社会や政治に関する世論調査

大津波警報 その時住民は

~チリ地震津波に関する緊急調査から~

2010年2月27日、南米チリの沿岸でマグニチュード8.6の巨大地震が発生しました。気象庁は翌28日、青森、岩手、宮城3県の太平洋沿岸に大津波警報を発令し、3県でおよそ34万人に避難の指示や勧告が出されました。住民はこの警報をどのように受け止めて、どう行動したのでしょうか。NHKが津波から2週間後に、3県の太平洋沿岸の市町村に住む人たちを対象に行った緊急の電話調査の結果を報告します。

大津波警報が出されたのは、午前9時半でしたが、85%の人が昼までに、警報が出たことを知っていました。日曜日の午前中で、自宅にいた人が多かったことなどが影響しているのでしょう。しかし津波の規模についての受け止め方には差がありました。気象庁の予測では津波の高さが高いところで3mとなっていましたが、警報を知った人の46%は、実際の津波は気象庁の予測より低いだろう、と考えていました。津波は来ないと思った人も7%いました。

自分の住む地域に避難指示や避難勧告が出た人で、実際に避難した人は29%にとどまり、69%が避難していませんでした。避難しなかった理由として最も多かったのは「自分のいるところは安全だと思った」というものでした。一方、市町村の避難所や近くの高台、知人や親族の家などに避難していた人たちも、大半が警報が解除される前に避難場所を離れていました。気象庁が出した津波の規模の予測や、自治体が避難すべきとした判断に対して、「たかをくくっていた」ケースがあったと懸念されます。

住民が何から情報を得ていたかを見ると、警報の発令については「テレビ」が72%と圧倒的に多くなっていました。一方、避難の指示や勧告では、「市町村の広報車や防災無線」が一番多くなりました。全体を通して、情報の入手にはテレビが最も利用されていましたが、若い人や、避難した人たちでは携帯電話を利用した人が多くなっていました。

今回、日本で観測された津波は最大で1m20cmで、気象庁の予測は結果として高すぎました。これについて74%の人は「問題はない」「仕方がない」と容認しています。しかし多くの人がそもそも気象庁の予測を額面通りに受け止めていなかったことや、避難指示が出ても避難しなかった人がいたことを考えると、災害の危険性の伝え方に課題が残ったと言えるでしょう。

世論調査部(社会調査)石川 信