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地域づくり情報局

土佐の森から~未来へのたより

高知県いの町のNPO法人「土佐の森・救援隊」中嶋健造さんたちによる「自伐型林業」での山林・中山間地再生への挑戦。

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2016年08月26日 (金)

森林率7割の日本(森林大国日本)の中山間地域の在り方

日本の森林率は約7割である。先進国ではトップクラスの森林率を誇る森林大国と言える。また地球上での日本の立地は温帯地域に位置し、四季があり、海に囲まれ雨がよく降る。故に樹木の生育がよく、また多様である。林業を実施する条件としては、ことさら恵まれていると言える。その証拠に人工林の歴史は古く、奈良吉野や鳥取智頭では室町時代や戦国時代から植林が始まったのではないかと言われている。特に奈良の吉野林業は江戸時代から有名となり、他国にも知られていたのではないか思われる。おそらく昭和50年頃までの吉野林業は世界一の林業が展開されていたのではないかと想像する。
その歴史ある日本林業が、昭和の終わり以降、特に平成に入ってから衰退産業の代名詞的存在となり「林業は儲からない」が完全に一般化してしまったといえる。私が林業に接し始めた平成13年ごろは「放置林」だらけとなり、林業の従事者も、約52万人いた昭和30年代の1割以下という惨憺たる状況になっていたのである。

地球上で樹木がよく育つ好立地に位置し、また先進国として発展してきた日本。本来、世界をリードする林業地であってしかるべきである。しかし、現状の林業先進国はドイツやオーストリアとされている。ドイツの年間雨量は800㎜以下である。オーストリアもほぼ同じである。日本の平均は1,700㎜で、高知県は3,700㎜である。このように日本がはるかに林業適地である。さらに日本の森林面積はドイツの2.3倍、オーストリアの6倍以上である。一方、ドイツの林業・木材産業従事者は100万人を超えているとされ、ベンツやBMWを擁する自動車産業より多く、国を代表する大産業となっている。オーストリアもしかりである。それがいったい日本の体たらくはどうしたことか、中山間地域の大産業を失っているではないか、何がそうさせたのか。


林業に関わり始めた頃から、ずっとこのことが気になっていた。上記のように、日本は林業適地であり、その歴史も古い、神社仏閣他木造建築は凄い建物が多く残っている、木材建築大国と言える。しかし何故、林業と木材産業は衰退しているのだ。林業現場は4Kと嫌われ、育林よりも生産効率を重視した皆伐や列状間伐と、見ると落ち込むようなレベルの低い施業が展開されている。列状間伐は、山林を列状に分け、1本1本の木の成長具合を見ることなく、その列に入った木を全伐する手法。つまり、目の前の効率を最優先する間伐手法である。通常間伐は残った木を良木に育て、質と量を増進させるための手法であったが、列状間伐はその目的を見失ってしまった手法と言える。
また「ヤマシ」と呼ばれる人たちが横行していた。山林所有者をだまして木を切って儲けるなど、どう見ても詐欺的な行為と言わざるを得ない事例もよく目にした。木材も机やタンスなどの日本伝統製品や、切り出したままの木材を使う高級無垢製品を捨て去り、合板・集成材ばかり。これは何なのか、である。

20160826_001.jpg日本の一般的な中山間地域(山が連続し、農地は僅か、森からそのまま海へ)一関から気仙沼を望む


どう見ても日本林業には根本療法が必要である。根幹から林業を変革させないといけない。しかし、行政は補助金増額、補助システムの変更等、対症療法と言えることばかり繰り返している。国が打ち出す事業も数年おきに名称は変わるが、内容はほとんど同じではないかと、仁淀川町システムを対応するために林業の歴史を学習し始め、現状を分析等の学習をしながら、土佐の森のメンバーと酒を酌み交わしつつ議論していたことが思い出される。

このブログの最初で、私が林業に関わる前は環境保全とかグリーンツーリズム等に関わっていたと書いたが、そこから離れて林業に踏み込んだ原因も「森林率7割」高知は84%であるということだ。この面積比率を軽く考えてはいけないのではないかという疑問である。グリーンツーリズム発祥の地はイギリスとフランスである。日本にグリーンツーリズム運動を持ち込んだ学者もイギリス通いをしていた。そこで調べてみた、イギリスの農地面積は国土の7割である(森林率は12%)。フランスも6割近い。林と農が日本と逆である(日本の農地率は12%)。“そうか”である。農地が国土のほとんどを占めるということは、その国にとって農業は国の根幹であり、地域の主産業であるのではないか、ということだ。故に、フランスはワインを大統領が各国へ営業するわけで、農家の副業として国挙げてグリーンツーリズムを広げるわけなのだと。

20160826_002.jpg自伐型林業の可能性に気付く前は、グリーンツーリズムに熱中

日本にとってイギリスやフランスの農地や農業こそ、森林であり林業なのではないか。中山間地域の主産業は現在農業であるが、本来は林業ではないかと。中山間地域農業は条件不利地ゆえに収入が少なく成り立たなくなっている。そこで登場したのがグリーンツーリズムだが、主業が成り立たない状況での副業も効果少なしである。本来林業を主業にしながら条件不利地農業を副業とする。副業であればかえって条件不利地を武器にもできる。グリーンツーリズムも補完になる。そうなると林業で生計が成り立つことで、グリーンツーリズムのほか、中山間地域の観光や漁業など、他の産業も生き返るのではないかと。すべてがつながりだした感じであった。自伐林業を中山間地の主業に置くと、すべてがつながってくるのである。どうしようもない感じであった日本の林業や中山間地域の再生への道筋が見え始めたような、まだ漠然とはしていたがそういう感覚を感じ始めたのを思い出す。森林率7割の国の中山間地域の在り方ということが、少し見え始めたのである。


20160826_003.jpg20160826_004.jpg 自伐型林業の可能性に気付く前は、グリーンツーリズムに熱中


前号で書いたように
、きちんと支援すれば自伐林業者は増える、地域住民は対応してくれる。しかし、まだ1事例である。日本林業を根本から再生し、中山間地域再生というのはまだまだ遠い果てで、どのように今後進むべきかまだシナリオは描けてなかったが、仁淀川町での成功事例化が、その後の覚悟を決める引き金になったのは間違いない事実である。平成21年の頃である。

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土佐の森から~未来へのたより

中嶋健造さん(NPO法人 土佐の森・救援隊 理事長)

IT、自然環境コンサルタント会社等を経て、2003年、NPO法人「土佐の森・救援隊」設立に参画。現在、理事長。地域に根ざした環境共生型の林業は、山の所有者が自分で伐採する”自伐”であると確信し、「林業+バイオマス利用+地域通貨」を組み合わせた「土佐の森方式」を確立。森林・林業の再生、中山間地域の再生、地域への人口還流、地方創生、森林環境の保全・再生等のために、自伐型林業の全国普及にまい進している。

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