1. ホーム
  2. 地域づくり情報局
  3. ボランティアの力でつくる地域福祉
  4. ボランティアの力でつくる地域福祉~「すずの会」代表 鈴木恵子さん【第2回】

地域づくり情報局

ボランティアの力でつくる地域福祉

川崎市宮前区野川地域で、住民ボランティアによる地域福祉を進めてきた「すずの会」代表の鈴木恵子さん。支えあうご近所づくりの極意をうかがいます。

記事一覧へ

2020年08月24日 (月)

ボランティアの力でつくる地域福祉~「すずの会」代表 鈴木恵子さん【第2回】

 

keikosan2.jpg

(第1回目はこちらから)

 

介護情報誌を発行

2000年に公的な介護保険制度が始まる直前の1999年に、介護情報誌『タッチ』を出しました。

「介護保険制度の導入で、これからは利用者がサービスを選ぶ時代になる」と言われましたが、じゃあ地域にどんなサービスがあって、どうやって選ぶの? と聞かれてもまったくわからない。介護者の方たちからご相談を受けても、私たちもちゃんとした情報がないとお答えすることもできません。一口に特別養護老人ホームといっても、中身がどうなっていてどんなサービスをしているのか、多くの人は知らないですよね。

それで、とりあえず身の回りにあるサービスを調べてみようと、有料老人ホームや病院、体操のグループまで、地域にあるサービス、つまり地域の資源を全部調べたんです。地域を歩いてまわって、行政や保健師に聞いたり、社協から聞いたりしながら、あちこちにバラバラにある情報を一つにまとめて冊子にしました。

介護保険が始まる直前で、マスコミも毎日のように新制度について報道をしていましたので、新聞各社とNHKにお知らせを送って、ニュース番組で取り上げてもらいました。反響は大きかったですね。

『タッチ』はその後、継続的に6号まで作りました。情報は変わっていくので、継続して出すことがとても大事だと思います。さらに、介護予防版も作りました。公園で体操をやっているグループだとか、ダンスクラブ、絵画の会、編み物の会、さらに、お買い物を助けてくれるスーパーマーケットの情報など、ちょっと困ったときに役に立つようなサービスの情報も入れて、介護予防に役立つ情報をまとめたわけです。平成14(2002)年当時にしては、先駆的なことをしたと思います。

 touch2.jpg

利用者の視点から介護サービスなどの情報をまとめたガイドブック「タッチ」第6号

 

地域ネットワーク会議の誕生

介護情報誌『タッチ』を出したことで社会的にも信用されるようになり、いやというほど相談がやってくるようになりました。ミニデイサービスもどんどん参加者が多くなって、一時は参加者とボランティアあわせて80名くらいまでふくらんだこともありました。

その中から、いろんなリクエストが出てくるわけです。「ちょっと留守番に来てほしい」とか、介護者も具合が悪くなって医者に連れて行くのが大変になってくるので、「往診してくれる先生はいないか」とか。そこで、地域の中で往診してくれる医者に何人も声をかけて、往診医のネットワークを作りました。これは非常に助かりましたね。

2001年には、地域ネットワーク会議「野川セブン」を作りました。川崎市でも介護保険事業が始まることになり、「自主活動団体が中心となった介護予防のネットワークづくりをやってください」という呼びかけが市からあったので、これはやりたいと思って手を挙げました。自分たちにできないことがあっても、ほかの団体が引き受けられることもあるかもしれない。地域の情報共有の場がほしいと思ったんです。

「野川セブン」という名前は、当初、「すずの会」のほかにミニデイをやっているところ、失語症の当事者の会、リハビリを必要とする人たちの会、介護者の会、ヘルパーの資格を持っている人の会など、野川地域で活動する7つの自主活動グループが集まって作ったところからつけました。行政や社協、医師会の人たちにも集まってもらい、いま野川地域で何が起こっていて、何をしなきゃいけないのか、話し合う機会を作りました。

現在では参加団体もさらに増えて、地域の問題を共有し、解決のために、あらゆる組織と協働して地域資源を使うことができるようにしています。

 nogawaseven.JPG

地域ネットワーク会議「野川セブン」

 

気になる人を真ん中に

ダイヤモンドクラブは平成16(2004)年に始まりました。月2回のミニデイだけでは、来られない人もいるし、見守りが十分できないような人たちもたくさんいます。もっと小さな単位で、お年寄りや介護をしている人など、近所の中でちょっと気になる人を真ん中にした、お茶飲みながら集まりの会をあちこちに点在させていかないと、地域のことがわからないと思ったんです。

私がちょうど平成14(2002)年に交通事故にあったんです。私はいつも誰かを助けなきゃと思ってたのが、今度は自分が動けない。そのとき近所の人がいろいろ助けてくれるわけです。うちでお茶のみ会をやったりしてね。「あっ、これだよな。気になる人を真ん中において、お茶のみ会やればいいんだ」と思ったの。そういうところを点在させれば、きっとみんなが安心できるようなご近所づくりになると。

小さな光を点在させて、それがつながっていく。ダイヤモンドは集まれば大きな光になるでしょ。それで「ダイヤモンドクラブ」という名前にしました。

「ちょっと気になる人を真ん中に置いて、ご近所で集まるようなことをやりたい、誰か家を提供してくれる人いない?」と野川セブンで聞いたら、ぱっと5人くらい手が上がったんです。また、あるボランティアさんが、「周りを見たら年寄りばかりになっちゃってるから、うちでやってもいいよ」と言ってくれて。みんな危機感をもっていたんですね。気になる人がどこにいるのか、誰と誰がどんなふうにつながっているかというマップ作りもやりました。やっぱり地域の人はよく知っているんですよね。

diamond076.jpg

ダイヤモンドクラブ

 

地域の中で看取りまで

ダイヤモンドクラブにはものすごく反響がありました。大きな家が並んでいる分譲地とか、あんまり困ったそぶりが出せないようなところだけど、みんな高齢になっていて、「うちにちょっとお茶飲みに来ませんか」とお誘いを受けると、喜んでやって来るんですよね。

そこで「最近どうも調子が悪くてねえ」なんて話をしゃべるの。「実はひとり暮らしになっちゃったのよ。うちがしばらく開いてないようだったら、娘がどこそこに住んでるから、連絡してくださいね」というふうに、自分の情報を、信頼できるご近所さんに、ちゃんとお伝えできるような場になりました。お互いに知ってる人だから、安心して話せる。ちょっと風邪ひいて寝込んじゃった時にも、「買い物ついでにこれやってくれない?」というふうに、困ったときにはお願いねという関係が、あちこちで生まれてきました。

「毎月集まりましょう」とか言わずに、一回でも集まればそれでいい。みんなご近所だから、顔なじみができるでしょ。決まりごとを少なくして、ハードルの低い集まりにしているのもよかったですね。

もちろん、なかには深刻なケースも出てきますので、その場合は必ず専門職につなげます。野川セブンというみんな顔見知りのネットワークがすでにあるので、「大きな家に住んでいるけど生活に困っている人がいるから、福祉事務所に連絡してきてもらおう」とか、「認知症の人がいるから地域包括センターに一緒に行ってもらおう」とか、あるいは「すぐにお医者さんを呼ぼう」とか。そういう橋渡し役が、ダイヤモンドクラブの中からたくさん生まれました。そうして、うまくサービスの軌道に乗るまでは、近所の人が毎日おにぎりを持って行って様子を見るなどして、つなぐわけです。

看取りもたくさんやらせていただきましたね。それも信頼いただけてる証なのかなと思っています。何人もの方のベッドサイドでご一緒させていただきました。「今日はどうも様子が違う」と電話をもらって駆けつけたり、たまたまダイヤモンドクラブがある日と重なって、集まったみんなで看取ることもありました。

そうやって看取りに参加した中には、自分が家族を介護している人たちもたくさんいて、「ああこういうかたちの最期がいいね」と、今度はその人の家に集まって、またみんなで看取りをやったり。夫婦二人でいてどちらかが最期を迎えるとして、遠くにいる息子や娘に連絡して来てもらうにしても、来るまで不安だし、とてもひとりではやれないじゃないですか。そういうときにいつもの仲間が一緒にベッドサイドにいてくれたらすごく安心でしょ。

ぜんぜん知らない看護師さんがバタバタやってくる病室よりも、知ってる仲間がいて、「お父さん、あの時はこうだったよね」と言いながら、息が静かになっていくのをみんなで見守る。それはすごくいい看取りなんですよね。

 

(第3回に続く)

コメント(0)

※コメントはありません

コメントの投稿

ボランティアの力でつくる地域福祉

鈴木恵子さん(NPO法人「すずの会」代表)

川崎市宮前区野川地域で、住民ボランティアによる地域福祉を進めてきた「すずの会」代表の鈴木恵子さん。支えあうご近所づくりの極意をうかがいます。

ブログ内検索