社会や政治に関する世論調査

日本人はなぜ医療に満足できないのか

~ISSP国際比較調査「健康」から~

NHK放送文化研究所が加盟する国際比較調査グループISSPが2011年に実施した調査「健康」の結果から、31の国・地域を比較し、日本人の医療への満足度について探った。

日本では国民皆保険によって比較的少ない負担で質の高い医療が受けられるうえ、自分の好きな医療機関に直接受診できるフリーアクセスが確保されている。こうした背景もあり、日本は受診率が31か国の中で最も高い。しかし「医療を必要以上に利用している」と考える人は54%で、各国と比べて多いわけではない。また、医療へのアクセスがよい半面、仕事や用事で受診できない人が若年層と中年層で多い。

医師の治療に満足している人は70%、医師を信頼している人は62%に上るものの、参加国全体の中では少なく、日本人の医師に対する評価は国際的にみると高いとは言えない。

さらに医療制度への満足度も43%にとどまる。医師への評価と医療制度への満足度には高い相関があり、医師への評価が高い国ほど、医療制度への満足度も高い。また、医療の効率性に対する認識と医療制度への満足度にも相関がみられ、自国の医療が効率的でないと考える人が多い国ほど、医療制度への満足度が低い。日本で医療制度の満足度が低いのは、医師や医療の効率性への評価の低さが関係していることが考えられる。今回の結果は、医療の満足度を高めるうえで、医師に対する評価や医療の効率性を高める施策が効果的なことを示唆している。

世論調査部 村田ひろ子/荒牧 央