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インタビュー・地域づくりへの提言

日本をリードする知の巨人たち。社会が大きく転換しつつあるいま、時代を拓くカギは地域にあると指摘します。持続可能な未来へのビジョンを語っていただきます。

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2020年01月30日 (木)

地域を襲う自然災害から、明日の社会を考える~ 民俗研究家・結城登美雄さんインタビュー【後編】

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結城登美雄さん(福島川内村婦人会の方たちと

 

(前編はこちら)

人間の生存条件から考えなおす

国連の地球温暖化会議で、グレタさんというスウェーデンの16歳の女の子が演説しましたね。あいかわらず成長経済なんておとぎ話ばっかりばらまいて、何も考えてないじゃないか。許せないと。

温暖化だけじゃなく経済も、地球環境に対するものすごい脅威として、あの子は受け止めていると思う。でも戦後70年もの長い間、経済成長一辺倒でやってきた日本人は、安定した地球環境、つまり自然の上に人間の暮らしがあるということを、脇に置いてきてしまった。

この災害をきっかけに、もういちどしっかりと、わがくらし、日本の地域社会にとって大切なものは何かを考えなくちゃならない。あえて言えば、災害によっていいチャンスをあたえてもらったと、そう言えるようになったら良いかと思います。

そうしたなかで、何が大切かと考えたときに、やっぱり僕は、経済評論家の内橋克人さんが提唱されている「FEC自給圏」――食糧(Food)・エネルギー(Energy)・ケア(Care)の自給圏の形成が重要だなと思っているわけですよ。人間の生存条件から考えていくということです。     

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そのうち最も重要な食糧については、もう話しましたが、もうひとつはケア。

今度の災害は、災害が起きたときに、高齢者、ひとり暮らし、障害者、子どもたち、いろんな人たちのケアを、わがこととして考えなくちゃいけないということを、われわれに突きつけたと思う。誰も逃げ遅れることのない地域を作らなくてはいけない。地域に暮らす高齢者や障害者、こども、そうした人々に声をかけて、一緒に避難する。こうしたことは、量的にも、広がりから言っても、行政で対応できるレベルをはるかに超えています。人手の足りない行政には到底できないことです。

ですから、誰かまかせにするんじゃなくて、自助、そして共助の意識をもつということ。自分の身さえ助かればいいということではなくて、お互いに支えあっていくための共助、これを地域の中にしっかり作っていかなくてはいけない。そして、行政は何をしたらいいか、住民の声をもとに、住民と行政の役割分担をどうするのかを、みんなで話し合って確認しようや、ということだと思います。

こうした地域の課題について、「わがこと」として向き合っていく態度は、内橋さんの言うわれわれの生存条件である、地域の介護をどうするか、地域の医療をどうするか、地域の福祉をどうするか、といった話し合いを進めていく上でも、大切なことであると思います。

 

――エネルギー(E)についてはどうでしょう。

 

今までは東京で使う電気を、福島や新潟に頼っていた。そういうエネルギーのありようを、どうするんだい、と突きつけたのが3.11だったと思う。

停電すると、遠くから送られてくる電気が使えなくなって、冷蔵庫のものが腐ってしまう。携帯電話も電池が切れて使えなくなる。都会ではエレベーターが止まってしまう。

今回、多くの人が経験したことですが、屋根に太陽光パネルが乗っていたら、必要最低限の電気は、自分たちで賄うことができる。隣近所の人たちの携帯の充電を助けてあげられる。また、電気によるエネルギーが今までよりも半分とか3分の1でもちゃんとやっていけるよという方向を、災害からの復興にあたって探していってもいいんじゃないかと思っているんですよ。わが地域のエネルギーをどうするかを、地域の人たち自身で考えていく。これも行政と一緒になって本気になって考えないとだめでしょう。

日本全体のエネルギー自給率は10%弱と低いんだけども、わが地域では、これだけ自給できますよと。地域で使うものは、エネルギーも自分たちで自給する。そのときに、エネルギーを増やすだけじゃなくて、エネルギー利用を抑えるというのもテーマになってくるでしょう。

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農地を利用した太陽光発電(福島県飯館村)

 

先人たちの知恵に学ぶ

民俗学者の宮本常一さん(1907-1981)がこういうふうに言ってるんですよ。都市は新しいものを良しとして、古いものを捨ててきた。でも農山村、たとえば青森の六ケ所村あたりに行くと、家々の外に一冬分の薪を毎年用意しているんです。長年の経験がそうさせたというんですよ。

もちろん灯油もあるし、電気もあるしガスもある。でも、薪も手放さない。災害時には頼りになる。手間はかかるが、お金はかからない。自然と闘ってきた人たちは、経験上、新しきものと古きものを混在させて使っているんです。

水道の時代になったら「もういらない」と井戸を埋めてしまった地域が多かったけど、残しているところもあります。僕が井戸の調査をやった仙台市宮城野区岩切では、みんなで毎月掃除して、大事に手入れをしていた。それで仙台市に話して、災害時に水を提供する「井戸水提供の家」というのを作ってもらったら、東日本大震災の時、断水になっても一度も困らなかったというんです。

電気がなかった時代には、ろうそくか、イグサの芯に油を入れたものを明かりに使っていました。だから廃油を明かりにできるわけ。

電源が切れたらすべてダメになってしまうのではなくて、電源が切れたときにはどのように煮炊きをするか、どのように水を調達するか。古いものを遅れたものと見るのじゃなくて、電気や水道のない時代にここに暮らしてきた先輩たちは、明かりや水をどうしていたのか。それが、緊急時に使える知恵になると考えればわかりやすい。

自然というのはいつだって調子良いものではない。自然は暴れて、我々の生存条件である、F(食料)とE(エネルギー)とC(医療・介護・福祉)を破壊してしまう。その時に、いち早く安心を手に入れ、復興していくためにも、FEC自給圏を地域ごとに形成しておくことが大事なんだなあと思うわけです。そして、自然とともにある最も大事なものが食糧だということは、絶対に忘れてほしくない。だから先人たちの知恵に学ぶということは、村を生きるノウハウ、そのものなんですよ。

防災や復興を考えるのが「有識者」だけじゃダメなんです。この土地を生きた人でないと、ここは水が他よりもよく出るんだとか、土砂崩れが多いんだとかいうことがわからない。そういう場所でどうやって生きていくのかといったら、過去にこの土地を生きた人たちの知恵に学ぶのがいちばん大事だと思うんですよ。そういう古き知恵を地域の共有資産として守り継承しておくことが大事じゃないかと思います。

 

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農産物直売所(宮城県東和町)

 

明日のための仕事をつくる

この土地をできるだけ安定した場所に、悲劇のない場所にしていくために、やれることをやっていくことが大事なんじゃないかな。行政や有識者など、誰かまかせにするんじゃなくて、そこに暮らす自分自身もまた、その地域をよくしていく一人であるために。

そのときいちばん分母に置きたいのが、食糧、エネルギー、ケア。この3つを地域で安定させていくと、そのなかで仕事を作ることもできるんじゃないか。

災害からの再建のときも、様々な事業所に「補助金を出すから被災した人たちを雇ってよ」と頼むようなことをしている。でもそうした仕事は、補助金がなくなるとクビになってしまう。時限つき非正規雇用ですね。今、非正規の人は4割もいる。

そうした方向ではなくて、地域が良くなるためのテーマが見えてくれば、いろんな仕事のかたちが食糧、エネルギー、ケアの周辺に考えられると思う。直売所、農家レストラン、農家民泊、福祉のNPOとか耕作放棄を耕す農業生産法人、再生可能エネルギーの会社、さまざまにあるはずなんですよ。

経済成長だけを追い求めて、温暖化を加速させ、災害を激化させていく今の世界に対して、グレタさんは「許さない」と言っている。もう所得倍増論ではないんですよ。

日本のこれからの社会をよくするための仕事なんだ。お金という物差しに基準を置くんじゃなくて、地域の力を高めていく。地域の生存条件を高めていく。地域をより良く、より楽しく、安心して暮らし、子育てできるところにしていく。そのために若い人たちの力を発揮できる場、働く場を考えていくのが大事だと思います。これが実現していったら、がんばれる若い世代はいっぱいいると思います。

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