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2021年07月19日 (月)
コロナ2年目 地域のつながりを守る(1)
2年目の状況は さらに深刻に
昨年4月の緊急事態宣言から1年3ヶ月。この間、私たちは緊急事態宣言を3度も経験して、経済的に、そして精神的に追い詰められた人々の窮状は、さらに深刻になっています。多くの方が本当にぎりぎりのところで生活されています。仕事の時間を減らされてしまったり、仕事自体を失ったりして、収入の当てがないのに家賃は定額払わなければいけない。できることは、食費と光熱費を削るだけ……。
私たち豊中市社会福祉協議会では、コロナ禍で生活困窮状態になられた方たちに対して、食材支援も行なっていますが、窓口でお米を受け取って、涙ぐんで帰られる方もいました。どれだけの思いでいらしたことか……。本当に厳しい状況が、今も続いています。
今思い返すと、私たちの住む大阪では、緊急事態宣言や蔓延防止重点措置で、この1年の大半は外出自粛のような状態でした。私たちの地域活動も、緊急事態宣言と緊急事態宣言の間の1ヶ月ほどのインターバルの中で活動をして、また、しばらくお休みをして、というような状況でした。
その間に、それまで家族と暮らしていた人が死別などで一人暮らしになって、どこに助けを求めて良いかわからず孤独と困窮を深めてしまう例も多くありました。私たちも以前は、「ローラー作戦」といって、集合住宅などを一軒一軒訪れて、地域の繋がりが弱い人たちに、「何かお困りのことはないですか?」「こんな相談窓口がありますよ?」ということをお伝えして回っていたんです。それができなくなってしまったことも大きく影響しています。
いままで当たり前のように会って話していた人たちと会えなくなってしまう状況が続き、予定していたイベントもみな中止や延期になってしまいました。けれども、その合間合間を縫って、地域のみなさんが見守りをしたり、声かけをしたり、お互いに少しでも顔が見られるような関係を持続させるための努力は続けてきました。
直接会いにいけなくとも、寂しい思いをされているであろう方たちに、電話や往復はがきを使ってご連絡をするなど、さまざまな工夫をしてお互い励まし合ってきたこの1年だったと思います。
米や飲料など、必要な人に届くよう支援を行っている
育児・介護を担う人もギリギリの状態に
特に厳しい状態に置かれているのが、子育て中の人たちです。特に、シングルマザーで子どもを育てているお母さんたちは、本当にギリギリのところにいます。コロナ以前であれば、自分の親世代にサポートしてもらうこともできていたけれど、コロナ禍で、感染者が多い大阪に来てもらうこと自体が難しくなってしまった。逆に、里帰りする、子どもを自分の親に預けにいくということも、なかなかできにくくなりました。
一時預かりの保育施設などに預けたくても、コロナの影響で保育施設の人たちも中の人たちを守ることで精一杯なので、外から出入りする人たちを受け入れるだけの体制がありません。ほんの数時間、預かってもらうというという場まで奪われて、非常に孤立した子育てをせざるを得ない状態になっているのです。
同じような状況は、介護施設でも起こっています。新規や一時預かりの利用者を受け入れて、もしも、施設の中でクラスターが起きてしまうと、その施設を利用する高齢者も、働いている人も、その家族も、みんなが大変なことになってしまうからです。しかし、預かってもらえる場所がなくなれば、介護を担う家族は孤独を深め、疲れ果ててしまいます。
介護施設の中には、感染防止のため家族と1年近くも面会できず心細い思いをされている方も多くいらっしゃいます。認知症の方などは、しばらくそのようなふれあいがないことで症状も進んでしまう場合もあります。
逆に、施設で暮らす夫や妻に会いに毎日施設に通っていたお連れあいの方が、その日課を失ってしまい、時間をもてあまし、寂しさの中で孤独を深めてしまう例も多くあります。精神的に孤立した気持ちで日々を過ごされて、「私は何のために生きているんでしょう」と、いつまで続くかわからないこの状態に対しての不安をこぼされる方もいました。
孤独を深める ひきこもりがちな人たち
今回のコロナ禍は、いわゆる「引きこもり」の若者や中高年層の方たちにも大きな影響を与えています。私たちはコミュニティソーシャルワーカーとして、引きこもりの方たちのご家庭に赴いて、さまざまな社会参加の形をともに考えてきました。以前ならば、たとえば、漫画が好きな人であれば、一緒に漫画を描いて本にして周囲に読んでもらいましょう、とか、土いじりが好きな人ならば、農業などを通じた社会参加の道を探すとか、ひとりひとりに合った形でオーダーメイドのプログラムを実施してきたのですが……。今回のコロナ禍で、そのような社会参加の場を用意することが難しくなってしまったんです。
彼らにとっては、月に一度とか、年に数回の、当事者同士の交流会が、自分の気持ちを理解してもらえる唯一の場所になっていました。それが失われてしまったというのは、本当に大変なことです。長年の引きこもり生活からようやく数歩踏み出して、社会に出ていくきっかけをつかんだ人が、また振り出しに戻ってしまうような状況にもなっています。
命を守ることが最優先であることはもちろんなのですが、コロナ禍2年目に入った今、私たちはそういった、個々の孤立や、孤独な気持ちに対して心を寄せていかなければならない、と強く感じています。感染対策もきちんと行いながら、それでも、短期間でもよいので可能なかぎり、顔が見える形で接していくことができればと、努力をしていきたいと思っています。
ひとりひとりの個性に合わせひきこもり支援を行ってきた
かさむ借金、見えない未来
外出自粛や店舗の時短営業が求められる中で、仕事を失い、経済的に追い詰められる人も増え続けています。私たち社会福祉協議会では緊急小口資金や総合支援資金の貸付窓口を設置していることもあって、この間、本当にさまざまな方の窮状をお聞きしてきました。
緊急事態宣言下で、最初にダメージを受けたのは、飲食業や、タクシー業界などの方々ですが、実際には、その飲食のお店に食材を納める農家や精肉関係の方たち、また、今回の緊急事態宣言下では、お酒の販売関係の方たちも大変なダメージを受けました。その多くが、自営業だったり中小企業だったりするので、緊急小口資金の申請は減ることなく増えるばかりです。
これまで行われてきた緊急小口資金・総合支援機資金の申請は、今年3月末が締め切りでしたが、新規申請の延長や、再貸付期間をさらに3ヶ月、つまりこの6月末まで延長することができました。そして、その申請期間がさらに2ヶ月、8月末までに延長されたのですが、結局、これらの貸付は無利子とはいえ「借金」になるわけで、お金を受けとったとしても、それは負債が増えたことに他なりません。先日、貸付を受けて帰宅される方は「もう、不安しかないですよ」とおっしゃっていました。
緊急小口基金の上限は、200万円ですが、昨年から貸付を受けてきた方の中には、すでに200万円の枠を使ってしまっています。それだけの借金を背負ったまま、多くの方が先の見通しも見えず、これから10年をかけて返済していく。不安な気持ちになって当然のことです。税金の支払いも、コロナ禍の昨年に限っては1年間先延ばしにできる制度がありますが、こうやって2年目に入ってしまうと、結局去年と今年の分の負債を背負うことになってしまいます。
この6月厚労省が困窮世帯を対象に、最大30万円を支給する新制度(新型コロナウイルス感染症生活困窮者自立支援金)を設置しましたが、この支援金も、すでに貸付上限200万円を使い切ってしまった人が対象です。200万の借金を背負わなければ、30万円の給付はもらえない。そんなルールになっているんです。
もちろん、新たな給付金の設置は、やらないよりはやったほうが良いでしょう。けれども、本当に今必要なのは、臨時的な、特例的な生活保護制度を作ることではないでしょうか。例えば、この1年限定という形で、誰もが入りやすく、出やすい制度。家賃や生活の最低限の保障が保たれるような制度をなんとか実現できないだろうか。それが今、私の一番の関心事です。
この2ヶ月、3ヶ月のうちにそのような制度を確立し、困っている人たちを保護していかないと、命を守ることはできないのではないかと危惧しています。緊急な対応が必要です。私たちも国に積極的に働きかけていきたいと思っています。
「新型コロナウイルス感染症生活困窮者自立支援金」(仮称)について内閣官房資料より
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