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一人も取りこぼさない社会をめざして

大阪府豊中市のコミュニティソーシャルワーカー・勝部麗子さん。地域や家族から孤立する人々に寄り添い支える日々を綴ります。

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2017年10月02日 (月)

動き始めたチーム~地域の期待に応えて広がる「あぐり塾」の活動

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総勢70人を越えた「豊中あぐり塾」のメンバー

昨年4月、まちなかに農地を借りて、都市型農園「あぐり塾」を立ち上げた勝部麗子さん。定年退職した男性たちが、土に触れながら、地域に関わるきっかけをつかんでいる様子について、去年7月にお話していただきました(「まちなかに現れた農園 豊中あぐり塾の挑戦」)。それから1年、「あぐり塾」は、さらに活発に活動の場を広げています。

米と焼酎作りに挑戦

昨年4月に始めた「あぐり塾」。11月には、みんなで餅つきをしたり、とれた野菜を食べながら、1年間の活動の報告をする「感謝の集い」を行いました。

都市の中にできた農園ということで、新聞・テレビなどにも注目されていたので、近隣の皆さんにも案内をして、どんな活動をしている場所なのか、来て見ていただいたんです。最初は心配されていた方たちにも「ほんとにいい活動をしていて、誇りに思う」と言っていただけました。そういうことがきっかけになって、今は毎週火曜日に野菜を直売する「あぐり市」を開いています。

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農園に隣接した まちなか直売所「あぐり市」

さらに今年から、第2のあぐり塾を始めることになりました。メンバーも当初の20人から70人にまで増えてきたので、土地を新しく貸していただき、初めて田んぼ作りに挑戦することになったんです。

メンバーには、もともとは西日本の田舎から都会に出てきた人たちが多くいます。「小さいときは農作業の手伝いが嫌で嫌でたまらんかった」と言いながらも、いよいよ田植えの日が来て、昔ながらの手植えをしたときは、みんな子どもに還ったような満開の笑顔でした。

1-3tamboedited.jpg都市部の空き地を活用した“田んぼづくり”

できれば、収穫したお米を自分たちが食べて楽しむだけでなく、次の広がりをめざしたいと思いました。そこで、残っている土地にサツマイモを植えることにしました。実は、熊本の災害復興支援のために、「あぐり」のメンバーで農業支援に行ったときに、サツマイモの苗を分けてもらったんです。ただサツマイモを植えるだけでは面白くないので、とれたイモで「あぐり」ブランドの焼酎を作ろうと考えているところです。

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豊中市内の地産地消イベント 自ら販売するあぐりのメンバー

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“あぐりブランド”のとれたて野菜

動き始めたチーム

「あぐり」の主なメンバーは定年退職した男性たちで、当初はなかなか協調して物事を進めていくことが難しいと思っていたんですが、だんだん自分の得意分野を持ち寄ることができるようになってきました。機械を使うことが得意な人、備品の台帳を作れる人、作業マニュアルを作れる人など、お互いのことを知り合っていく中で、70人がそれぞれの個性を生かしてチームとして活動できるようになり、面白いことになってきました。

今まで定年後の男性の社会参加というと、どうしても何か頼まれて仕事をするというのが多かったんですね。それも大事なことなんですが、それだけだと、夢とか楽しみにはなりづらいのかな。そこで今回はもう一歩進んで、セカンドカンパニーのような、第2の人生をみんなで作っていくチームを考えました。

たとえば、自分たちが育てたジャガイモと玉ねぎでコロッケを作って、販売もしているんですが、「こんな美味しいコロッケ食べたことない」と感動する。作った野菜がコロッケに加工されて、いわゆる6次化されて商品の形になることは、大きなモチベーションになります。収入が目的ということではないけれど、そこに付加価値がつくと、少しは収入になるし、楽しみにもなります。

 

1-6korokke.jpg大人気!豊中あぐりコロッケ

 

健康の面でも、血圧や血糖値が改善したり、足腰が強くなった、ストレスが減ったという声が出ています。気のせいなのかどうかわからないので、大学の先生にも協力してもらって評価をしようと考えているところです。草取りなどで毎日外に出て行く回数が増えて、人としゃべる回数も増えることによって、どのくらい健康になっているか。社会参加の新たな指標になればと思っています。

 

1-7-2pieces.jpgあぐりの農園は住民たちの新たな交流の拠点に

期待に応えて広がる活動

「男の人たちは社会に出てこない」とずっと言われていましたが、楽しめる場所を作るのが難しかったんですね。いきなりグループにポンと入れてしまうと、言われたことはやるけれど長続きしない。でも、基地みたいな場所があって、自分たちで自由に創意工夫ができれば、男性たちも能動的にやっていけるんだなと思いました。

70人の男性たちがカタマリとして社会に出てくると、いろんなインパクトが出てきます。たとえば豊中でも子ども食堂が25箇所くらいに広がっているんですが、そこに「あぐり」が作ったスイカをプレゼントする。そうすると「スイカのおじちゃん、スイカはどうやって作るんですか」ってお手紙が来る。

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あぐりの野菜を子ども食堂の食材に

 

また、老人ホームの花壇で野菜を作りたいけど、そこのスタッフはやり方がわからないので、「あぐり」のメンバーがボランティアで作り方を教えに行く。小学校にサツマイモを植えて管理をする。地域の中のいろんなところから期待が出てきて、それに応えることで、新たなつながりを作っていくことができています。

仲間づくりと健康づくり、そして社会との接点が自然に増えていくことが、よい効果を生んだのかなと思っています。

1-9hakusai.jpg都市型農業は メンバーたちの“生きがい”に

 

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勝部麗子さん(コミュニティソーシャルワーカー)

10年前、大阪府で初導入された地域福祉の専門職=コミュニティソーシャルワーカーの第一人者。大阪府豊中市社会福祉協議会・福祉推進室長として、様々な地域福祉計画・活動計画に携わる。2006年から始まった「福祉ゴミ処理プロジェクト」では、孤立する高齢者に寄り添い、数多くのゴミ屋敷を解決に導いた。厚生労働省社会保障審議会「生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会」委員。信条は「道がなければ作ればいい」。

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