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地域づくり情報局

一人も取りこぼさない社会をめざして

大阪府豊中市のコミュニティソーシャルワーカー・勝部麗子さん。地域や家族から孤立する人々に寄り添い支える日々を綴ります。

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2017年11月02日 (木)

地域の人たちが自然につながる商店 ~びーの×マルシェ~

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新たにオープンした「びーの×マルシェ」

みんなの「これがあったら」でお店が誕生

 

私たちは、「びーのびーの」という引きこもりの若者たちの居場所を6年前から始めて、彼らが就労の準備をする独自のプログラムを開発してきました。

心を開いて出てきてもらうのはなかなか難しいので、まずは家庭訪問をして、本人の得意なことを聞き出します。折り紙が得意な子はコサージュを作るとか、パソコンで作業ができるとか、クラフトテープで顔が作れるとか。その子が得意なことを中心にプログラムを作り、自己肯定感を引き出して、社会参加を目指していきます。

昼夜が逆転している子は、朝10時に出てこられるようになる。あるいは、とりあえず2時間働ける体力を作る。そういうところから始めて、通えるようになってきたら、就労を体験させてもらえるところを、町の中に確保していきます。たとえば、新聞配達や団地の草引き、自治会で新聞を配る機能が弱まっているのを代理でさせてもらったり、バザーで接客をしたり。企業や自治会の協力を得て、地域の困りごとなどを仕事にするようになっています。

そういうなかで今年3月、ある社会福祉法人が、われわれの活動に協賛して、空き店舗を貸してくださるというお話がありました。その地域を調べてみると、以前はスーパーがあったのがつぶれてしまって、お年寄りや若いお母さんたちも、みんなお買い物ができなくて困っていたんです。

それならば、お買い物ができる場所を作ろうということになって、小売商業団体の連合会と協力してお店をできないかという話をさせてもらいました。一つ一つのお店では品物がそろわなくても、連合会として品物を卸してもらうと、それなりに食材がそろいます。

たまたま連合会の方でも、事務所が閉鎖されることになって、新しい拠点がほしいと思っていた。ついでに品物が売れるとさらにいい。われわれは若者たちが恒常的に活動できる場所がほしい。社会福祉法人は社会貢献ができればいい。地域の人たちは買い物ができる場所がほしい。4つの「これがあったらいい」がうまく結びついて、お店をやることになったんです。さらに寄付をしてくれる人が出てきたり、お隣の電気屋さんと水道屋さんにご協力いただき、ご近所の方々にも応援してもらって、6月12日に「びーの×マルシェ」としてオープンしました。

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店内の飲食スペース

 

気軽に立ち寄って相談ができる場所

 

われわれの取り組みがメディアで取り上げられて、いろんな人たちがお店にやってくるようになりました。このお店にはイートインがあって、お茶を飲むことができるんです。

子どもさんがずっと引きこもっていて、びーのにもまだ来られないけれど、ここなら人の目を気にせずに安心して来られるという方が、お茶を飲むついでに、お子さんのことを相談して帰られる。地域のおばあちゃんたちは、駅に行く途中、お店で休憩して、お買い物してコーヒー飲んでおしゃべりしていくのを毎日の日課にし始めた。若いお母さんたちも、バギーを押してやって来て、お野菜をそこで買って、食べ方を八百屋さんで聞いて帰る。

私たちはこれまで相談窓口をいろいろ作ってきたんですが、買い物は日常ですることなので、福祉相談の窓口に出かけるのでなく、買い物に行ったついでにいろんな相談ができるのは敷居が低い。「こんなお店ができるまで、家の中で子どもとふたりで向き合ってて、誰ともしゃべることがなかった」という人もいる。こういう「溜まり」を作っていくことが、地域にとってはいろんな人を支えていくことになるんやなあと思います。

実はこの店舗には2階があって、そこでは引きこもりの若者たちが自分たちで計画したイベントを始めてもらっています。写真展をする日、ボードゲームをやる日とかを決めて、就労支援までなかなか行かない子たちが、同じ趣味の人たちとマニアックな話ができる場所を作る。もうひとつは内職。仕事するのは難しいけど、作業をして、自分が参加する場所を作っていこうと考えています。

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店内には豊中ブランドの様々な商品が並ぶ

 

お買い物でつながる地域

 

びーの×マルシェは昔懐かしいようなお店なんですけど、「あぐり塾」で作った野菜やコロッケ、東日本大震災の復興支援でつながりある地域のもの、びーのびーのの子たちが手作りしたもの、地元豊中ブランドのお菓子も売っています。お店がいろんなものをつないでいく場所になっている。野菜を買ったおじいちゃんおばあちゃんが家まで運んでほしいとか、買い物が不便なところは多いから移動販売の拠点にできないかとか、いろんな話も出てきています。地域の人たちにとって、なくてはならない場所になっていくことを目指していこうかなと思っています。

お店は商品を通じて、いろんな人たちに啓発していくことができますね。引きこもりの人たちの就労を応援しようという心療内科の先生が、病院にコーヒーの出前をしてくださいと言ってくださって、週に1度、待合室でコーヒーを売るお店を開いています。ほかにも、どうせコーヒーを取るなら、他じゃなくてびーのを応援しようという地域団体もあります。

寄付をするのは大層なことのように思われますが、大型スーパーじゃなくここで買い物しよう、という支援の方法には、共感と広がりと理解があって、とてもいいんじゃないかなと思っています。

よその地域からも、「びーの×マルシェ」に来てほしいという要望が出ています。このスキームをうまく使って、買い物支援と若者支援とを行う地域の拠点があちこちにできるといいですね。福祉の拠点作りとはまた違って、商業からつながっていくモデルで、また新たな広がりができつつあるのかなと思います。

これまでは福祉という枠組みの中で、支援の対象者を、いかにサービスで支えるかという発想でしか見ていなかったと思うんです。でも実際には、その人が持っている力を社会で発揮していくことが、元気になるということ。農業で元気になる人、商業で元気になる人、そこを引き出して社会参加することが、もっとも元気になることにつながるんじゃないか。

この都市型のまちにおいて、昔ながらの商店が持っていた機能が失われている。あるいは、都市において土を触ることが奪われてきた。そこをもう一回取り戻していくことが、人間の力を回復していく、町が元気になることにつながっていくのではないでしょうか。

3-4.jpg多世代の人のつながりを育む「びーの×マルシェ」

 

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勝部麗子さん(コミュニティソーシャルワーカー)

10年前、大阪府で初導入された地域福祉の専門職=コミュニティソーシャルワーカーの第一人者。大阪府豊中市社会福祉協議会・福祉推進室長として、様々な地域福祉計画・活動計画に携わる。2006年から始まった「福祉ゴミ処理プロジェクト」では、孤立する高齢者に寄り添い、数多くのゴミ屋敷を解決に導いた。厚生労働省社会保障審議会「生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会」委員。信条は「道がなければ作ればいい」。

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