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2016年07月29日 (金)

特別養護老人ホーム「園田苑」ボランティア・坂本敬子(としこ)さんのお話(前編)

前回は、特別養護老人ホーム「園田苑」(兵庫県尼崎市)を運営する、中村大蔵さんにお話をうかがいました
中村さんの話では、ボランティアという“地域の力”がどんどん施設に関わっていくことで、お年寄りたちは“かけがえのない老後”を、地域の人々とともに満ちた足りた時の中で過ごせるようになっていくとのことでした。では、実際に「園田苑」でボランティア活動をしているみなさんは、どんなお気持ちで取り組んでいらっしゃるのか。今回は、中村さんのお話にも登場した「園田苑」開設時からのボランティア、坂本敬子(としこ)さんに話をうかがいました。
(聞き手:尼崎市 田島診療所・酒井成美さん)

※坂本さんの活動を紹介した動画はこちら:ボランティアを楽しんで 高齢者が安心できる地域づくり

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こんにちは!坂本敬子(としこ)と申します。ボランティアを始めて28年目です。
私の住む尼崎市の小中島(こなかじま)という地域に、特別養護老人ホームが「園田苑」ができたとき(1988年)、たまたま施設長だった中村大蔵さんと知り合いで、「ぜひ施設に関わってくれ」って言われまして。私はそれまで一度もボランティア活動をしたことなかったので、「えー?関わるってどういうこと」というところから始まりました。そもそも、特別養護老人ホームそのものが何なのかも分からなかったです。というのは、28年前ですから、今みたいに特養というのがまったく一般的ではなかったんです。小中島にその特養ができたのが、尼崎市内で二番目だったんです。

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当時、特別養護老人ホームのほとんどが郊外にあるなか、「園田苑」はあえて町中につくられた


そんな私がなぜ実際にやってみようと思ったかと言いますと、中村さんが地域活動をとてもよくされていた方で、「こういう施設を作ろうと思ってるんだ」という理念を、小中島だけでなく、近辺の各町会に行ってお話をされたんです。まだ建物は建ってない、計画の段階から。それで「坂本さん、頼むよ」って言われて。じゃあ次に、ボランティアとはなんだろうということになって、大阪の元ボランティアセンターにお勤めだった方が同じ地区にいらしたので、その方を講師にまず勉強しました。結構きちっと勉強しましたよ。「ボランティアとは、奉仕だけではないですよ」とか基本的なことを、初めて知りました。

私自身、結婚して子どもができた時から、化粧品とか小間物を売るお店を20年やっていたんです。ずっとそのお店をやっていて、ちょうどやめたのが「園田苑」ができる前の年だったんです。私は子どもが三人いるんですけれども、三人目の子が高校生になってPTAも終わっていて、「さて、何をしようかな」と思っていた時だったんですね。すごくタイミングがね、良かったんです。それで、友だちと二人でボランティアを始めようと決心しまして、呼びかけ文を出しました。「こういう施設ができます。そこを拠点に、私たち住民が何か学ぶことがあるんじゃないか」と、カッコいい文章を書きまして。(笑)

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化粧品店を営んでいた頃の坂本さん。ボランティアは全くの未経験

最初にそろったメンバーは34名でした。そして、集まった私たちに、中村さんがこう言われたんです。「ボランティアをしてもらうのは、職員の手助けをしてもらうためではない。あなたたちの生きがいであったり、友だちを作ることであったり、何か、あなたたちが得るものを求めて活動をしてください」。そうは言われても、何をしていいか分からないじゃないですか。困ったんです。それで最初は、職員の手助けのようなことをやりました。入所者さんがお風呂から上がられた後、髪にドライヤーをかけてあげるとか、お掃除をするとか、散歩にご一緒するとか。

そうして一年ぐらいしましたら、やっぱり見えてくるんですよ。私たちがやるべきことは何なのかということがね。そこから始めたことが、編み物が得意な方は、入所者の方たちと編み物をする。そういうのを月に一回とか二回とか、ちゃんと決めてやる。それがまず始まりました。それから、みんなでお花を活けましょうと。お習字もやりましたし、みんなで歌を歌うとか。そうそう、園芸もやりました。花の大好きなメンバーが、いつとはなく、自分で好きな時に苑に来て、いろんな花を四季折々に植えて。そういう、職員が入所者の方とやれないことを私たちボランティアで見つけて、それを定例化していったんです。それこそ、みんな自分の持っているものを生かしたいという思いでね。最初は、一日平均2時間で、3名ぐらいのボランティアが毎日入って何かの活動をしていました。

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習字はいまでもお年寄りたちに人気のボランティア活動のひとつ

そうやっていたら、ボランティアを通して視野が広がるというか、目が単に施設だけじゃなくて、地域にも向いてくるんですよ。それは、私にしたらすごく大きなことでした。お店をしていたので、ある程度、地域のことは知っていたけれども、それは本当に自分の目で見ただけの範囲でしたから。そうではない、いろんな方がいらっしゃるっていうことが、ボランティア活動をやっているなかで少しずつ見えてくるんですよ。そして、頭で考えるんじゃなくて、自然に出てくるんですよね。やるべきことが。

それで、ボランティア活動が始まってから4年後に、「ふれあい食事会」をやろうということになりました。ボランティアが調理をして、施設に入所されている方だけでなく、地域のお一人暮らしの方にも来ていただいて、一緒に食べる食事会です。最初は月2回ぐらいでしたが、今は月9回。一回の利用者は15~6人になります。みなさんからいただくのは300円で、とても喜んでいただいています。

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「ふれあい食事会」は、入所者だけでなく地域の誰もが参加できる

そうすると、地域の方たちがお食事に見えた時に、何がその方にとって必要かがわかってきます。お話なんかをしているうちにね、「あっ、こういうことって必要なんだな」ということがわかってきますね。私たちの地区に、お一人暮らしで身体が弱ってしまってという男性がいらしたので、食事会を勧めたことがありました。最初は何もできるような身体じゃなかったです。弱ってね、ものもはっきり言えないのかなと思うぐらいでした。それで、その方を支えているいろんな方が集まって、会議をやったんです。私自身、地域の見守り活動もやっているから、その会議にも出て、その時に食事会のことをお話しして「じゃあそうしましょう」とみんなで合意しました。それで、お食事会に来るようになられてからは、本当に見違えるぐらい元気になられて。食事ってこんなにも人を元気にするのかって、感動しましたし、励みにもなりましたね。いま、その方は、週3回デイサービスに行って、ご飯を食べてお風呂に入って帰るようになりました。
そこから、助け合い、選択とかお庭の掃除だったり、電気が壊れたら交換するとか、資格がなくてもできるお手伝い、生活全般で私たちができるお手伝いをやるようになりました。こうした助け合い活動のメンバーも、みんな重なっていますね。園田苑で始まったボランティア活動から、ずっと広がっていったんですね。

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地域の見守りも大切なボランティア活動のひとつ

ボランティアの会員数は、その当時から減っていないですね。最初からの仲間も十名以上はいると思います。本当に辞めないグループなんですよ。(笑)メンバーのなかには、参加回数が多い方もいれば、少ない方もいます。私自身、週に1~2回程度。中には二か月間来られないという方もいます。そういう方が来られた時に、違和感なく入り込める、そして仲間が長く来られなかったことを許してくれる。雰囲気としてね。これはグループの一番大切なことです。チームワークですね。仲間を育てることを、みんなが念頭に置きながら活動を続けてきています。それと、ぶれないこと。自分たちがこうやろうと決めていることは、一本筋を通すということですね。

私たちは、施設のためにやっているとか、地域のためにやっているっていうんじゃなくて、私たちが将来、年をとった時に、どんな住みよい地域ができるか。やっぱりそこですよね。そのために私たちが何をしているか、最終的にはそれだと思います。「住みよいまちづくり」です。そういう意味では、私は、自分の住んでいる地域は、尼崎のなかで一番住みよい地域だと、自信を持って言えます。食事会に見えていらしたお年寄りの方たちも、何人かは見送ったりもしましたけれど、「私は本当にこの地域だったから、こうして一人で暮らせた」とおっしゃってくださいました。

特別養護老人ホーム「園田苑」ボランティア・坂本敬子(としこ)さんのお話(後編)」に続きます。

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坂本敬子(としこ)さん

1988年、兵庫県尼崎市に開設した特別養護老人ホーム「園田苑」の開設当初からのボランティアメンバー。当時の施設長・中村大蔵さん(現・理事長)とは地区内で知り合いだったことから声をかけられ、全く未経験だったボランティア活動に取り組み始める。いまでは入居者だけでなく、職員にも頼りにされる大ベテラン。「ボランティアで地域を住みよくすれば自分のためになる」と気付き、施設の外でも、一人暮らしの高齢者の見守りや交流サロンなど、地域活動を開始。安心して暮らせる地域を自分たちの手でつくる楽しさは、下の世代にも引き継がれている。1988年特別養護老人ホーム「園田苑」が、兵庫県尼崎市に開設した当初からのボランティアメンバー。

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