社会や政治に関する世論調査

大事故と“節電の夏”を経た原発への態度

~「原発とエネルギーに関する意識調査」から~

福島第一原発事故では8か月以上経った11月現在でも,約8万人もの周辺の住民が避難を余儀なくされている。夏には電力不足の懸念が高まったとして政府が節電を呼びかけた。NHK世論調査部が2011年6月,8月,10月に実施した電話調査の結果から,福島の事故と“節電の夏”を経た人々の原子力発電所や電気に対する態度や,態度の決定に関連がある不安や信頼感などの変化を探る。

「国内の原発をどうすべきか」について, 10月の結果は「減らすべき」が42%で最も多く,次いで「すべて廃止すべき」24%,「現状維持」23%,「増やすべき」2%で,「減らす」と「廃止」を合わせた原発の利用に否定的な人は3人に2人に上る。6月と比較すると「廃止」がやや増えている。

10月の結果では「原発事故に対する不安」を「大いに感じる」人が49%で最も多い。3回の調査をみると,不安を「感じる(大いに+ある程度)」人が約9割と大多数である結果に変化はない。「原発に関する国の安全管理に対する信頼」については3回の調査とも約7割が「信頼していない(あまり+まったく)」と答えていて人々の信頼感は低い。原発に対する態度は「不安」や「信頼」があるかどうかで大きく異なっている。

10月調査で夏の節電についてみると「した(大いに+多少は)」という人が89%で全国的に多数である。「不便になっても,電気の使用量を減らす生活に変えるべき」という考え方の賛否では,10月は6月に比べ「賛成」が減り「反対」がやや増えている。多くの人が節電に努めた夏を経て,不便になってまで電気の使用量を減らしたくない人が増えている。

原発を推進してきた国などは「安定供給ができること」や「経費の安さ」を原発の長所としてきた。原発に対する態度をみると,発電について「安定供給」を重視する人でも,「経費の安さ」を重視する人でも,原発を「減らすべき」または「すべて廃止」という人が約6割いて原発 に否定的な人が多数である。

世論調査部(社会調査) 政木みき