワンストップでサポートされないといけないと僕は思っていて。そういうことができれば、必ず頼りになる寺ができるはずだと僕は思っているんですね。

司会:高橋さんが作られたビデオなどを見て、どんな変化が起きてくるんですか。

高橋:定番化した宗派伝来のお葬式ではないので、一人ひとり100人の生き方があれば100人の別れ方があると思っている。そういう100例をなんとか作ろうとするんですね。残された自分たちにとって、亡くなった人はいったいどういう存在だったのか、遺族が分かるというか、そんな感じになっていますね。そのことによって、地域の人たちもその人を見送るという感覚になってきていますね。

司会:ビデオを見ることによって、地域のみなさんも記憶を紡いでいくことになるんですね。

高橋:そうです、そうです。それは大いにあります。

藤山:記憶を紡ぐというのは、地域にとっても生命線だと思うんです。私の集落でもお葬式が増えていますが、どういうことをみんなで話しているかというと、うちは川の側の集落なので、橋を何回も何回も流されるんですよ。その中で、あのおじいちゃんが駆けずり回ったからこの橋ができたと。要するに、今だけ・自分だけ・お金だけじゃなくて、がんばった人の姿なんですよね。そういう話を記憶として受け継いでいくと、少しだけ背筋が伸びる気がするんですよ。地域が、あるいはそこに暮らす人が、だんだんと良くなるとすれば、そういう記憶のリレーがつながるから良くなるんだなと。

高橋:それが“死にがい”という言葉だと思うんですよ。記憶を紡いでいくことが、われわれの中に入ってくるものなんだというふうに思うんです。

勝部:今、私たちの周りでも無縁になって、誰からも看取られることがなく亡くなっていく人がいたり、地域でとても活躍していても、誰ひとり分からないまま、家族葬でいつの間にか終えられる人たちがいる。とても寂しい感じがするんですけど。人間関係の貧困。それは結果的に社会的孤立につながっているんじゃないかと思うんですね。この社会的孤立をどうやって克服していくかと考えると、生き方・役割・死に方も含めて、高橋さんのお話を聞きながらすごく学ぶなぁと思いました。

高橋:もう一つコミュニティーとの関わりの中で具体的なことを言えば、お墓の問題。今すごく変化が起きています。先祖代々の墓地がどんどんしまわれていって、それが永代供養のお墓に代わってきているんですね。そういうところからも人間関係ができてきて、永代供養を利用している人たちが「墓友」っていって友達になっちゃう。すごく仲よくなっちゃうんですよ。お墓でコミュニティーができる。そういう時代になってきていますね。

司会:最後にパネリストのみなさんからひと言ずつお願いします。

藤山:私は、もう一度地元をつくり直す時代だと思っていて、自分の身近な地域社会ぐらいは、蹴落としあう競争社会じゃなく、一人ひとりの生きがい・役割・居場所がある共生社会。一人勝ちじゃなくて、ちょっとずつ自分の役割やポジションがあるような社会を作りたいなと思いますね。
今日、勝部さんや高橋さんのお話を聞いて思ったのは、まずは聞いてあげる人がいるだけで、本当にすごく救われるんじゃないかなと。地域の中で聞いてあげる、そこからでも始まるのかなと、今日は勉強になりました。

勝部:高度経済成長期に私の両親も島根県から大阪に出ましたが、たぶん同じような人たちがいっぱい、ふるさとを離陸して上がっていって、そして自分たちの居場所を作ろうと着地しようとしているんだけれども、なんか自分たちが昔暮らしていたような街にはなっていないんですね。お年寄りにはお年寄りの役割があり、若い人に若い人の役割があり、というコミュニティーじゃない。新しい街になっちゃったから。今から作り直すという新たな挑戦なので、成功すればまたここが地元になっていくんだろうなと、さっきのお話を聞きながら思ったところですけれども。

司会:ボランティアの方がゼロから8000人まで増えたという地域ですよね?

勝部:そうですね。それも一つひとつの地域の問題をみんなで考えて、だんだん広がってきたということなので、「逆転満塁ホームランはない」っておっしゃったんですけど、そういうことなんでしょうね。なんか突然変異のように世の中が良くなるということではなくて、小さな挑戦でもやり続けていくことで、きっと可能性が広がっていくんだろうなと思います。

高橋:今日のテーマである、持続可能性と言ったら、仏教は二千数百年続いている宗教ですからね。そりゃ坊さんたちの役割ですよ。無縁にしているものを有縁にしていく、あるいは創縁、創っていく。今は、創縁に行くベクトルがもう全然わからなくなっちゃてるから、それを創り上げていかないといけないと思っています。それが私が関わっている中山間地の地域の活性化であったり、おそば屋さんであったりというわけですけどね。

広井:私は「地域密着人口」と言ってるんですが、人口全体に占める子どもと高齢者の割合のことです。現役時代は勤め先との関わりが強いわけですけど、子どもと高齢者は地域との関わりが強い。これまでの50年というのは、高度成長期を通じ、ずっと地域密着人口が減り続けてきた時代だったのが、これから一貫して増え続けていく。
その発想の切り替えはけっこう大変なので、どこも苦労していると思うんですが、今日は、新しい動きが百花繚乱のように各地で起こり始めているので感銘を受けました。そういう意味で人口減少社会は、マイナスに議論されることも多いですが、むしろチャンス、新しい出発の時期だということを、非常に感じました。
そこで地域とかローカルが非常に鍵になってくる。ただ同時に、各地の先駆的な動きを支えるシステムや政策も重要です。若い世代への支援や社会システム、政策として支援する仕組みも並行して考えていくことが重要かと思います。

司会:みなさんどうもありがとうございました。