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学校を拠点にまち(地域)育て

「秋津コミュニティ」顧問として、学校区の生涯学習の充実に尽力してきた岸裕司さんが、学校と地域が一体となった学びの場作りの極意を語ります。

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2018年05月14日 (月)

サスティナブルなまち育てを目指す「スクール・コミュニティ」

寝たきりになったら面倒みてくれる?

 

「ユーくん、大学、受かったよ!」と、言いながら、A子ちゃんが秋津小学校のコミュニティルームにやってきた。

A子ちゃんは、秋津コミュニティが2004年に開始した「秋津・地域であそぼう!」教室の新1年生になった当初からの常連。

で、12年後にみごとに大学に合格したのである。そのことを自慢(?)したくて、休日にコミュニティガーデンであそぶおやじたちに報告にきたのである。昨年の春のこと。

ちなみに「ユーくん」とは、私の愛称。秋津っ子(秋津に暮らす子どもたち)や家族にそのように呼ばれている。

 「おお! A子、おめでとう!」と、秋津コミュニティのおやじたち。

 「で、A子、大学でなにを学ぶの?」と、私。

 「うん、看護師さんになるの!」と、元気な声でA子ちゃん。

 「おお! じゃあ、ボクが要介護者になったら、面倒をみてな!」と、おもわず言った。

すると、A子ちゃんは、一瞬、間を置きながら返した。

 「うん、任せて!」

 「おれも!」、「俺もな!」と、おやじたちがつぎつぎに続いた。

 「はい! みんな、任せて!」と、A子ちゃんは力強く応じた。

おやじたちみんなが、A子ちゃんとともに大笑いした。

A子ちゃんはこの春から2年生。元気に看護師を目指して大学生活をエンジョイしていることと思う。

 

また、ある年の秋津まつりの際に、こんなことがあった。ちなみに秋津まつりとは、毎年秋に外部の業者を入れないで秋津住民のみで開催する地域最大のお祭りである。

 

出店を手伝っていた、高校生男子の秋津っ子たちとの雑談である。

 「おまえたちさぁ、ボクが『寝たきり』になったら、おまえたちの税金を使わせてくれるか?」と、私は言った。

 「えっ! 『寝たきり』ってなに?」と、Bくん。

 「『寝たきり』ってのはなぁ、年をとり、からだが動かなくなって寝たまんまになり、いろんな人にお世話してもらうことだよ」

 「最近、年金問題で『若者につけをまわす』なんてことが話題じゃないか」「だからさぁ、おまえたちはもうすぐ納税者になるんだから、税金をだれに使ってほしいのか、ってこと」「ボクだって、60過ぎて、いつガタがこないともかぎらないからさぁ」と、私は続けざまにBくんらに言った。

 highschoolboys.JPGのサムネイル画像

 秋津まつりの出店の手伝いをする秋津小学校の卒業高校生たち

 

平均寿命が延び、「人生100年」とも言われはじめた。

寿命が延びることはよいことである。

しかし問題は、心身ともに元気に長生きできるのかどうかである。

つまり、要介護者にならずに自立して生き続けられる「健康寿命」と、「平均寿命」を限りなく近づける生き方が、問われてきたのである。

「成熟社会」は、このような現代的な課題もいっぽうで抱えている。

その点では、秋津は、退職後でも元気なおやじをはじめ、健康寿命が長いお年寄りが多いように感じる。

それは、いくつになっても子どもたちとふれあい学ぶことのできる、学校を活動の拠点とした「生涯学習の学校」を、秋津コミュニティを中心に、地域につくりあげてきたから、と思うのである。

ところで、男の子たちはこのように言った。

 「うん、ユーくんが税金を使ってもいいよ!」とね。

私はとてもうれしかった。

 

秋津のまちを「人的ふるさと」に 

 

私は、秋津コミュニティの長年の活動を通し、さまざまな子どもたちとふれあい、その成長を見つづけてきた。

そして、いつしか思うようになった。

「この子たちは、『ふるさと』を、どのように感じているのであろうか」と。

東京湾に面した秋津のような埋め立て地の殺風景なまちの子たちは、どのように感じながら育つのであろうか。以前から疑問に思っていたのである。

安倍総理は、「美しいニッポン」を強調する。

たしかに、風光明媚で自然が豊かな「美しいニッポン」は、それはそれでよいことである。

だから、疑似自然ではあるけれど、小川が流れ、田んぼがあり、大池もある「ビオトープ」を、おやじたちを中心に、校庭に手づくりした。

そのまえにも、うさぎとニワトリと触れ合いながら育てることができる飼育小屋も手づくりした。

校舎2階に空いた余裕教室を改造して、子どもたちから募集した「ごろごろ図書室」の愛称で呼ばれる低学年用の図書室も手づくりした。

そんな作業中の「おやじたちの背中」を見ながら秋津っ子たちは成長してきた。

その育ちのひとつの答えが、男の子たちやA子ちゃんとの応答にあるのではないだろうか。

だから、「人的ふるさと」と私が名付けたような「ふるさと観」もあるのではないだろうか。

この子らが大人になった時に、ふと子ども時代を思い出すとしよう。

「そうだ、秋津のおじちゃんやおばちゃんたちに育てられながら私は育ったんだ!」と、きっと思ってくれるであろう。

お祭りや伝統文化をワクワクしながら楽しみつつ社会的な大人に育つ「通過儀礼」のようなことを、秋津の大人たちは、自分の楽しみとともに秋津っ子らに伝えてきたのではないだろうか。

そして、秋津のまちはつぎの世代へと循環する。

そんな、「サスティナブルなまち育て」を、秋津は目指している。

dashi.JPG

秋津まつりに繰り出したおやじたちの手づくり山車「神龍」と子どもたち

 

生涯学習の拠点「スクール・コミュニティ」

 

ところで、一般的な公立小学校の開校日は、約200日間。年間365日の55%。

で、秋津コミュニティは、授業日の授業時間中はもちろん、授業外時間の放課後や休日もコミュニティルームやコミュニティガーデンを使いこなしている。

このような、多世代で学校を活動拠点にしながら住民自治で担うあり方を、私は「スクール・コミュニティ」と名付けた。

前回紹介の「コミュニティ・スクール」は、親や住民が参画しての「学校の運営・運営支援」を行う「200日間内の学校改革」であることに対し、「スクール・コミュニティ」は、「校区に居住、働く方々すべてを対象にした、学校を365日間活動拠点とした生涯学習のまち育て」なのである。

「学校を365日間活動拠点とした生涯学習のまち育て」のあり方は、2006年に改定の教育基本法の以下を先取りしたあり方である。

「第3条 生涯学習の理念」は、謳う。

 「国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。」

また、第3条が「第1条教育の目的」、「第2条教育の目標」に次いで位置づけられ、「第4条教育の機会均等」、「第5条義務教育」、「第6条学校教育」、「第12条社会教育」などの上位にあることの意味は、日本が「生涯学習社会の実現」を教育政策上の最重要課題としたことの表れである。

なお、条文冒頭の「国民」は、在日外国人を含めて「住民」と読み替えて、秋津コミュニティでは使っている。

oyajis.JPG秋津小学校の卒業生の要請で、高校の文化祭準備の手伝いに行った秋津コミュニティ工作クラブのおやじたちと。写真提供:関嘉民さん

 

 

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岸裕司さん(「秋津コミュニティ」顧問)

「秋津コミュニティ」顧問。文部科学省コミュニティ・スクールマイスター。1986年から習志野市立秋津小学校PTA会長を含む役員を経験し、以後、学区の生涯学習に取り組んできた。「学校開放でまち育て-サスティナブルタウンをめざして」(学芸出版社)など著書多数。

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