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ボランティアの力でつくる地域福祉

川崎市宮前区野川地域で、住民ボランティアによる地域福祉を進めてきた「すずの会」代表の鈴木恵子さん。支えあうご近所づくりの極意をうかがいます。

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2020年09月07日 (月)

ボランティアの力でつくる地域福祉~「すずの会」代表 鈴木恵子さん【第3回】

いつも使える居場所を開設

6年前に、活動の拠点となる「すずの家」をオープンしました。ご近所に認知症のひとり暮らしの人が増えてきて、そういう人たちはつねに見守らないと、ミニデイやダイヤモンドクラブでは間に合わない。そんなときに近所で空き家ができることになって、拠点として借りることにしたんです。

風呂・食事・送迎つきのデイサービスをやっています。利用者は要支援から要介護5の人まで。いまは要支援より要介護の人の方が来ていますね。

利用者がみんな明るいのはここの特徴ですかねえ。元気な高齢者は、認知症があったり体が不自由な高齢者を排除する傾向があるんですよね。「あたしはあんなふうになりたくない」って。でもここは、みんな気になるところのある人ばっかりだから、それでみんな安心できるのかもしれないですね。

認知症の人でトランプのゲームを覚えて楽しんでいる人もいますよ。賭けるのはおはじきだけど、勝ち負けをはっきりさせてトランプやると、競争心が出てきて積極的に覚え始めたんですよね。わくわくしないとおもしろくないのね。ひとり暮らしで、自宅に来るヘルパーには入浴をお願いできないから、ここでお風呂に入るのを楽しみにしている人もいます。

 

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ミニデイでゲームを楽しむ

 

NPO法人へ

 去年4月にNPO法人になりました。それまで活動の拠点を欲しいと思っていても借りられなかったのは、金銭的な問題があったからです。ボランティアグループではなかなか大きなお金を動かすということができないわけです。ミニデイにしても、助成金がせいぜい年間14~15万円しかないので、とても場所を借りることはできませんでした。

それでも『タッチ』を売った貯えが多少あったのと、2015年に国の介護予防・日常生活支援総合事業が始まることになっていたので、その委託事業をとれたら川崎市からもまとまった援助がいただけるんじゃないか、今がチャンスだということで決断をしたんです。それと、「今でしょ、あなたがお金が必要なのは」と言ってずいぶん寄付をしてくださった方たちがいて、寄付だけで150万円くらい集まりました。それだけみなさまから信頼をいただいていた、ということですね。

NPOになったからと言って、ボランティア活動の時とやりかたはまったく変わっていません。ふつうのデイサービスだと決まりごとが多いじゃないですか。でもここは決まりごとが少ない。ボランティアグループだと「今日これがやりたい」となったら、いちいち理事会にかけなくても、すぐに実行できるわけ。面倒な規則がないけれど、それでも今まで事故は起こしていません。

今もたくさんのボランティアがいます。今日は利用者12人に対してボランティアが8人、送迎ボランティアが3人。手厚いですよね。利用者がひとりぼっちで放っておかれるデイサービスもあるけど、ここはそういうことがありません。この規模の施設で普通のデイサービスだとスタッフはもっと少ないかもしれないけど、たくさんいるので目が行き届くし、一人あたりの負担が少ないのがいいところだと思いますね。

ただ、今ボランティアで来てくれている若い人たちが、すずの会で働けるように、仕事を作れないかなと思っています。今までのキャリアを生かして、少なくとも月18万円くらいは稼げるようにしないと若い人材が入ってこないので。継続して自分を生かす場所になれたらいいな。そのためにNPO になったのもいいタイミングではあったなと思うんですよね。介護経験があまりない人たちはみんな資格を取ってきています。今すずの会には、社会福祉士が5人、ケアマネの資格を取った人も4人もいます。

相談もすごく多いので、「少しお金をとって相談を受けたら」とも言われるんですが、これはなかなか取りにくい。厚労省の人もなんとか相談のような仕事にちゃんとお金がつくような仕組みができたらいいですよね、とは言ってるんですけどね。

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これからの地域の課題

制度って、でき上がったものに地域をあてはめようとするでしょ。でもトップダウンで来る制度には、わたしたちは抵抗がある。自分たちで「これが必要だからこうしたい、ここは行政に手伝ってほしい」というやり方をするのであれば、わたしたちは前向きになれます。行政には住民の視点をキャッチする感性を持ってもらいたいと思います。野川セブンという地域ネットワーク会議があることは、行政としっかり向き合う住民の存在があるということです。行政にとってもぴりりと緊張するところだと思いますね。

住民に関しては、特に介護保険の開始以降、家族が手を引いていくのが、すごく気になるところです。サービスの提供者に、高齢のお父さんお母さんを任せっきりにしてしまう。中には、家族との関係がうまくいってない人もします。わたしはデイサービスにきている利用者について、家族との関係も作るようにしています。若い時はなかなか言えなかったけど、この年になると、ご家族に対しても「放っとかないで」と強く言えるようになりました。

「家族には迷惑かけたくない」と言う利用者もいるけれど、じゃあ家族じゃないわたしたちだったらいいのかといったら、それは違うでしょう。何でもかんでも地域でやれるわけではないし、わたしたちが背負いすぎるのはよくない。家族関係の紡ぎ直しをやらないといけないなと思っています。

利用者たちの状況も変わっていくので、「介護度を上げなきゃいけないかしら」「施設に入らないといけないかしら」とか、いろいろ悩みが出てくるたびに、本人や家族に適切にアドバイスしたり、サービスにつなげたり、その人の人生を一緒に考えてあげられる。すずの会につながっていることで、安心して地域で暮らしていられるから、みんな休まずに来ているようです。

ボランティアもみんな一人暮らしが多くなってきました。わたしたちは最初から、「自分たちの老後を考えたグループづくり」を目標に掲げてきました。これからも「ここにつながっていてよかった」と思える「すずの会」でありたいと思っています。

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(了)

ボランティアの力でつくる地域福祉

鈴木恵子さん(NPO法人「すずの会」代表)

川崎市宮前区野川地域で、住民ボランティアによる地域福祉を進めてきた「すずの会」代表の鈴木恵子さん。支えあうご近所づくりの極意をうかがいます。

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