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地域づくり情報局

学校を拠点にまち(地域)育て

「秋津コミュニティ」顧問として、学校区の生涯学習の充実に尽力してきた岸裕司さんが、学校と地域が一体となった学びの場作りの極意を語ります。

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2018年03月08日 (木)

学校づくり・次世代育成・まち育ては三位一体で

全国に広がる「秋津モデル」

 いま、学校と地域が一体となって行う国の事業が全国で展開されている。「コミュニティ・スクール」の推進や、「学校支援地域本部事業」、「放課後子ども教室」、「土曜日事業」、中学高校生を主な対象とした学習支援の「地域未来塾」などである。

これらの事業には毎年、数百億円もが投じられている。それだけの予算が投じられる根拠は、2006年に改定された教育基本法にある。

すなわち、同法に新設された「第13条 学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力」である。この条文に「学校、家庭及び地域住民その他の関係者は、教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚するとともに、相互の連携及び協力に努めるものとする。」と謳われているからである。

じつは、これらの施策はすべて「秋津モデル」である。

「秋津」とは、千葉県習志野市南部の東京湾の埋め立て地に1980年に誕生した人口約7千人の秋津地域のこと。また「秋津モデル」とは、秋津のまちの住民と、秋津小学校との長年にわたる各種の協働の状態を指す。まちの誕生とともに開校した秋津小学校は、現在、児童数260名ほどで、市立秋津幼稚園も併設されている。ここでは、学校と地域が協力して各種の授業を行ったり、運動会などの行事を合同で開催するなどの活動が行われている。

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秋津小学校の子どもと秋津コミュニティの音楽系サークルとの音楽の協働授業「世界の音楽めぐり」

学校の運営・支援を住民と協働するコミュニティ・スクール

協働の状態を如実に表すひとつに、コミニティ・スクールがある。

コミュニティ・スクールとは、2004年に改定された法律にもとづき、保護者や住民代表らが地方公務員の特別職として教育委員会から任命され、一定の権限をもって学校運営や運営支援に携わるという、画期的な新制度である。法律名は「学校運営協議会」といい、通称コミュニティ・スクールと呼んでいる。

秋津小学校は、開校まもなくから推進してきた学校と地域の協働の成果を評価され、2006年に千葉県の全学校に先駆けて、最初に市からコミュニティ・スクールに指定された。学校と地域の協働は、4領域(学習・環境・安全・情報)あり、60以上もの分野で、年間延べ2万人もの住民が参画しているのである。

この学校と地域の協働を進めてきたのが、任意の自治団体「秋津コミュニティ」であり、住民と校区で働く人を対象に、生涯学習の推進を活動の柱にしてきた。

秋津コミュニティの活動のもうひとつの大きな特長は 、児童数の減少により空いた校舎1階の4つの余裕教室、校庭の余裕敷地約300㎡、校舎外部の陶芸小屋付きの陶芸窯との3つの機能を地域に開放した施設を運営していることである。

ここは、秋津コミュニティの委員が重任する公設民営の「秋津小学校コミュニティルーム運営委員会」が、1995年の開設以来、運営している。利用料は無料で、出入り口の鍵の保管貸し出しも運営委員会が担う。しかし管理責任者は教育長であり、学校の管理責任や負担はない。学校の管理部分とは、開校日の夕方や長期休日には開閉式のシャッターで区分する。このような工夫をすることで、夜間や休日でも施設が使えるのである。

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校舎1階の地域開放施設のコミュニティルームで「秋津・地域であそぼう!」のミサンガづくり教室

多様な生涯学習サークル

秋津コミュニティには、大人のコーラスやフォルクローレなどの音楽系サークル、劇団や学校のホームページづくりも担う父親らのパソコン倶楽部、陶芸同好会などの文科系サークル、また、ユニホッケーやNPO習志野ベイサイドスポーツクラブなどの各種のスポーツ系サークルなど、計32のサークルにくわえ、PTAやまちづくり会議等の8つの地縁団体が登録している。これらのサークルを中心に、コミュニティルームには年間延べ1万2千人が集い、活動しているのである。

また、子どもと大人のふれあいを目的にした「秋津・地域であそぼう!」と称する一種の「放課後子ども教室」や「土曜日事業」、「地域未来塾」などの活動がある。教員免許をもつお母さんが指導する算数教室や、中学生のための数学教室、元中学教師である退職お父さんによる国語教室、趣味の絵画を活かしてのお絵かき教室、書き方(ペン習字)、元キャビンアテンダントのお母さんによる英会話などの学習、工作教室などを、放課後も休日も含めて、国の施策開始以前から実施してきたのである。

このありかたは、格差社会での教育格差の問題があげられる現在、多少はその緩和に住民自治力で寄与していると思うのである。

さらに夏休みには、防災被災訓練を兼ねた一泊キャンプも住民自治で毎年実施し、自主防災意識の向上にもなっている。実際に、2011年の東日本大震災の際には、サークル仲間が避難所として解放し、お年寄りのお世話や食事などを担ったのである。いわば、住民自治の児童館と公民館・避難所機能も併設した学校という感じである。

とくに強調したいことは、秋津コミュニティには、お父さんら男性の参画が多いことである。学校の飼育小屋やビオトープ(幼稚園の園庭に手づくりした、小川や池や田んぼがある約420㎡の自然庭園)などのモノづくりを長年実施してきた工作クラブや、開放敷地で草花や野菜栽培を楽しむ「うらの畑」サークルには、男性が多く参加している。

池の横には千葉県伝統の手掘りの井戸掘り技術である「上総掘り」をお父さんらが学び、延べ千人が参画して掘った防災用の井戸がある。またベンチとテーブルも手づくりした。ここに休日に集いランチを楽しむ家族もいる。このビオトープ周辺を、学校内にできた「もうひとつの公園」の意味合いから「コミュニティガーデン」と呼んでいる。

このような学校を拠点としたさまざまな住民活動は、学校づくり・次世代育成・まち育てを三位一体で推進するという理念で運営することが大切である。この三位は、楽しく元気で自由で温かい住民自治の民主的なまちを育てるうえで、切っても切れない関係にあるからである。

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幼稚園園庭に手づくりしたビオトープの大池でザリガニ釣りを休日に楽しむ子どもと住民

 

 

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学校を拠点にまち(地域)育て

岸裕司さん(「秋津コミュニティ」顧問)

「秋津コミュニティ」顧問。文部科学省コミュニティ・スクールマイスター。1986年から習志野市立秋津小学校PTA会長を含む役員を経験し、以後、学区の生涯学習に取り組んできた。「学校開放でまち育て-サスティナブルタウンをめざして」(学芸出版社)など著書多数。

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