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持続可能な地域づくりへ!LOHAS & Sustainable style

日本にLOHAS(ロハス)を紹介した先駆者・大和田順子さん。人・地域社会・地球が健康になれる取り組みの最前線リポート。

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2016年07月05日 (火)

つながりをつくる『高千穂郷 食べる通信』 ―宮崎県高千穂郷・椎葉山地域の新たなとりくみ(第1回)―

都内で「カグラージョ」気分


最近「カグラージョ」という女性たちが島根県の石見(いわみ)地方に出没しているらしい。カメラ片手に神楽(かぐら)を舞う演者を追っかける女性のことをそう呼ぶそうです。
私もその気持ちがよくわかりました。神楽を舞う佐藤翔平さん(25歳)の姿にほれぼれ、シャッターを押していたのでした。

高千穂神楽「伊勢の舞」が奉納されたのは、6月25日、都内で開かれた『高千穂郷食べる通信』創刊予告イベントでのこと。
これは、宮崎県にある「世界農業遺産地域」=高千穂郷・椎葉山地域の農林業を、食べもの付きの情報誌『食べる通信』を通じて応援していこうと開かれたものです。

若い佐藤さんたちは「八百万の神様はどこにでもいらっしゃる。何か事を行うとき、そこに集まってくださっている人や場に対して感謝を込めて舞わせていただきます。」と。

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神楽「伊勢の舞」を奉納

食べものの作り手とつながる「食べる通信」


『高千穂郷 食べる通信』は、食べもの付きの情報誌です。高千穂郷・椎葉山世界農業遺産地域(宮崎県高千穂町、日之影町、五ヶ瀬町、諸塚村、椎葉村)が対象エリア。毎号その地域で農林業を営む生産者をクローズアップし、その農林業の様子、こわだり、生き方、哲学などを詳しく紹介する情報誌に、その人が作った農産物が付いてきます。

もともと“食べる通信”は東日本大震災後の2013年7月に始まった『東北食べる通信』が最初です。
東北の復興のためには、なりわいの活性化、生産者と消費者をダイレクトに結ぶしくみが必要だとの考えからNPO法人東北開墾が設立され、東北の生産者の情報を都市部の消費者に届ける『東北食べる通信』が発行されたのです。
その合言葉は「世なおしは、食なおし。都市と地方をかきまぜる」です。

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東北食べる通信

食べる通信は、その情報誌のデザインセンスや、生産者と直接つながるというコンセプトが若い世代に響きました。一生産者の生産量には限りがありますので1000人~1300人程度が読者数の上限です。産地訪問、都市部での食イベント、SNSを通じたコミュニケーションなど、生産者と消費者の顔の見える“つながり”感や、生産者を支える消費者のコミュニティづくり。この考え方は若い人の共感を集め、瞬く間に全国に広がっていきました。北海道から九州まで、現在では31の食べる通信が発行されています。

『高千穂郷 食べる通信』創刊号は、高千穂牛の畜産農家、田邊貴紀さん(38歳)を特集します。60頭の親牛、30頭の子牛を飼う若手畜産農家の旗手です。10年前、同地域で飼育されていた牛は6500頭、今は4500頭。田邊さんも10頭から始め、だんだんと増やしていったそうです。産地を盛り上げていきたいと熱い思いを語りました。

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畜産農家、田邊貴紀さん

そして、編集長の板倉哲男さん(37)は「高千穂郷食べる通信を通じて1000人の高千穂郷のファン、仲間をつくりたい」と、参加者に呼びかけました。


高千穂の“ワケモン”たちがチャレンジ!


創刊予告イベントを主催したのは特定非営利法人 高千穂アカデミー。高千穂にIUJターンした“ワケモン”(若い人たち)6人がこの5月に設立したばかりの団体です。高千穂出身者もいれば、他の地域からの移住者もいます。

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最前列は左から高千穂アカデミーメンバー。小池芙美さん、田尻哲朗さん、板倉哲夫さん。(畜産農家の田邊さん)、佐藤翔平さん、田崎友教さん。


編集長の板倉さんも大阪府堺市出身、地域おこし協力隊で2015年に高千穂に移住しました。農産物のPRやコ・ワーキングスペースの管理などに日頃は携わっています。世界農業遺産認定と相前後し、地域を盛り上げていこう!と地域づくりのグループ「高千穂アカデミー」が結成されたのでした。

もともと高千穂は地域の人たちが汗と知恵とお金を出し合い、神楽を上演できる交流拠点「神楽の館」、を古民家を移築して建築・運営したり、石蔵を移設した「千人の蔵カフェ」プロジェクト(NHK地域づくりアーカイブ)など、地域づくりに熱心で実績をあげてきた歴史もあり、市民の間に“地域づくりDNA”が受け継がれているようです。

高千穂アカデミーでは「食べる通信」の創刊を皮切りに、ツアーなども手掛けていこうという計画です。

 

世界農業遺産に認定され、新しい動きが続々と


昨年12月、宮崎県の高千穂郷・椎葉山地域が、国連食糧農業機関(FAO)により「世界農業遺産」(GIHAS)に認定されました。宮崎県の北部に位置し熊本県、大分県との県境に位置する山間地です。5町村合わせた人口は24,877人(2016年2月現在)。険しい山間地において、多くの農家で森林からの恵みを活かした複合的な農林業経営が営まれています。また、共同作業を通じて養われた強い地域コミュニティが、伝統文化である神楽や自治公民館などでさらに結束を強め、地域改善活動と豊かな森林の保全が継続的に行われています。

これらの伝統的な山間地農林業(山腹水路や棚田、木材生産、シイタケ栽培、肉用牛生産、茶栽培、焼畑など)と伝統文化が「山間地農林業複合システム」として、国連食糧農業機関(FAO)により認定されたのでした。地域の人たちは地域コミュニティが評価されたことをとても喜んでいらっしゃいます。そしてその喜びを原動力に、新しい動きが各地で始まっています。
 
日之影町は清流日之影川、五ヶ瀬川の渓谷や石垣棚田を活かし、10年前から行われてきた「森林セラピー」を、さらに魅力あるものにしようと研究会を立ち上げました。
五ヶ瀬町には日本で最初の公立中高一貫校で全寮制の「五ヶ瀬中等学校」があり、子どもたちは6年間町に暮らし、農泊や援農を行うなど農村体験をします。
諸塚村は全村に広がるモザイク林(針葉樹林7割、広葉樹林3割がパッチワーク広がる)が森林の国際認証「FSC認証」を村全体で受けている林業の村で、農家民宿や森林ツーリズムにさらに力を入れようと。
椎葉村は2000年前から続いている国内でも有数の「焼畑」の体系化や手順書を作成し、広げていこうと「椎葉焼畑研究会」が始まりました。

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諸塚村のモザイク林

 

つながりから生まれる安心感、幸福感


創刊告知の案内には
「つながりの、しるし。豊かな実りに感謝し 神々と舞い遊ぶ神楽は 郷に住むみんなのつながりのしるし。 
『高千穂郷食べる通信』も 郷に住むみんなと郷を愛する人をつなぐ 新しいしるしになるといいな。」とあります。
“つながり”は安心感を育みます。安心できて、やりがいのある仕事、豊かな地域を作っていこうという目標にみんなで取組むこと、それは幸福感をもたらすのではないでしょうか。

ワケモンたちは今日も取材に走り回っていることでしょう。9月の創刊が待ち遠しいです。

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大和田順子さん(サステナブルコミュニティー研究家)

百貨店、環境コンサルティング会社等で約20年のソーシャルマーケティング実務を経て、2006年に一般社団法人ロハス・ビジネス・アライアンス設立。年間150日を各地の農山村で地域の人々と過ごす。企業と地域をつなぎ課題解決を目指すCSVプロジェクトをコーディネート。有機農業・生物多様性を核としたコミュニティデザインで地域創生に取組む。農林水産省世界農業遺産専門家会議委員、総務省地域資源・事業化支援アドバイザーなどを務める。

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