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2016年09月17日 (土)

「明日へ つなげよう 復興サポート 放射能汚染からの漁業再生 福島・浜通りpart3」現場から

「復興サポート」が、初めて福島県いわき市を訪ねたのは2014年6月。それから1年おきにお邪魔し、今回で3回目になります。東日本大震災が引き金となって起こった原発事故、それによって汚染された海で、地元の人々は懸命に漁業を立て直そうと努力を続けています。


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収録は9月4日(日)、いわき市内にある水産会館で、県内の漁業関係者が50人以上集まる中行われました。2012年6月から試験操業が始まり、対象魚種も83種にまで増えていますが、未だ本操業には至っていません。漁業を生活の糧としている当事者が、今何を考えているのか?まず最初に皆さんの思いを伺いました。

「試験操業で魚は獲れるけど、対象魚でない魚は捨てないといけないのがつらい」、「一歩一歩前進していると思うけど、息子と二人でこれからどうやっていくか、今はそれが課題」「一旦は漁師を諦めて他の仕事に就こうと考えたこともあったけど、やっぱり自分は魚をとって生計をたてていきたい」「震災前よりも地元の魚を食べる機会が減っているので、積極的に地魚を食べる文化を育てて行きたい」同じ福島の漁業者といっても、漁師の皆さんが属している漁協や、とっている魚種は様々です。また水産試験場や市役所、魚を扱う小売店など、漁師以外の方も多く参加しています。それぞれの立場から、この5年間海と向き合って感じてきたこと、これからの見通しについて思うことなど、当事者ならではの切実な意見を伺うことが出来ました。

続いて、NHKが取材したVTRを会場で上映しながら、専門家を招いて講演していただくパートに移りました。今回のテーマは、「海の放射能汚染の現状」と「風評問題対策」です。
まず、東京海洋大学の石丸隆特任教授が、福島の海の放射能汚染について調査した結果を紹介、現状を分析しました。そこで、これまで分かっていなかった意外な事実が明らかになります。参加者の皆さんは真剣な目で映像に見入っていました。


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次に、北海学園大学経済学部の濱田武士教授による、「風評問題」をどう乗り越えるかをテーマにした、具体的な取り組みを紹介しながらの講演です。福島の漁業が再生するには、当事者以外の力添えも必要と話したあと、福島大学の学生たちが行っているスタディツアーの様子をVTRで上映。ツアーは、いわきの漁業に対する理解と支援を広げようと、県内外の消費者に参加を呼びかけて行われています。ツアーに参加した人のなかには「これまで漁業に関心がなかったが、今の状況を知って思いを新たにした」「安全な魚を提供するために最大限の努力をしている人がいることが分かった」という感想を寄せてくれた人もいました。

会場には、実際にツアーを企画した学生たちも参加してくれました。福島大学2年生の牧内美樹さんは、「自分も福島県富岡町出身で避難しているけど、自分自身が福島のことを知らないことに気付いて、知りたいと思って始めました。活動をする中で漁師さんや地域の人たちの話を聞いて、より多くの人にも知ってもらいたいと思うようになりました」とツアーを企画した意図を話してくれました。牧内さんは直接漁業関係者ではありませんが、同じ福島に住む当事者の一人として、いわきの漁業を“自分ごと”として考えるようになったといいます。若者たちのこうした取り組みが、風評をなくすことにつながり、福島の漁業が前へ進む後押しをしてくれることになるではないかと濱田さんは話しました。
続いて、漁師自身が消費者とつながろうとする相馬の新たな取り組みをVTRで上映。自分たちがとったおいしい魚を確実に消費者に届けるための先進的な活動が伝えられました。会場には、活動のリーダーを務める相馬の漁師,菊池基文さんが参加、取り組みを始めたきっかけと、そこで得た感触を伝えてくれました。「前は海の上にいて、こういう新しい試みのことを考える時間はなかったけど、今は時間があるし、興味があれば誰でもできる。何も特別なことをしているという意識はありません。こういう状況だからこそ、新しい漁業が展開できるんじゃないかと思っていて、もしかしたら本当に先頭を走っていけるんじゃないか、そんな感じがします。」という力強い言葉を伺うことが出来ました。
 この後、会場に集まった全員が6つのグループに分かれて、「福島の漁業がどう消費者とつながっていくか」について考えるワークショップが行われ、これまでの様々な報告を受けて、それぞれの参加者が、主体的に考えた自分の意見を発表し合いました。午後1時から始まった収録が終わったのは午後6時半。長丁場の収録でしたが、会場に集まった福島の漁業関係者の皆さんは、収録終了後も熱心に意見を交わしていました。

今回、収録現場に立ち会って感じたのは、“「同じ当事者が、同じ映像を見て考える」という、テレビを使った共有体験が、単独では難しい課題解決の糸口を見つけるのにとても効果的ではないか”ということ、そして、“当事者同士が話し合える場を作る”ことの大切さです。「福島の漁業をどうやったら再生できるか?」これは一人で考えるには余りにも大きすぎる問題です。でも、中には解決の糸口を見つけている人もいて、課題や新しい情報を分かち合うこともできます。そのための場の一つとして、「復興サポート」という番組が役立つのであれば、これほど嬉しいことはありません。

 

◆放送予定
放射能汚染からの漁業再生~福島・浜通り Part3~
[総合]2016年9月18日(日)午前10時05分~10時53分
[再放送] 2016年9月23日(金) 午後2時05分~2時53分

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