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インタビュー・地域づくりへの提言

日本をリードする知の巨人たち。社会が大きく転換しつつあるいま、時代を拓くカギは地域にあると指摘します。持続可能な未来へのビジョンを語っていただきます。

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2016年04月08日 (金)

いまこそ「人と人とが共生する経済」への転換を。【経済評論家・内橋克人さん】①

経済評論家・内橋克人さんは、弱肉強食の市場原理至上主義(新自由主義)が、地域社会の衰退や貧困、社会の分断をもたらしてきたことに警鐘を鳴らし、「人と人とが共生する経済=理念型経済」への転換を訴えてきました。その基本となるのが、「FEC自給圏」を目指す地域づくりです。FEC自給圏とは、食糧(Foods)とエネルギー(Energy)、そしてケア(Care=医療・介護・福祉)をできるだけ地域内で自給することが、コミュニティの生存条件を強くし、雇用を生み出し、地域が自立することにつながるという内橋さん。グローバル経済の荒波の中で、地域にFEC自給圏をつくっていくことの意味について、うかがいました。


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※画像をクリックすると、動画のページに遷移します。

-- 東日本大震災を経て、内橋さんの提唱される「FEC自給圏」の考え方に共感する人も増えているようですね。

内橋氏  かなり理解が広がってきたと思います。マネー資本主義、世界市場化という潮流に対抗するためには、まずF(食糧)。人間が生きていくために大切な食料が自給できなければいけません。家畜の肥料その他も含めて、わが国が本当に生存状況を維持するための食料は、はなはだ心もとない状況です。
そしてE(エネルギー)。これまでの科学は、人間の生存条件を無視しても、はるかに効率的なエネルギーを生み出すんだと言って、原発安全神話を作り出してきました。エネルギーのあり方は人間の生存そのものを決めるんですね。自然エネルギーへの転換が是非とも必要だと思います。加えて、具体例はまたあとでお話ししますが、ゼロ・エミッション、廃棄物ゼロ社会を考えていかなければならない。
最後にC(ケア)。医療、介護、福祉の分野で、地域の中で人々の尊厳ある生存を守り育んでいくための、具体的な設備やシステムを作っていく必要があります。
被災地の復興というだけでなく、今の社会を覆いつつある市場原理至上主義的な流れに対し、人々の連帯と参加と共生によって自給圏を形成していく。そのような共通の理解や使命感を持って、人々が立ち上がっていく時代に入ったと思います。

 

-- 一方で、市場原理にもとづくグローバル経済が成長を続け、豊かな人々がより豊かになっていけば、最終的には、その恩恵が全体に行き渡っていくという考え方もあります。

内橋氏  いわゆる「トリクルダウン」という考え方ですね。これは、おこぼれにあずかるという意味です。水があふれれば下にも滴り落ちていく、お金持ちがいっそうお金持ちになれば、貧しい人もおこぼれにあずかれると言うんですね。しかしながら、21世紀資本主義においてトリクルダウンはありえません。家屋であれば、屋根に落ちた雨水は樋を伝って大地の上に滴り落ちますが、その樋を途中で切断して栓を詰めているようなものです。下には滴り落ちないようになっている。雨水、つまりお金は、マネーゲームに使われて、地面、つまり労働者の所には落ちて来ないのです。
マネー資本主義の本質とは、マネーがマネーを生むということです。2×2=4、4×4=16というようにマネーがどんどん増殖できるようなシステムを作る。金融工学を駆使した投資のメカニズムですね。これが市場原理至上主義、新自由主義的市場ということです。しかし、労働の対価としての賃金は1+1=2というふうにしか増えません。

人は何のために働くのか。暮らすためです。そして暮らしがよくなってこそ、よりよく生きることができる。職がなければ人間の尊厳はなく、その報酬が悪ければ暮らしは悪くなる。すると、よりよく生きることも難しくなるわけですね。つまり人間とは、“生きる・働く・暮らす”の統合体です。ところがグローバライゼーション(世界市場化)は、全体としての人間を、消費者としての人間に分裂させてしまう。そうして消費者としてのメリットがありますよと、安ければ安いほどいいという価値観を人々に植えつけているわけです。マネー資本主義の洗脳ですね。
大事なことは、本質を見抜くことです。安ければいい、ではなく、それはなぜ安いのかを問わなければなりません。競争と言いますが、いま行われているのは、どん底へ向けての競争、レース・トゥー・ザ・ボトム(Race to the bottom)です。その結果、何が来るかといえば、勝った者がすべてを取る社会です。ウィナー・テイクス・オール (Winner takes all) です。「努力した者が報われる社会を」というキャッチフレーズで正当化していますが、一人の勝者以外の人々にとっては、どん底へ向けての競争です。そうやって貧困の装置化、つまり、より安く過酷な労働も甘受できるような貧しき人々を生み出す社会を作る方向へ動いてきたわけです。
アメリカはベトナム戦争の後、徴兵制から志願兵制度になりました。なぜ人々は志願兵制度になっても命を危険にさらす戦場に行くのか。貧しいからです。志願兵制度を国家の装置として維持するためにも、貧困が必要なのです。今の日本もそうです。貧困を社会的装置として生み出す社会は、統治する者、支配する者にとって、これほど好都合なことはありません。そのからくりを知ることが必要です。

 

いまこそ「人と人とが共生する経済」への転換を。【経済評論家・内橋克人さん】②に続く

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内橋克人さん

1932年、神戸市生まれ。経済評論家。神戸新聞社記者を経て1967年にフリーとなり、経済、テクノロジー、医療など、日本が直面する様々な社会的課題の解決に向けた評論活動を続けている。著書に『匠の時代』『共生経済が始まる-人間復興の社会を求めて』『もうひとつの日本は可能だ』など多数。

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