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インタビュー・地域づくりへの提言

日本をリードする知の巨人たち。社会が大きく転換しつつあるいま、時代を拓くカギは地域にあると指摘します。持続可能な未来へのビジョンを語っていただきます。

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2019年08月06日 (火)

自分たちの手で地域経済をデザインしよう 枝廣淳子さんインタビュー(前半)

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持続可能な未来に向けて、新しい経済や社会のあり方などを研究している、大学院大学至善館教授で、幸せ経済社会研究所所長の枝廣淳子さん。「未来は、地域にしかない」と信じているという枝廣さんに、話を聞きました。

 

 

 

 

著書『地域経済を創りなおす――分析・診断・対策』(岩波新書)で、地域経済の現状を「漏れバケツ」にたとえておられます。

地域が自分の足で立てるようになるためには、それぞれの経済がしっかり回ることが不可欠だと思います。そこで暮らしを成り立たせるためには、「東京からの交付金や補助金で何とかすればいいや」ではなく、それぞれの地域が自分たちで手綱を握って経済を回していくことが必要です。

それぞれの地域経済をひとつのバケツと考えてみてください。これまでは、補助金をひっぱってきたり、企業を誘致したり、観光客に来てもらったりと、地域経済というバケツの中に水を注ぐように、いかにお金を入れるかをみんないっしょうけんめいやってきたと思います。

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それはそれで大事です。ただ問題は、一回入ったお金が、ほとんどの場合、すぐに外に出て行ってしまうということです。これが「漏れ穴」ということです。それはすごくもったいない。入ったお金が地域の中で何人もの手を渡って何度も回る。そういう循環を作ることができれば、同じお金でも作りだす富は大きく違ってきます。

たとえば、補助金で建物を建てることを考えてみましょう。その工事を外の市や町の建設会社が受注すると、お金はすぐに出て行ってしまいます。これを地元の工務店にすると、お金は地元に入ります。さらにその工務店が輸入木材ではなく地域の木材を使うことにすれば、工務店に入ったお金は製材会社に入り、その製材会社が地域の中で木材を集めれば、お金は森林所有者のところに入ります。こうして一回入ったお金が地域の中で何バウンドもすることで、地域の中で富を作り出すことができます。

これを乗数効果といいます。わかりやすく数字で説明しましょう。2つの町に同じ1万円が入るとして、A町の人たちは地域経済のことをまったく考えていないので、隣町のショッピングモールが安いから買い物に行く、あるいは便利だからインターネットで買うという行動をとります。そのため、例えば1万円のうち2割の2000円しか地域に残らないとします。残った2000円を受け取った人も、そのうちの2割しか地域で使わないとすると、そのうち400円しか残らない。こうやって計算していくと、町に入った1万円は約12,500円の価値しか生み出しません。

一方、B町では、役所や事業者、住民みんなも、できたら地域のものを買おうと思っているので、8割が地域の中に残るとします。すると1万円のうち地域に残る8000円から、そのまた8割の6,400円が残る……とこうやって足していくと、最終的に1万円が約5万円の価値をつくりだすことになります。

1万円をもってくる大変さはA町でもB町でも同じですが、そのお金が12,500円で外に行ってしまうのか、それとも5万円つくりだすのか。それによって地域の豊かさは大きく変わってくるんです。今後お金を外からひっぱってくるのはますます難しくなっていくので、一回入ったお金を地域の中で滞留させ、いろんな人の手を渡り歩いて循環する仕組みをつくっていくことが大事だと思います。

 「漏れ穴」をふさぐことは、雇用創出や移住による人口増加にもつながるでしょうか?

地方から東京に出てきている若い人たちと話をすると、本当は地元に残りたいけれど仕事がないんだと言います。地域にお金が残るということは、必要とされる仕事がある、つまり雇用が発生するということです。そうすれば、地元の若者たちがそもそも外に出て行かなくて済むかもしれないし、UターンIターンで入ってくるかもしれません。

もちろん、転入が増えても亡くなる人が多ければ人口そのものは自然減になりますが、社会増をして転入が多い地域にこそ可能性があります。地方に移住する若い人たちは、単に仕事があるかどうかだけでなく、面白いところ、生き生きしているところ、動きがあるところに惹きつけられています。

たとえば、持続可能な地域社会総合研究所の藤山浩さんが指摘しておられることですが、島根県では1世帯あたり年間3万円パンを買っているので、300世帯の地域の中にパン屋さんがなければ、年間1000万円のお金が外に出ているということになります。逆に、地域の中で1000万の売り上げが立つとわかっていれば、そこに移住してパン屋さんを起業することも考えやすくなるわけです。(参考:TVシンポジウム「生きがいと役割が実感できる社会へ」

地域経済の大きな「漏れ穴」としてエネルギーを挙げておられますね。

ほとんどの自治体でエネルギーは最大の穴になっていると思います。エネルギーは人びとの暮らしにも産業にもなくてはならないものですが、現状はほとんど輸入の化石燃料に頼っているので、地域の中で再生可能エネルギーを作らない限り、外にどんどんお金が流れ出していくことになります。

わたしがお手伝いしている北海道の下川町では、電力や暖房・給湯などの熱もあわせて、約13億円の規模のエネルギー需要があります。石油や石炭を使うと、そのお金がすべて町の外に出ていってしまうことになります。それを町の中で作るバイオマスに替える取り組みを進めています。現在、少なくても3億円分の燃料費が域外に流出せずに、域内に残るようになりました。それだけのお金が、もともと林業をしていた人たちの雇用や地元の再エネ関連のエネルギー業者に回るようになったということです。

地域ごとに「漏れ穴」はたくさんあるので、まずできるだけ大きい穴からふさいでいくことが大事です。もちろん「穴をふさぐ」といっても、100%自給自足を目指しているわけではありません。規模の小さい町で機械や自動車を自分たちで作るのは無理ですから、外から買ったほうがいいもの、買わざるを得ないものは当然あります。しかし現在はあまりにも外に頼りすぎているので、自分たちで作れるものは自分たちで作って、もう少しコントロールを取り戻そうよということです。下川ではエネルギーだけでなく食べ物も、できるだけ地域の中で作ったものを地域で食べるようにしていこうとしています。

地産地消の給食もその方法になりますか。

給食には毎日かなりの量の食材を使うので、その材料を地産地消に替えていくことは経済面でも大きな意味があります。もっとも、地元だけで大量の材料をそろえることは難しいので、上手に調整役が入っているところではうまくいっています。

何よりも、顔の見える関係で作られたものをいただくという食育の意味は大きいですね。さらに子どもたち自身が野菜作りなどに関わることで、食べ物の生産は人間の思う通りにならない、自然のリズムに左右されることを学ぶ機会にもなります。そういう揺らぎの中で人間が生きてきたし、生きていることを学ぶのは大事なことですね。(参考:「ふるさと給食」動画

(後半に続く)

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枝廣淳子さん

1962年、京都府出身。大学院大学至善館教授、幸せ経済社会研究所所長。『不都合な真実』(アル・ゴア氏著)の翻訳をはじめ、講演執筆等を通じて、地球環境の現状や国内外の動きを発信。持続可能な未来に向けた新しい経済や社会のあり方、幸福度等を高める考え方や事例を研究している。意志ある未来を描く地方創生事業にアドバイザーとして関わるなど、多くの自治体や企業において合意形成の場づくりやファシリテーターを務めている。主な著書に『レジリエンスとは何か』(東洋経済新報書)、『地元経済を創りなおす』(岩波書店)ほか多数。

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