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2016年05月19日 (木)
番組担当ディレクター・取材見てある記 vol.1「地域課題を住民の力で解決する共同店」より
地域づくりアーカイブスの「共生経済・観光」のカテゴリーに、「地域課題を住民の力で解決する共同店」というタイトルの動画があります。
今回は、現地の取材にあたった後藤秀典ディレクターから取材現場で感じたことやエピソードを聞きました。
この動画では、宮城県丸森町大張地区にある「なんでもや」というお店を中心とした地域づくりを紹介しています。「なんでもや」は、住民たちの出資でつくった共同店です。食料品や雑貨を店舗で販売するほか、お年寄りの見守りも兼ねた移動販売も行っています。栽培した野菜や、自家製の豆腐などを店頭に並べて販売することは、お年寄りの生きがいでもあります。
後藤ディレクターは取材の中で、丸森町で栽培した椎茸を「なんでもや」に出荷している農家に出会いました。放送時間の関係上、番組の中でご紹介できなかった「こぼれ話」を明かします。
取材後、自宅で妻と一緒に晩酌しながら、宮城県丸森町産の原木椎茸を食べました。網で焼いた椎茸の上に、醤油をひとたらし。肉厚で香り高く、最高の酒の肴です。
この原木椎茸を栽培している宮城県丸森町大張地区は、福島県との県境に位置する、65歳以上の高齢者が4割近くの集落です。
山に囲まれた丸森町は、タケノコや山菜など、山の幸に恵まれていました。ところが、福島第一原発事故による放射能汚染の影響で、そうした山の幸が食べられなくなってしまったのです。地域で栽培されていた原木椎茸も出荷できなくなっていました。
地域の中心地には、唯一の商店「なんでもや」があります。ここは、地域住民たちが出資・運営している共同店です。食料品や雑貨のほか、地域のお年寄りたちが作った野菜や総菜、手作り豆腐なども販売。自分がつくったものを人に買ってもらうことは、お年寄りの生きがいです。店まで来ることができないお年寄りには、見守りも兼ねた移動販売も行っています。
原発事故をきっかけに、お年寄りたちは、タケノコや山菜、椎茸をはじめとした農産物の出荷を自粛。畑仕事や山菜採りなどをやめ、家にこもりがちになる人が相次ぎました。「なんでもや」では、移動販売を通じて、家にこもりがちになった人に声を掛け続けました。
時間の経過とともに放射線量も下がり、野菜は少しずつ出荷され始めていました。
キノコ類は依然として出荷が難しい状況でしたが、原発事故から約4年半たった2015年10月、丸森町の佐藤利美さんは岩手県産の原木を使うことで、ようやく放射能不検出の椎茸を栽培できるようになり、「なんでもや」への出荷を再開しました。
最盛期に比べると生産量は5分の1にとどまっていますが、山の幸の復活第一号とあって、地域住民はとても喜んでいます。
「昔と同じ生産量に近づけていきたい」と佐藤さん。かつては農林水産大臣賞を3度も受賞したほどの高品質な原木椎茸。よみがえった山の幸をきっかけに、地域の再生へ向けて、また一歩進み始めています。