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地域づくり情報局

一人も取りこぼさない社会をめざして

大阪府豊中市のコミュニティソーシャルワーカー・勝部麗子さん。地域や家族から孤立する人々に寄り添い支える日々を綴ります。

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2021年07月27日 (火)

コロナ2年目 地域のつながりを守る(2)

行き場をなくした市民ボランティア

 これまでお伝えしてきたように、長引くコロナ禍でさまざまな立場の人たちが、本当にぎりぎりのところに追い詰められています。ワクチン接種が広まることで、状況も少しずつ良くなっていくと思いたいですが、現状を見ていると、不安が深まっていくというのが正直なところです。

 追い詰められているのは、生活困窮者の方たちだけではありません。私たちのようなソーシャルワーカー、そして、介護職員や様々な施設の職員さんたち、医療関係者、いわゆるエッセンシャルワーカーと言われる人たちは、命を守る仕事であるからこそ、絶対に感染してはいけないという緊張感の中で日々を暮らしています。

 本人も家族も必死で努力していますし、仕事以外の、他人との交流が極端に少なくなっています。今、このような状況になってあらためて、友人など親しい仲間と会って話すような、あたりまえの交流が、人の気持ちをいかに支えているものかがよくわかります。

 この状況が長引くことで、これまで支援する側だった、地域ボランティアの方たちも気持ちが弱ってしまっています。たとえば、高齢者施設にボランティアに行っていた方々、楽器を演奏し、皆さんに喜んでもらっていた方々、そういう方たちが、今までのように活動できなくなってしまったからです。今まで頑張って練習してきたのに、聴いてもらえる場がないとすれば、何のために練習するんだろう……。そんな気持ちになってしまったんです。

 地域のボランティアの方たちは、誰かのためになることを喜びとして、ずっと動いていた方たちです。しかし、何もできなくなってしまった。ソーシャル・ディスタンスを保つために、集まったり、人に会ったりしてはいけない、と言われてしまった。そのことによってモチベーションを失い、外出しなくなって体力的にも弱ってしまい、希望をなくし、孤独な気持ちを深めてしまったんですね。そんな方たちをこの1年多く見てきました。

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以前は地域の居場所にボランティアと利用者が募っていた

スマートフォンが命綱に

 このままでいくと、みんながとても苦しくなっていくのが目にみえています。コロナ禍で、経済的に追い詰められて自殺を選んでしまうという状況は、支援によって何とか対応できたとしても、外出自粛の中で、精神的に孤立している方の苦しみに対してどんな手が打てるのか、まだ有効な対応策が見つかっていないのが現実です。

 孤立死されてしまう方も、私のまわりだけ見ても、増えているように思います。交流会的な集まりをリモートで企画する取り組みも始まっていますが、それが可能なのはほんの一部の人たちです。年配の人などはコンピューターやスマートフォンを扱える人はそう多くありませんし、若い人であっても、経済状況が厳しい中で、通信環境を持てない方たちも多いのです。

 とはいえ、携帯電話、スマートフォンは今や通話のためだけではなく、公的な情報にアクセスするためにも重要なツールになっています。自治体のサービスへのアクセスや申し込みなども、HPを参照することが前提になっている場合が多く、携帯が使えなくなることが、そのまま社会から遮断されてしまうことに直結してしまうのです。

 厳しい生活の中で切り詰めていく場合、料金の高い携帯電話やWifiの契約からやめてしまう人はとても多く、そういう方たちはコロナ禍の中で外出できる場所もなく、オンラインの繋がりも持てず、社会的なサービスへもアクセスしにくくなって、本当に孤独になっています。何のために生きているのだろう、と思ってしまうような状況が、ここにもたくさん見受けられます。

 直接会えない人に、動画で元気を届ける

 そんな中で、なんとか希望を見いだそうと、皆が試行錯誤しています。これまでは、地域の子どもたちが、福祉教育の一環として、高齢者施設などに出かけて交流するという機会も多く作っていたのですが、感染の危険を考えるとそれもできなくなっていました。

 そこで、施設に行って演奏できないのであれば、せめて録画だけでも見てほしい、と、子どもたちの漫才や歌をDVDに記録して、施設のみなさんにプレゼントするような試みも始まっています。

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高齢者施設の施設長に漫才や歌のDVDを手渡す子どもたち。

実際に施設を訪れることはできないけれど、 地域の子どもたちが練習した歌や合奏を録画して、「おばあちゃんたち、元気ですか?」というようなメッセージを添えて、YOUTUBEなどで届けています。会えないと、自分たちのことなどみんな忘れてしまったかな、と悲しい気持ちになっていた高齢者の方たちも、ああ、ちゃんと覚えていてくれたんだ、心はつながっていたんだと気持ちが元気になるんですね。

 ボランティアの方たちも、それぞれさまざまな工夫をされています。これまでは集まって手作りで介護用品などを作っていたグループでは、みんなで課題を共有し、まるで宿題をやるように、各自の家で品物を仕上げて、それを集めて、必要としている方にしっかりお渡ししていくような工夫をされています。

そういった活動を、私たちも全力で支えていきたい。これまでの私たちの活動を再び見直して、さらにブラッシュアップしていく形で、新しい活動をさらに進める手がかりにできれば。今はそのようなつもりで、皆が気持ちを奮い立たせています。

初の農地コミュニティ「豊中あぐりパーク」がスタート

 そんな中で、新しい取り組みも始まっています。今年4月13日に、私たち「豊中あぐり」の8番目の拠点となる、「豊中あぐりパーク」がオープンしたのです。今回、目指すのは初の多世代交流型の農地コミュニティです。

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新たに豊中あぐりパークがスタート

 緊急事態宣言下では、屋内で集まるのがなかなか難しく、その状態がずっと続いていましたが、屋外であれば、比較的活動もしやすいですし、農作業を通じていろんな人たちが繋がっていく場所にしていければ、と希望を持っています。

 300坪もの大きな土地を借りられたので、これから何をしていこうかと、みんなで考えています。豊中あぐりのメンバーに教えてもらって、野菜やお米を作っていくつもりですが、せっかくの屋外の広い土地ですので、野菜作りだけではなく、地域の交流拠点にしたいと思い、「あぐりパーク」という名前をつけました。

 高齢者の方たちや子どもたち、地域の方たちはもちろんのこと、外国人の方たち、小さなお子さんを抱えて働いているシングル家庭のみなさん、認知症の方たちも、介護や仕事で疲れている方たちが、短い時間でも気晴らしになれる場所を作りたいと思っています。そして、何より、人の顔が見える、コミュニケーションできる場を作りたい、ということで生まれた場所です。

 みんなで収穫できる野菜畑もありますが、ひまわり迷路を作る計画もあります。コロナで、子どもたちがいろんなところに出かける機会も失われているので、みんなが楽しんで遊びに来られる場所があれば、と思って作りました。今、みんなで畑を耕したり迷路の場所を整地したりしています。人手が必要ですから、引きこもりの若者たちにもお手伝いに来てもらっています。農家の方に教えてもらって、一緒に土地を耕しています。

 いつでも行ける場所、受け入れてくれる場所

 いつ行っても誰かがいるような、そのような場所が恒常的にあれば、コロナで孤独を深めてしまっている一人暮らしのお年寄りや、引きこもりの若者たち、子どもたちも、子育て中のお父さんお母さんも、外国の方たちも、出かけやすいと思います。太陽を浴びながら水やりをしたり、作物の生長を感じながら畑の草抜きをしたり。できるときにちょっと参加するだけでも、きっと元気になれる。そんな場所にしていきたいと思います。

 私たちは、「すべての人に居場所と役割を」という志で、地域共生を目指してやってきました。このあぐりパークならば、年齢層も国籍も生活環境も違うさまざまな人たちが交流して、畑を耕し、水をやり、収穫をして、直売会をしたり、調理をしてみんなで食べたり。そんなさまざまな参加ができる地域の交流地点になると思います。この1年、さまざまな活動を停滞せざるを得なかった私たちにとって、野外でできるあぐりパークは唯一、止めることなく進めることができた活動なので、私たちにとってもこの活動が希望になっています。

 秋には手作りのかかしコンテストをやろう! ひまわり迷路を、秋にはコスモス畑にしよう! など、さまざまなアイディアが生まれています。本格的に始動するのは、6月20日の緊急事態宣言が明けてからになりますが、現在、さまざまな準備を始めています。とても楽しみです。

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豊中あぐりパークで汗を流すボランティアのみなさん

 

 

 

 

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一人も取りこぼさない社会をめざして

勝部麗子さん(コミュニティソーシャルワーカー)

10年前、大阪府で初導入された地域福祉の専門職=コミュニティソーシャルワーカーの第一人者。大阪府豊中市社会福祉協議会・福祉推進室長として、様々な地域福祉計画・活動計画に携わる。2006年から始まった「福祉ゴミ処理プロジェクト」では、孤立する高齢者に寄り添い、数多くのゴミ屋敷を解決に導いた。厚生労働省社会保障審議会「生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会」委員。信条は「道がなければ作ればいい」。

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