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2018年04月23日 (月)
【新商品完成のご報告】~迷走のすえ、藤里グッドデリシリーズ第一弾が完成しました!~
人づくり・仕事づくり・若者支援を3本柱に掲げて、藤里町社会福祉協議会が「町民全てが生涯現役を目指せる町づくり事業」に取り組んでから、3年が経過しました。
「人づくり」としては、平成29年6月に「プラチナバンク」を立ち上げました。これは、後期高齢者や車いすの方、身体障害や精神障害のある方も含め、働きたいという意欲のある方なら誰でも登録できる人材バンクです。人口3300人の町でプラチナバンク会員は330人を超え、最年少の23歳から最年長の92歳と、幅広い年齢層になっています。
「若者支援」としては、全国の若者たちに藤里町での暮らしを体験してもらう「藤里町体験プログラム」を平成28年度から実施しました。昨年度は初めて、一人の若者が、受講後に藤里町で仕事を見つけて藤里町民になってくれました。
そして、迷走を続けていた「仕事づくり」の方も、29年度末のギリギリに新商品が完成し、ホッと一息ついております。
なりゆきで新商品開発担当になってしまった私としては、完成に至るまでの迷走を、語らずにいられません。
【マーケティングリサーチ? プランニング? こんな決め方ですか?】
人づくり・仕事づくり・若者支援推進チームの研修風景。
市場は何を求めているのか。そんなことを調査・分析できるはずがなく、できたところで市場が求める商品を作れるはずもなく。ならば、自分たちにできることは何かを探すことから始めようと、会議を繰り返し、成功している中山間地の視察研修にも行きました。
とにかく皆さん、新商品開発に関しては、それぞれが独自のアイディアをお持ちでした。しかも、推進チーム以外の町民からも次々と、自発的にアイディアが寄せられました。
たとえば農業振興の第一人者を自負するAさんの場合。私が、藤里町の舞茸を使って「白神まいたけキッシュ」を開発したことを、高く評価して下さり、ことあるごとに人生80年の経験と知恵を伝授して下さいます。
6年前は、画期的なアイディアだという「ゼンマイのカレー」を持ち込んできました。不味くはないのですが、私の独断と偏見で「ゼンマイをわざわざカレーにする意味がわからない」と即刻却下したのです。
リベンジだと、2年前は「朝鮮人参いりカレー」が持ち込まれました(やっぱりカレー?なぜカレー?)。滋養効果のある朝鮮人参を育てるには3年以上かかるそうで、その努力は評価したいのですが、やはり「カレーに入れる意味がわからない」と却下。
そんな、それぞれが勝手に新アイディアを披露する「仕事づくり」推進会議でしたが、藤里町にないモノではなく、あるモノを商品化する、たとえば。昔からおばあちゃんが作ってきた「山菜の煮つけ」等を商品化したらどうかという話になり、「伝統の味」シリーズ案はあっさり決まりました。
ただし、これまでに挑戦して失敗した人も多く、商品化は難しいだろうが試す分には構わない、という意味での承認でした。
人づくり・仕事づくり・若者支援推進チームの合同会議の風景。
ところが、他チームとの合同会議を開くと、なぜか「葉っぱビジネス」案が浮上しました。この「葉っぱビジネス」は四国の上勝町で行われている事業で、わたしたちも数年前に視察研修に行って、たいへん感銘は受けましたが、ここでは難しいということで、一度は廃案になったはずのアイデアです。どうしても、研修先の取り組みをそのまま真似ればよいという発想の方が多いのです。
後発の不利、雪国であることの不利、何よりも力量のある特定の誰かではなく、広く誰にでもできる「仕事づくり」を目指すという目的に合致しないことを指摘して、「藤里で葉っぱビジネスは無理だ」と申し上げました。
そしてつい、「可能性があるとすれば、根っこビジネスだネ」と言ってしまいました。「他に実現可能なアイディアが出ないなら、根っこビジネスに参入するゾ」と脅したのです。「葛の根っこ、ワラビの根っこを掘り出して、木づちで叩いて叩いて、冷たい水にさらしてさらして。そんな大変な作業になるゾ」と。
その翌朝、葛の根っこが20㎏ほど、社協に届いておりました。
「はぁ? 根っこビジネスをやれということですか?」
雪が降った山での根っこほりと、寒い中での根っこたたきの風景。
「仕事づくり」の新商品企画は、そのまま「伝統の味」と「根っこビジネス」に決まってしまい、発案者として私は、新商品開発担当になっていました。
【いよいよ実施! とはいかず、苦難の道はつづきます】
「仕事づくり」の拠点として温泉付き施設の指定管理を受け、ワラビ栽培のための原野を借り受け、取り敢えず「根っこビジネス」には着手できると思ったのですが、なかなか思い通りにはいきません。
町の方々は「野焼きをすればいい。それだけで、ワラビなんて勝手に生えてくる」と仰います。「野焼きなんて、昔はどこででもやっていた」とも。
後に、野焼きのプロと信じていた方々が「子どもの頃に野焼きを見たことがある」方々だと判明し、ワラビが勝手に生えてくることもありませんでした。
この3年間、牛の動向を探りつつ放牧場のワラビをとっては、広すぎる4ヘクタールの原野に植えていく作業を繰り返してまいりました。(ワラビの苗を買うのではなく、藤里産のワラビにこだわるのです)
ワラビの根っこ掘りをしている風景。
完成した葛粉(左)とワラビ粉(右)
それでも、自生する葛の根っこワラビの根っこを掘り出し、根気よく叩いて、白神山地自慢の清らかな水にさらせば、売れる葛粉ワラビ粉ができあがると思っていたのです。
その肝心の水が、赤く濁っていました。古い建物で水道管がさびていたようです。濁りが取れるまで水を出しっぱなしにしようとすれば、今度は排水溝が逆流します。排水管の具合も良くなかったのです。
改修工事が終わるまで1年間を待ち、苦労して30キロほどの葛粉・ワラビ粉を完成させました。プラチナバンク会員も職員も、本当に苦労して抽出した貴重な葛粉・ワラビ粉です。
正直、そのまま売り渡す気になれず、売り出し戦略を練り直しております。
【先人の知恵をなめてはいけません!?】
平成29年度は、改修工事を終えた「仕事づくり」の拠点で、「伝統の味」シリーズの試作品づくりです。
足腰の達者なプラチナ会員が山に入って、ふき・たけのこ・山ウド等の山菜を採ってきます(男性陣を想定していましたが、参加者は圧倒的に高齢女性が多いのです)。待ち構える別会員たちが、それぞれの特性に合わせて、塩漬けにしたり天日干しにしたり。手間ひまはかかっても、ただ水煮にしたのでは、味も香りも抜けてしまうそうで、それこそ先人の知恵です。
そして、頃合いをみて今度はていねいに戻し、煮つけ等をつくるのです。
フードプロデューサー様からは「ありえない工法」と言われつつ、上質を目指すと息巻いて、とにかく商品として仕上げました。
藤里グッドデリシリーズ(左)「ふきと山うどの含め煮」&(右)「わらびと舞茸の山椒煮」
最初は、藤里のおばあちゃんたちが喜んでくれる山菜料理を目指したのです。試作品をバイキング料理として並べて意見をいただいたところ、「山菜料理なんて珍しくもなんともない」と言われ、「少量でいいのにバイキングにする意味がわからない」と不評でした。
そこで、家庭のお惣菜料理から脱却して、ありったけの先人の知恵を集結し、水にこだわりダシにこだわり、お土産にできる上質を目指したのです。
試食を頼んだ地域の方々の評判は上々で、お土産にしたいというお言葉をいただいております。
【新商品のお披露目は、在京藤里会で】
そして、3月25日には、首都圏に在住する藤里町出身者で作る「在京藤里会」(会長 斎藤秀夫氏)が開く恒例のイベントで、「ふきと山ウドの含め煮」と「わらびと舞茸の山椒煮」をお披露目しました。暖かい応援の言葉をいただき、「白神まいたけキッシュ」とともに藤里グッドデリも好評のうちに完売。満開の桜の中を意気揚々と帰ってまいりました。
在京藤里会の風景